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304話 2つの貰い物




   露天風呂にて郁人はのんびりとしている。


   「やっぱり大きいお風呂はいいよなあ。

   ゆったり浸かれるし、空を眺めれるのも

   いい……!」

   「お前は昔から風呂が好きだな。

   俺の家の風呂を初めて見たとき、

   かなりはしゃいでいたからな」  


   郁人は満足げに鼻歌を歌い、その姿に

   篝は相変わらずだと呟いた。


   「パパ! あそこ蛍いるよ!」

   「本当だ!」

   「前は見れなかったが、風呂場の

   敷地が広くなり、中庭に川ができた

   ことにより見れるようになったと

   そういえば書いてあったな」


   チイトは郁人の肩をポンッと叩き、

   ジークスは蛍を見て思い出した。

   郁人は蛍に目を輝かせる。


   「ここでも見れるなんて贅沢だなあ!

   本当に綺麗だ!」

   「道中でしか見れない光景でしたから。

   ここでも見れるとは思いもしませんでし

   たな」


   蛍を見て目をキラキラさせる郁人に

   ポンドは頼まれていた物を2つ渡す。


   「マスター、こちらが御二方から渡す

   ように頼まれていた品になります」

   「ありがとう、ポンド」


   郁人は受け取ると、濡らさないように 

   風呂の縁に置き、1つ目の袋から取り出す。


   「あっ! シャンプーとリンスだ!」

   「そちらはキュラス殿からですな。

   マスターの髪質に合いそうだとのことで

   "試してみるといい"とおっしゃっており

   ました」

   「そうなんだ! あとでお礼も言わないと 

   な。ユー? どうしたんだ?」

   

   試さないととシャンプーとリンスを

   見ているとユーがもう1つの袋をじっと

   見ていることに気付いた。


   「そちらはマスターの美を向上させる

   のにも役立つ代物だと聞いていたの

   ですが……」

   「じいじから貰った袋をなんでそんな

   に見るんだ?」


   郁人は不思議に思いながらもう1つの

   袋を開ける。


   「………これは? 中には……ラメが入って

   るのかな?」


   手の平サイズのガラス瓶が入っていた。

   振るとサラサラも中のラメが揺れている。

   ユーがそれを見てなにやら呆れている。


   「ユー? なんでそんな呆れてるんだ?」

   「あ〜……あの孫馬鹿とんでもないの

   渡したからだね」


   チイトも見てため息を吐きながら説明

   する。


   「これ"フェアリーダスト"っていう

   激レアアイテムだよ。ちょっと借りる

   ね」

   「うん。どうぞ」


   郁人から受け取ったチイトはガラス瓶

   の蓋を開けて1回だけ振り、手の平に

   出すと郁人の頭を優しく撫でた。


   「うおっ?!」

   「すごいなこれはっ?!」

   「とんでもない物を渡しましたな、

   あの者は……」


   篝、ジークス、ポンドは口をポカンと

   開けた。


   「えっ? どうしてそんな反応してる

   んだ?」

   「はい、鏡を見てみて」

   「うん……って、うわあ?!」


   チイトがユーから受け取った鏡を

   見て、郁人は声をあげてしまう。

   なぜなら……

  

   「俺の髪がすごいキラキラしてる?!

   手触りもすごい艷やかなんだけど!?」

  

   先程の自分の髪とは思えないほどに

   綺麗になっているからだ。


   「なんで!? さっきのフェアリー

   なんとかってのが原因なのか!?」

   「そうだよ。フェアリーダスト。

   別名"願いの粉"っていう、使うときに

   願いを込めると願いが叶う代物だよ。

   俺が願ったのはパパの髪がもっと綺麗

   になりますようにって内容だから

   パパの髪が綺麗になったんだよ」

   「願いの粉っ!?」

   「あの幻の代物かっ!? あるかもどうかの

   不明と言われている!?」

   「………妖精王だからこそ用意できた

   代物ですな」


   チイトの言葉に篝とジークスは 

   目を丸くしながらガラス瓶を見つめ、

   ポンドは苦笑した。


   「まあ、願いが叶うって言っても

   限度があるけどね。不老不死とか

   そんなのは無理だよ。一定時間だけ

   叶うだけだから。出来るのは空を

   飛んだり、土を黄金に変えたりとか

   かな?」

   「わあ……空を飛んだり、黄金も

   作れるんだ……これ……」


   聞いた郁人はガラス瓶を持つ手が

   震えてしまう。


   「そうだよ。まあ、あるのがわかったら

   欲しがる輩は無限にいるし、奪おうと

   する輩に命を狙われかねない代物なん

   だけど……俺がそばにいるから渡しても

   大丈夫と判断したんじゃないかな?

   そんな簡単に渡す代物でもないから

   ユーは呆れちゃったんだろうね。

   どれだけ浮かれてるんだって」


   初孫に浮かれすぎだよねと

   チイトは眉を下げて苦笑した。

   郁人はとんでもない代物に顔を

   青くしながら呟く。


   「…………持ってるの怖いからどこかに

   隠すのあり?」

   「使わないと気に入らなかったのかな? 

   ってまたえぐいのプレゼントされる

   可能性もあるけど」

   「……………どう使えばいいの?

   これ……?」   


   郁人は意識が遠くなりそうになる

   のをなんとか耐えた。

  

   「あれを売れば一生お金にも困りま

   せんし、悪用しようと思えば堕ちて

   しまい、身を滅ぼす"善悪の天秤"や

   善人しか持てない"聖人の象徴"とも

   言われる代物なのですがマスター

   はとことん善なのですな」

   「だからこそ彼に渡したのだろうな。

   イクトは絶対に悪用しないと確信して   

   いるから」

   「あいつが悪に堕ちるとか……

   天地がひっくり返っても起こらねえ

   ことだろ」


   そんな途方に暮れている郁人を

   見ながらそれぞれ呟いていた。

      

   

   

ここまで読んでいただき

ありがとうございました!

面白い、続きが気になると

思っていただけましたら

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