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289話 同盟




   チュベローズは用意された座布団に座ると

   口を開く。


   「君達が気になるのはわかるとも。なんせ

   経営方針が真逆だ。ここは健全そのもの。

   ましてや旅館のほうは子供連れでも入れ

   るからね。うちは仔猫ちゃんでもわかる

   ように言えば……アダルティかな?

   子供の来店なんてもってのほかの店だ。

   それは驚くだろうね」


   方向性が違うからねとチュベローズは

   笑い、レイヴンは説明する。


   「ちゃんと理由もあるんだぜ?

   ところで、ぬし様は夜の国が完全に独立した

   際に俺様と色香大兄が王様みたいになった

   のはご存知?」

   「うん、覚えてるよ」

   「それはよかった! で、俺様達でいろいろ

   やるにしても、やっぱり人手が欲しい訳

   でございます。ほら、俺様達ってばアダ

   ルティ方面には手を出しておりませんの

   でそちら側まで見ないといけないとなる

   と人手が……ね?」


   俺様達のお店は健全なのでとレイヴンは

   告げ、チュベローズが続ける。

  

   「君達が解決した誘拐事件の情報が俺の店に

   あったように、俺の店にはそういった情報が

   手に入りやすいからね。あと、結構前から

   "表の蝶の夢。裏の若色"と呼ばれていて

   ね。あまり交流がないから対立している

   んじゃないかって考える子も出てきたん

   だよ。それで、俺の店に蝶の夢に喧嘩を

   売りたい子が来店し始めたんだ」

   「対立とかんなもん全然ねーんだけどな」


   蝶の夢と客層かぶらねーからとレイヴン

   は笑う。


   (そうだったんだ?!)

   〔調べてみたけどそうみたいよ。若色は

   蝶の夢ではできないことが出来るから

   そういった客層は若色に行くし、若色は

   あんたにわかりやすくいえば……

   なにかしらね? アンダーグラウンド?

   表には出にくい情報も得やすいの〕


   ライコは郁人にわかりやすいように

   説明していく。


   〔家族向けエリアで誰と誰が不倫して

   いるとか、誰々が暗殺とかそんな情報

   は回らないでしょ? そういった情報も回る

   場所が家族向けエリアとつるむ訳が無い。

   対立してそうと連想ゲームみたいになって

   対立してるって噂が出回ったみたい〕

   (なるほど!)


   ライコの説明に郁人は納得した。

   聞いていいたジークスはチュベローズ

   に尋ねる。


   「その噂などを解消するために同盟を

   組むことにしたのか?」

   「それもあるけど、俺の店がちょっと

   厄介なところに目をつけられたから

   それから保護してほしいのもあるんだよ」

   「厄介なところ?」


   首をかしげる郁人にチュベローズは  

   質問する。


   「仔猫ちゃんは知ってるかい? 人間以外

   とくに魔族を嫌悪してる国があること」

   「はい、知ってます。たしか……

   ノアライトでしたっけ?」

   「正解だよ、仔猫ちゃん。そのノアライトが

   どうやら夜の国が今じゃ独立国となり、

   その国を治めるトップのいる蝶の夢に

   手出ししづらくなったから、俺のところを

   狙う算段をつけていると情報を得たんだよ」


   面倒だよねとチュベローズは苦笑し、

   続ける。   


   「そこで、俺の店は蝶の夢と対立しておらず

   むしろ協力関係。そして夜の国にも関わって

   いるから手出ししづらいことを示すために

   同盟を組むことにしたんだ。もちろん、

   ちゃんと国のためにも働くよ」


   自分の店を守るためにもねと

   チュベローズはウィンクした。


   「ノアライト……聞いたことがあるが

   面倒なところに目をつけられたな」

   「災厄が潰した国と似ているところか。

   あそこは人間以外を嫌悪し、とくに

   魔族を毛嫌いしているからな……」

   「本当に厄介な国ですな……」


   チュベローズの言葉に篝とジークスは

   同情し、ポンドは深いため息を吐いた。


   「もともと色香大兄のことで目をつけられて

   たんでチュベローズの旦那と組んでも俺様達

   にデメリットは無いですし、むしろ人手が増

   えるに越した事はないんで手を組んだんで

   すよ?」

   「私を見ても気絶やら発狂やらしない人材

   でもありますから」


   若色に所属している者達はまだ平気な

   割合が多いですのでとフェイルートは

   告げた。レイヴンはその言葉に頷く。


   「かなり貴重なんだよなあ、本当に。

   ここの奴らでもたまに見惚れて動かなくな

   るときもあるからよお。若色の1部の奴ら

   は固まりはするがまた動きますんで。

   いや、本当に色香大兄を前にするとみんな

   てんでだめになるの多いんですよ?」

   「そういえば、グロリオサは口の中を

   噛んで耐えたって言ってたもんなあ……」

   「そのように行動出来る者はまれだろう」 


   郁人は思い出し、ジークスは呟いた。

   チュベローズは安心してと告げる。


   「ここに来るのは彼の色香に耐えられる

   者だけだから大丈夫。ここは人手が増えて

   俺のところは簡単に手出しされなくなる。

   だから互いに手を組むことにデメリットは

   無いんだよ。今回のお祭りで俺達が同盟を

   組むことを記念して、イベントもするから

   ね」

   「イベント?」

   「だから、あんたんとこの奴らも来てた

   のか」

   「そうだよ。打ち合わせのためにね。 

   彼らも参加してもらうからさ」


   あの黒猫ちゃんが途中で抜け出したのは

   驚いたけどねとチュベローズは笑う。


   「我が君、彼らには蝶の夢の太夫達と共に

   挨拶回りに参加していただきます」

   「チュベローズの旦那はさすがに俺様達

   とやることあるから従業員だけですが」

   「じゃあ、グロリオサやクシランさん、

   サフュランさん達も参加するのか?」


   郁人の言葉にフェイルートは頷く。


   「ええ。彼らにはこちらの従業員と共に

   挨拶回りをしてもらいます。我が君にも

   勿論、参加してもらいますので」

   「彼らから聞いたよ。前にお披露目道中を

   した深窓の美人さんは君が変装した姿

   だったとね。道理でどこから来たのか

   などの情報が全然ない訳だ」

   「話されたのですか?」

   「チュベローズの旦那とは同盟を組ん

   だんで。興味持たれて探られるよりは

   マシだと思うぜ?」


   チュベローズは楽しげにほほえみ、

   ポンドの言葉にレイヴンはカラッと笑う。


   「そうなると、君との挨拶回りはグロリオ

   サがピッタリだと思うんだけど。彼は若色

   の護衛、接客担当じゃないからね。

   だから、挨拶回りでは警護担当なんだ。

   そうなると、君は黒猫ちゃんに興味持たれ

   ちゃったと思うから、仔猫ちゃんと

   組むのは黒猫ちゃんだろうね」


   顎に手をやり、考え込むチュベローズ。

   郁人はチュベローズに尋ねる。


   「黒猫ちゃん?」

   「サフュランのことだよ。彼、獣人族の

   豹なんだけど、俺には猫にし見えないから

   黒猫ちゃんと呼んでるんだ」

   〔あんな服の上から見ても筋肉の主張が

   激しいやつを猫呼びなんて……こいつ感覚

   がズレてるんじゃない? 豹がピッタリな

   奴だと思うのだけど〕


   ライコは思わずポツリと呟いた。

   ポンドはチュベローズに尋ねる。


   「興味を持たれたとはなぜ?」

   「黒猫ちゃんは涼し気な見た目に反して

   好奇心旺盛な子でね。気になってるカガ

   リンが仔猫ちゃんを気にしてるから興味

   を持ったと思うよ。前から神々の生き血

   を水のように呑んだ子はどんな子なのか、

   俺が仔猫ちゃんと言っていたのも重なっ

   てかなり興味を持っていたからね」


   チュベローズは説明し、続ける。


   「だから、君と仕事をしたいと主張する

   だろうね。一緒に出来なかったら先程の

   ようにいきなりやって来ることを繰り返す

   んじゃかいかな。君達にとっては困る事

   じゃないかい? 彼、仕事のとき以外は好奇

   心のまま突撃したりするから」

   「それは容易に想像できるな……」

   「先程の様子をみればわかりますな」

   「彼、仕事中でも来そうな気もするの

   だが……」


   想像できた篝はげんなりとし、ポンドは

   頷き、ジークスは頬をかいた。

   チュベローズはあっと思い出したように

   告げる。   


   「そういえば君と呑んでみたいとも

   言っていたよ。彼、お酒がとても好きでね。

   いろんな国のお酒を持ってるんだよ」

   「お酒ですか?」

   「あぁ。それこそ、有名なお酒や

   俺でも滅多に見たこと無い貴重なお酒

   まで持っていたりするんだよ。だから

   君を呑みに誘うんじゃないかな? 

   神々の生き血を呑めるから遠慮せず

   度数の高いものを出しそうだ」


   彼のコレクションはスゴいよ

   とチュベローズは告げた。


   「……わかりました。では、

   挨拶回りはサフュランさんと共に

   できるか考えておきます」


   郁人は真剣な顔して頷くが、頭の中は……


   (いろんな国のお酒かあ……!!! どんな

   お酒を持ってるんだろ! 家ではあまり

   呑めないけど、ここでなら呑めるかも

   ……!!)

   〔あんたいいの? あの超絶マイペースの

   奴と組んで……いや、あんた完璧お酒に

   つられてるわね〕


   ライコは思わずため息を吐いた、

   

   (いや、その……急に突撃されるよりは

   いいだろ?)


   郁人が言い訳をしていると、篝が郁人の

   頬を引っ張る。


   「お前、完璧に酒につられてるだろ!

   後悔するぞ! あいつ結構しつこいうえ、

   夜の国へ来るたびに突撃してくる可能性

   もある!!」 


   実体験なのか篝は眉をしかめた。

   そんな篝にチュベローズは告げる。


   「あの子が躍起になっているのは、

   カガリン。君が相手にしないからだぜ?

   逃げれると追いたくなると言っていた

   からね」

   「もうこいつに押し付ければいいん

   じゃないか?」

   「チイト殿、カガリ殿が嫌がるので

   やめましょう」


   チュベローズの言葉にチイトが呟き、

   その呟きを拾ったポンドは苦笑した。




ここまで読んでいただき

ありがとうございました!

面白い、続きが気になると

思っていただけましたら

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