286話 転移門
夜の国についた郁人達はの蝶の夢の
1室で集まっている。
その中に予想外の者達もいた。
「ママ! びっくりした?」
「イクトちゃんの反応から見てサプライズ
成功ね!」
「私は皆さんとお出かけ出来てとっても
うれしいデス! 蝶の夢に来店できて
とってもワクワクしてマス!」
「実験の結果は成功だ。帰ってもいいか?」
サプライズに成功した子供のように
はしゃぐデルフィ、それを見守る
ライラック、辺りを見渡し目を輝かせる
オキザリス、面倒そうなシトロンだ。
「どうしてここに?!」
「ソータウンで挨拶したはずですが……」
「俺達より早く着いていたようだが……」
「あそこで別れたはずだろ?」
はてなマークを浮かべる郁人、ポンド、
ジークス、篝。
「なるほどな」
そんな全員をよそに理解したチイト
が呟く。
「前に作っていた転移魔道具がついに
完成したのか。それを使って夜の国に
来たんだろ」
「その通りってな!」
言葉と同時に襖が勢いよく開かれた。
開けた人物を見て郁人は声をあげる。
「ったく、手前はサプライズのし甲斐が
ねえなあ」
「レイヴン!」
「ぬし様方お久しぶりでございますれば!」
「推測の範囲だからな。その範囲外の
ことをしろ」
開けたのはレイヴンだ。郁人を見て
満面の笑みを浮かべていたが、
チイトの言葉に眉をしかめる。
「手前みたいな反則くんの範囲を
超えるとなると骨が折れそうだ。
で、反則くんの推測通り、お母様方は
シトロン博士の開発した転移門で
こちらに来たってわけよ」
「転移門?」
郁人が首をかしげるとオキザリスが
答えてくれる。
「チイトの"何度も使えるように"との
言葉を受けて我が友が開発した魔道具の名前
デス! 設置型のもので定期的に魔石を与え
れば半永久的に使えるんデスヨ!
ソータウンにある大樹の木陰亭の地下と
我が友と私のラボ、そしてこちらの
蝶の夢とを繋ぐ、行き来が自由に出来る
魔道具デス!」
「メンテナンスしねえと半永久的では
ないがな」
スゴいでショ! と我が事ように胸を張る
オキザリスにシトロンはドライアドの
女将が出した茶をすすりながら呟いた。
〔なんちゅーもんを完成させたのよ!!
このハイエルフ!! 迷宮産……もしかし
たらそれ以上の代物じゃない!!
簡単に自由に行き来出来る門を
作るんじゃないわよ!! 〕
ありえないわよ! この鬼才!! とライコ
が頭を抱えている様子が脳裏に浮かんだ。
ライラックはふふと花がほころぶ笑み
を浮かべながら話す。
「シトロンさんが開発した転移門で
私達もこちらに来たのよ! イクトちゃん
達がこちらにいる間、蝶の夢で宿泊したら
って招待されたの!」
「いやあ、ソータウンでのお母様の働きぶり
を聞いた限り、長期休暇などあまりとられて
なかったようでしたので。大樹の木陰亭も
従業員が増えきたようですし、なにかあれば
転移門でささっと帰れるんでよかったら
お休みがてらどうぞって訳でございます
れば」
ライラックは嬉しそうに来た理由を告げ、
レイヴンはニカッと笑う。
「ついでにこの白い妖精……デルフィ
でしたっけ? こいつの卵を今まで守って
きた蝶の夢の女将達に顔を見せに来なって
招待したんですよ?」
「違う国に来たの初めて! ここ自然
いっぱいで妖精達も住みやすいね!!
美味しいご飯もあるから楽しみ!」
抹茶アイスも食べたい! とデルフィは
自分の携帯から蝶の夢オススメスイーツを
検索して楽しそうだ。
「母さんやデルフィとまさかここに
いるなんて本当に驚いたな……!!
でも、母さん達といつか出かけて
みたかったから……招待してくれて
ありがとうな!」
「私からも言わせてちょうだい。
本当にありがとうございます」
「いやいや! お気になさらず!
特にお母様にはちょいとソータウンで
蝶の夢の宣伝してもらえたらという
下心もございますから!」
いやあとレイヴンは頭をかきながら
アハハと笑う。
「で、ぬし様は健診のあとはお仕事
頑張ってもらいますので。
反則くん達も協力よろしくな!」
「……はあ」
チイトがその言葉に面倒くさそうに
ため息を吐いた。態度から嫌だとハッキリ
わかる。
「仕事なんだからやってくれよなあ。
まったく、手前はあのコ達並に素直
だったらよお……。いや、それぐらい
素直になられても怖いだけだな」
「あのコ達とは?」
ポンドが尋ねると襖が再び開いた。
<ここおっきいねー!>
<おはないっぱいだー!>
<きれー! 空気もおいしー!>
<おフロ良かったー!>
<はかしぇもここなら元気なるかな?>
<なるなるー!>
開けたのは大勢のイクタン達だった。
イクタン達を見てジークスは目を見開く。
「彼らも来ていたのか!?」
「連れてきても大丈夫と許可を
得ましたノデ」
「こいつはぬし様をもとにしただけ
あってとても素直で働き者なんですよ?
こっちに転移門使って働きに来ること
確定してるんで」
「あれからまた増えたからな」
「また増えたのか!?」
ジークスが驚くなか、オキザリスは
頬をかきながらイクタン達がここに
いる理由を話す。
「我が友の不摂生具合に増えまシタ……。
しかも、このコ達どうやら働きたいよう
なのでここに連れて来まシタ!」
<働かざる者食うべからず!>
<はたらけはたらけー>
<ばしゃうまのごとくー>
「そんなに働くな。倒れたらもとも
こうもねえだろ」
やー! とやる気満々なイクタン達に
篝は頭をかいた。
「いやあ、経緯を聞いたときは驚いた
もんよ。まあ、こっちとしては働き手は
多いほうが助かるんで来てくれてありが
たいけどなあ。あと、保護の件なら
色香大兄に承諾得てるんで問題ないぜ」
「保護って?」
郁人が尋ねるとオキザリスが答える。
「じつは、このコ達は見つかると
拉致される可能性がある能力を持っいる
ことが判明しまシテ……」
<あっ! はかしぇおてて怪我してる!>
<いたいいたいのとんでけー!>
シトロンの指に切り傷があることに
気付いた1部のイクタンがあわてて
傷口に触れて飛んでけー! と両手を上に
あげた。
「えっ?!」
〔治っちゃったわよ?!〕
するとキランと星が舞うと同時に傷が
見事完治していた。
「もしや……!?」
「ハイ。治癒出来ちゃうんデス! どうやら
このコ達は光属性のようで、見つかれば
とても危ないデス! なので、保護して
もらおうカト!」
〔たしかに、あそこに見つかれば
危ないものね……。警戒心無さそうだから
ひょいって誘拐されそうだもの〕
オキザリスの言葉にライコは納得した。
「手前ら俺様達ならいいが、他の奴らの
前に出ないようにしろよ? 下手したら
食われるかもしれねえぜ?」
<たべられる?!>
<やー!!>
<せ……せめて丸のみ希望……!>
<はかしぇー!たしゅけてー!!>
「おい! 勝手に登るな!!」
いやー!! とイクタン達は座っている
シトロンの膝や肩に集まっていく。
「シトロンさん、本当に好かれてるわね」
「もしかしたら、我が友を親と認識してる
のかもしれまセン!」
「俺も一緒に作ったのに!!」
ライラックは微笑ましく見守り、
オキザリスはなぜか自慢げで、
デルフィは頬をふくらませている。
〔本当に懐いてるわね……〕
(なんでだろうな?)
<このイクタン達、だいたいシトロンの
家にいるからじゃない?
あの白いのは宿題とかもあるから大樹の
木陰亭にいるみたいだし>
(なるほど。ずっとそばにいる人との
ほうが信頼度あがるもんな)
チイトの言葉に納得しながら郁人は
用意されてた緑茶を飲んだ。
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