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278話 匂いでバレることを知る




   郁人とデルフィのぬいぐるみ作りは

   順調に進んでいる。


   (こうやって真剣に縫うことなんてあまり

   ないから楽しいものだな。デルフィも

   楽しそうだし。……ベロペロネさんも

   意外と真剣に取り組んでるな)


   グラジオラスを呼べないときは

   ベロペロネがこちらを見るので

   こっそり手助けしたりしながらだ。


   〔このマゾっ娘、意外とちゃんとしてる

   わね。途中でもうやめた! とか言うかと

   思ったのだけど……。手に何回も針を刺し

   ちゃってるし、ダダをこねないか心配し

   てたんだけど〕

   (それは俺も思った。わからなかったら

   ちゃんとグラジオラスさんに聞いてる

   しな。どうしても呼べないときは俺の

   手元見てるけど……声をかけにくいのか?)


   聞いてくれたらちゃんと答えるんだけど……

   と郁人は考える。


   <母さんは隣の方と知り合いなのですか?>


   するとデルフィが尋ねてきた。声色から

   して不思議そうだ。


   <見かけない顔なのですが……旅していた

   ときに出会われたんです?>

   (そうだな。この子はチイトのファンの

   ベロペロネさん)

   <ベロペロネ……どこかで……あっ!

   もしや、薬をかけたジェラートをチイトに

   食べさせようとして母さんに怒られた

   方では?>

   (知ってたの?)

   <先代が教えてくれたので。チイトに

   近い母さんに嫉妬して何かするかも

   しれないから警戒対象だと>


   この方が……とデルフィは警戒の

   眼差しでベロペロネを見た。


   <母さんは何か違和感を覚えたらすぐに

   教えてください>

   (うん。でも、俺に危害を加えるなら

   とっくにしてそうだし、仲間がそばに

   いないからそこまで警戒は……)

   <外に待機させてる可能性もありますので。

   いいですね?>

   (えっと……わかった)

   <一応、護りを施しておきます>

 

   デルフィはこっそり指を振るとふわりと

   郁人の周囲を優しい風が通った。


   <これで大丈夫です>

   〔こいつ……本当に前は春の妖精王

   だったのね……! さらっと高度な魔法を

   施したわよ……!!〕


   ライコが驚く中、グラジオラスが

   声をかける。


   「では、綿をつめて縫っていきましょう!

   綿はこちらで用意しておりますので、

   今からお渡ししますね!」


   グラジオラスは各自に綿の入った容器を

   3つ、机に置いた。


   「皆様から見て、右の綿は手足などの

   細いところにも入れやすい綿になります!

   真ん中は触り心地にこだわりたい方向け

   の綿でして、とてもふわふわなんですよ!

   左の綿は型崩れしにくい、しっかりめの

   綿になりますので崩れないか心配な方に

   おすすめです! ぜひお好みの綿をお選び

   ください!」


   グラジオラスの綿の説明を聞いて

   郁人は悩む。   


   〔へぇ~、綿にも種類があるのね〕

   (見た目は一緒に見えるけど、

   それぞれ違うんだな。うん……龍だし

   型崩れしにくいやつにしようかな?)


   郁人は型崩れしにくい綿を選択し、細かい

   部分には用意されていたリッパーを利用

   して押し込んでいく。


   「あたしは触り心地重視にしようっと!

   ……なるほど、細いところにはこれを

   使っていれるのね」


   ベロペロネも郁人の手元をちらちら

   見ながら頑張っている。


   〔……このマゾっ娘、本当に手芸しに

   来ただけかしら? なにか目的があって

   ここに来たんじゃない? ぬいぐるみ作り

   が目的とは思えないもの〕

   (だとすると、目的は一体……?)


   ー「作業中、失礼します〜」


   郁人が考えていると、狐福の店主である

   ガーベラがやってきた。参加者に声を

   かける。


   「今、皆様が作ってらっしゃるぬいぐるみ

   を入れる袋を選んでいただきたいので、

   番号を呼ばれた方からこちらへお願い

   します〜。では、まずは1番の方ぁ〜」

   「あっ、私ですね。行ってくるわね、

   デル」

   「いってらっしゃい、母さん」


   呼ばれた郁人はガーベラのもとへ進む。


   「では、どうぞこちらへ。この部屋に

   ぬいぐるみを入れる袋、そして、

   ぬいぐるみを飾るリボンが用意されて

   おります〜」


   ガーベラの案内のもと、部屋に入ると

   壁面に入れる袋やリボンがたくさん

   用意されていた。

   まるで展示されているようで、思わず

   目をぱちくりさせる。


   〔すごい量ね! わざわざ壁面に飾って

   見やすくしてるのも細かいわ!〕

   「お好きなものをお選びくださいませ〜。

   せっかく作ったぬいぐるみなんですから

   ぴったりなものを選んであげてください

   ねえ〜」

   「ありがとうございます」


   郁人は自身が作ったぬいぐるみに合う

   袋を選ぶ。


   (白い龍を作ったから、袋も白にしよう

   かな? いや、空みたいな色もありか?)

   〔なら、リボンも袋とお揃いにするのも

   ありじゃないかしら? あっ、でも違うのも

   いいわね! たくさん種類があるもの!〕


   郁人は黙々と選んでいく。


   (袋の大きさはこれぐらいで……。

   リボンは空の色にしよう! 袋も同じ

   系統の色にしたほうが統一感もある

   からこれにしよ!)

   「決まりましたか?」


   タイミング良くガーベラが話しかけて

   きたので、郁人は頷く。


   「はい。これにしようかと」

   「かしこまりましたあ〜。そういえば、

   以前撮影したときも衣装にこの空色が

   入ったものを選ばれてましたね〜。

   空色、お好きなんですか?


   ー "イクト"さん」


   「たしかに、言われみればよく……

   選んで……え?」

   〔待って……あんたのこと……!!〕


   2人は時間が止まったかと思うほど、    

   驚きで固まる。


   「どうされましたあ?

   あっ……今の姿ではお名前言っては

   まずかったですよねえ」


   失礼しましたあとガーベラは謝る。


   「……その、どうして俺のこと……」

   「見た目ではさっぱりわかりません

   でしたが、香りでわかりましたあ」


   動揺する郁人にガーベラは説明する。


   「イクトさんってえ、特殊な魔力を

   してませんかあ? そういったご指摘を

   言われたことありません?」

   「それは……言われたことありますね。

   魔力の質が他の人と比べたら違うと」


   郁人はポンドに言われたことを思い出す。


   「わたくし、いえ、わたくしの種族は

   その魔力の違いが香りで判別できるん

   ですぅ〜」

   「種族?」

   〔狐耳生やしてるし獣人じゃ……

   もしかして!〕


   首をかしげる郁人にわかったのか

   ライコは声をあげる。


   「わたくしは”魔獣族”。獣人と間違え

   られますが、こうして人の耳もあり

   ますので。あと……耳の形を見てもら

   えるとわかりますが、耳が尖ってます

   でしょぉ?」

   「たしかに、尖ってますね……」

   「これも魔獣族の特徴の1つですぅ〜」

   〔調べたけど、この人の言った通り

   だったわ。魔獣族は獣人に間違えられ    

   やすいけど、魔族の1種だそうよ〕


   ライコは魔獣族について説明していく。


   〔獣耳があるのと人の形をした、

   少し尖った耳もあるのが特徴で獣人族と

   違って血が繋がっていれば同じ耳や尻尾

   みたい。だから、この人が狐耳なら家族

   も全員狐耳。獣人族と違って違う特徴を

   持った者は生まれないわ〕

   (そこは獣人族と違うんだな……)


   郁人が納得しているとガーベラは続ける。


   「そして、獣人族との違いは匂いで

   魔力の質などがわかるんですぅ。

   匂いで誰の魔力かもわかるんですよぉ。

   それで、貴方がイクトさんだとわかり

   ましたあ〜」


   貴方の魔力ってとても特殊ですのでぇ

   とガーベラは告げた。


   「見た目では全然わかりませんでしたので

   ご安心を。誰にも言うつもりもないです

   ので〜」

   「ありがとうございます」


   ガーベラの言葉にホッとする郁人。


   〔まさか魔力の匂いでバレるなんてね……〕

   (チイトに匂いを消す香水とかないか

   聞こうかな……?)

   「ですので、グラジオラスさんのこと

   ティアマットには言わないでくださいね」

   「へ?」


   ガーベラの言葉に郁人は目を丸くする。


   「気づいてますでしょ? あの子が水龍の番

   だってこと。貴方と横のお子さんだけ、

   あの子を見て驚いてましたもの。

   そして、とても不思議そうでしたので

   番とわかったのだと理解しまして〜」


   わたくし、人をよお〜く見てるので

   わかるんです〜とガーベラは笑う。


   「……見てわかるものなんですか?」

   「貴方様は目にはっきり書いてますのでぇ」

   〔見てわかるものじゃないでしょ!!    

   怖いわよこの人!!〕


   ライコは声をあげてしまうなか、

   ガーベラは尋ねる。


   「あの子が番だと自覚したのは最近で、

   自ら番だと申告するのは勿論、気持ちの

   整理がついてないですので行きたくない

   ようなんですぅ。ですので、報告はしない

   でいただけると……」

   「報告する気はないですよ。なので 

   安心してください」


   気づいて驚いてただけで何もする気は

   ない郁人は答えた。

   その答えにガーベラは胸を撫で下ろす。


   「それは良かったですぅ。あの子、

   自覚したとき気持ちがぐらぐらしてて

   見てて辛かったですので……。

   それに、あの子の場合は申告より、

   水龍本人に迎えに来てもらったほうが

   良いと思いますから〜」

   「迎えですか? 嫌がっている訳じゃ

   ないんですか?」


   郁人が尋ねるとガーベラは推測を述べる。


   「嫌ではないみたいなんですが、どうやら

   思うところがあるみたいでしてえ〜。

   水龍とあの子の間の問題みたいですし、

   外野がどうこうするより、直接のほうが

   よろしいでしょ?」

   「それはそうですね。外野が介入したら

   こじれる場合もあるますから」

   「でしょお? ですので、ご内密にぃ。

   お子さんにもお伝えお願いしますね?」

   「勿論です」

   「ではでは、作業に戻りましょうか〜」


   安心したようにガーベラは微笑むと、

   体験した場所へと案内する。


   「それにしても、本当にお似合いですねえ。

   今度、わたくしの作品も着てもらえます〜?

   ぜひモデルさんに」

   「……モデルはちょっと遠慮しときます」


   郁人が断っていると、グラジオラスの

   あわてている声がする。


   「落ち着いてください!」

   「どうかしたのか?」

   「急ぎましょう!」


   2人が急いで向かうと……


   「紹介してくれたっていいじゃない!!」

   「嫌です。なぜ貴方にこの俺が紹介を

   しなければならないんです?」


   涙目のベロペロネと鼻で笑うデルフィが

   いた。


 


ここまで読んでいただき

ありがとうございました!

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