297話 後ろで対策を練る2人
衣装合わせを無事(?)に終えた郁人は
ライラック達と用意された部屋にて
お茶している。
「まあ! とってもかわいいわ!
イクトちゃんが女の子だったら
こんな感じなのね!」
「ママは変装しなくても綺麗だね!」
郁人の隣に座るライラックは
薔薇色に頬を染めながらかわいい!
と郁人の頭を撫で、デルフィは
目を輝かせている。
「髪もとてもサラサラだわ!
三つ編みとかしてもいいかしら?」
「うん。大丈夫」
「ありがとう! 長いから結び甲斐が
あるわ!」
「じゃあ、髪飾りはコレを使って!」
デルフィはどこからかミモザの
髪飾りを取り出して、ライラックに
手渡す。
「あら! とても可愛い髪飾りね!」
「俺の手作りなんだ! ばあちゃんのも
あるよ!」
「私の分もあるの?」
「うん! ばあちゃんにも似合うと
思って作ったんだ! 付けたいから
ばあちゃんの髪を三つ編みしていい?」
「もちろんよ。お願いするわ」
デルフィはライラックの後ろに回ると
魔法で三つ編みをし始めた。
「デルフィ殿もいつの間にか魔法で
三つ編みするというコントロール力が
問われることが出来るようになった
のですな!」
部屋の後方で見ていたポンドはすごいと
拍手し、ライコも同意する。
〔黒鎧の言う通り、魔法で三つ編みに
するのは高度なコントロール力が
問われるものよ! 斬るならまだしも
髪を風で優しく掴んでそれを三つ編み
にするのは大変なんだから!〕
「デルフィはすごいことをしてるのね!」
「俺もシトロンに教えてもらって
頑張ってるからね! ママは変装したとき
は口調変えてるけど、今も変えてるの?」
「えぇ。仕事のときに素の口調にならない
ように心がけたほうがいいって教えて
もらったの」
「そっか! ママは努力家だね!」
「そういうデルフィも努力家よ。
本当にえらいわ!」
「えへへ!」
デルフィは褒めてもらったと自慢げだ。
そして、ふとが気になったのか尋ねる。
「なんでジークスとカガリはチイトと
先代に怒られてるの?」
「えっと〜……」
「イクトちゃんの女の子姿に慣れて
ないからよ」
郁人は頬をかき、ライラックは苦笑し
ながら答えた。
「いい加減にしろ、貴様ら」
ポンドの隣でジークスと篝は正座し、
その正面に腕を組むチイトと肩で
ユーが尻尾を逆立てていた。
「これからパパはあの姿になることが多い
からな。これを期に完全に慣れろ。仕事の
度に抑えるのは面倒だ」
「手間をかけてすまない……」
「おい、俺は孤高みたいに暴れたり
しねえから問題ねえだろ!」
申し訳なさそうなジークスの隣で
不満そうな篝にチイトは指をさす。
「貴様は目が完全にあれだからな。
貴様のパパへの執着心は知る者が
見ればすぐわかるぞ。それがきっかけ
でバレたらどうする?」
「たしかに、君の普段の彼を見る目と
今の目は一緒だからな。もし私があの姿が
イクトだと知らなくても君の目を見たら
勘付きそうだ」
「……そこまでわかりやすいか?
まずどう隠せと?」
チイトに指摘され、ジークスにも
頷かれた篝は頭を抱えた。
聞こえた郁人は目をパチクリさせる。
「え? 私、どういう目で見られてるの?
私にはわからないのだけど……」
「そこまで気にしなくても大丈夫よ。
なにかあれば私が動くから。
ほら、三つ編み出来たわよ」
「ありがとう!」
「ばあちゃんの拳が唸るんだね!
カッコイイ! 俺も出来たよ!」
「ありがとう! 上手に出来てるわ!」
郁人に大丈夫よとライラックは
微笑みながら三つ編みを完成させ、
デルフィも目を輝かせながら告げた。
ライラックの言葉にジークスは
ポツリと告げる。
「……女将さんの拳はとても重いぞ。
私でさえ意識を持っていかれるか
どうかの威力だからな。カガリは
頑張って隠したほうがいい」
「………竜人のあんたが意識を奪われ
かける威力はえげつないな、それは。
……隠し方を本気で考えないとな」
竜人の耐久力にも通用するライラックの
拳の威力に篝は顔を引き攣らせた。
それを見てチイトはライラックに
声を掛ける。
「女将、もしこのジジイが暴れたら
手を貸せ。俺がそばにいれないときが
あるかもしれないからな」
「いいわよ。気を失わせればいいのね。
問題ないわ」
「………私も他人事じゃなくなったな。
あの拳をもう一度くらいたくはない。
君がどうやってイクトのあの姿に
耐えれたのか教えてくれないか?」
「いいぞ。お前も隠し方を一緒に
考えてくれたらな」
「わかった。俺も一緒に考えよう」
他人事ではなくなったジークスは
篝に尋ね、篝も了承した。
そして2人は話し合いを始める。
「ユー、こいつらを見張っておけ。
ポンドも頼むぞ」
「かしこまりました」
チイトはそれを見て離れていいと
判断し、ユーとポンドに指示した。
ユーとポンドは頷き、見張りにはいる。
「パパは三つ編みも似合うね。
そういえば、あの変態ヒョウから
アドバイス貰ったんだよね?」
「うん。こちらでどう思われているか
把握しておいたほうがいいって。
ほら、サフュランさんからコンタット
が来てるもの」
郁人はコンタットをチイトに見せる。
コンタットには怪我はないから気にするな
との言葉と共にどう思われているかの
内容がきちんと書かれていた。
「へえ、意外ときちんと報告するんだ。
てっきりセクハラを混じりかと思って
警戒してたんだけど」
「サフュランさん仕事はきちんと
するタイプだと思うわ」
「じゃあ、俺も情報を集めたから
まとめよっか」
チイトが指を鳴らすとスクリーンが
現れ、そこには情報がまとめられていた。
「えっと"触れれば溶けてしまいそうな
雪のように儚げな見た目に反して、仲間を
守るためなら体を張る熱い心の持ち主。
病院を癒やすために蝶の夢に在職し、
なかなか出会えないがその姿をもう1度
見ようとする者はあとを絶たない"
"親衛隊も存在し、陰ながら応援している"
"病床についていながらも、まだ動ける
ときは勉強している努力家"
"亡国の姫君でレイヴン様に助けられ
ここで過ごしている"
"なかなか出会えないのは女神で
あるから"
"会えれば幸せになると謂われている"
いろいろ言われているのね……
本当に……」
〔途中からおかしなものになってる
わね……〕
郁人は思わず頬を引き攣らせ、
ライコも同情した。
「他にもいろいろあるよ。
それくらいパパの姿は注目されて
いるってことだけど」
「そんなに注目浴びてるのね……。
胃が痛くなりそう……」
郁人は緊張などでお腹をさすった。
チイトは心配そうに眉を下げる。
「これからもっと注目を浴びることに
なるよ。だって、あいつが身辺保護
みたいなことをすることになったから」
「身辺保護?」
「どういうことかしら?」
「それは儂が説明しようかっ!!」
首をかしげる郁人とライラック。
そこへ聞き覚えのある声と共に
襖が勢いよく開いた。
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