305話 会えるのはいる
郁人は悩んだ結果、ユーに預かって
もらうことにした。
「ユー、ありがとう。俺のホルダーに
入れてもいいんだけど、持ってるの
ちょっと怖くて……。盗もうとしたら
ホルダーが盗んだ相手を締めちゃうし」
「お前のホルダー、そんなのが施されて
いるのか?!」
そうなのか?! と篝は目を見開き、
ジークスが頷く。
「災厄の彼がいろいろと施しているんだ。
魔道具店の魔道具より高性能のもので、
国宝級にあたる代物だ。盗もうとした
相手が目も当てられない状態になる事も
確実のものでもある」
「パパの物を盗もうとするんだ。
当然の処置だろう。締めるのはまだ
ヌルい処置だがな」
「なるほど……。でしたら、ユー殿が
預かるほうが安全ですな。
マスターの精神面と怪我人を続出
させないためにも」
チイトの言葉にポンドは郁人の
判断に納得した。
ユーは任せろ! と胸を張りながら
背中にフェアリーダストを仕舞った。
「どう使うかは先送りになるけど……
あとで考えとこ」
「料理のスパイスにも使えるよ。
あと、植物に与えることも出来るけど」
「じゃあ、チイトから貰ったナイフに
あげてみようかな? その前にフェイルート
にどんな種類を聞かないといけないな……。
あげても問題ないか聞かないとだし、
聞く時間あるかな?」
考える郁人にチイトは問題ないと
告げる。
「パパがお願いしたら時間を作るでしょ、
あいつなら。予定に無理やり空き時間を
作るぐらいやる」
「………それはそれで申し訳ないな」
「フェイルート殿でしたら、余裕をもって
行動するそうですから空き時間はあると
思いますよ。従業員の方々と話しまし
たが、フェイルート殿は従魔達になにか
あったときにすぐ駆けつけれるように
空き時間は必ずあるようにしてると
聞きましたので」
ポンドは聞いた内容を伝えた。
郁人はホッとする。
「じゃあ、話を聞ける時間は少しあり
そうだな。……そういえば、この国には
どこの国の人達が来る予定なんだろうな?
忙し過ぎてその空き時間しか休めない
なら聞くの申し訳ないし……」
「そこも大丈夫だと思うよ」
顎に手をやる郁人にチイトは告げる。
「まず、あいつに会えるのはごく
わずかだから。だって、あいつに
会ったら発狂する可能性があるし」
「あっ! そうだったな……」
「彼の美貌を前にして発狂しないのは
本当に珍しいからな……」
ジークスは発狂した人々を思い出し
ながら呟いた。ポンドは尋ねる。
「その口ぶりですと会える方々がいるの
ですな」
「どの国の連中だ?」
「今の段階であいつに会えるのがわかって
いるのはドラケネス、マルトマルシェ、
プリグムジカ、アニンナの4カ国だ。
その中で会えるのはパパが描いたキャラ
がほとんどだがな」
「えっ?! ドラケネスとプリグムジカ
以外にもいるの?!」
郁人は思いもよらぬ言葉に目をぱちくり
させた。チイトは頷く。
「マルトマルシェにはいるよ。
アニンナにはいないけど、前から
蝶の夢に通っているから祭に参加する
そうだよ。ほら、ポンドが前にここに
来た時に助けた奴がアニンナの奴だから。
だからお礼を言いにも兼ねて来るって」
「それででしたか。来られる方の中で
私に会いたいと言っておられる方がいる
ので会ってほしいと言われたのは」
「君が名指しで呼ばれていたのは
それが理由か」
「なるほどな」
チイトの言葉にポンドは納得し、
ジークスと篝は頷いた。
「でも、マルトマルシェにいる奴が
パパに会いに来る確率は50%だけどね」
「なんでだ? お前の言う通りのファザコン
なら飛んできそうな勢いだが?」
「あいつらはパパを迎えるために
念入りに準備するタイプだからな。
自分が納得いくまでやるタイプでも
あるから、あいつらが納得していな
かったら会いに来ない」
「こだわりがあるタイプなのだな……」
篝の疑問にチイトは答え、ジークスは
なるほどと頷いた。
「だから確率は50%だ。ドラケネス
からはヴィーメランス、プリグムジカ
からはエンウィディアが来るよ。
あの2人ならあいつに会っても問題ない
から」
「ヴィーメランスとエンウィディアが
来るんだな! エンウィディアには授業を
つけてもらう予定みたいだから、会うの
はわかってたけど」
「ヴィーメランス殿も来られるの
ですかな! でしたら、武器について
直接お伺いしたいことがありましたから
会うのが楽しみですな!」
また会えると嬉しそうな2人に対し、
ジークスは顎に手をやり考える。
「……イクトに危害がないよう、さらに
気を引き締めなければならないな」
「どうして……あっ、そうか」
そうだなと篝は納得して続ける。
「チイトだけでも骨が折れそうなのは
確実なのが、フェイルート、レイヴン、
ヴィーメランス、エンウィディアと
さらに4人の相手をしないといけなく
なったからか」
「今まで以上に彼の安全を最優先で
動くぞ。彼になにかあれば被害が甚大に
なり、イクトの心が傷つく可能性も
あるかるな」
「言われるまでもねえよ」
ジークスの言葉に篝は即答した。
「……ところで、チイトは"あいつら"
と言っていたが、マルトマルシェに
いるのは1人じゃないみたいだな」
「たしかに。彼はそう言っていたな」
複数いるんだなと2人はそれぞれ
呟いていた。
ここまで読んでいただき
ありがとうございました!
面白い、続きが気になると
思っていただけましたら
ブックマーク、評価
よろしくお願いします!
ーーーーーーーー
「そういえば、アニンナの人はフェイルート
に会っても大丈夫なんだな」
郁人の言葉にチイトが答える。
「会いに来る奴は太夫のタカオに惚れ込んで
るから問題ないんだって。何度も身請けを
したいってタカオに言ってるけど断られて
るそうだよ」
「………そこまで惚れ込まれているタカオ
さん本当にすごいな」
「ちなみに、惚れ込んでる奴は王弟、
アニンナの女王の弟で外務大臣らしいよ」
「………タカオさん、本当にとんでもない人
に惚れ込まれているんだな」
郁人はタカオのすごさを改めて実感
した。




