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プリグムジカの記念日

海の日があったので思い浮かんだ小話に

なります!




   郁人がこの世界に来る前の出来事……


   プリグムジカには海神に祈りと感謝を

   込めて音楽を捧げる日があり、国を

   挙げて祝い、祭りが行われる。


   「シーミュセドを祝して!

   海神様に感謝を込めて!」

   「マリンリーガルズ様! 今年もこの日を

   迎えれたことに感謝します!」

   「旅の方々、どうぞシーミュセドを

   楽しんでね!」

   「シーミュセド限定ランチは

   いかがですかー!」 

  

   その日は"シーミュセド"と呼ばれ、

   プリグムジカはとても賑わっている。

   明るい表情の旅行者も多いが、

   現地の人々も負けずに笑顔を咲かせて

   いる。


   「今回のシーミュセド音楽祭には

   エンウィディア様が出演されるそうよ!」

   「絶対に聞かないといけないわ!」

   「あの方も祭りに参加されているの

   だろうか?」

   「探しに行こうかしら?」


   人々から噂されているエンウィディアは

   プリグムジカの人里離れたところ、昔の

   プリグムジカを感じられる遺跡にてアマ

   ポセドと共にいた。


   「ここ僕のお気に入りの場所の1つだよ!

   昔この一帯は海神を崇拝する子達の住居

   だったんだ。とくにあそこの崩れ落ちた

   屋根のある場所にさ、良い楽器を作る

   家族がいたんだよ。しかもその家族は

   奏でるのも上手かったからね! それを

   こっそり聞くのが好きだったんだあ」

   

   法則に従って設置された石の上に

   腰かけ、アマポセドはヘラっと笑う。

   そんなアマポセドにエンウィディアは

   どうでもいいと言いたげな視線を向け

   る。


   「そうかよ。じゃあな」

   「待って待って! ここなら人なんて

   滅多に来ないから演奏まで人を避ける

   のにピッタリだから! ここでゆっくり

   しない? 今戻ってもファンの子達に

   見つかる可能性だってあるから」

   「…………………」


   ね? と首を傾げながら告げた

   アマポセドの言葉に思うところが

   あったエンウィディアは舌打ちした

   あと、向かいの石に腰かけた。

   その姿を見てアマポセドはヘラっと

   嬉しそうに笑う。


   「じゃあ、ご飯でも食べます?

   僕、ここで食べれるように持って

   来たんで」

   「…………………」


   アマポセドは空間からバスケットを

   取り出したが、エンウィディアは

   見向きもしない。屋根の崩れた場所

   をじっと見て尋ねる。


   「……………テメェがさっき言ってた

   家族が作ってたのは竪琴か?」

   「? そうですけど?」


   エンウィディアはズンズンと

   屋根の崩れた場所に行くと、

   瓦礫の山に手を突っ込んだ。

   

   「旦那様?!」

   「…………あった」  


   手を痛めますよ?! と顔を青ざめる

   アマポセドにエンウィディアは

   掴んだものを見せる。


   「わあ!! 竪琴じゃん!! しかもあの

   家族が作ったの!」

   「少し傷んでいるが……ここを

   こうすりゃいけるな。

   おい、ここを直せ」

   「うぜえ!」


   じつはついてきていたメパーンが

   やって来て指示通りに直した。


   「よくやった。あいつから飯でも

   もらっとけ」

   「うぜえ!」


   メパーンはエンウィディアの言葉に

   手をビシッと額にあてるとアマポセド 

   にご飯を催促しに行く。


   「えー旦那様とデートと思って

   2人分しか……まあ、多めに作ってる

   からいいか」

   「うぜえ!」


   アマポセドはちぇーと唇を尖らし

   ながらもサンドイッチをメパーンに

   あげた。メパーンはもりもりと

   頬張っている。

   それを他所にエンウィディアは

   竪琴を軽く鳴らす。


   「これを奏でりゃいいのか」

   「旦那様、誰と話して……」


   まるで誰かと話しているエンウィディアに

   アマポセドははてなマークを浮かべながら

   尋ねた瞬間、演奏が始まる。


   〜♪〜〜♪♪


   それは海中を漂うクラゲのように

   優美ながらもどこか懐かしい音色。


   「これは……?!」


   その音色に聞き覚えのあったアマポセド

   は目を見開いた。メパーンは目を閉じて

   聞き入っている。

  

   しばらくして演奏を終えたエンウィディア

   は竪琴を屋根の上に置く。


   「どうだ? 満足したか?

   ………満足したから消えたか?」

   「ねえ! 旦那様!! さっきの音楽は

   僕が昔聞いていたあの家族の音色

   なんだけどなんで知ってるの?!」


   屋根を見るエンウィディアに

   アマポセドは驚きながらも

   足早に向かって尋ねた。


   「僕、あの家族が楽譜残してないか

   探しても見つからなかったのに!」

   「なんだ見えてなかったのか?

   テメェがここに案内したときから

   声が聞こえてたんだよ。

   テメェにさっきの音をこの竪琴で

   演奏してくれってな」


   エンウィディアは竪琴を掲げながら

   続ける。


   「テメェが昔に聞いてたのも知って

   たとよ。で、テメェにこの自信作の

   竪琴の音色を聞かせたかったそうだ。

   俺に弾いてほしいと何度もうるせえ

   から弾いてやったら成仏したのか

   消えた」

   「………知ってたんだね、あの子達」


   恥ずかしいなあと頭をかきながらも

   アマポセドの目はとても優しい色を

   のせている。


   「この竪琴にテメェへの言葉が

   刻まれてる」

   「え?」


   エンウィディアはアマポセドに

   竪琴を渡す。受け取ったアマポセド

   は竪琴を間近で見る。 


   「…………君達の家族は前の僕を

   本当に慕ってくれていたんだね」


   竪琴に刻まれているのは

   "私達に恵みと平和を施してくださる

   海神様に感謝と敬愛を込めて"

   と書かれていた。


   「僕に姿を見せてくれてもよくない?

   それとも僕の力が弱まったのかな?

   シーミュセドだから、感謝パワーで

   先代にも力が少しくるんだけどなあ」

   「テメェに姿を見せるのは恐れおおい

   って言ってたぞ。ほら、あと楽譜だ」


   エンウィディアは先程弾いた音色を

   メパーンが持ってきていた楽譜に

   書くと手渡す。


   「タイトルは"恵みと平和に敬愛を"

   だそうだ。テメェのための曲だとよ」

   「………あの子達は神官の家系の子でも

   あったからね。本当にいつも神殿に

   来ては感謝してくれてたよ」


   アマポセドは目を潤ませながら

   大切そうに楽譜を抱えた。


   「ありがとう、旦那様。

   あの子達の願いを聞いてくれて」

   「うるせえからやっただけだ。

   他にも楽器か楽譜が埋もれてる

   可能性があるから探す」

   「ちょっ!? 待ってよ旦那様!!」

   

   探しに行くエンウィディアを

   アマポセドはあわてて追いかける。


   その背中に頭を下げて(ひざまず)く透明な姿

   があったのを2人は知らない。


   「うぜえ!」


   メパーンだけがそれを見て前足を

   振っていた。

   

   

       

ここまで読んでいただき

ありがとうございました!

面白い、続きが気になると

思っていただけましたら

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