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301話 不老若酒




   満月うさぎ達が持ってきたのは

   大きな壺だ。その壺はどこか目を

   惹かれる雰囲気がある。


   「不老若酒?」


   郁人が聞き慣れない単語に首をかしげる

   なか、ナランキュラス達は目を見開いて

   いる。


   「不老若酒だとっ?!」

   「あらまあ……!」

   「えぇ?! あのお酒?!」

   「マジ?!」


   本を読んでいたユーも本を閉じて

   不老若酒をじっと見ている。


   (それほどびっくりするものなのだろう

   けど……不老若酒って?)

   〔不老若酒は飲んだらたちまち肌が

   若返ったり、髪の艶がさらに良くなったり、

   老化で弱くなった体がたちまち元気に

   なるっていわれてるスゴいお酒よ!!

   たしかに満月うさぎしか作れないって

   言われてるけど、実在してたのね?!〕

   (そんなスゴいお酒だったの?!)


   ライコの説明に郁人は口をぽかんと

   開けてしまう。


   「? お前は驚か……いや、驚きすぎて

   声が出なかっただけか」


   郁人の様子を不思議に思っていた

   ナランキュラスだが、そう解釈して

   口を開く。


   「その、不老若酒はフェイルート様への

   贈り物では?」

   「恩人さまへはもうお渡ししておりますよ。

   これは皆さまへのお酒になります。

   ナランキュラスさんやタカオさん、

   シーラさんにモゼさんにはいつも

   お世話になってますから。恩義は

   ちゃんと返さないといけませんからね」


   満月うさぎはそう言って胸を張った。

   だが、郁人はきょとんとしながら尋ねる。


   「あの……俺はなにもしてないけど」

   「大切な御方はわたし達を守ってくださって

   いる秋の妖精王さまの加護をもらっておりま

   すし、恩人さまの大切な御方ですから!

   遠慮せずにお飲みください! それに……」

   「それに?」

   「大切な御方は神々の生き血を好んで

   お呑みになっておられるとか?

   しかも、先程先代さまからお伺いしま

   したが1人で1本、2本は開けるほどに

   好まれていると!!」


   満月うさぎはユーを見たあと、

   再び郁人を見る。


   「わたし達だって負けてられません!!

   わたし達だって美味しいお酒を造れる

   のですから! さあ! お呑みくださいませ!!」


   満月うさぎはお猪口を取り出すと、

   不老若酒を注いで郁人に手渡した。


   〔対抗意識がすごいわね……〕

   「……あんた、あのお酒を1人で空けた

   のか?!」

   「噂は聞いとったけど、ホンマやったん

   やねえ……」

   「イクトさんスゴーイ!!」

   「あれを呑めるとか……人間じゃないよ」


   ライコは満月うさぎの様子を見て呟き、

   ナランキュラスは郁人が1人で開けれる

   ことを知って顔を青ざめる、タカオと

   モゼは目を見開き、シーラは引いている。


   「さあさあ! わたし達のお酒は体にも

   良いので恩人さまからも呑んでもらっても

   大丈夫だと太鼓判を押してもらってます

   ので!!」

   「えっと、ありがとう。いただくね」


   満月うさぎ達の圧に押されながらも

   郁人は不老若酒に口をつける。


   「………とっても美味しい!!」

   〔あたしも共有させてもらったけど、

   本当に美味しいわ! 口当たりも良くて、

   のどごしもスッキリしてるもの!

   味も程よい酸味があってこれなら

   効果が無くても、欲しくなる味ね!!〕


   郁人はあまりの美味しさに目を輝かせ、

   ライコも熱弁してしまうほどに不老若酒

   は美味しいのだ。


   「さあさあ! 皆さまも!!」 

   「感謝する」

   「おおきに」

   「ありがとっ!」

   「ありがとねえ」


   満面うさぎはナランキュラス達の猪口

   にも不老若酒を注いで渡す。

   ナランキュラス達は礼を告げると

   酒を口にする。


   「うん……!! 美味い!!」

   「本当に美味しいわあ」

   「うん! フルーツ系統っていうのかな?

   そんな感じがして飲みやすくて美味しい!!」 

   「これは効果とかなくても、飲みたく

   なるよ」


   ナランキュラス、タカオ、モゼ、

   シーラも煽ると、美味しさに笑顔の

   花を咲かせた。

   そんな様子を見て満足げな満月うさぎは

   胸を張る。


   「アルコール度数は低いので、大切な

   御方の表情筋を動かすには難しいですが

   味や体調面に関しては自信がありますよ!

   恩人さまから定期的に呑んでもらえる

   ように許可もいただいておりますので!」

   「え? これからも貰ってもいいの?」

   「はい! 秋の妖精王さまからも許可を

   いただいておりますので!」


   ご安心を! と満足うさぎは告げた。

   そんな満月うさぎにナランキュラス

   は尋ねる。


   「俺達が呑むのも許可を得ているのか?」

   「もちろんです! わたし達がこちらへ

   来た際にお世話になっていることを

   お話して、ちゃんと許可を得ています

   ので!」

   「それはよかった。許可を得ていない

   ものが呑めば秋の妖精王の怒りを買う

   と聞いたことがあるからな」


   聞いたナランキュラスは胸を撫で下ろす。

   モゼは不老若酒を煽りながら、満面の

   笑みを浮かべる。


   「秋の妖精王は人嫌いでとっても

   怖いって聞いたことがあるからね〜。

   でもでも、こんなに美味しいお酒を

   本当にありがとう! 博士お姉ちゃんに

   自慢しちゃおっと!」

   「その博士お姉ちゃんってたしか

   妖精を調べてるすごい人じゃなかった?」

   「聞いたら羨ましゅうて血涙ながし

   そうやわあ……。イクトはんも

   会ったら気をつけないあかんねえ」

   「気をつける……?」

 

   タカオの言葉に首をかしげると

   理由を説明する。   


   「マルトマルシェで妖精に関して

   調べてはる研究者さんなんやけど、

   調べたきっかけが妖精に会いたいって

   理由からなんよ」

   「この店に来だした理由も満月うさぎ

   がここに来るってどこからか聞いたから

   だったしね。あの目はヤバかったし」

   「妖精の庇護下にある者がいると

   知れば……とてつもないな」


   シーラとナランキュラスは当時を

   思い出したのか遠い目をする。


   「イクト、もし変装時に長身で赤髪の

   女性に声をかけられたら女将に助けを

   求めろ。近くに俺や他の従業員が

   いれば助けられるが、いなかったら

   すぐに呼ぶんだ、いいな?」

   「博士お姉ちゃんの妖精に対する

   思いは半端ないからねー!」

   「あれで今までよく妖精の逆鱗に

   触れなかったのか気になるくらいだし」

   「ナランキュラスはんの言う通りやね。

   イクトはん、もし会ったら……いえ、

   見かけたらすぐに逃げるか、助けを求め

   るんよ。ええね?」

   「はっ……はい」

   〔その博士お姉ちゃんって、こんなに

   注意されるとかどれだけなのよ〕 


   全員からの忠告に郁人は驚きながらも

   頷いた。


   「あっ!」  

   

   そんななか、満月うさぎは思い出し、

   あわてて告げる。


   「思い出しました! レイヴンさまから

   不老若酒についてこのように言われて

   おりました!」


   満月うさぎは咳払いするとレイヴン 

   の真似をしながら話す。


   「……ごほん! “これからぬし様は

   あの囮捜査時のように周囲に蝶の夢の

   トップ太夫であることを再度認識して

   もらう必要があるんでな。きっちり

   稽古は当然のこと、お祭り時には若色の

   奴と街を歩いたり、祭りの舞台では歌を

   披露してもらうからプリグムジカから

   あいつが来て更に稽古は過酷になるぜ。

   だから、満月うさぎ達には不老若酒で

   体力回復してもらわねえといけねえから

   定期的に頼むわ”とお言付けをいただいて

   ますので!」

   〔……やっぱり来るのね。俺様人魚〕

   「………………蝶の夢の稽古にエンウィディア

   のレッスンが追加されるの?」


   地獄のレッスンを思い出した郁人は

   顔を青ざめた。


   「顔が真っ青になってるぞ?!」

   「イクトはんなら大丈夫。捜査のときの

   稽古は体が覚えてる可能性やってあるから

   前よりは楽になると思うよ」

   「そうそう! 長い間帰省していた私でも

   体が覚えてたから!」

   「いや? これはプリグムジカの稽古を

   思い出して顔を青ざめてるんじゃない?

   あーしらも稽古つけてもらえるっぽい

   けど結構ハード系? なら、覚悟決めて

   かないといけないかな」


   励ますタカオやモゼを横目にシーラは

   どのような稽古か想像しながら不老若酒

   を煽った。




ここまで読んでいただき

ありがとうございました!

面白い、続きが気になると

思っていただけましたら

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ストックが尽きてきたので、投稿頻度が

下がる可能性があります。

ストックが貯まれば投稿頻度は戻りますので

温かい目で見守っていただければ

とても嬉しいです!

小話などは思いつき次第、投稿します!


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