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236話 フメンダコと音符ウミウシの力作




   郁人はフメンダコに連れ去られ、部屋で

   測定を受けていた。


   「これって……なにしてるの?」

   〔多分だけど……あんたの身長とかを

   測ってるんじゃない? ほら、メジャーとか

   持って記録してるもの〕

   (本当だ)


   良く見てみるとたしかに測ったものを

   小さな手(?)で器用にノートへ記録している。

   そのノートを部屋で待機していた

   音符ウミウシに渡し、その音符ウミウシは

   ユーとデルフィがなにか話しているようだ。


   「何を話してるんだろ……?」

   〔さあ? あいつらにしかわからないこと

   かもしれないわね……〕


   とくにあの不思議なやつは死にかけてた

   あんたを助け出すくらい不思議だもの

   とライコは呟いた。   

 

   「ママ! 俺のこと呼んだ?」


   デルフィは話している途中だったが

   関係なしに郁人へ向かった。


   「見てはいたかな。でも、なにか話して

   なかったか? こっちに来てよかった

   のか?」

   「話してたけど、先代に任せた!

   ママ……本当に起きてよかった……!!」


   俺心配したんだよ! と郁人に抱きつく。


   「心配かけてごめんな」

   「もうこんな状況になっちゃダメだよ!

   ママがピンチになってるってわかって

   ピューンって急いで来たんだから!」

   「急いで来たってどうやって来たんだ? 

   あと、ピンチもどうしてわかったんだ?」


   首をかしげる郁人にデルフィは

   自慢げに答える。


   「あのね! ママは俺のママだから!

   ママがピンチになったらわかるの!」

   「……………そうなのか?」

   「そうなの!」

   〔説明が説明になってないわよ……〕


   ライコはわからないわとため息を吐く。


   〔あとで別の奴に聞いたほうがよさそうね〕

   「あっ! 用意出来たから着て欲しいって!

   先代も協力したからすぐに出来たみたい!」


   デルフィが郁人の背中を押す。


   「用意って?」


   きょとんとする郁人にユーはグッと指をたて

   フメンダコといつの間にかいた

   音符ウミウシが一斉に襲いかかる。

 

   「うわあああああああ!?!?!?!?」


   ーーーーーーーー


   「パパ! 大丈夫?!」

   「どうかしたのか?」

   「声からしてそこまで緊迫感のある

   ものじゃねえのはわかるが……」

   「驚いているのはわかりましたが」


   郁人の声を聞き、全員が郁人が居る部屋に

   駆け寄る。


   「開けるよ!」


   チイトはそのままドアを開けようとしたが、

   エンウィディアが先に自身の長い足で

   ドアが開くのを防いだ。


   「用は済んだろ? ならさっさと帰れ」

   「貴様こそパパの歌を聞いたら終わりだった

   筈だが? なぜ付け足した? もう貴様は

   永遠にそこらで奏でてろ」

   「テメエに俺がどうこうする事を

   言われる筋合いなんざねえんだよ。

   テメエこそ、そこらで癇癪じみた   

   ガキみてえにジタバタ暴れてろ」

   「…………これも交流の一環か?」

   「……そうだと思いたいな」


   ギスギスした空気に篝はこぼし、

   ジークスは苦笑する。


   「うひゃぁ~旦那様ったら災厄くんと

   仲良いんだ~。

   ………旦那様の仲良しポジションは

   この僕なのにっっ!!」

   「アマポセド殿はあれを仲良しと

   カウントされるのですかな?」


   ポンドは疑問符を浮かべながら

   悔しがるアマポセドに尋ねた。

   アマポセドは指差しながら告げる。


   「仲良しじゃん! 旦那様ってば用がある

   とき以外は睨むか舌打ちぐらいしかしな

   いもん!」

   「今までそれでコミュニケーションを

   とれてましたな……」

   「旦那様の目を見たら自然とわかるように

   なったんで」

   「おい! もう開けるぞ」


   篝は空気などお構い無しに隙をついて

   扉を開ける。


   「あっ! 篝! みんなもいたんだな!」


   そこには着飾った郁人がいた。


   郁人の頭上にはエンウィディアと

   同じ輪が存在し、波を思わせるベールを

   かぶり、ふわりと揺れている。

   普段と違い、二の腕や背中が出ており、

   黄色の薔薇がアクセントの神秘的な

   衣装はこの神殿とマッチングしていた。


   「………貴様、自分の服装に寄せたな」

   「……………」


   チイトは胡乱(うろん)げな目でエンウィディアを

   見る。


   「しかも、ところどころ貴様の趣味が

   出てないか? ここに来る前、あっちにいた

   頃に花嫁のベールをやけに見ていたときが

   あったが、こうしたかったからか?

   パパに着てほしくて、前から計画してたか?」

   

   「貴様は直接告げることが苦手だから

   こういう手段に出たのか? シンプルに着て

   ほしいって言えばパパは着てくれるだろ

   うに……。貴様は本当に面倒だな」

   

   「あと、背中出し過ぎじゃないか?

   水中の抵抗無くすためとかいろいろ言い訳を

   ほざきそうだが、絶対に貴様の趣味だろ、

   おい」

  

   「いつもの減らず口はどうした?

   そういえば、貴様は図星をつかれると

   いつも黙っていたな」


   「…………………」 


   チイトは矢継ぎ早に詰め寄るが、

   エンウィディアは知らぬ存ぜぬを

   突き通すようだ。


   「フメンダコ達が突然着せてきたから

   驚いたな……」

   〔測っていたのは服を作るためだったのね〕


   いつ作ってたのよとライコはこぼした。


   (こうやって仕立ててもらうのはありが

   たいし、とても嬉しい。けど、すごい

   神聖な感じがして落ち着かないんだよ

   なあ……)


   着るのも恐れおおくなってきた郁人は改めて

   衣装を見る。


   (二の腕とか背中が出てるし……。

   前の、母さんにセクハラ企んだ奴が

   無理やり押し付けてきた背中がら空き

   謎セーターよりは布面積多いけど、

   やっぱり落ち着かないなあ……)


   なにか羽織るものがほしいなあと郁人は

   思う。

   

   すると、ユーがどこからか品の良い

   ストールを持ってきてくれた。


   「ありがとう、ユー。

   もしかして……これも作ったのか?」


   郁人は受け取ったストールに小さくユーの

   イラストが刺繍されていることに気づいた。

   ユーは自慢げに胸を張る。


   「ユーすごいな!」

   「先代ばかりずるい! 俺に内緒でした!

   俺も! 俺もあとで刺繍する!」


   デルフィは俺もあとでする! と

   羨ましそうだ。


   「イクト……とても似合っているが、

   こうしたほうがいいのではないか?」


   じっと見ていたジークスが自身の

   サイドポーチから髪紐を取り出すと、

   郁人のサイドの髪を編み込み、リボン

   結びした。


   「それならこれもいいだろ」


   篝はいつの間にか用意していた

   イヤーカフを取り出し、郁人につける。


   「……やはり似合うな。前からお前には

   これが似合うと思っていた」


   篝は自慢気に笑う。


   「勝手に付け足すんじゃねーよ」


   気づいたエンウィディアは苛立ち、

   眉をしかめた。


   「貴様の趣味がだいぶ緩和されたな。

   俺も……」

   「絶対にさせねえからな。

   これ以上ゴテゴテにしてたまるか」


   空間から取り出そうとするチイトを阻止し、

   ガンを飛ばすエンウィディア。


   「旦那様あああああ!!

   イクトちゃんばっかりズルいいいいい!!

   僕にもなにかくださいよおおおおおお!!」


   そこへアマポセドがエンウィディアに

   半べそで近寄った。


   「テメエにはあれやったろ」

   「あれはもともと僕のですううううう!!

   盗られてたのを旦那様が返してくださった

   ものですううう!! 僕も旦那様から欲しい

   欲しいいいい!!!」

   「ウゼエ!! 離れろテメエは!!」


   ごねて抱きつくアマポセドを

   エンウィディアは眉をしかめながら

   引き剥がしにかかる。


   「パパ、こいつ誰?」

   「この人はアマポセドさん。

   エンウィディアのマネージャーみたいな    

   感じなのかな? 神父でもあり、執事みたい

   なことしてるから」

   「そうなんだ! 教えてくれて

   ありがとう!」


   チイトはお礼を告げたあと、アマポセドを

   見る。


   「……成る程。あいつが」


   チイトの呟きは誰の耳にも届かなかった。

   



 

ここまで読んでいただき

ありがとうございました!

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ーーーーーーーー


少し前、ライコは郁人に注意していた。


〔あんたが死にかけてたってわかったときは

意識が飛びかけたのよ!!

あんたはもっと気をつけなさい!〕

(本当にごめん。でも、正直なんで死にかけ

たのかもわからないし……。こうやって、

無事に戻ってこれたんだからさあ)

〔…………あんた本当に自覚が無さすぎる

わよ〕


ライコは思わずため息を吐く。


〔あたしもなんでかわかっていないけど、

用心に越したことはないのだから!〕

(本当にごめん。次は無いようにするから)

〔本当にそうしてよね!

それにしても、あの子供はなんだったの?

なんかどこかで会ったような……

会ってないような……?〕

(………どうだろうな?

俺からはなんとも言えないかな。

自分から会って言いたいだろうし)


馬に蹴られるのはゴメンだからな

と郁人は呟いた。


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