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249話 クジラなのかシャチなのか




   「アマポセドさん?!」


   郁人が思わず叫んでしまうのも無理はない。

   

   アマポセドが突然自身の腹に三叉槍を

   突き刺したのだから。


   〔なにしてるのよ?! なんで自分のお腹を

   刺してるの?!〕


   ライコも思わず叫んでしまう。


   「どうしていきなり……え?」


   パニックになっていた郁人だったが、  

   あるものを見て凝視してしまう。


   「青……色?」


   アマポセドの腹から流れる血が青色だった

   からだ。その海のように深い青色はドクドク

   と流れ、床を青く染めている。


   「どうして……?! まさか病気とか

   なのか?!」


   とにかく治療しないとと慌ててホルダーから

   カラドリオスの羽根を出そうとした郁人を

   チイトが止める。


   「大丈夫だよ、パパ。あれがあいつに

   とって通常の色だから。それより、

   もっとスゴイの見られるよ」


   めったに見れないからと楽しそうに声を

   弾ませたチイト。


   「どういう……」


   尋ねようとした瞬間、アマポセドの様子が

   変わった。


   「えっ……?! 体が……!!」

   〔どうなってるの?! 体とあの槍も

   光になってるわよ?!〕

  

   アマポセドの体はなんと光の粒子と

   なっていき、地面に吸い込まれているのだ。

   アマポセドの腹を貫いた三叉槍も

   粒子となり地面に吸い込まれている。


   ー 瞬間


   「うわぁっ!?」


   ぐらりと地面が大きく揺れだしたのだ。


   「地震?!」


   横揺れしたかと思えば縦に揺れだし、

   あまりの揺れに郁人は倒れそうになる。


   「パパ、大丈夫?」


   が、チイトが支えたので問題ない。

   心配そうにチイトは尋ねた。

   郁人はチイトに感謝する。


   「うん、大丈夫。ありがとう」

   「倒れそうになるのも仕方ないよ。

   だって、地面ごと浮いてちゃってるし」

   「地面ごとって……?」

   「ほら、見て見て。これが外から見た様子

   だよ」


   どういう事? と首をかしげる郁人に

   チイトがわかりやすいようにと空中に

   四角を描くとスクリーンが現れた。

   そのスクリーンには目を疑う光景が映る。


   「嘘……?!」

   〔そんなのあり!?〕



   ーーーーーーーー 



   「劇場に入ってきていた者は今ので

   最後か?」

   「そうだな。あとは入ろうとする奴らを

   防いでチイトから貰った薬を打って

   クフェアに渡すだけだ」

   「そうですな」


   ジークス、篝、ポンドの3人はパール座内に

   入ってきていた者達に少しずつ薬を打ち

   パール座の中で治療しているクフェアの

   ところへ投げている。


   「ちょっと君達! ポイポイ投げ過ぎ

   だから! 少しは加減してくれないかい?!

   俺の手は何本もある訳じゃないし、

   ましてや俺1人なんだよ!!

   あとMr.カガリ! まだ2人は配慮しながら

   投げてるけど、君は無遠慮過ぎるよ!」


   大怪我でもしたらどうするんだい!!

   とクフェアは人々の治療にあたりながら

   愚痴を飛ばす。


   「遠慮ならもうしてる。してなけりゃ首が

   折れてるだろ?」

   「なに自慢げに言ってるんだ君は?!

   君は暴れる患者を抑える役目なんだから

   命の保証は大前提なんだよ!」


   まったく! と叱りながらクフェアが

   治療にあたっていると突然地面が揺れた。


   「なっ!?」


   ジークス、ポンド、篝の足先の地面に

   ヒビが入ると、地割れが起こる。


   「カガリ、ポンド! 足元に注意を!」

   「見ればわかる!」

   「いきなりどうなっているのですかな?!

   この地域は滅多に地震など起らないはず!

   ましてや地割れなど……!!」

 

   3人は地割れから急いで離れ、パール座に

   入る。  


   「おっと! 危ない危ない! 割れたら

   一大事だ!」


   クフェアは慌てて特効薬を落とさないよう

   気を配る。


   「一体なにが?」

   「これは……?!」

   「どうなってやがる!?」


   ジークス達の3人は思わずぽかんとしながら

   パール座の外を見ている。


   いつの間にか、先程までいた感染者の

   集団はどこにもいない。自分達の視界は

   どんどん上にあがっている。


   「まさか……?!」

    

   現状を把握したジークスは思わず呟いた。


   「地面ごと移動しているのか?!」


   先程の揺れは地面ごと動いたときによる

   ものであった。パール座ごとどんどん

   浮かび上がっているのだ。


   「感染者達はどうなった?!」


   慌ててジークスが端まで向かい、下を見る。

   すると、感染者達が海の中へと沈んで

   いるのが見えた。


   「ここが海中で良かった……。

   でなかったら、彼らも無事では

   済まなかったな。本当に良かった」


   沈む感染者達がそのま海底に傷1つなく

   落ちている姿に安堵する。


   「ジークス殿! 地面どころの話ではない

   ようです!」

   「ここから見てみろ」


   篝の示す先を見て、ジークスは言葉を

   失った。


   「…………………………!!!!!!」

   「言葉を失うのは当然ですな。

   私も認識するのに時間がかかりました」

   「これはどうなってやがる……?」


   ポンドも苦笑し、篝は頭をかいた。


   「君達、どうして外を見て呆然として

   いるんだい? 患者達が突然消えたみたい

   だけど……」


   投げ飛ばされた患者達の治療を終えた

   クフェアがやってきた。


   「同じ方向を見ているけど、どうか……」


   外を見てジークスと同じように

   言葉を失ったあと、目を見開く。


   「これは……クジラなのかい?!

   いや、シャチなのかい?!」


   クフェアが言葉をこぼしてしまうのも

   無理はない。


   なぜなら、今まで自分達が地面と認識

   してものが全く違っていたからだ。


   外から見えるのは大きなヒレだ。

   地平線のその先に見えるのは大きな頭。

   逆を見てみれば尾ビレと尻尾が見える。



   ー なんと、大きな生き物の背中に

   パール座が乗っているのだ。



   パール座があったあとには生き物の

   埋まっていた形跡が残っている。


   「これはじつに面白い!! この生き物を

   調べてみたい!! 外見的特徴はクジラと

   シャチが混ざったような特徴だがどちら

   なんだ!? 大きさ的にはクジラだけど、

   あそこにある普通のシャチとは位置がずれて

   いるが背びれの特徴はシャチ……!!

   本当にどちらなんだ! それとも2つの種族

   が混ざっているのかい?! それに、今まで

   埋まっていたのだとしたらどのように呼吸を

   していたのか! どのように食事はとって

   いたのか! もしくは食事は必要ない

   のか?! こんな巨体で今までどのように

   誰にも見つからずにじっと息を潜めて

   いたんだろう……!! あぁ……!!

   本当に……!!! 調べたくてたまらない

   よ……!!」


   クフェアは好奇心にキラキラと瞳を

   輝かせ、頬を赤くして興奮している。


   「まずはなぜこいつが動いたのか

   気にならないのか?」

   「この方の好奇心はそちらには

   動かなかったのでしょうな」


   眉をひそめる篝にポンドは告げた。


   「この生き物……もしやあの文献に

   記されていた……?!」


   ジークスが思い当たる節があり、

   目を見開いていると音楽が聞こえる。



   ーーーー!!!!!!



   荘厳なパール座には似つかわしくない、

   魂の底から揺さぶるような、激しく

   心を駆り立てるようなギターの音だ。

   同時に、地を揺らすようなドラムの音、

   ベースの音も聞こえる。


   「この音は一体?!」

   「これは……ロックか!?」


   そして、パール座が音とともにどんどん

   姿を変えていく。


   <皆様〜まもなく旦那様による演奏が

   はじまりますんで〜。ぜひ、耳の穴を

   かっぽじってお聞きください。

   聞き逃すなんてもったいない真似

   すんなよ>


   クジラ? からアマポセドの声がした。




ここまで読んでいただき

ありがとうございました!

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ーーーーーーーー


風魔王はなにかを感じ取ったのか

ふとパール座を見る。


「おお! これはまた珍しい光景よな!」

「なにが……は?」

「わあ!! あれってクジラ?

でも、特徴はシャチのものもあるね……」


風魔王の言葉に黒狼は見上げ固まる。

錬金術師は興味津々な様子だ。


「文献から知ってはいたが……

まさか実物を見れるとは……!」


マリンリーガルズはさぞ驚くであろうな

と風魔王は口角を上げる。


「なんであんなんが埋まってたんだよ?!」

「埋まってたっていうよりむしろ……」


錬金術師が考えていると後ろから魔物が

襲いかかる。


「おい!」


気付いた黒狼が迫りくる魔物を斬ろうとした



「思考の邪魔をしないでくれるかい?」


錬金術師は後ろを見ずに即座に錬成した

レイピアで刺した。


「思考の邪魔をされるのは好きじゃ

なくてね」

「……相変わらず、とっさに錬成出来るの

スゴイな」


たしか錬成するにはなんか道具が必要

なんじゃなかったか? と黒狼は頭をかく。


「僕には必要ないよ。道具が合ったほうが

邪魔になるんだ。手元がかさばるしね」

「世の中の錬金術師が聞いたら

発狂しそうだな」

「兄様も出来るんじゃないかな?」

「まあ、余もしようと思えば出来るな」

「……本当に規格外だな、あんたらは」


黒狼は迫ってきた魔物を斬りながら

ため息を吐いた。




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