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ドラケネスのホワイトデー


遅れましたが、ハッピーホワイトデーです!




   ドラケネスでは、少女がある者達に

   配っていた。


   「ハイハーイ! こちらお届け物でーす!」

   

   少女、チェリンは満面の笑みでお届けし、

   自身が発明したブーツにローラーを付け、

   風の魔石で加速するブーツ。

   ローラーブースターブーツでまさに

   風のように去っていく。


   「なにを届けに……これって?!」


   配達された物を見た人々は喜びの声を

   あげる。


   「ヴィーメランス様からのお返しだ!!」


   ヴィーメランスからのホワイトデーの

   お返しである。


   ーーーーーーーー


   城の1室にて用意された紅茶を飲みながら

   サイネリアは口を開く。


   「まさかチェリンがヴィーくんのお返しを

   配達してるのは驚いたよ!」

   「配達の仕事をしてる者のなかにチョコに

   仕込んだ輩がいたからな。

   そいつに万が一でも当たればお返しの品を

   奪われる可能性があったからな」

   「やっぱり、仕込んだ人達にはお返し

   しないんだね」

   「するわけがないだろ」


   品を渡すのは仕込んでない者達だけだ

   とヴィーメランスは告げた。


   「でも、どうしてチェリンに任せたの?」

   「あいつは仕込まれていたことも知っており

   お返しになにかする奴でもないことは

   わかっているからな。だから任せた。

   俺が直接返しにいけば面倒事になりかね

   ない」

   「あぁ〜たしかに……。

   直接もらったら勘違いしそうな子もいる

   もんね」

      

   ヴィーくんから貰えたらねえ

   とサイネリアは納得する。


   「それにしても、チェリンにどんな報酬を

   渡したの? これぐらいしないと報酬と

   釣り合わないって言ってたけど」

   

   会ったときに言ってたんだけどと

   サイネリアが尋ねるとヴィーメランスは

   答える。


   「もしかしたら、またあいつに危険物の

   処理を頼む可能性があるからな。

   先払いの意味も込めてワイバーンの鱗、

   それとは別に卵を渡した」

   「卵?!」


   サイネリアは思わず飲んでいる紅茶を

   噴き出しかけた。

   なんとか飲み込んだサイネリアは声を

   あげる。


   「あの子、体質的に魔物に近寄られないのに

   大丈夫なの?!」 

   「ブレイズに聞いたがワイバーンにはあまり

   効果が無いようだ。ただ、あいつの熱意が

   あり過ぎて怖いらしい」

   「あぁ~……なるほどね」  

   

   以前、ワイバーンを追いかけているチェリン

   を目撃したことあるサイネリアは納得した。


   「でも、どこで卵を手に入れたの?

   ワイバーンは今、迷宮出身以外は保護され

   てるよね?」


   サイネリアの言葉の通り、ワイバーンは

   国の保護化に置かれている。

   迷宮出身のワイバーンは迷宮がある限り

   減ることはないのだが、邪竜戦争の際に

   迷宮出身以外のワイバーンは一気に減って

   しまい、絶滅危惧種になりつつあるからだ。

 

   「密猟者の手にあった。偶然、密猟の場面

   に遭遇し、捕まえたんだが親はもう息絶え

   ていた。卵は保護施設に預けようと思った

   のだが、施設の者達と魔力の相性が良くな

   くてな……」

   「それは預けれないね……。

   ワイバーンの卵は魔力を少しずつ注いで

   育てるもんね。相性悪かったら最悪衰弱死

   しちゃうし……」

   「俺も相性は微妙だったからな。

   で、相性の良い者を探していたらあの

   アーティストと合ったんだ。

   あいつから貰った作品に付いていた魔力を

   卵が吸収して発覚した」

   「なるほど! だからチェリンに!」

   「あぁ。協力の品に鱗、卵は保護目的で

   渡したんだが、卵も報酬と思ったようでな」

   「保護目的で渡されるとは思わない

   だろうね……彼女今までずっと逃げられ

   まくってるから……」


   いつも逃げられては落ち込んでたし

   とサイネリアは眉を下げる。


   「卵もあいつに会わせて問題なかったため

   渡したから大丈夫だ。あいつ、卵の経過

   報告を俺に渡すとも言っていたしな」    

   「それなら大丈夫だね!

   で、ヴィーくんはお返しになにを渡したの?」

   「紅茶と感謝を書いたメッセージカードだ。

   手紙が付いていた者にはきちんと返答も

   書いた」

   「えっ!? 全部に書いたの!?」


   目を見開くサイネリアにヴィーメランスは   

   頷く。


   「あぁ。魔術なども施しておらず、

   きちんとした物だったからな」

   「いやいや! あれ結構な量だったよね!?

   それに全部感謝のメッセージカード付けて、

   手紙が付いていた人にはその返事って……!

   ヴィーくん真面目過ぎだよ!!」

   

   あれだけあったのに全部?!

   と驚くサイネリアにヴィーメランスは

   答える。


   「貰ったものにはきちんと返したほうが

   いいだろう。わざわざ代筆屋などに頼むほど

   伝えたかったのだからな。カードなども

   1日にどれだけ書くか決めていれば終わる。

   代筆屋の精神が崩壊してないか心配になる

   文の者には感謝のカードは書いていないが」

   「……ヴィーくん、本当に真面目だね」


   貰った人達が泣いてた理由はこれかあ

   とサイネリアが納得していると、

   ヴィーメランスが後ろの机を見る。


   「貴様にも勿論用意してある。

   そこで隠れている女王にもだ」  

   「……バレてましたか」


   ヒョコッとリナリアが机の下から顔を

   出した。

   じつは、サイネリアとリナリアは用があると

   ヴィーメランスに呼ばれこの部屋で待機して

   いた。

   が、リナリアはあのヴィーメランスに

   呼ばれたことに緊張し、ヴィーメランスが

   執務室のドアをノックしたときとっさに

   隠れてから今まで隠れていたのだ。


   リナリアは恥ずかしそうにしながら

   サイネリアがひいた椅子に座る。

 

   「陛下、バレてましたね……」

   「いつからお気づきに?」

   「部屋に入ったときからだ。

   呼び出した側で待たせたのは俺だからな。

   なにか言いたいことをまとめているのかと

   思い、紅茶を淹れて様子を見ていたが……

   その様子では何もないようだな」


   なぜ隠れていたんだと不思議そうに

   しながらヴィーメランスは用意していた

   ものを紙袋から箱を2つ取り出す。


   「呼びだした理由はこれだ。

   返礼品を渡したかったからな」

   「返礼品ですか?」

   「返礼品ってもしかしてヴィーくん!」


   キョトンとするリナリアとハッとする

   サイネリアの前にヴィーメランスは

   2つの箱を開けた。


   「バレンタインの礼だ。

   紅茶とアップルパイを用意した」


   それは紅茶の缶とつやつや光るパイ生地に

   香ばしいバターの香りと柔らかな甘い匂い

   のするアップルパイだ。

   とても美味しそうで2人は目を輝かせる。


   「アップルパイというのですか!

   とっても美味しそうです!」

   「それにとても大きいですよ、陛下!!」  

   「2人で食べ切れる大きさにしたからな」


   ヴィーメランスは大きさの理由を述べる。

   

   「本来はそれぞれに用意しておくべきだが

   女王には毒見係が必要だからな。

   だが、毒見係に知られてはいけないと

   考えた。俺にチョコを渡したことは

   誰も知らない様子だったからな」


   秘密にしているならば俺から(おおやけ)

   するのは良くないだろと説明する。


   「だから、サイネリアを毒見係とすれば

   問題ないと判断し、2人で飲食できるもの

   にすれば良いと考えた。だからこれは   

   2人で食べると良い。俺が言うのもあれだが

   美味くできた自信はある」  

   「ヴィーメランス様の手作りなのですか?!」

   「えっ?! ヴィーくんが作ったの?!」

   「? 公にしてないのだから、バレる

   可能性はなくしたほうがいいだろう。

   買いにいけばバレる可能性は高まるからな」

      

   目を丸くする2人にヴィーメランスは   

   席を立つ。

   

   「ゆっくりここで食べるといい。

   食器などはそこの棚に置いてある」


   ヴィーメランスは棚を指差すと、

   2人を見る。


   「改めて言うが、女王、貴様のチョコは

   目でも楽しめ、甘さが程よかった。

   サイネリアのチョコは食感に工夫が

   してあり、食べていて飽きがこなかった。

   貴様らのチョコは本当に美味しかった、

   礼を言う」


   ヴィーメランスはそう述べたあと、

   部屋を出ていった。

   その姿をしばらく見守っていたサイネリアは

   喜びを爆破させる。


   「〜〜〜〜〜〜!!!!

   陛下!! ヴィーくんからお返し貰え

   ましたよ!! 」

   「……これは夢? なのでしょうか?」

   「いえいえ!! 現実ですよ陛下!!

   ほら!! こんなに美味しそうなアップルパイ

   がありますよ!!

   しかも、ちゃんと何が使われているか

   説明を書いたヴィーくん直筆のカードも

   あります!」


   ぽかんとするリナリアにサイネリアは

   カードを見せる。


   「ヴィーくんは気遣い屋さんですね!

   陛下のお立場を考え、材料などを記し、

   毒見なども考えて2人で食べれるように

   ここに呼んだみたいですから!」

   「ヴィーメランス様が毒など使われないと

   わかっておりますのに……」

   「僕達はわかっておりますが、周囲は

   気にされますからね。

   ほら、いただきましょう!

   わっ! ちゃんと銀食器用意してくれてる!

   本当にきっちりしてるなあ!」


   食べる用意をしながらサイネリアは笑う。


   「陛下! バレンタインのチョコ渡して

   良かったですね!」

   「えぇ……! 本当に良かったです!!」


   リナリアは花がほころぶ笑みを浮かべた。


   2人は嬉しそうに紅茶を飲みながら、

   アップルパイを美味しく食べたという。


  


ここまで読んでいただき

ありがとうございました!

面白いと思っていただけましたら

ブックマーク、評価(ポイント)

よろしくお願いします!


ーーーーーーーー


ドラケネスの代筆屋。

識字率は高いのだが、字を書ける者が少ない

ので手紙などを書く際は書ける友人や代筆屋

に頼むことが多い。

普段はそこまでなのだが、バレンタインが

近づくごとに大忙しだ。


「えっと、ヴィーメランス様にですね!

かしこまりました!!」

「あの〜……これ書かなきゃいけません?

この執着満載のラブレター……」

「え? ヴィーメランス様って恋人

いませんよね? え? 私が恋人?

…………夢と現実を混同するのはちょっと」


ほとんどがヴィーメランス宛の手紙であり

いろいろと思うことがある内容がほとんど

だ。

代筆屋のスタッフは手紙に書くことを

録音した魔道具を机に置きながら愚痴る。


「ヴィーメランスさんの人気半端ねぇー」

「なんだよこの思い込み満載の内容……。

書く俺と読むことになるヴィーメランス様

かわいそう……!!」

「俺は普通に感謝の内容だったぞ!

あのとき助けてくれてありがとう

ございます! おかげで親と再会出来ま

したって!」

「羨ましいんだけど……!! こっちの執着

満載のと代われ!!」

「嫌でーす!」


と話しながらも手を動かすことはやめない。

そんなスタッフ達はヴィーメランスについて

話す。


「救国の大英雄様、こんな手紙貰いまくっ

たら精神過労で倒れない? 俺なら絶対倒れ

るね!」

「……せめて注意書きでも付けとく?

これを読んだらいろんな意味で病みます

とか?」

「もうそれ呪いの手紙だろ!

……まあ、注意書きはあってもいいん

じゃね?」

「……お願いです、大英雄様。

依頼者を嫌いになっても、俺等代筆屋の

ことは嫌いにならないでください……!!」


代筆屋は胃を痛めながらも報酬は

貰っているので仕事をやり遂げた。


ホワイトデーにて、ヴィーメランスから

いたわる内容の手紙が届いて全員がひっくり

かえることになることはまだ知らない……。



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