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さみしんぼうデルフィ




   郁人がプリグムジカに行ってから

   デルフィはとてもさみしかった。


   「ママ……」


   それはそうだろう。

   卵のときからほとんど離れたことが

   なかったのだから。

   朝から晩まで、おはようからおやすみまで

   ず〜っと一緒にいたのだから。


   (ばあちゃんやナデシコ、メランに

   先生や博士、オッキーもいるから

   ひとりぼっちじゃないけど……

   ママはいない……)


   郁人の自室でさみしさを埋めるように

   タンスから郁人の服を持ち出して、

   鳥の巣に似たものを作ったりしている。


   (ママがコンタットでビデオ通話して

   俺のこと気にかけてくれてるけど……

   やっぱりママに抱っこしてほしいなあ)


   今晩もおやすみ通話してくれたが、

   さみしいものはさみしいのだ。


   (もっと通話していたいけどママは

   音楽の授業で大変そうだもん……)


   ワガママ言ったらママの睡眠時間が

   削れちゃうとデルフィは我慢している。


   「ママ……」

   「デルフィくん、いるかしら?

   入ってもいい?」


   郁人の服にくるまっていると

   扉をノックする音とともにライラックの

   声が聞こえた。


   「うん! いるよ! 入っても大丈夫!」

   「失礼するわね」


   了承を得たライラックが入ってきた。

   手にはなにか持っている。


   「ばあちゃんどうしたの? それなあに?」

   「これはデルフィくんへのプレゼントよ。

   開けてみて」

   「えっ?! 俺に!?

   ありがとう、ばあちゃん!

   中はなんだろ?」

 

   デルフィは突然のプレゼントに目を

   ぱちくりさせながらも礼を言うと

   包装を取って、箱を開けた。


   「わあっ!! ママだ!!」


   プレゼントは郁人のぬいぐるみだ。 

   ぬいぐるみにデルフィは目をキラキラと

   輝かせる。


   「私やジークスくんのぬいぐるみを

   見てたでしょ? ほしいのかなっと

   思って、お願いして作ってもらったの。

   本物には敵わないけど、少しでも

   寂しさはまぎれるかしら?」

   「……ばあちゃん気付いてたの?」


   さみしがっている事を気付かれないように

   していたデルフィは目をまるくする。


   「いつもよりお菓子を食べる量が

   少なかったし、扉をよく見てるもの。

   いつもそばにいたから、寂しいわよね」

   「……うん。さみしかった。

   だから、このぬいぐるみありがとう!

   本当にうれしいよ!

   ありがとう! ばあちゃん!」


   やった! 俺のぬいぐるみ!

   とデルフィは嬉しそうに頬ずりする。


   「今日はこのぬいぐるみと一緒に

   寝るんだ!」

   「喜んでもらえて嬉しいわ!

   あと、よかったら一緒にココアでも

   どうかしら? 私もイクトちゃんが旅に

   出てる間さみしいもの」

   「……いいの?」


   ライラックの気遣いにデルフィは胸を

   ぽかぽかさせながら尋ねた。

   ライラックは微笑みながら頷く。   


   「ええ。もちろんよ。

   飲みながら、イクトちゃんが来た頃の

   お話でもしましょうか」

   「ばあちゃんのお話も聞きたい!

   ママがばあちゃんに助けてもらったとき

   ばあちゃんがとっても綺麗でカッコよかった

   って言ってたもん!」

   

   ばあちゃんのお話も聞きたい!

   とデルフィはぴょんぴょん跳ねる。

   

   跳ねながら催促(さいそく)する姿にライラックは

   唇をほころばせる。


   「わかったわ。期待に添えるかは

   わからないけど話してみようかしら」

   「やったあ! ばあちゃんのお話が

   聞ける!」

   「じゃあ、ココアを淹れてくるから

   待っててくれる?」

   「うん! 俺ちゃんと待ってる!」


   元気よく返事したデルフィの

   頭を撫でたあと、ライラックは

   ココアを淹れにいった。  


   その後ろ姿を見送ったデルフィは

   胸をぽかぽかさせる。  


   「ばあちゃんも優しいなあ!

   ママがたまごを受け取ってくれて

   本当に良かった!」


   約束を守ってくれたあの子達にも

   お礼を言わないと! と尻尾を振りながら

   デルフィは郁人のぬいぐるみに抱きつく。


   「ホントにママそっくり!

   ……そうだ! 俺もママ作ろう!」


   材料はあれを使おうかな!

   とデルフィは上機嫌で携帯を取り出す。


   「俺ひとりじゃ失敗するかもしれないから

   オッキーや博士にも手伝ってもらおっと!」

  

   デルフィはさっそくコンタットで連絡する。


   この行動がとんでもない事になるきっかけに

   なるとはこのとき誰も知らなかった。



  


ここまで読んでいただき

ありがとうございました!

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よろしくお願いします!


ーーーーーーーー


明け方、オキザリスはあわてて

シトロンのもとへやってきた。


「我が友! 昨晩デルフィからコンタットが

来てマシテ……」

「俺にも来ている。

"作りたいから手伝ってほしい"とな」

「そうだったのデスネ!

で、どうしマス? 手伝いますカ?」

「普段ならどうでといい事に俺を

呼ぶなと断っているが……」


オキザリスはあごに手をやる。


「我が友は材料が気になるんですネ?」 

「あぁ。使う材料が俺の興味を惹くものだ。

これは俺でも滅多に手に入らない

貴重なものだからな」

「まず、あそこから外に出てくることが

ほとんどありませんからネ」

「だから、作業の片手間でなら口出し

してやる。貴様は聞かれたらアドバイス

でもしてやるといい」

「わかりまシタ! 私から返信しておきマス!」


オキザリスはすぐにデルフィに返信した。


「そうだな。ここで作るならいろいろと

協力してもらうか。白い妖精は貴重だからな」

「危ないことはさてないでくださいヨ。

我が友のシェフに怒られますし、

なにより、女将さんも怒りますカラ」

「……………………わかっている」

「今、絶対怒られそうな実験に

協力させようとしましたネ」


舌打ちしたシトロンにオキザリスは

シトロンの行動に目を光らせないとと

心に刻んだ。


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