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296話 綺麗なクリティカルヒットだったと後に語る




   衣装に着替えた郁人は思いのほか似合った

   のでテンションが高い。


   「やった! 今までこういった系統の

   着たことがなかったから本当は少し

   心配だったんだけど……えっと、

   似合ってるよな?」

   〔うん! バッチリ似合ってるわ!

   デザインもなかなか良いじゃない!

   ジャケットやパンツがかっちり

   してる分、シャツがフリルだから

   雰囲気が固すぎなくてちょうどいい

   塩梅になってるもの! ジャケットの

   内側が和柄で蝶の夢をイメージして

   いるのね! メイクもいつもより大人っぽい

   感じだから似合ってるわ! ロングブーツも

   決まってるわよ!〕

   (ありがとう! ライコ!)


   ライコに褒められ、着替えを手伝って

   くれた蔦も似合っているともう1本

   蔦を出して拍手する。


   「手伝ってくれてありがとうございます!

   おかげで綺麗に着れることができました!」   

   〔あっ……でもあまり動きすぎないほうが

   いいわよ。……危ないから、本当に〕

   (? わかった。気をつけるよ)


   ライコの歯に挟まったような言い方に

   首をかしげながらも郁人は了承した。


   「ユーおまたせ! どう? 似合っている

   かな?」


   襖を開けて、待ってくれていたユーに

   声をかけた。ユーは似合っていると尻尾で

   グッドサインを決める。


   「ありがと、ユー!

   サフュランさんは着替え終わって

   るかな?」


   郁人はライコに言われたので、本当は

   早く行きたいがゆっくり歩く。


   「サフュランさんも着物似合いそう

   だもんな。どんな風に着こなしてる

   んだろ? チイト達も着れたらよかった

   のに。チイト達も着たら一緒に撮影とか

   したかったな」

   〔それ、本人達に言ってあげたら?

   絶対に喜ぶから〕


   ライコと話しながら歩いていると、

   話し合っていた部屋に着いた。

   郁人は声かけしてから襖を開ける。


   「失礼します! 着替え終わったので

   戻ってきました!」

   「あぁ。こちらも今しがた着替え

   終わった……」

   「すごい! とても似合ってますよ!!」


   〔もとが良いのがわかるわね。

   着物をきちんと着こなしているし、

   あたしの目から見てもとても良いわね!〕


   2人がはしゃぐのも無理はない。

   サフュランの着こなしはそれは完璧で

   あったからだ。


   白のハンチングには若色をイメージした

   紋のブローチがアクセントに付けられ、

   白い羽織りを着て、よく見ると柄が

   書いてある黒い着物を着こなす姿は

   とても粋である。ブーツも着物の雰囲気

   とマッチしており、サフュランは見事に

   全ての素材の魅力を引き出し、かつ自身

   の魅力も魅せている。


   「大人の魅力ってものを感じられますね!

   私では着こなせそうにないのでとても 

   うらやましいです!」

   「ありがとう、君もとても似合っている

   が……今回、君は着物のほうが良い

   だろう」

 

   サフュランは告げると蔦に伝える。


   「今回、両方着物コーデでいく。

   旦那とフェイルートさんとレイヴンさん

   にお伝えしておいてほしい」

   「えっ!? 似合って……ません

   でしたか……?」


   着こなしていると自負していた 

   郁人は肩を落とす。


   「いや、とても似合っている。

   個人的にはそれがいい。だが、

   今回は街を歩くにあたってのことを

   考えると着物がいいだろう」

   〔……そうね。あたしもそう思うわ〕

   (ライコとユーまで!?)


   ライコに着物がいいと言われ、ユーにも

   サフュランの言葉に頷いていて郁人は

   驚く。


   「あの、普段と違ったほうがいいのでは

   ないでしょうか?」

   「あぁ。たしかに普段と違った姿を

   見られるのはいいことだろう。

   君は特別なときにしか現れない、

   病弱ながらも店のためにと体を張って

   醜悪な犯人から蝶の夢を守った気高き人

   とも呼ばれているから注目度は凄まじい

   ものだろうからな」

   「えっ?! そんな風に思われてたん

   ですか?!」


   郁人は目を見開き、サフュランは頷く。


   「そうだぞ。だから祭りの際には君が

   現れるんじゃないかと見に来る者は多い。

   君の親衛隊まであるからな」

   「うそっ?!」

   〔あの1回だけの登場なのにすごいわね!!〕


   サフュランの言葉に郁人とライコは

   声を上げた。


   「知らなかったのか? まあ、知らない

   のも無理はないだろう。自分達の存在が

   君を緊張させ、体調悪化の要因になる

   のでは? と心配して隠れているらしい

   からな」

   「そうだったんですね……」

   〔一度、変装したときのあんたがどう思われ

   ているか把握する時間が必要ね。じゃないと

   あんただとバレる可能性が出るかもしれない

   もの〕

   (そうだな。あとで把握する時間を設けない

   とな)


   郁人はライコの提案に頷くと、サフュランに

   告げる。


   「私自身がどう思われているのか把握して

   いませんでしたので、あとで調べてみます」

   「そのほうがいいだろう。あとで君のコンタ

   ットに俺の知る限りのことも送っておこう」

   「ありがとうございます」


   サフュランの言葉に郁人は礼を告げた。

   ライコはいつの間にと尋ねる。


   〔あんたいつの間にこいつと連絡先を

   交換してたのよ〕

   (初めて会ったときにいつの間にかポケット

   に連絡先の書いてあるメモが入ってた)


   郁人がライコの質問に答えていると

   サフュランが口を開く。


   「君が変装時の君自身を把握していない

   ことが事前にわかったのはいいことだ。

   衣装合わせも前もってしていて正解だった。

   でないと、本番時に大変なことになった

   だろう」

   「大変って?」

   「……君には悲鳴が聞こえてないのか?」


   首をかしげる郁人にサフュランは

   片眉を上げた。


   「悲鳴??」

   〔……あ~、成る程ね。うん、あたしから

   言ったほうがいいわね。そいつなりにだけど

   かなり気を遣ってるから。だからあたしから

   言うわね〕

   (なんだ?)


   ライコは口を開く。


   〔今すぐシャツのボタンを開けなさい。

   じゃないと、弾け飛ぶわよ〕

   「へ? ……わあああああっ!?」

   「がっ?!」


   郁人が叫んでしまうのも無理はない。

   なぜなら、自身のシャツを見た瞬間、

   ボタンが弾け飛んでサフュランに

   命中してしまったからだ。

   眉間に思い切り命中し、倒れる

   サフュランに郁人は駆け寄る。


   「サフュランさん?!

   大丈夫で……ごめんなさいいい!!!」

   〔……そんな勢い良く飛ぶのね、

   ボタンって〕


   倒れるサフュランを心配し、

   しゃがんだ瞬間にまたボタンが

   弾け飛んでまたサフュランに命中した。


   「…………凄まじいスピードだ。この俺でも

   反応できなかったからな。それを武器にする

   のもありかも……しれない……な」

   「本当にごめんなさい……!!!

   サフュランさんっ!!」


   サフュランは親指を立てたあと、

   ガクリと気を失った。

   ユーはあまりに見事な追撃だったので

   感心したのか拍手している。


   〔綺麗に入ったものね、ボタン。

   クリティカルヒットしてたわよ〕

   「本当にごめんなさいいい!!!」

   「パパどうしたの?!」

   「なにかありましたかな?!」

   「イクト大丈夫か!?」

   「そんなに叫んでなにがあった?!」

   「我が君、どうされましたか?」

   「なにがあったんです?」


   チイト、ポンド、ジークス、篝、

   フェイルート、レイヴンがなにが

   あったとやって来た。

   1番最初に動いたのはチイトだった。


   「……………パパ、着物にしようね」

   「うん……」

   「がっ?!」

   「うぐっ!?」


   ユーがジークスと篝を眠らせたあと、

   チイトがどこからかストールを取り出し、

   郁人の肩にかける。


   「……ボタン、ありましたな」

   「あとで修復しておきましょう。

   ですので、気にしなくても大丈夫ですよ」


   ポンドとフェイルートはボタンを回収し、

   郁人に大丈夫だと微笑む。

   その後、フェイルートはサフュランを

   診る。


   「この者も眉間に綺麗に命中して気絶  

   しただけですのでご安心を」

   「こいつはしばらく寝かせておきましょう

   や。ぬし様は……もう少し自分の体に

   関して気をつけましょうか。

   ぬし様のお母様にアドバイスもらう

   のはどうです?」

   「……………服に関して聞いてみるよ」


   レイヴンは郁人の肩を叩き、郁人は

   頷くしかなかった。




ここまで読んでいただき

ありがとうございました!

面白い、続きが気になると

思っていただけましたら

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