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247話 汚染された人々への対応は……




   ジークス、ポンド、篝の3人はどんどん

   こちらへ近づいてきている汚染された

   住人達を眺める。

   この3人が汚染された住人の相手をする

   ことが決まったからだ。


   「出来るだけ傷つけないようにしないと

   いけないな」

   「そうですな。この方々は操られている

   だけですからな」

   「面倒だが仕方ない」

   「おい、貴様らにこれを渡しておく」 


   そんな3人に後方にいたチイトがあるものを

   投げ渡す。それはボールペンのようなノック

   式の注射器だった。


   「それに俺が作った痺れ薬が入ってある。

   汚染された奴らに打ち込めば汚染の影響を

   受けていようが関係なく動けなくすることが

   可能だ。痺れも時間経過でとれる。

   薬の在庫もあるから打てるだけ打て」

   「いつの間に作っていたんだ?」

   「こうなる可能性があったからな。

   その対処として作っていただけだ」 


   ジークスの質問にチイトは面倒そうに答え、

   再び口を開く。

  

   「打ち込んだあとの処理はあいつに

   任せればいいだろ。汚染の特効薬も

   そいつに渡しておく。適材適所だ」

   「あいつ?」


   篝が誰だとはてなマークを浮かべた瞬間、

   汚染された人だかりの向こうから音がする。


   「これは随分と賑やかだね! 祭りが行われ

   ているかと勘違いしそうなほどのお祭り

   騒ぎだ!」 


   それはバタバタと倒れていく音だ。

   音はどんどんこちらへ近づいてくる。


   「君達は無事だったか。それは幸運だ!

   頭上失礼するよ!」


   聞き覚えのある声とともに人だかりを

   ピョイッと跳び越えてこちらへやってきた。

   郁人はその人物に目をぱちくりさせる。


   「クフェアさん!」

   「やあ! こんにちは! いきなり住人達

   がおかしくなったからね。こっちを襲って

   きたものだからとりあえず拘束してたら

   音符ウミウシくんに指示されてこちらに

   来たんだ。失礼。入らせてもらっても?」


   クフェアが結界をノックした。

   ユーが頷くと、クフェアは入ってくる。


   「いやあ、これが結界か! 初めて見たよ!

   いろいろと聞きたいけど、それどころじゃ

   ないよね?」

   「まあな。俺達は今からあの群衆にチイト

   特製の痺れ薬をもちいて制圧にかかる。

   だから、群衆の治療を頼めるか?

   汚染の特効薬もチイトが持っている」

   「準備万端じゃないか。もちろん、

   構わないよ。ちなみに、聞くのも野暮かも

   しれないけど在庫はどれくらい?」

   「問題ない」


   尋ねられたチイトは指を鳴らすと、

   空間から木箱がたくさん出てきた。


   「まだ予備もある」

   「それは心強い! 俺は制圧された人々の

   治療にかかるとしようじゃないか」


   クフェアは箱の中身を見て、

   大丈夫そうだと笑った。


   「じゃあ、俺達はいくぞ」

   「マスターはこちらでお待ちください」

   「いってくる」


   篝、ポンド、ジークスは結界から出て

   感染者の群れへと向かっていった。


   「君達も無理はしてはいけないよ。

   もし怪我をしたらすぐに言うように」


   クフェアも箱の中身をポシェットに

   入れるとあとに続く。

   その背中を郁人は心配そうに見送る。


   (みんな、大丈夫かな?)

   〔大丈夫でしょ。てか、あのゾンビ映画

   顔負けのあれはなによ?! 夢に出ちゃう

   じゃない!!〕

   (それは俺も聞きたいけど……あとにしよう)

   「おい」


   見ていた郁人にエンウィディアが

   声をかける。


   「気もそぞろなようだが出来たのか?」

   「大丈夫。もう書けてるから」


   郁人は自身が書いた楽譜を見せる。

   テメェが考えるあれに響く音を楽譜に書け

   とエンウィディアに言われたからだ。


   「で、エンウィディア、俺が言ったこと

   なんだけど……」

   「無理じゃねえ。テメエが言ったような

   音は演奏可能だ。この楽譜があるからな」


   エンウィディアは郁人が書いた楽譜を

   奪い取り、見る。


   「……なるほど、こんな感じか。

   この楽譜を奏でるのは可能だが、

   これであれは起きるのか?」

   「起きるよ。あの子が絶対に忘れたくない

   ことをイメージして書いたから」

   「……そうか。おい」

   「なんです? あっ、人魚はそろそろ動き

   はじめそうですけど」


   人魚の様子を眺めていたアマポセドが

   振り返る。


   「俺が演奏する間、あれの相手しとけ。

   この曲は攻撃を避けながらの演奏では

   届かないからな」

   「わかりましたよ。仰せのままに。

   ちなみに、あれ使ってもいいですかね?」

   「あれはてめえのもんだ。好きにしろ」

   「はいはーい。じゃ、いってきまーす」


   アマポセドはへらっと笑うと結界を出て

   人魚のもとへ向かった。

   その姿に郁人は慌てる。


   「1人で大丈夫なのか?!」

   「問題ねえよ」

   「大丈夫だよパパ。で、貴様はとっとと

   やれ」

   「今やってもあの人魚に邪魔されるだろ。

   雑音がなくなってからだ」


   エンウィディアは演奏の準備だけする。


   「俺を待たせるんじゃねえぞ」


   エンウィディアはアマポセドの背中を見た。


   ーーーーーーーー 


   人魚は自身に単身で立ち向かう男を見る。

   その視線を受け止めながら、アマポセドは

   いつも通りヘラリと笑う。


   「うひゃあ、これは面倒な状態だな。

   あのガキ、魔力タンクにはちょうどいいが

   混ざり過ぎだろ」


   アマポセドは頭をかきながら、

   取り込まれているクリュティを見る。


   「引き剥がすの面倒そう〜。

   旦那様の音で起きなかったら遠慮なく

   狩るか」


   あれは僕に殺されても仕方ないし

   とアマポセドは腕を伸ばす。


   「そんじゃあ、まあ。はじめますか」


   瞬間、アマポセドの手には三叉槍(さんさそう)

   握られていた。

   その三叉槍は黄金に輝いており、

   どこか雷を思わせる雰囲気がある。   


   「こいつも起きるきっかけかねえ?

   あれが勝手に使ってたし」


   三叉槍を構え、へらりとまた笑うと、

   一気に駆け出した。


   〜♪〜〜♪♫


   人魚はアマポセドを見ると、歌を歌う。


   すると、周囲に水で形づくられた

   魚が現れた。

   そして、アマポセド目掛けて襲いかかる。


   「歌に魔力こめて作るかぁ。

   でもなあ……」


   ひらりと跳んでかわした、アマポセドは

   魚達の頭上で構える。


   「雑魚が増えた程度で別に何も

   意味ねーんだよ!」


   魚達の頭上に槍の雨が降り注ぐ。


   アマポセドが槍を目にも止まらない速さで

   魚を刺突しているのだ。


   逃げ場はどこにもなく、槍の雨を

   ただ受け入れるのみ。

   魚達は水へと戻り、なにもなくなる。


   「こうやってちまちま消してくのも

   手間だなあ……狙うか」


   アマポセドは目をスッと細めると、

   再び構え、駆け出した。


   人魚は再び魚を作り上げて攻撃させるが、

   アマポセドはそれをかわし、攻撃が

   当たりそうなら槍で消していく。

   最低限の動きで敵を捌いていく。


   「よいしょお!」


   向かってきた敵を1体つかむと、

   そのまま人魚に向かって投げた。


   人魚は素早くまばたきをした後、

   すぐに投げられた魚をもとの液体、

   水へと戻した。


   水しぶきがあがる瞬間



   「よそ見してられるほど、

   僕は弱くないんですよねえ。

   ……前よりなあ!!」



   声が聞こえたと同時に人魚の喉に

   激痛が走る。

   叫び声をあげたくてもあげられない。



   ー なぜなら、喉を斬られたからだ。



   すぐに再生しようとしても、戻らない。

   なにかが邪魔をしている。


   人魚は喉に触れると、痛みとはまた違う、

   なにかが手を走った。


   「ビリビリして痛いでしょ?

   やっぱり、水には聞くもんなんですねえ。

   電流ってやつはあ」


   アマポセドはニヤリと笑い、三叉槍に

   光が走る。


   「あれ、電気だ!」


   結界の中で見ていた郁人は目を

   ぱちくりさせた。

   

   「あの三叉槍は雷を操る力を持ってる

   ようだよ。だから、再生しようにも電気が

   邪魔をして出来ないみたいだ」


   チイトは人魚を分析する。


   「あれで煩わしい音もなくなったから、

   あのゾンビみたいなのも増えることは

   ないね」

   「音……?」


   郁人はなんのことだと首を傾げる。


   「あとでいろいろ説明するね。

   それより、ほら。あいつの準備も出来た

   みたいだよ」


   チイトが指差す先にはエンウィディア

   がいた。

   エンウィディアは竪琴を持っている。


   「旦那様! 準備万端ですよ!」

   「見りゃわかる。テメエは邪魔されねえ

   ように引き続き相手してろ」

   「了解! 引き続き仕事にかかります!」


   アマポセドはヘラっと笑うと人魚の注意を

   引き付ける。


   〜♪


   竪琴の音色が春のそよ風のように響いた。




ここまで読んでいただき

ありがとうございました!

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よろしくお願いします!


ーーーーーーーー



プリグムジカの外れ。

風魔王が作った囲いの中、黒狼は

槍を振るう。


「こりゃあ、面白えじゃねえか!

見たことねえのもいやがる!」

「其方は本当に楽しげに戦うものだ」

「……あんたはなんで優雅に茶をしばい

てんだよ」


黒狼が振り返れば、いつの間にかテーブルと

椅子が用意されており、そこで風魔王は

茶を呑んでいる。しかも、茶菓子まである。


「いや、少し小腹が空いてな。

だから飲んでいるのだ。

うむ、我が弟が作った菓子は相変わらず

頬が落ちそうなほど美味であるな」

「………………俺の分も置いておけよ」

「よいぞ。置いておいてやろう」


ここが戦場であるにも関わらず、

いつも通り茶を嗜む姿に黒狼は頭を

かきながら告げた。本当にいつもの事

だからだ。風魔王は別の小皿に黒狼の分を

置いていく。


「兄様! この魔物はフリットに良さそう

だよ! 新鮮な食材がいっぱいだ!」

「………げっ」


目を輝かせる錬金術の後ろの光景に

黒狼は思わず声を出してしまった。


錬金術の後ろでは、ゴーレムの手により

魔物がすり潰されたり、斬られたりと

まるでまな板の上で調理されているかの

ごとき光景が広げられていたからだ。


「こりゃまたえげつねえな……」

「本当は1体1体丁寧に処理したいん

だけど次から次へとやって来るからね」

「なるほどな。では、余が軽く風で……」

「あんたは茶でもしばいてろ!」


風魔王の言葉に黒狼はある光景を

思い出し、顔色を悪くしながら止めた。



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