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259話 コンタットの内容




   バゲットと別れた郁人達は迷宮を出て

   街中を散策していた。


   「戦いがあると思いましたが……」

   「全くなかったな……」

   「大剣を抜くタイミングすら無かった」


   感想を言い合うポンド、篝、ジークス。

   郁人も感想を告げる。


   「観るだけで終わっちゃったな……。

   景色とか綺麗だったけど」

   「観光になったからいいんじゃない?」

   〔まさか、迷宮の魔物があんたをあれだけ

   歓迎するなんてね……〕


   ライコは思わず呟いた。


   ーーーーーーーー


   バケットと別れたあと、迷宮の魔物に

   挑もうとしたが、迷宮の魔物は郁人に

   会うと、貝殻と真珠で作った首飾りを

   渡してきたり、歓迎の踊りを踊ったりと

   魔物達から歓迎を受けたのだ。


   戦意の無さに篝とジークスは最初警戒して

   いたが次第に薄れ、ポンドとユーは郁人に

   渡される食べ物をさりげなく遮ったりし、

   チイトは郁人に抱きついて警戒心マックスで

   あった。クフェアだけはやっぱりと楽しげに

   笑っていたが……。


   「クフェアは理由を知っていそうだった

   けど」

   「じつはアマポセドさんから……

   "イクトちゃん達が今、旦那様の鱗を

   加工したものを迷宮に持って行っているんだ

   よね。ちゃんと渡されたものだから、迷宮の

   子達が旦那様と仲良しだと判断して歓迎する

   と思うから戦闘無いと思うよ"」


   クフェアがアマポセドのマネをしながら

   続ける。

  

   「"だから1人でも安心して迷宮に入れる。

   とくにイクトちゃんってば旦那様の神殿に 

   いたから眷属と勘違いされてるんじゃ

   ない? 新入り歓迎みたいな感じで?"

   と聞かされていたからね」

   「道理で郁人に集中していた訳だ」


   クフェアの言葉に篝はなるほどと頷いた。

   郁人はエンウィディアの鱗が加工された

   ものを見る。


   「これが理由だったのか……」

   〔たしかに、あんたはあの神殿にずっと

   いたもの。それにしても……あの迷宮は

   元神、あいつが神だったときに構築したもの

   だけど、今では俺様人魚に受け継がれてる

   なんてね〕

   (え?! アマポセドさんが作ったのか!?

   まず神は迷宮を作れるの?!)


   ライコの言葉に郁人は目を丸くした。

   ライコはそのまま続ける。


   〔……本来は言っちゃダメだけど、先に

   猫被りに言われるよりはいいわね。迷宮

   には自然発生したものと神が作ったもの

   があるのよ。神が作るといっても、この

   世界の神しか作れないけど)


   管理する神、あたしが関わると世界へ

   の影響があり過ぎてヤバいことになる

   可能性があるからしないわとライコは

   述べる。


   〔あと、作る方向性は決めてもどうなるか

   ランダムだから滅多に作らないようね。

   あっ、そういえば……人間を見限った

   ここの神の1柱が積極的に作って楽しんで

   たみたい〕

   (そうだったんだ)


   ライコの話を聞いているとクフェアが

   声をかける。


   「じゃあ、俺はそろそろ行くよ。

   旦那に入職希望者を連れて行かないと

   いけないからさ。

   ところで、とくにイクトくんはこの先

   ちょっと大変なことになるだろうけど

   頑張ってね」

   「えっ? それはどういう……」


   ー 「ねえ!」


   じゃあねと去っていくクフェアに

   尋ねようとした郁人は後ろから声を

   かけられた。

   振り向けば、街の人達が集まって郁人を

   見ている。

   

   「なんだ貴様ら?」

   「すごく集まっているな……」

   「ここら一帯の奴らが来てそうだ」

   「なぜでしょうか?」


   チイトはすぐ警戒態勢に入り、ジークス、

   篝、ポンドも構える。


   「えっと、なんでしょうか?」


   郁人が尋ねると、集団の1人が口を開く。


   「あんた、エンウィディア様の伴奏で

   歌っていた人で間違いないか?」

   「はい。そうですけど……」


   質問に答えると、人々は矢継ぎ早に

   声をかける。


   「次はいつ公演するんだい?!」

   「君の歌、とても素晴らしかったよ!!」

   「短期間であれだけ歌えるなんて……

   本当にすごいわ!」

   「またエンウィディア様とコンサートする

   なら、事前に告知をお願いしたい!

   次は会場で聞きたいからさ!」


   瞳を輝かせた人々は郁人の歌を賛美する。


   「その……公演はもう……」

   「ぜひぜひ! 次は観客入れて楽神様と

   コンサートを!」

   「メモリーシェル、記録貝に記録して

   販売などはしないのか?」

   「家でも聞きたいわ!」


   郁人はもう舞台に立つつもりはないので

   伝えようとしたが人々に熱意と物理的に

   押されて話すこともできない。


   「パパ! 大丈夫?!」


   すぐさまチイトが郁人を守ったため

   押しつぶされないで済んだ。


   「ありがとうチイト」

   「これではこのまま潰されそうだな」

   「どれだけ来てるんだよ!」


   ジークスと篝はなんとか押し返そうと

   するも、次から次へと来るためどうしよ

   うもない。力づくで行きたいが、怪我を

   させてはいけないので難しいのだ。


   「はいはーい! 皆さん落ち着いてー!」


   そこへ、パンッと手を叩く音ともに

   声が聞こえた。


   「そのままじゃ彼ら潰れちゃうでしょ?

   ほい、離れる離れる」


   声の主はアマポセドだ。連れてきた

   メパーンと共に集まってきた人々を

   郁人達から離していく。


   「それで彼が怪我したら公演もなにも

   ないでしょうが。メモリーシェルには

   もう録音していつもの店で販売してるよ。

   次の公演は未定だから今買っとかないと

   後悔するんじゃない?」

   「楽神様が歌われていたあの激しめの

   魂を揺さぶる曲はありますか?!」


   質問にアマポセドはヘラっと笑いながら

   答える。


   「もちろん〜。ちゃあんとあるから

   安心して。ほらほら早く行かないいと

   売り切れちゃうよ」

   「急がないと……!」

   「早く行かないといけないわ!!」


   集っていた人々はアマポセドの言っていた

   店へとメパーンの誘導のもと駆け足で

   向かった。


   走り去っていく人々の背中を見送ったあと

   アマポセドは告げる。


   「君達、災難だったねえ。

   でも、もう少し有名人だという自覚を

   持ったほうがいいよ。特にイクトちゃんは

   旦那様と公演したんだから」

   「あのとき、汚染されていた奴らの

   意識は無かったんじゃねえのか?」


   篝の問にアマポセドは答える。


   「患者の話を聞いたけど、1部の人は

   あったみたいなんですよね?

   体は言う事を聞かない、助けを求めたくても

   どうしようも出来ないで精神がやられそうに

   なっていたところイクトちゃんの歌を聞いて

   落ち着いたそうで。旦那様の歌では盛り上

   がって精神完全回復だとか」

   「そうだったのか!」

   「驚きですな!」


   アマポセドの答えに驚くジークスとポンド。

   チイトは気にせず質問する。


   「おい。パパの歌を記録してたのか?」

   「旦那様に指示されてね。自分の歌を

   客観的に聞く機会にもなるからってさ。

   僕的には売って次の公演に繋げるつもり

   だけど」

   「あの、俺はもう公演は……」


   郁人の言葉にアマポセドは手を横に振り

   無理だと笑う。


   「それは無理でしょ。旦那様あぁ見えて

   次の公演のこととか考えてるし。

   月1ではないだろうけど、年内にはまた

   やると思うよ」

   「マジかぁ……舞台に立つの緊張するん

   だよなあ。パール座の空気に呑まれると

   言うか……」


   パール座の迫力がすごいし……と緊張を

   思い出す郁人にアマポセドは尋ねる。


   「でも、歌うのは嫌じゃないんでしょ?」

   「はい。歌うのは良いんですけど……」

   「なら良いでしょ。"ね?"」

   「…………えっと、はい」

   〔こいつ、圧があるわね……〕


   アマポセドの圧に耐えきれず、郁人は

   頷いてしまった。そこにコンタットの

   通知音が響く。


   「すいません。携帯を見てもいいですか?」

   「構わないよ。あっ! あとで旦那様にも

   連絡先教えてあげてね。僕もよろしく」

   「はい。あとで教えますね」


   郁人はアマポセドに了承をとったあと、

   携帯を確認し目をぱちくりさせる。


   「あ! サイネリアからだ。ドラケネスで

   なにかあったのかな?」

   「さいねりあ? 誰だそいつ?

   そいつとコンタットで連絡とりあってる

   のか?」

   「サイネリアはヴィーメランスの友達でさ。

   ドラケネスでオススメのご飯とか綺麗な

   場所とかヴィーメランスがどうしてるか

   とかコンタットで教えてくれるんだ」


   篝の質問に答えながら、サイネリアからの

   コンタットを見た郁人は息が止まる。


   「…………………」

   「どうしたのパパ?」

   「なにかあったのか?」


   気になったチイト達が画面を覗きこむ。

   コンタットの内容はこうだ。



   《ヴィーくん大激怒……!!!

   でも、周囲が真っ赤に染まって綺麗だよ☆

   ヴィーくんの炎ってすごいよね!》



   コンタットの軽い文面とは裏腹に、送られた    

   画像には自撮りしているサイネリアが写って

   いるが目が笑っておらず、その背景には怒り

   に染まったヴィーメランスが炎で周囲を

   燃やし、炎に逃げ惑う人々が写っていた。




ここまで読んでいただき

ありがとうございました!

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