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子供の頃を見てみたくて

遅ればせながら、子供の日ということで

書きました!




   「よし! 描けた!」

   「すごい! パパ上手だね!」

  

   郁人の自室にチイトと子供になっている

   郁人がいた。  

 

   絵を描く郁人をチイトは嬉しそうに見守り、

   ユーも郁人の近くで見ている。

   その後ろでは、ポンドがお茶を人数分

   用意していた。

  

   「おや、描き終わったのですな」

   「うん! 見て! こっちがユーで、隣が

   チイトさん! で、こっちがポンドさん!

   ポンドさんの鎧を描くの大変だったけど

   がんばったよ!」

   「私の鎧もここまで細かく……

   とてもお上手ですな!」

   「へへ、ありがとう」


   満面の笑みを浮かべる郁人を見ながら

   ポンドは経緯を思い出す。


   郁人が子供になっているのは、シトロンと

   チイトが共同開発した薬の影響だ。


   シトロンはライラックのひと(こと)


   『その頃のイクトちゃんが見てみた

   かったわ』


   と篝から郁人の子供時代の話を聞いた

   感想から。


   チイトは篝の話を聞き、(ストーカー)が知っていて

   俺が知らないのは気に食わないの精神が

   きっかけで共同開発されたのだ。


   薬の影響で、郁人は10才。

   篝と出会った頃の年齢に戻ったのだ。


   表情筋も薬で動くようになっているが、

   なんと記憶までも10才の頃に戻っている。

   薬の影響が消えたら、10才になっていた

   記憶は残らないそうだ。


   (薬の影響で小さなマスターはこの状況を

   夢だと思っているそうですが、そのほうが

   よろしいでしょうな。いきなり見ず知らず

   の土地に1人きりは辛いでしょうから)


   夢と思っていたほうがいいでしょう

   とポンドは考える。


   「ポンドさん! 鎧は重くないの?」


   そんなポンドに小さな郁人は尋ねた。

   見慣れない鎧が気になっていたのだろう。


   「鎧はカッコいいけど、重たいって

   聞いたことがあるから」

   「大丈夫ですな。私は力持ちですので。

   ほら、この通り」


   尋ねた郁人をポンドは軽々と抱き上げた。


   「マスターを持っても平気ですな」

   「わあ! 高い! ポンドさん力持ち

   だね!」


   視点の高さに郁人はキャッキャと

   はしゃいでいる。


   「パパ! そろそろおやつが来るよ」


   チイトが魔法で郁人を奪い取ると、

   そのまま抱える。

   郁人は魔法に目をキラキラと輝かせる。


   「わあ! ビュンって飛んだ!

   スゴイ! もう1回やりたい!」

   「またあとでね」

   「やった!」

   「イクトちゃん、おやつ出来たわよ!」


   花を飛ばしながらライラックがやって来た。


   「おやつだ! いいにおい!」


   郁人はおやつに頬を染めながら

   チイトの腕から降りてライラックに

   走り寄る。


   「クッキーを焼いてみたの! マシュマロを

   挟んだものもあるから、たくさん食べてね!

   ジュースも持ってきてるわ!」

   「わあ! 美味しそう!

   ありがとう、ライラックさん!」


   ライラックはテーブルにおやつと

   ジュースを乗せたお盆を置く。

   郁人はクッションに座り、礼を告げると

   手を合わせる。


   「いただきます!

   ……うん! 美味しい!」


   クッキーをモリモリと頬張る郁人は

   まるでリスのようだ。

   ライラックはそんな郁人の頭を撫でる。


   「本当にかわいいわ!

   お仕事じゃなかったら、ずっとそばに

   いれるのだけど……」


   残念だわ……とライラックは呟く。


   ライラックを励ますように、

   ユーは子供の姿になっている郁人の

   写真を見せる。


   「あら! いつの間にか撮ってたのね!

   私もほしいわ!」


   ライラックの言葉にユーはOKと

   尻尾でサインを見せた。


   「ユーくん、ありがとう! 私は仕事に

   戻るわね」

   「お仕事頑張ってね、ライラックさん!」

   「えぇ! 頑張っちゃうわ!」


   郁人の言葉に花咲く笑みをみせ、

   ライラックは足取り軽く、仕事に

   戻っていった。


   そこへ入れ替わるように、ジークスと

   篝がやってくる。


   「イクトが子供になったと聞いたが

   本当か?!」

   「なにがあってそうなったんだ!」

   「うるさい。面倒だからこれ飲んでろ」

   「ぐっ?!」

   「なっ?!」


   急いでやってきた2人に説明が面倒と

   感じたチイトはキューブを飲ませた。


   2人は口を押さえ、膝をつきかけるが

   何とか耐えきった。


   「……イクトは君とオーナーの薬により、

   子供に戻ったと。記憶も子供の頃に戻って

   おり、私達を知らないのか」

   「こんな簡単なことを知らせる為に

   キューブを使うな」


   ジークスはキューブで状況を理解し、

   篝も理解したがキューブの気持ち悪さに

   苦言を告げた。


   「1番手っ取り早いだろ」

   「? お兄さん達大丈夫?」


   顔色が悪い2人を心配して郁人が

   やってきた。


   「しんどそうだよ。顔が真っ青だもん」

   「大丈夫……。少し驚いただけだ。

   はじめまして、私はジークスだ。

   よろしく頼む」

   「うん! はじめまして! 俺は三河郁人

   だよ! よろしくお願いします!」


   ジークスは視線を合わせるために

   しゃがみながら、自己紹介した。


   郁人も自己紹介をし、ペコリと頭を下げる。


   「ジークスさんとってもおっきいね!

   しかも、おっきな剣もってる!」

   「俺は力持ちだからな。

   この大きさの剣でも平気なんだ」

   「いいなあ! 俺も持ってみたい!」

   「おやつを食べ終わったら持ってみるか?」

   「いいの?!」

   「あぁ。私が補助に入る形になるが」

   「大丈夫だよ! ありがとうジークスさん!

   ……どうしたの?」

   「いや、ちゃんとお礼も言えて良い子だと

   思ってな」


   ジークスは郁人の子供の頃はこんなに可愛い

   のかと頭を撫でた。撫でられた郁人は嬉しそ

   うに頬をゆるめる。


   「ジークスさんの手もおっきいね!

   いいなあ!

   ん? あれ? もしかして……」


   ふにゃりと笑っていた郁人だったが、

   篝をじっと見始めた。


   「……なんだ? どうかしたか?」

   「………やっぱり篝だ!

   なんでおっきくなってるの?!」


   目をぱちくりさせた郁人は篝に走り寄った。


   「なんで?! 篝だけずるい!

   俺もおっきくなりたい!」

   「お前……俺がわかるのか?」

   「篝おっきくなって、髪色とか変わってても

   わかるよ! だって、目が一緒だから!」

   「目? 色は変わってるだろ」

   「えっと、たしかに色は違うけど。

   俺を見る目が一緒だもん!」


   大きくなっても変わらないんだね

   と郁人は嬉しそうに話す。


   「篝は俺を見るとき、すっごくじっと見てる

   からね! 妹は、なんか視線が熱いって

   言ってた!」


   不思議な例えだよねと郁人は説明する。


   「なんで熱いのか俺にはわからないけど……

   でも、声も低くなってても篝ってわかるよ!

   だって、ずっと一緒にいるから!」

   「……そうだな。ずっといたからな」

   「わっ!?」


   篝は笑顔で説明した郁人を持ち上げ

   抱きしめた。


   「お前は本当に変わらないな」

   「もう篝、くすぐったいよ!」


   首筋に顔を埋める篝に郁人は

   くすぐったさから笑う。


   「お前、甘い匂いするな」

   「ライラックさんがクッキーくれたんだ!

   そのクッキーだよ」

   「いや……お前はもともと甘い匂いしてた。

   こう……腹がへるような、もっと……

   癒やされるような……」


   篝は郁人のお腹に顔をうずめ、

   思いっきり匂いを吸いはじめた。


   "猫吸い"ならぬ"郁人吸い"だ。


   「ひょわっ?!」

   「篝殿! ストップです!!」

   「ぐっ!?」


   ポンドは郁人から見えないように篝の首筋に

   素早く手刀をきめ、意識を奪った。

  

   「わあっ?!」


   意識を失った篝の腕から落ちた

   郁人をチイトが受け止めている。

   

   「パパ大丈夫?!」

   「大丈夫だよ。吸われてびっくり

   しちゃった。そういえば、俺が美味しそう

   って篝の目に書いてあるって妹が言ってた

   から、それで嗅いだのかな?」


   クッキーの匂いが移ったのかな?

   と郁人は不思議そうだ。


   「……マスターの警戒心はこの頃から

   なかったのですな」

   「イクト、君はもっと警戒したほうがいい」

   「なんで? 友達なのに?」


   心配する2人に郁人はキョトンとする。


   「ほら、クッキー食べたらまた遊ぼ!

   飛びたいでしょ?」

   「うん! 飛びたい! あっ! 篝も

   起こさないと!」

   「篝殿は少し疲れて眠ってしまわれた

   ようですので、寝かせてあげましょう」

   「先程、俺と手合わせしていたからな」

   「そうなんだ! 篝、お疲れさま!」


   郁人は倒れている篝の頭を撫でた。


   「パパ! このマシュマロ挟んだの

   美味しいよ!」

   「俺もそれ食べる!」


   チイトに声をかけられた郁人はクッキーの

   もとへ走り出した。


   ーーーーーーーーーー


   しばらくして、遊び疲れた郁人は

   ベッドでユーを抱っこしながら寝ている。


   「しばらくしたらもとに戻る」

   「それは良かったですな。それで、

   子供時代のマスターと遊んだ感想は?」

   「小さい頃からパパは変わらないのだなって

   感じた。たくさん遊んで楽しかったが……

   さん付けは嫌だな」

   「彼以外は全員さん付けだったからな。

   ユーにも付けていなかったが」


   少し寂しいと感じてしまった

   とジークスは呟く。

   

   「記憶がちゃんとあれば、俺のことは

   わかるんだな。そうか……そうか」


   一方、篝は口角を上げ、見るからに

   上機嫌だ。


   「こいつがムカつくから、次は記憶ある

   状態で子供になってもらおう」

   「女将さんもさん付けは寂しそう

   だったからな。そのほうがいい」

   「まずはマスターに了承をとってから

   決めていただきたいと思いますな。

   あと、篝殿は説教です」

   「なぜだ?! 俺はなにもしていない

   が……」

   「……本当にわからないのですな、

   この方は」

   「パパを吸っといてこの態度か……。

   こいつは前からこうだったからな。

   面倒にもほどがある」

   

   意味がわからないと言いたげな篝に

   ポンドはため息を吐き、チイトは

   舌打ちした。


   


ここまで読んでいただき

ありがとうございました!

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