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295話 前もって慣れておこう




   話し合いがまとまった次の日、郁人は

   サフュランと共にいた。ユーは警戒して

   郁人の肩に乗ってサフュランを見ている。


   「祭りに関してだが、改めて流れを

   話しておこう。互いの認識に相違が

   ある可能性もあるからな」   


   蝶の夢の1室にて祭りの際の行動を

   話している。サフュランはユーを

   気にせず、改めて郁人に話す。


   「祭りの際に俺達は一緒に見て回り、

   蝶の夢と若色が険悪でないことを証明

   する必要がある。そのためにもお前が

   以前やった、お披露目道中を俺とする

   ことになる。そこまではわかるか?」

   「……あの」


   郁人は手を挙げる。

   手を挙げた郁人にサフュランは尋ねる。


   「どうした? なにか不明な点でも

   あったか?」

   「なんで……俺は女に変えられたの?」



   ー 郁人は現在、薬によって性別を変えられ

   ているのだ。



   「部屋に案内される前にレイヴンが

   現れて、いきなりなにかを飲まされたと

   思ったら性別を変えられたんだけど……。

   てか、レイヴンは髪を伸ばす薬以外にも

   作ってたんだね……」

   〔あまりの早業だったわよ……

   手慣れてる感じだったわよ、あれ。

   薬を作れるのも驚きだけど〕


   一瞬の出来事だったわとライコは呟いた。

   郁人はなぜと首をかしげる。


   「前も女の子の格好をしたけど、

   変装をしただけで薬で性別まで

   変えなかったんだけど……」

   「変えられた理由か。レイヴンさん

   から聞いたが、今回のお祭りには

   各国のお偉い方が来るらしい。 

   そのなかに厄介な目を持ったのがいる

   ため、お前=前の囮で活躍した者と

   結びつかせないために薬で体の性別を

   変えたらしい。変装では見破られる

   可能性が高いそうだからな」


   レイヴンから聞いていたサフュランの

   言葉に郁人は不思議そうに尋ねる。   


   「厄介な目?」

   「旦那が言うようには魔王もこちらに

   来るそうだ。その魔王が相手の真偽を

   測れる魔眼持ちだそうだ」

   「えっ?! 魔王も来るの?!」 

  〔しかも魔眼持ちなのっ?!〕


   魔王の言葉に目をパチクリさせる

   郁人にサフュランは頷く。


   「夜の国との交流は前からあったからな。

   若色にも旦那と話すために来ていた。

   その夜の国での祭りだからな。絶対に

   来る」

   「確かに来たことはあるって聞いてた

   けど、結構交流してたんだな。

   それで、その魔王が魔眼持ちだから

   俺の性別を薬でね……。

   でも、別に今じゃなくても……」

   「おそらく慣れるためだろうな。

   それに今回は衣装合わせもあるから

   それもあるだろう」

   「ようするに少しでも慣れとけ

   ってことか……」


   サフュランの言葉に郁人は納得した。

   ライコは思い返す。


   〔それにしても急すぎないかしら?

   でも、あの猫被りと黒鎧がいきなり

   英雄とストーカーを連れて行ったのは

   あんたが女に変化させられるのを

   知ってたからかもしれないわね。

   とくに英雄はあんたの女バージョンに

   慣れてないみたいだもの〕

   (たしかに……チイトがポンドに目配せ

   した途端、突然2人を連れて行ったもんな。

   俺にも事前報告してくれないかな……)


   郁人は思わずため息を吐いた。

   そんな郁人をサフュランはじっと

   見ている。

 

   「? どうかした?」

   「いや、なに……なかなか。以前

   ちらりと見たことはあったが。

   どこに隠していたんだ? その胸」


   サフュランは正確には郁人の胸を

   見ていたのだ。興味津々とサフュラン

   はじっと観察する。


   「俺の手に収まりきらないくらいか?

   そんなに大きいのはなかなかいない。

   女の客もよく来るがそこまで大きいのは

   いなかったな。うん、どのような触り

   心地なのか気になるな……。

   どれくらいの重さなのかも気になる。

   触れてみたいのはやまやまだが、

   旦那はもちろんあの災厄や夏の妖精王

   に怒られるだろうからやめておこう。

   命は惜しいから我慢する。そこの

   生き物も尻尾を逆立てているしな」

   「いや、まず俺も怒るから」

   〔口に出すんじゃないわよ。心に

   留めておきなさい〕


   偉いぞ、俺と言いたげに腕を組み

   ながら頷くサフュラン。

   そんなサフュランに郁人は呟き、

   ライコは呆れた。ユーは尻尾を逆立て

   警戒心MAXだ。


   「それで、衣装合わせって言ってた

   けど……」

   「あぁ。どちらかを選択してほしい

   そうだ」


   サフュランが告げると、壁から蔦が

   生えてきて、その蔦は衣装を持ってきた。


   「君達の所属する蝶の夢に合わせた

   "着物コーデ”。

   俺の所属する若色に合わせた

   "スーツコーデ”だ。

   どちらの衣装にもそれぞれの店の

   テイストが入っているがな」

   「おぉ!!」

   〔どっちも綺麗じゃない!!〕


   用意された衣装は、洋風のテイストを

   取り入れた男女の着物コーデ、スーツに

   ところどころ和のテイストが入った男女

   のスーツコーデだ。


   「すごく良い!! 着物もスーツもどっちも

   良いなあ!!」

   〔着物のほうは帽子やブーツとかで

   若色のテイストを、スーツの方には

   ネクタイやジャケットの内側に和柄を

   いれて蝶の夢のテイストを加えているね!

   センス良いじゃない!〕


   郁人は目を輝かせ、ライコも声を弾ませた。


   「どちらか好きなのをと旦那と

   フェイルートさんも言っていた。

   君はどうする? 俺は着たことがない

   着物にしようと思うが」

   「じゃあ、俺はスーツにします!

   ズボンは短いけど下にタイツ履いてる

   から寒くないし、ピシッとしててカッコ

   いいので!」

   〔ジャケットもこだわってるわよね。

   あたしもそれを選ぶかも!〕


   郁人は直感でスーツに決めた。

   ユーも似合いそうだと頷いている。


   「たしかに、スーツはクールな

   イメージがあって、囮捜査時の君

   とのギャップを感じさせて、客の

   目を惹くだろう。いい判断だ。

   では、お互いに着替えてこよう。

   それから歩くルートを考えようか」

   「うん! わかった!」

   「あと、口調だが今から気をつけて

   おいたほうがいいだろう。

   俺といるときにその口調で慣れていたら

   本番時にミスをする可能性がある」

   「成る程。わかった……わ!」

   「その調子だ。じゃあ、あとで」


   サフュランは蔦に案内されながら、

   着替えに向かった。


   「よし、私も着替えなきゃね!」


   郁人も蔦に案内されて着替えに 

   向かった。


   〔そういえば、あのオープンスケベ。

   セクハラまがいのこと言ってもそこまで

   嫌悪感がないのはなぜかしらね?〕

   (たしかに……こう、ゾワッとはしな

   かったな。あっさりしてるからか?)


   単純に気になったみたいな感じも

   あったしと郁人はあごに手をやる。


   〔たしかに、粘着的なものはないわね。

   あたしセクハラまがいのことを言われた

   とき思わず気持ち悪って言って頬を 

   ぶっ叩いたのだけど、その衝動に駆られ

   なかったわね。本当に不思議だわ〕

   (そうだな)


   郁人は考えながら渡された衣装を

   手にする。


   「服単体で見てもかっこいい!

   着こなせたらこう、カッコいい感じに

   なれそう! 仕事の出来る完璧な人みたい

   な! スパイ映画にでてきそうな感じ!」

   〔だったら、髪型も変えたほうがいいん

   じゃない? ほら、あんたの要望に応え

   ようと蔦がヘアセットの用意をし始めた

   わよ〕


   ライコの言葉に見てみると、蔦が櫛やら

   ワックスなどを用意している。


   「ありがとうございます! よろしく

   お願いします!」


   郁人は衣装を手に、お辞儀した。

   ユーは待機のためか部屋を出た。


   〔あの不思議生物、気を遣って部屋から

   出たのね〕

   「そうみたいね。早く着替えないと!」


   郁人は着替えにかかった。

 

   〔………衣装に関して言いたいことが

   あったのだけど、水を差すのもあれ

   だからやめときましょ〕


   ライコがポツリと呟いた言葉は

   郁人に届かなかった。




ここまで読んでいただき

ありがとうございました!

面白い、続きが気になると

思っていただけましたら

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