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254話 元神とその眷属




   プリグムジカは今、ある話題で

   もちきりであった。


   「あの演奏会! すごかったわね!!」

   「突然気を失って起きたら演奏が

   始まってたもんな!」

   「歌っていたのはエンウィディア様が

   舞台で言ってた人なんでしょ?

   歌ってもらって良かったわ!

   エンウィディア様の歌がまた聞けるもの!」

   「歌っていた人も聞いてて心地よかったわ!

   また歌わないかしら?」

   「エンウィディア様の伴奏で歌って

   いたんだろう? 羨ましいけど、それ以上に

   感動しちゃったんだよなあ……」


   エンウィディアと郁人の演奏のことだ。


   感染していた者達は気を取り戻したあと

   見上げながら聞いていたのだ。


   「それで今は城に呼ばれたんだっけ?」

   「突然のコンサートだったからじゃないか?

   舞台を背負って泳ぐクジラの事も聞きたい

   んじゃない?」

   「あんなクジラ? シャチ? が居た

   なんてなあ」


   街の人々は演奏会について話すなか、

   郁人達は城にいた。


   ーーーーーーーー


   城内は静まり返っており、玉座には

   誰もいない。

 

   「貴殿達が集められたのはいうまでもない」


   しかし、その場には郁人達が集められ

   ている。


   「無論、あの演奏についてだ。

   国の許可なく、国の上で演奏会……。

   もし、あのクジラ? が暴れたりしたら

   どう責任をとるつもりだったのか?!」


   女王の夫でもある神官は詰問(きつもん)している。


   「まず、あのような未知のものを

   国の上に泳がすなど……」

   「テメエは相変わらずうるせえんだよ。

   言いたいだけならそこらへんの物にでも

   ゴチャゴチャほざいてろ」

   「貴殿もご自身の身の上を理解していない!

   この国の至宝! 国宝である自覚すらない!」

   「それはテメエらが勝手にしたことだろ?

   俺には関係ねえ」

   「国宝……そういえば聞いたことあるな」


   郁人が呟くと、チイトが補足してくれる。


   「パパ知ってたんだ。あいつ、国を

   護るサンゴがファンになってるからね。

   サンゴがあいつの演奏聞くごとに元気に

   なって、国を護る力が強まるから特別に

   認定されたみたいだよ」


   前の神を倒して神殿に居座っても

   何も言われないのはこれもあるよ

   とチイトはこそっと教えてくれた。


   「なるほどな……」

   「あー! ここにいたんだあ!」

   「リアーナ! 今は話を……」


   そこへリアーナが現れた。場の空気なども

   無視して、郁人達の前に進む。


   「あんとき、稚魚ちゃん助けてくれて

   あんがとね。稚魚ちゃん安静にしてれば

   体力とか回復するからって部屋でおネム

   してるんだあ」

   「おい! リアーナ!」

   「別に要件話したら帰っからさあ。

   そうタコみたいに真っ赤になんねーの」


   父親に対し、顔をしかめながらも続ける。


   「でさ、姉ちゃん夜の国にいるから

   近々行こうと思ってんの。連絡もとれる

   ようになったけど直接会いてえし。

   また向こうで会ったらいろいろ紹介してよ。

   君はあそこの専属パーティなんでしょ?

   だから、よろしくねえ〜」


   夜の国の家具に興味あんだよねえ

   とリアーナは続ける。


   「てか、君から姉ちゃんの匂いした

   のって姉ちゃんが鱗を渡してたから

   なんだね。姉ちゃんが言ってた。

   先に言ってほしかったなあ〜」

   「いや……あのときはリアーナさんと

   夜の国のマリンリーガルズに繋がりが

   あるとはすぐにわからないかな……」

   〔まず、口を挟む隙も無かったわよね〕


   頬をふくらませるリアーナに郁人は

   頬をかく。 


   「そっか。見た目じゃわかんないもん

   ねえ〜。俺っちってば人型だもん」

   「リアーナ!」

   「はいはーい、うるさいなあ。

   じゃ、俺っちは稚魚ちゃんのとこ戻るねえ。

   向こうで会えたらそん時はよろしく〜」


   父親からの何度もの叱責にリアーナは

   気だるそうに頭をかいたあと、手を

   ひらひらと振りながら去っていった。


   〔……あの子、本当に自由ね〕

   (本当にな……)


   嵐が去ったあとのようで、郁人は

   リアーナの背中を見つめた。

   神官は咳払いをしたあと、口を開く。


   「そして貴殿達にも言いたいことは山程

   あるが……女王陛下はこの国の恩恵を考え、

   無しとなった」

   「恩恵?」

   「それもまた話すね。

   おい、女王はどこにいる?

   呼び出した本人がいないのはどういう

   ことだ?」

   「女王陛下はここにおられる!」


   チイトの言葉に神官はなにもない玉座に

   いると告げた。


   「……いないよな?」

   「私も見えませんが……」


   郁人とポンドは首を傾げた。


   「? そこに居られるが?」

   「いるぞ」


   それにジークスと篝はいると断言した。


   〔どういうこと? あたしには居るように

   見えるのだけど?〕


   ライコもキョトンとしている。


   「………見えてないのか。パパはポンドの

   おかげで効かないのかな?

   俺は違和感を覚えたからわかったけど」


   とチイトが呟くと指を鳴らした。


   瞬間、チイト、郁人、ポンド以外の

   者達がハッとする。

   居たはずの女王がどこにもいないからだ。


   「女王陛下……?!

   女王陛下がいらっしゃらない!!」


   神官は顔を青ざめるとすぐに近衛兵に

   指示を出す。


   「女王陛下を今すぐに探すんだ!

   もし御身に危機があれば一大事!!

   貴殿達は帰っていい! もう2度と国の上に

   泳がせないように! するとしても、

   きちんと女王陛下の許可を得てからだ!

   女王陛下!! 一体どちらに!!」


   神官は告げると慌てて去っていった。

   その後ろ姿を見送りながら郁人達は

   口を開いた。


   「郁人、お前は気づいていたんだな」

   「うん。最初からいなかったから

   なんで集められたのかさっぱりで……」

   「私もさっぱりでしたな」

   「パパはポンドと契約してるから、

   見えたんだろうね。死霊にあぁ言った

   幻覚は効かないから」

   「なる程。では、女王はどちらに?」

   「どこにいるんだろうな?」


   ジークスと郁人が首を傾げるなか、

   エンウィディアが呟く。

   

   「あいつのところだから問題ないだろ」


   ーーーーーーーー 


   城から離れたところにある、女王の

   お気に入りの場所。

   淡い色したサンゴや海藻が揺れる、

   陽の光が差し込む場所にて女王は

   アマポセドとともにいた。


   「久しぶり……というべきかな?

   うん。言うべきだね。元気にしてた?

   いやあ~君が女王、まさか国を治める

   ようになってたなんてな。

   お兄さん、いや、元神としては

   驚きだよ。君は昔から泣き虫でよく

   きょうだいの後ろをついていて、僕の

   そばから離れたら大泣きしてたんだもの」


   アマポセドは懐かしいと目を細める。


   「本当に……懐かしいよ。そして嬉しく

   思う。よく生き残ってくれた。よく、

   生き続けてくれた。本当に……ありがとう」

   「ー♪ーー♪♪」


   女王は声が震えながらアマポセドに

   頭を擦り付け、体を巻きつける。


   「生きてたなら教えてほしかった?

   いやいや、教えるとちょっと厄介な奴に

   気づかれるかもしれないからね。

   それに、今の僕は前といろいろ違うでしょ?

   性別からなにまで全てが違う。   

   もう"神"じゃあない。

   武闘派なお兄さんになっちゃったから」


   今更どの面下げて会いに行けば

   良いのか? とアマポセドは頬をかく。


   「それに、会いに行ったら君は

   神をやめそうだったし」

   「ー♪ー♪」

   「神は僕以外いない?

   いやいや、君はもう神だよ」


   アマポセドは抱きつく女王の頭に手を

   置きながら、告げる。


   「君は人々から信仰された正真正銘の

   立派な神様だ。僕はもう神じゃない。

   エンウィディア様、旦那様に仕える

   お兄さん、アマポセドだから」


   アマポセドは女王の頭を撫でる。


   「……いやあ、ほんとうによく頑張ったね。

   僕が遺したサンゴをちゃんと使って

   国を、人々を守ったんだから。

   ……前の神は守り方を知らなかった。

   脅威を排除するだけで安穏を与えなかった。

   だから、人々は自分達も排除されるかもと

   ずっと怯えていた。

   それを見てられなかったんだろう?

   君は誰よりも優しかったからね」


   他の子達が教えてくれたよ

   とアマポセドは微笑む。


   「そんな人々に君は安穏を与え、

   平和をもたらした。

   君はもう……立派な神様だ。

   わたくしが消えてしまっても、

   生きていてくれてありがとう。

   わたくしのかわいい、我が眷属。

   優しい我が子よ」

   「ーー♪!!」


   女王はアマポセドにしがみつき、

   しばらく泣いていた。




ここまで読んでいただき

ありがとうございました!

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よろしくお願いします!


アマポセドは神の頃、眷属を自身の子供として

大切にしておりました。

今はアマポセドとしてですが、復活したので

他の眷属も復活してきてますが、

唯一アマポセドが討たれたときからの

生き残りはマリンリーガルズだけです。


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