表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
337/377

285話 ブルームーンバタフライ




   「よし! こんな感じかな? あまり

   掃除できるタイミングが無かったから

   久しぶりに出来てよかった。

   ユーも手伝ってくれてありがとうな」

   〔もともと綺麗に整理されてたから

   パット見わからないけどね〕


   郁人は部屋の掃除をしていた。

   旅に出たりしている為、掃除を出来る

   タイミングでしたかったからだ。

   ユーもお手伝いをしており、さらに

   綺麗になった部屋を見て誇らしげだ。

   

   〔あんたきっちり掃除するタイプなのね。

   あたしは途中でアルバムとか漫画を

   見たりして手が止まっちゃうのよね〕

   (神様の世界にもアルバムあるんだな。

   あと、手を止めたりするのもそこは

   共通なんだな。そういえば……  

   妹も片付け中に漫画を読んじゃって

   よく手を止めてたっけ) 


   人との共通点があるんだなと郁人が

   考えていると、肩を叩かれた。

   見るとナデシコで、なにか持っている。


   「ナデシコさんどうしました?

   ……これは手紙?」


   ナデシコから手紙を渡された。

   ユーと一緒に確認する。


   「これって……フェイルートからだ!」

   〔えっと……内容は……〕


   手紙を見てみると、フェイルートから

   であり、とても綺麗な文字で書かれていた。



   ”謹啓

   暑さが日ごとに加わってまいります。

   我が君におかれましてはいかが

   お過ごしでしょうか?


   さて、こちらでは夜の国が独立したこと

   を祝して祭りを行う次第となりました。

   つきましては、その祭りにぜひ我が君

   にもお越しいただく願います。


   その際ですが、月ごとの健康診断と

   囮捜査の際に披露された変装もして

   もらいます。ですので、美容は特に

   お気をつけください。キュラスが

   テストをするそうですから。

   明後日、我が君のもとへ迎えを派遣

   いたします。必要なものはこちらで

   用意しますので気軽にお越しください。

   我が君の来訪を心待ちにしております。

   暑さ厳しき折、くれぐれもご自愛の

   ほどを。


                  謹言

              フェイルート”



   〔なるほどね。あそこ独立してから

   バタバタしてたみたいだし、落ち着いて

   祝えるようになったのね〕

   (そういえば、師匠達が独立したことで企む

   人達を捕まえてたみたいだもんな。

   やっと落ち着いたんだな)


   よかったと郁人はホッと息を吐く。


   「じゃあ、準備しないとな。美容セットも

   きちんとしておかないと……!!」

   〔ちゃんとしてなかったら確実にあいつの

   雷が落ちるわよ。あの方から特別に調合され

   たセットを持っておきながらなんだその

   肌は! みたいな?〕

   (本当にな……。日頃からちゃんとしてる

   つもりだけど)


   大丈夫だよな? と郁人が自分の頬に触れる

   と、ユーも郁人の頬をつつき大丈夫と言う

   ように尻尾の先でグッドと表現した。


   「ありがと、ユー。よし、早めに用意して

   おくか。気軽にって書いてあるけど、変装

   とかまたしないといけないみたいだから

   長期になる可能性が高いし……」

   〔そうね。また滞在時間長いかもしれない

   ものね〕

   「……デルフィや母さんにも伝えないとな。

   特にデルフィはぬいぐるみの作り方とかの

   本を用意して……」

  〔また妖精作られたら大変だものね……〕


   郁人は携帯を取り出し、作り方が書いてある

   初心者向けの本を探し始めた。



   ーーーーーーーー



   それから2日後、指定の日がやってきた

   郁人達はソータウンの門を出て迎えを

   待っている。


   「…………」

   「どうしたのパパ? なにか気になるの?」


   考え事をしている郁人にチイトが尋ねた。


   「いや、その……デルフィの様子が

   気になってさ。また旅に出ることを

   伝えてもあまり寂しがらなくて……」


   郁人は出発前のデルフィの様子を思い出す。

   

   『ママ! 気をつけてね! ポンドのそばから

   離れたらダメだよ! ママは変なのに

   好かれやすいから危ないもん!

   俺はちゃんとばあちゃんの言う事を

   聞くから安心してね!』


   といつも寂しそうだったのが

   明るい様子で見送ってくれたのだ。


   「なんだろ……こう……そこまで長期間

   会えないわけじゃないとわかってる

   ような?すぐに会えるから気にしてない

   みたいな?」


   不思議そうな郁人にポンドが同意する。


   「たしかに、デルフィ殿が落ち込みません

   でしたからな」

   「慣れたんじゃないか? もしくは女将達も

   いるから寂しくないと気づいたか」

   「それか宿題で手一杯なんじゃないか?」


   それぞれが理由を述べていると、いきなり

   暗くなった。


   「あれ? 今日は晴れなんじゃ……」

   「雨の予報は無かったはずだが……」


   郁人は首をかしげ、篝も不思議そうに

   しながら全員上を向く。


   「これはまた……!?」

   「もしや迎えとは……?!」

   「どうやらこいつが迎えのようだな」


   上空には1mを優に超えるほどの

   大きな蝶がいた。


   黒と青が特徴の蝶で、特に青は光に

   反射して宝石のオパールのように色が

   揺らめいて見える。その蝶は優雅に

   地面へと舞い降りる。


   「すっごく綺麗だな……!!」

   〔待って……! この蝶は……!!〕

   「……待て、この蝶は”ブルームーン

   バタフライ”!? 夏の妖精の遣いの種族

   じゃないか?!」


   ライコに被せるようにジークスは

   驚きの声をあげた。


   「夏の妖精が保護している種族でもあり、

   夏の妖精王の命令しか聞かないはず

   では?!」

   「さっき連絡が来たけど、あいつらが

   夏の妖精王と同盟を結んだからだろ。

   パパ、これ見て!」


   チイトがスクリーンを出すと、そこには

   ある情報が載っていた。


   「えっと……”夜の国、夏の妖精と同盟を

   結ぶ。夏の妖精が夜の国に定期的に訪れ、

   森の中に移住する妖精も……”

   ってそうだったの?!」

   〔また同盟結んだ国が現れたの?!

   滅多に結ばない妖精がなんで?!〕

   「同盟を結んだからこの蝶もこうして

   迎えに来たみたいだよ。ほら、早く!

   乗ろ乗ろ!」


   チイトがびっくりしている郁人の腕を

   引っ張り、蝶の上に乗る。


   「えっと、乗って大丈夫なのか?」

   「大丈夫だよ。こいつ、夏の妖精達が

   移動する際の運び手を担ってるから。

   貴様らも驚いていないで乗れ。

   置いていったらパパに怒られるだろ」


   チイトが指を動かすと、それぞれの

   影から手が出てきて無理やり乗せた。


   「よし、出ていいぞ」


   チイトの言葉に蝶はひらひらと

   翅を動かし、空へと向かう。


   「わあ!! 本当に蝶の上に乗ってる!!

   すごいなあ!!」

   〔傍から見たら絵本の世界よ! この

   光景!〕


   まるでおとぎ話のようで郁人は目を

   輝かせ、ライコは声を弾ませた。


   「どうやら、今回パパを驚かせたくて

   特別にこいつを迎えに寄越したみたいだよ。

   夜の国への直通便には前に提灯に入って

   いた蛍と花が案内するようだし」

   「花がどうやって案内するんだよ」

   「前のときみたいに道に花が咲いて

   案内するのか?」


   篝が顎に手をやり、郁人ははてなマーク

   を浮かべる。


   「ううん。花が馬車や馬に変身して蛍が

   案内するそうだよ」 

   「……どんなのかすごい気になる!」

   〔あたしもすごい気になるわね……!!〕


   チイトの言葉に郁人は想像をふくらませる。


   「帰りにお願いしてみたら? 行きよりは

   遅いと思うよ。このブルームーンバタフ

   ライは見た目に反してものすごく速いから。

   乗ってる側はわからないけどね。

   ほら、もう着いたよ」

   「え?」


   チイトが指差す先を見れば、もう夜の国の

   森があった。

   森の中心から見える花咲門から夜の国の

   森であると断定できる。


   「はやっ!?」

   〔早すぎないかしら?!〕

   「ブルームーンバタフライは乗ってる

   側にはゆったりと感じるが実際は

   とてつもないスピードで移動すると

   読んだことはあったが……まさかこれ程

   とは思いもしなかったな!」

   「眉唾ものかと思っていたがマジだった

   のかよ……」

   「本当にすごいですな!」


   郁人達が驚いている間にブルームーン

   バタフライは花咲門を超えて、少し広げた

   場所に降り立つ。


   「門から入らなくていいのか?」

   「パパだからじゃないかな?

   じゃなかったら、手前で降りて入国審査が

   あるから。パパ、降りるとき気をつけてね」

   「ありがとう、チイト」


   チイトは手を差し出し、降りる郁人の

   手助けをする。郁人は感謝しながら、

   チイトの手を取り降りた。


   「ママ! さっきぶり!」


   郁人の耳に聞き覚えのある声が聞こえた。




ここまで読んでいただき

ありがとうございました!

面白い、続きが気になると

思っていただけましたら

ブックマーク、評価(ポイント)

よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
お久しぶりです!更新ありがとうございます!! あんまり使ってないから散らかっては居ないだろうけど、埃は絶対溜まってるよね。掃除大事! 神様の世界の漫画気になる、人間界のものもあるだろうけど、神様が書…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ