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264話 彼らの密談




   用事を終えた2人はカーネリアン公の

   邸宅が少し見える場に行き、チイトは

   術を施す。

   この術は周囲にこちらが見えず、会話も

   聞かれないようにする魔法だ。

   見て気付いたエンウィディアは尋ねる。


   「なぜ俺をここまで連れ出した?

   しかも見えねえ、聞かれねえように

   までするとはな」


   用があるならとっとと済ませろと

   言いたげにエンウィディアは告げた。

   そんなエンウィディアの態度にチイトは

   目尻を釣り上げる。


   「心当たりがないとは言わせないぞ。

   パパを眷属にしようとした貴様にはな!」


   眷属など許す訳がないだろ!! と

   怒るチイトにエンウィディアは

   わざとらしくため息を吐く。


   「なんだそのことか。くだらねえ。

   どこでもフラフラとふらつきやがる

   クソ奏者様には首輪をつけたほうが

   いろいろと楽だろ?」

   「パパを犬扱いするな! それに、貴様が

   パパのそばにいたいのに、素直になれない

   からそばに置いておきたいだけだろ!

   理由をあとづけしやがって!」


   自分が素直になれないからってパパを

   理由にするなとチイトは舌打ちした。


   「それを言うなら、こちらも言い分が

   ある。あいつが俺の眷属になれば、

   人間の寿命に囚われることはなくなる。

   俺が認めてないとはいえ、周囲には

   神扱いされる俺直属の眷属なればな。

   俺達よりは先にくたばる可能性を

   消せるんだぞ?」


   さらに貧弱になっていやがる奏者をな

   とエンウィディアは告げる。


   「俺が細工した神殿で生活していけば、

   確実になれたのをテメェのワガママで

   邪魔しやがって。しかも、他にも

   邪魔する協力をさせやがったな」


   クソうぜえにもほどがあると

   エンウィディアはチイトを睨みつけた。


   「貴様のものになるのは事実だろ?

   貴様がパパの生殺与奪を握るなんて

   虫唾が走る。それに、寿命対策は

   とっくにしてる」 


   チイトはエンウィディアを馬鹿にした

   ように鼻で笑い、告げる。


   「俺がポンドに渡す際に、あのジジイの

   肉に少し細工を施していたからな。

   もともと竜人の尻尾には不老長寿の効果が

   あるが、パパにはあまり効果が薄いよう

   だったんでな。その効果を高めたといえば

   いいか」


   使えるものは有効活用しなければな

   とチイトが告げる。


   「食わせるのは(しゃく)だったが、その効果の

   ことを考えればなんとか許せる範囲には

   至ったしな。あの戦馬鹿の鱗には効果を

   高める作用もあったようだからそれも

   掛け合わせれば更に効果はあがる」

   「……テメェそんなことまでしてやがった

   のか」


   チイトの行動に両眉をあげるエンウィディア

   にチイトは鼻で笑う。

 

   「音楽以外に興味がない貴様と違い、

   俺は多方面にも知識があるからな。

   それに、効果は少しずつだが出ている」


   チイトはニンマリと笑う。


   「もともと若く見えたし、肌のケアを

   している為、パパ自身気付いていないが

   着実に肉体年齢が若返っている。体力が

   1番あるといわれる17歳に近づいている

   からな。まあ、完全な不老長寿にするには

   定期的な摂取が必要だが」


   老衰で亡くなることは無くなった

   とチイトは告げ、エンウィディアは

   面倒そうに顔をしかめる。


   「んな面倒なことしねえで、俺の眷属に

   すれば1番手っ取り早いだろ」

   「それは断る。貴様のことだ。パパを

   眷属にしたら絶対手離さないだろうが!」


   あの城から絶対に出さないだろ!

   とチイトは断言する。


   「俺より嫉妬深く、あのストーカーが

   ベタベタしていたら1番殺気立ってた

   奴が! それに、自分が認めているのに

   パパが音楽に触れるのをやめて、音楽

   自体を忌避したときにパパを愛憎が

   混じった瞳で見ていた貴様のそばに

   いたらパパが危ない!」

   

   何をしでかすかわかっものじゃない!

   とチイトは告げると思い出したように

   続ける。


   「ああ、でもあれだけは評価して

   やってもいい。パパの音楽に関しての

   トラウマを克服できるようにした点はな。

   おかしいと思ったんだ。パパが夜の国で

   琴を弾くことに思いのほか抵抗をしめさ

   なかったからな」

   「……あいつは克服したい気持ちが

   あったからな。仕方なくやっただけだ」


   と告げるエンウィディアにチイトは

   わざと片眉を上げる。


   「仕方なく……な? わざわざ音楽の時間を

   割き、パパの声に耳をそば立てて位置を

   把握して気づかれないように音に工夫して

   までか? 一気に治してはパパの負担になる

   可能性もあるため、少しずつ慎重にして

   いたのにか? 仕方なくならここまで時間と

   手をかけなくてもいいだろうに」

   「……うぜえ」


   チイトに鼻で笑われ、エンウィディアは

   舌打ちする。


   「いい加減、素直になればいいのになあ?

   あぁ、そうか。パパが自分の評価する

   歌などを否定する姿を見続けた結果、

   見事ひねくれたお前には到底無理な話

   だよなあ?」

   「……うるせえんだよ」


   エンウィディアは冷たい瞳でチイトを

   にらみつける。

   まとう雰囲気もだんだん深海のように

   暗く冷たいものへと変貌していく。



   が



   「旦那様ー! チイトくんどこです

   かあー?」

   「そろそろ行くよー!」


   2人を呼ぶ声がした。


   「パパが呼んでる」

   「……」


   2人は郁人の声に先程までの張り詰めた

   空気を霧散させた。

 

   「そういえば、フェイルートの奴が

   あとで呼び出すとコンタットで言っていた。

   今日は早めに寝るんだな」

   「クソうぜえ。どうせトラウマの件だろ。

   テメエが説明しとけ」

   「面倒だから断る」


   チイトにあっさり断られてエンウィディアは

   舌打ちしたが、思い出したように口を開く。


   「テメェもあのデケえ人魚から飛び出した

   光を調べろよ」

   「……わかってる」

   「……ならいい。結果だけ教えろ」


   チイトの声色からエンウィディアは

   なにかを察知し、触れることはやめ、

   エンウィディアはその場を去った。


   「………いろいろ推測したが、どうしても

   覆せないんだ。なんとしても否定したい

   のに」


   呟くチイトの瞳はがらんどうのよう。

   空っぽでなにも映さない。



   「絶対にそれだけはいけないんだ。

   絶対に……!!」



   チイトは拳を固く握りしめた。




ここまで読んでいただき

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