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266話 パンケーキ作り




   キッチンで郁人はパンケーキを作りに

   かかる。

   ライラックも手伝おうとしたが、他に

   客が来たのでそちらを作っている。


   「イクトちゃん、試したいことって?」 

   「じつは、プリグムジカで手に入れた

   ベリーを使って、パンケーキを作りたくて。

   フルーツをいっぱい乗せたパンケーキ!」


   アマポセドの作ったタルトを食べて

   パンケーキにも応用出来そうだと

   郁人は考えていたのだ。

   材料などはレイヴンの手掛けた通販サイト

   にあったので購入している。

  

   「あら! どんな感じか気になるわ!」

   「味見用も作るから、そのときに

   一緒に食べてもらってもいいかな?」

   「勿論よ!」


   キラキラと目を輝かせたライラックが

   頷いた。


   「やっほ〜お届けに参りましたよ。

   案内ありがとね、ユー」


   そこにユーとともにアマポセドが

   大きな箱を持ってやってきた。


   「ユー! アマポセドさん!」

   「あら、たしかチイトくんが言っていた

   エンウィディアさんの執事さんよね?」


   郁人とライラックは目をぱちくりさせる。


   「そういう貴方は大樹の木陰亭の女将、

   ライラックさんですよね?

   僕は旦那様、エンウィディア様の執事

   アマポセド。よろしくお願いしますね」


   アマポセドはヘラりと笑うと箱を

   台の上に置く。

   

   「プリグムジカの特産品である

   ムジカベリーとかを渡そうと思ってさ」


   大量にあるからしばらくは使えますよ

   とアマポセドは告げると、箱を開けて

   中を見せる。箱にはぎっしりとムジカベリー

   の他にもいろんな食材が入っていた。

   ユーは箱の中を見て尻尾を振っている。


   「こんなにいいんですか?!」

   「勿論。プリグムジカにも美味しいもの

   あるところをアピールしたいんで。

   まあ、状況から見てタイミングばっちり

   だったようで」

   「すごいタイミング良くてびっくり   

   しました!」

   〔ちょうど使う話をしてたところ

   だものね〕


   郁人は目をぱちくりさせ、ライコも頷く。


   「それは良かった!

   で、ここにいてもいい? 料理の参考に

   したくてさ。勿論、手伝うから」


   アマポセドはお願いと手を合わせた。 

   

   「俺は大丈夫です」

   「私も問題ないわ」

   「ありがとうございます!」

 

   2人に了承してもらい、アマポセドは

   ヘラりと笑う。


   「いやあ〜OKが出てよかったよ。

   料理は僕なりに知ってたつもりだったん

   だけど、いつの間にかいろいろ増えてる

   からさあ。で、僕はなにをすればいい?

   力仕事なら結構得意だよ」


   アマポセドは手をしっかり洗いながら

   尋ねる。ちゃっかり持ってきたエプロン

   も着て、準備万端だ。

 

   「では、卵を割って卵白と卵黄に分けて、

   その卵白を泡立ててもらってもいい

   ですか?」

   「いいよお。どれくらい泡立てる感じ?」

   「角が立つくらいで」

   「了解!」


   アマポセドは頷くと、慣れた手つきで

   卵を割ると、卵白と卵黄にきちんと分け

   はじめた。


   「あっ! 旦那様はイクトちゃんの作ったの

   なら多めに食べると思うから多めに割って

   もいい?」

   「大丈夫です!」


   郁人は了承しながら、疑問に思う。


   (エンウィディアは俺の作ったのだから

   って食べる量が変わるのかな?)

   〔あの俺様人魚全肯定執事が言ってるん

   だからそうなんじゃない? 猫被りとかも

   おかわりしそうだし、多めに作っておいて 

   いいと思うわよ〕


   ライコも同意した。


   (チイト達もだけど、ユーが特に食べる

   もんな。多めにしよう)


   郁人は多めにベーキングパウダーと

   薄力粉を用意した。

   そこへ牛乳を持ってきたユーがやってきた。

   量は多めに用意されており、ユーも

   ちゃっかりエプロンも着用している。


   「ユーもお手伝いしてくれて

   ありがとうな。量は多めに作るから

   助かるよ」


   郁人がお礼を告げるとユーは嬉しそうに

   尻尾を振る。


   「卵黄もらってもいいですか?」

   「いいよお。それにしても、結構

   広いねえ。ここのキッチン。

   見た目からはわからなかったよ」


   しかも、最新のものまで揃ってるじゃない

   とアマポセドはキッチンを見渡しながら

   告げた。


   「ナデシコさんが広くしてくれたんです。

   自分の体内でもあるから大きさとか

   いじれるそうなんですよ」

   「へぇ〜……ナデシコさんってさっき

   旦那様達を案内してたドライアドのこと?」

   「はい、そうですよ」

   「………妖精族ってこんな街中にいる    

   もんなの? 僕の価値観が遅れてるだけ?」


   いたとしても、人里離れたところか

   妖精郷なんだけどなあとアマポセドは

   頬をかく。


   〔これだけ堂々といたら勘違いしそうに

   なるけど、本来ならありえないのよね。

   こんな街中に妖精族がいるのって〕

   (そうなのか?)

   〔妖精は基本妖精郷が出てこないの。

   街中にいるなんて論外。妖精が街にいるって

   言われても誰もが嘘だと思うくらいにね〕


   この全肯定執事の価値観が正しいわよ

   とライコは告げた。


   (……そういえば、妖精って怖がられてる

   みたいだけど、俺は怖く感じないん

   だけどなあ。なんでだろ?) 


   郁人は妖精について考えながら卵黄に牛乳

   をいれ、粉ふるいに薄力粉を入れて振るう。

   そんな郁人にアマポセドが尋ねる。


   「ねえ、イクトちゃん。僕の価値観

   って間違ってる?」

   「いえ、その価値観で大丈夫です。

   ナデシコさんはフェイルートのところで

   知り合って、俺が心配だから来てくれた

   ここまで来てくださったので」

   「…………妖精族と知り合うのって結構

   レアなんだよ? かなりレア。たまたま

   目についた地面に穴を掘ってそこから

   黄金が出て超金持ちになるくらいレア」

   「そうなんですか?!」


   郁人はアマポセドの言葉に目をぱちくり

   させた。ライコはアマポセドの言葉に

   同意する。


   〔あんたは妖精族に会ってるし、卵も

   もらってるからわからないでしょうけど。

   かなり珍しいわよ。妖精に会いたくて生涯

   探し続けた人もいるくらいだから〕

   「君……運が良いっていうか、癖の強いの

   を惹きつけやすいというのか……」


   アマポセドは額に手を当てた。 

   郁人はふと疑問を尋ねる。

  

   「あの、妖精ってなんでそこまで

   怖がられてるんですか? 怖くても

   会いたがる人もいるみたいですけど……」

   「ありゃ、怖がられてる理由も詳しく

   知らなかったの」


   アマポセドは両眉を上げたあと説明する。

 

   「それは昔に妖精族とんでもない事をして

   その報復が凄まじかったからだよ」

   「報復……ですか?」

   「うん。昔に命知らずな馬鹿野郎が

   妖精を生け捕りにして、血を飲んだり、

   羽をむしって食べたりとかそりゃ残酷な

   ことをした奴がいた」

   「………どうしてそんな酷いことを」


   郁人はアマポセドの言葉に顔色を

   青くする。


   「その馬鹿野郎は王様で、自分が長く

   生きるためには1番長寿といわれる妖精

   を食えば良いって考えだったんだよ。

   だから、国を挙げて妖精狩りを始めたんだ。

   狩られた妖精は見るも無惨な状態だった

   そうだよ」

   「無惨な……状態……」

  

   さらに顔を青ざめた郁人にアマポセドは   

   続ける。


   「で、妖精側も黙ったままじゃなかった。

   妖精狩りに怒った冬の妖精王が永遠に

   生きていたいならそうさせてやるって

   妖精狩りした国を丸ごと凍らせ、氷柱が

   空から降り注ぐようにして永遠の苦痛を

   味わえるようにしたんだよ。

   しかも、死なないように魂を固定して

   痛みをずっと与えれるようにもね」

   〔言っておくけど、国を丸ごと凍結や

   永遠に降り注ぐ氷柱、魂の固定とか   

   普通じゃできない事だから。それだけ

   その妖精王がすごいってことだから〕


   ライコはすごいことなんだと念を押した。

   アマポセドは携帯を取り出し、画像を

   見せる。

 

   「ちなみに、その国は今もあるからね。

   今でもずっと氷柱が降り注いで氷像と

   なった奴らに責め苦を与えているよ。

   ほら、これ。報復は今も続いているんだ」


   画像には遠くからだが永久凍土と化した

   国に雨のように氷柱が降りそそぐ光景が

   写されている。


   (……それだけ許せなかったんだな。

   仲間が不当に扱われ、無惨な仕打ちを

   受けたことが……)


   今も続く報復に郁人は妖精の怒りを

   感じだった。


   「…………これってどれだけ前のこと

   なんですか?」

   「えっと、たしか1000年くらい前

   だったか。死霊魔術が歪まされたのと

   同じ年だったはずだよ」

   「歪まされた?」


   首をかしげる郁人にアマポセドは

   しまったと声をあげたあと、口許に

   人差し指をあてる。


   「あっ、この事を知ったらある国から  

   命狙われるからトップシークレッ卜で。

   聞かなかったことにして」

   「………そんなやばいことを口を滑らせ

   ないでください!!」


   郁人は冷や汗をかきながら言うしかない。

   ユーもお前……と言いたげな目で見ている。


   「ごめんごめん! 忘れて忘れて!

   で、妖精族は妖精狩りを止めなかった

   他国にも容赦しなかった。春の妖精王と

   秋の妖精王は自然の恵みが来ないように

   したりして食糧難を引き起こし、夏の

   妖精王は雨を降らせないようにしたり

   といろいろしたんだよ」


   自然を象徴する妖精だから出来る

   ことだよねとアマポセドは笑う。


   「そこから妖精の恐ろしさが露見し、

   人々は妖精を畏れるようになった。

   妖精側もこんな奴らがいる場所にいて 

   られるかと現れなくなったんだよ。

   現れたとしても、見た相手の記憶を

   消したりするからね」 

 

   会った事実を忘れさせるんだよ

   とアマポセドは説明した。

   アマポセドの説明に郁人は納得する。


   「……だから、とても驚いたんですね。

   そんな妖精族がいろんな種族がいる

   街中にいるから」

   「そういうこと。まあ、よく考えたら

   君はあの子と一緒で妖精に好かれやすい

   タイプみたいだし。おかしくはないの

   かもねえ」

   「あの子?」

   「おっ! 泡立ったけどこれぐらい?」


   郁人が尋ねようとする前に、アマポセドは

   綺麗に泡立った卵白を見せた。

 

   「これぐらいで大丈夫です。

   じゃあ、次は……」


   郁人は次の段階をお願いすることにした。

 

   (死霊魔術については……うん。

   聞かなかったことにしよう。俺以外に

   被害がくる可能性だってあるからな)


   チイトに聞こうかと考えたが、

   郁人はやめる選択をした。 

   そんな郁人にアマポセドは尋ねる。


   「ところで、さっきから気になって

   たんだけど……あの手だけのやつなに?

   女将さんと一緒に料理作ってるけど」

   「あの手はメランの眷属だそうです。

   今あそこで配膳してるのがデュランと

   言うんですけど、そのお母さんだそう

   ですよ。最近、働きはじめたって俺も

   メランからコンタットで聞いてました

   けど、実物は初めて見ました」


   手だけで料理出来るなんてすごい

   ですよね! と郁人は告げた。


   「………ここの従業員、人間の割合

   少なすぎない? 死霊も働いてるって

   どんだけだよ」


   アマポセドはため息を吐いた。




ここまで読んでいただき

ありがとうございました!

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ーーーーーーーー


「死霊魔術が歪まされた?

どういうことかしら? 聞いたことないわ」


ライコはあごに手をやり、1000年前の

ことが記載されている書類を取り出す。

 

「全肯定執事があいつにウソをつくメリット

なんて無いから事実の可能性が高いわよね。

えっと……どこに……」


ライコが書類をめくっていると頭に

激痛が走る。


「うっ……痛っ……なに……これ?!」


あまりの痛みに書類を落としたライコは

床にうずくまる。


「っ………?!?!?!」


涙を流したライコはふと痛みがなくなった。


「あれ? あたし……何を調べようとして

してたんだっけ……」


ライコはポカンとしながら、立ち上がると

床に散乱した書類を見る。


「うわっ?! なんでこんな散らかってる

のよ!!」


ライコは慌てて片付けていった。



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