表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
324/377

276話 ぬいぐるみ手作り体験




   ヒュドラを解体して調理した次の日、

   郁人は携帯で依頼主に送り終えていた。


   「いきなりヒュドラだけはあれだから、

   他の料理も混ぜたけどよかったよな?」

   〔ヒュドラがある時点で驚きなの

   だけどね……〕


   依頼主さん倒れてないといいわね……

   とライコは呟く。


   (リンゴのジェラートの改良版とかも

   送ったから気絶は……してないといいな。

   たくさん出来たからチュベローズさんや

   グロリオサにもお裾分けしたから、そこまで

   警戒とかはされないと思うし……)

   〔お裾分けされた方はかなり驚くで

   しょうけどね……〕


   大丈夫だという郁人にライコが呟いて

   いると、ふと気付く。


   〔ねえ、あんたの見てるそれって……〕

   (これ? 新聞っていうほうがいいのか?

   それともネットニュースかな?

   レイヴンが新しく始めたみたいで、それを

   見てたんだ。全国の情報が読めるように

   って各国の記者ギルドと提携してるそうだ)


   コンタットでレイヴンが教えてくれた

   と郁人は携帯の画面を1部拡大する。


   〔えっと”常に新鮮な情報をお届け!

   ピジョンニュース!”全国の情報、その中

   でも特に驚きのニュースをまとめて

   お届けします! もっと細かい情報が

   知りたい方は全国の新聞を取り寄せる

   ことも可能となっております! と……。

   あいつ本当に幅広く活動してるわね……〕

   (俺的にはついに情報に手を伸ばしたん

   だって感じだけどな)


   レイヴンは情報戦が得意分野だし

   と郁人は画面をスクロールする。


   (たしかに、あんたから聞いたのだと

   あいつは情報戦に特化してるものね。

   ……って、妖精に手をあげた馬鹿がいるの?!

   今の御時世に?! 個人じゃなくて、国がらみ

   で?! しかもエルフじゃない!!〕


   ライコは思わず声を上げた。

   ヒイィと声を引きつらせていることから

   顔を青くしていることが想像できる。

 

   〔妖精に手を出したら一生恨まれるのは

   確実! 末代まで追い詰められるのよ!!

   エルフなら長命だから、かなり妖精に

   追い詰められる期間は長くなるのに

   バカなの!? もう大バカよ!!〕

   (しかも、マルトマルシェにまで宣戦布告

   してたみたいだな、このエルフの国の

   オンリードってところは)


   オンリードってところはマルトマルシェ

   の隣国だったようだぞと新聞の図を

   見ながら郁人は告げる。


   (宣戦布告されたマルトマルシェは妖精、

   被害を受けた秋の妖精と同盟を結んで

   完膚なきまでに潰したみたいだけど……)

   〔秋の妖精は武闘派なイメージは無いけど、

   妖精に手を出したらもう終わりよ……。

   しかも、マルトマルシェって鬼族が多い

   国よ。鬼族はバリバリの武闘派だし。

   そんなヤバい奴らを同時に相手にしよう

   とするなんて本当にバカね〕

   

   頭を少し働かせたらわかるじゃない

   とライコは呆れる。


   〔そんな奴らが手を組んだらヤバイ

   ことは確実じゃない。ほら、滅ぼされた

   って書いてあるもの〕

   (オンリードってところはなんでこんな

   ことをしたんだろうな? 記事を見た限り、

   他国に罪をなすりつけようとしたみたい

   だからどうなるかはわかって行動はしてる

   はずだけど……)


   首をかしげる郁人にライコは

   呟いているとあっと声をあげる。


   〔記者も理由までは判明できてない

   みたいね。まあ、バカの考えなんて

   わかるわけ無いわよ。あら! 水竜の国

   ティアマットのトップが女から男へと

   性別が変わったそうよ! だから番を

   探すことに力を入れるみたいね!〕

   (え? 性別ってそんな変わるもんなの?!)


   目を丸くする郁人にライコは説明する。


   〔変わる種族もあるのよ。でも……

   性別が変わったとなると、前に(つがい)

   なんらかの理由で結ばれなかった、

   もしくは死別した場合が多いわね〕


   そんな場合は変わるのよとライコは告げた。


   〔だから、今回はその番を離さないため、

   確実に子孫を残すために性別を変えたり

   するのよね……〕

   (そういった理由があるんだな……)


   郁人は目をぱちくりさせていると、

   ある記事が目に留まる。


   「えっと、”狐福にてぬいぐるみ手作り

   体験実施中”か」

   〔蝶の夢と正式に提携組んだみたいね。 

   それにしても、ピジョンニュースに

   依頼して広告を出すのは可能だそうよ。 

   ドラケネスは温泉旅行の広告、プリグムジカ

   はコンサートの広告も出してるし〕


   各国の広告もあるみたいよ

   とライコは興味深そうだ。   


   〔あら、この体験は前日までなら予約

   可能だそうよ。当日参加は枠が空いて

   たら出来るみたい。へえ〜、ぬいぐるみ

   の型もいろんなのあるのね。定番のテディ

   ベアからうさぎにフクロウ、龍といった

   いろいろなぬいぐるみが作れるみたいよ〕

   「これだけ作れるなんてな!

   ……あっ! 良いこと思いついた!」


   郁人は目を輝かせると、予約した。



   ーーーーーーーー



   ソータウンにあるガーベラの経営する店

   ”狐福”の店内の一角にてぬいぐるみの

   手作り体験が行われていた。


   「本日はぬいぐるみ手作り体験に

   ご参加いただきありがとうございます。

   本日手作り体験の担当をさせていただき

   ます、グラジオラスと言います。

   よろしくお願いいたします」


   肩にかかるほどの長さのふわりとした

   髪の女性の店員、グラジオラスが

   ぺこりとお辞儀した。


   「まずは皆様にぬいぐるみの型紙をお配り

   しますね。予約された際に決められた方の

   席には選んだ型紙をお配りしますので、

   確認のほうをよろしくお願いいたします」


   グラジオラスはそれぞれに型紙を配って

   いく。


   「デル。その……急にごめんなさいね」

   「急にぬいぐるみ作りを一緒にしたいと

   言われたのは驚きましたけど、別に

   構いませんよ」

   「ありがとう、デル」


   郁人は女装し、人型になったデルフィと

   ともに参加しているのだ。


   「その、デルと一緒にしたかったから」

   「本当に気にしてませんから。あとで

   喫茶店に連れて行ってくださるならですが」

   「勿論行きましょ。だから、この格好

   をしているのだもの。体験が終わったら

   親子限定メニュー食べましょうね?」

   「約束ですよ」


   デルフィはふふと微笑むと、型紙を

   手に取り興味深そうにじっと見ている。


   〔あんたどうしたのよ? ぬいぐるみ作り

   をしたいだなんて〕

   (その……デルフィの選択肢を増やし

   たくて)

   〔選択肢?〕


   きょとんとするライコに郁人は理由を

   話す。


   (デルフィって寂しくてあのイクタン達を

   シトロンさん達と造ったんだろ?

   ぬいぐるみ作りっていう選択肢もあれば、

   もう作らないかなあと思って……)

   〔まず、生命を造ろうとしたことと、

   それに協力できる人材が近くにいたのも

   すごいことなのだけど……。

   まあ、たしかに。ぬいぐるみの選択肢も

   あればもうしないんじゃないかしら?〕


   ぬいぐるみ作りに興味あるみたいだし

   とライコは同意した。


   〔あと……あたしが気になってるのは

   あんたの隣なんだけど……〕

   (それは俺も気になってるから……)


   郁人は隣をチラリと見る。


   「へえー! これがぬいぐるみの型紙?

   っていうのね! どれを作ろう……??」


   型紙を興味津々に見ながら選んでいる

   ベロペロネがいるからだ。




ここまで読んでいただき

ありがとうございました!

面白いと思っていただけましたら

ブックマーク、評価(ポイント)

よろしくお願いします!


ーーーーーーーー


水龍が治める国、ティアマット。

朝の光が差し込むなか、そこのトップが

住む部屋から笑い声が響く。


「アハハハハハ!! あの人が戻ってきた!!

生まれ変わってきてくれた!! 前の記憶、

私のことを思い出してくれた!!」


起きて自身の性別が変わったことが

わかった瞬間、番が生まれ変わったことを

理解してトップは瞳を潤ませる。


「ようやく……ようやく結ばれる!!

今度こそはを幸せになりましょう!!  

ずっと一緒に、今まで離れてしまった

分まで一緒にいましょう……!!

誰にも邪魔などさせはしない……!! 

私の力で邪魔する奴は全て泡となって

消してやるのだから……!!」


ずっと肌見離さず身につけている

ロケットペンダントを開き、その中に

収めている写真を優しく指でなぞる。


「貴方が私のもとから離れた理由は

愚妹から聞いたわ。私の為を思って

離れたのでしょう? 貴方は私の夢を

誰よりも応援してくれていたもの……」


写真にぽたぽたと涙が落ちる。

それを拭うと、ロケットペンダントを

閉じた。


「でも、貴方がいないと私の夢は完成

しないのよ? 貴方がいないと……私は……」

「失礼します。本日の仕事内容を……」


扉をノックする音とともに、少女が入って

きた。トップの姿を見て持っていたメモを

落とす。


「姉様……?! その姿は……!!」

「私の番が帰ってきた。至急探すんだ。

草の根をかき分けてでも探せ。

……今度こそは邪魔するなよ」

「……わかっております。姉様。

私はもう姉様の邪魔はいたしません。

姉様の番は必ず見つけ出します」


冷たい声色と剣呑な瞳で見られた

妹は顔を青ざめながら頷くとその場を

去っていった。おそらく、トップの性別が

変わったことと番を探すことを伝えに

行ったのだろう。


「私が男になったのだから、貴方は女と

なっているのでしょうね? どんな姿か

見たいわ。貴方ならどんな姿でも愛する

自信はあるもの。だから……戻ってきて。

私のもとに。私に秘密にしていたこと、

私の隣から去っていったこと、そのまま

死んだことはもう怒らないから……

だから帰ってきて……お願いよ……」


トップはロケットペンダントを抱きしめた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ