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283話 スキルが使えるか




   ポンドのユニークスキルが判明したその日に

   郁人はライラックに許可をとって、木陰亭の

   地下にて集まっている。


   「ポンド! 許可をとったからスキルを

   試せるぞ!」 

   「許可をとっていただきありがとう

   ございます、マスター。

   母君も許可していただき感謝します」

   「気にしないで。私も野営作成って

   初めて聞いたから気になっちゃったの」


   地下には郁人達以外にもライラックもいる。

   ライラックもどんなスキルか気になった

   のだ。


   「あとで手合わせもお願いしたいわ。

   久しぶりに体を動かしたいのよ!」

   「拳聖と呼ばれる母君のお相手ですか……。

   緊張しますがお相手を務めさせていた

   だきます」

   「ありがとう! なかなか相手をして

   くれる人がいないから助かるわ!

   じゃあ、場所を決めましょうか!」

   「そうですな。久しぶりにスキルを

   使いますし、何があっても対処できる

   ようにしたいですから」


   ライラックのお願いにポンドは

   胸に手を当て、一礼しながら承諾した。

   ライラックは嬉しそうに微笑むと

   スキルを試す場所について話し合う。


   「スキルって思うように使えなくなったり

   するのか?」

   「うん。想像してるのと違うことになる

   可能性はあるよ。昔、肉体強化スキル持ち

   が薬で肉体強化したうえでスキルを使っ

   たら想像以上に強化されて肉体が耐えき

   れなくて肌が裂けていき、スキル解除が

   間に合わなかったらちぎれてた話はある

   から」

   「……想像以上にグロテスクだった」


   裂けるやちぎれるの言葉に顔を青ざめる

   郁人。ライコは同意しながら他の例も

   あげる。


   〔あと、回復スキルを持ってた人間が

   久しぶりにスキルを使ったら回復力が

   かなり落ちてたとかもあるわよ。

   スキルもスポーツとかと同じで

   使わなくなったら衰えたりするもの〕

   「じゃあ、俺も久しぶりに使わない

   といけないな。クリエイトのほうは

   最近使ってないし。自分の血を使う

   から変な方にスキルが発動しても

   嫌だからな……」


   スキルでペンを出した郁人だったが、 

   チイトが問題ないと告げる。


   「パパのは今までそこまで使ってない

   から影響はないよ。あと、パパはスキル

   使わなくても描いてるから問題ないから!

   今確認したから安心して!」 

   〔こいつ、そういったのも確認できる

   のね……〕

   「ねえママ! ばあちゃんとポンドが戦うの

   見てみたい!」


   ライコが驚いていると、ユーが寝ている

   ほうとは違う胸ポケットにいるデルフィが

   声をかけた。


   「2人の手合わせ絶対すごいよ!

   ばあちゃん、ここが出来てから毎日

   練習してるから絶対衰えてないし、

   ポンドもジークスとかとよく手合わせ

   してるから絶対に見たい! ママも

   見たいでしょ?」

   「うん、俺も見てみたいな」

   「別に隠さないと思うから見れると思うよ。

   あいつは武神のスキル獲得条件を満たして

   るし、女将も拳聖のスキル持ちだから

   見応えはあるんじゃないかな」


   目を輝かせる郁人とデルフィにチイトは

   見れるよと頷いた。


   「母さんも拳聖って呼ばれてるから

   やっぱりスキルを持ってるんだな」

   「自分のステータスを見たときに名前の

   近くに表示される肩書は自分の行動や

   スキルにちなんだもの、周囲にどう

   評価されているかが表示されるからね。

   拳聖とか呼ばれるのはそのスキルを

   所持してる証拠にもなるよ」     

   「そうなんだな。教えてくれて

   ありがとう、チイト」


   郁人はチイトの頭を優しく撫でる。

   撫でられたチイトは頬をゆるませる。


   「どういたしまして! パパに褒めてもらえ

   るのはやっぱり嬉しいな!」

   「なあ、あいつらなんでいるんだ?」

   

   和やかな雰囲気の2人に篝が話しかけた。

   そんな篝が指差した先には……


   <ここの土もとてもいい土だねー>

   <ここで育てたら絶対おいしくなる!>

   <なに植えようかな?>

   <とりあえずお野菜だね>

   <あと果物もー>

   <おコメも植えたいなあ>

   <はかしぇも来たらよかったのに>

   <博士はお外にでたら倒れそうだから

   お留守番がいいよー>

 

   草原の1部を耕しているイクタン達がいた。

   篝はそんなイクタン達を見てあごに手を

   やる。

 

   「研究所から出ないんじゃなかったか?

   なんでここで畑を?」

   「母さんから聞いたんだけど、また

   増えたみたいでさ。それでオキザリスが

   する事を増やせば寂しくなることも

   なくなるんじゃないかって木陰亭に

   派遣したそうだよ」

   「この子達は農業をしてみたい子達だよ。

   他にも木陰亭の掃除をしたい子達や

   料理を作りたい子達で分かれてるんだ」

   「……相変わらずどんな仕組みで増えて

   やがんだよ。まず研究所からどうやって

   来たんだ? こんな小さいのからしたら

   結構距離があるだろ」


   郁人とデルフィの説明を聞いて、

   篝は頭をかきながらイクタン達を見る。

   イクタンの1匹を手に乗せて連れてきた

   ジークスが付け加える。


   「どうやら、あの鬼才が魔力を補充すれば

   何度でも使える転移魔道具の開発に成功した

   ようだ。それでこの子達は研究所から木陰亭

   まで移動が可能となったそうだ」

   「転移の魔道具だと?!」

   <行ける場所増えてハッピー!>  

   〔えっ?! あの鬼才とんでもないもの

   作ってるじゃない!! しかも1度きりじゃ

   なくて何度も使えるとなると、迷宮産

   でもなかなかない代物よ?! それを作って

   しまうなんて!! 猫被りと仲良くなった

   みたいだからなにか仕出かしそうとは

   思ってたけど……!!〕


   篝は目を見開き、ライコの声色から頭を

   抱えている姿が目に浮かぶ。

   郁人はライコの話を聞いて、転移の

   魔道具の希少さを知る。

    

   「シトロンさんはとんでもないものを

   作ったんだな……!」

   「まだ人では試していないみたいだけどね。

   実験をしていって、最終的に研究所や

   大樹の木陰亭、蝶の夢と自由に行き来

   できるようになるのが目標らしいよ」     

   「なんで蝶の夢……って、そうか。

   シトロンさんとオキザリスは今は

   蝶の夢の開発部門で働いてるからか!」


   一瞬、不思議に思ったが以前、オキザリス

   からコンタットで教えてもらったことを

   郁人は思い出した。  


   「うん! あいつらのところで職に

   ついてるからね! 転移の魔道具もレイヴン

   が素材とかいろいろ提供してるから

   一気に開発スピードが早くなったって

   オキザリスが言ってたよ」

   「彼も関わっているのか?!」

   「あいつ手広くやり過ぎだろ……!」     

   

   チイトの説明を聞いて、ジークスは

   目を見開き、篝は頭をかいた。


   「いずれ全ての魔道具にあいつが      

   関わりそうだな」

   「カタログに載っていた魔道具の

   ラインナップは多彩だったからな」 

   「いずれ道具の域を超えて魔道具の

   家とか始めるかも?」

   「君がお願いしたら作りそうだ」


   郁人の家の言葉にジークスは苦笑した。


   「パパが欲しいなら俺が作るけど?」

   「いや、欲しい訳じゃないからな」

   「あっ! ママ、場所決まったみたいだよ!」


   デルフィが指差したさきには手を振って  

   こちらを呼んでいるライラックとポンド

   がいる。


   「場所が決まったみたいだね!」

   「結構入り口から距離があるところに

   したんだな」

   「まあ、たしかにあそこならスキルとか

   暴発しても被害はないんじゃないかな?」    

   

   郁人達が駆け寄ると地面に線が引かれて

   いることに気づく。


   「この線はなんだろ? よく見たら

   大きく四角? が描かれてるっぽいけど」     

   「この範囲で作ると想定したのか?」

   「ジークス殿のおっしゃる通りですな。

   私のスキルは範囲決めをしてから

   するものでしたので。念の為、かなり

   大きく描かせていただきました」


   久しぶりですからなとポンドは笑う。


   「では、皆様は線の向こう側で待機を。

   ユー殿にはもし暴発したときように結界

   をお願いしたいのですが……問題ない

   ようですな。ありがとうございます」

   

   ポンドの言葉にいつの間にか起きていた

   ユーが結界を張った。

   ユーに感謝しながら、ポンドは線に触れる。


   「では……"野営作成"!」


   ポンドが唱えた瞬間、線で囲われた場所

   が光りだす。


   「まぶしっ?!」

   「わー?!」 

   

   それぞれが目をつぶり、光が収まった

   タイミングで目を開ける。


   「これは……?!」

   「変わったお家ね!」

   「全部木で出来てる!!」

   「夜の国で見たものと似ている!」

   〔スキルで家が建つとかありなの?!〕

   

   ポンドが線で囲った場所には瓦屋根の    

   家があった。竹垣があるため家の様子は

   そこまで見えないが、どこか懐かしさを

   感じさせる家だ。   

   

   「ポンド、君のスキルはここまで見事な

   家を作ることが出来るのか?!」   

   「いえ、違います。私のスキルでは

   ここまで立派な家屋は出来ませんでした。

   なぜこのような家屋が……!?」


   尋ねたジークスより驚いているのは

   ポンドだ。目を見開き、本当に自分の

   スキルで出来たのか疑っている。

 

   が、さらに驚いている者が2人。


   「おい、これ……この家は……!!」

   「…………………」


   篝と郁人だ。

   篝は郁人を揺さぶり、郁人は固まっている。


   「どうしたんだ? 2人とも?」

   「マスター? どうされましたか?」


   ジークスとポンドが尋ねると郁人は

   ゆっくり口を開く。




   ー「この家……"俺の家"だ!!」



 

   郁人は懐かしさに目を潤ませた。




ここまで読んでいただき

ありがとうございました!

面白い、続きが気になると

思っていただけましたら

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