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220話 フメンダコが持ってきたもの




   郁人はいつの間にかいたフメンダコに

   目をぱちくりさせる。


   「いつの間に?!」

   「どこから入ってきたのですかな?!」


   驚く郁人とポンドをよそに、フメンダコは

   サンドイッチを食べ終わると満足そうに

   ピョンっと跳ね、郁人に紙を渡してきた。


   「紙? なにが………ぐっ?!」

   「どうされ……あぁ……」


   顔を青ざめた郁人にキョトンとしながら

   ポンドは覗き込み、納得する。


   「なんともギッシリ詰められたスケジュール

   ですな」

   「レイヴン達と違って休憩が0に等しいんだ

   よな、これ……」

   「昨日はもう気絶するかのように眠られた

   ようですからな」


   ユー殿から聞きましたとポンドは告げた。

   郁人は肩を落としながら呟く。

  

   「エンウィディアはスパルタが過ぎる

   んだよ……せめて、もう少しだけでも休みが

   ほしいなあ……」

   「エンウィディア殿に聞いていただけるかは

   わかりませんが、私から休憩を増やしてほし

   いと伝えておきましょう」

   「……いや、大丈夫。たぶん言ったら休む時間

   を考える暇があるなら音楽のことを考えろ

   って言いそうだから」


   まだ音楽に意識を割けてないのかと言う姿が

   頭に浮かび上がると郁人は告げる。


   「……たしかに、あの方なら言われそう

   ですな」

   「だろ? だから、言わなくていいよ。

   でも、美味しいご飯を作って待ってて

   ほしいな」


   昨日もだけど、今日のご飯も美味しかった

   からと郁人は告げた。その言葉にポンドは

   胸に手を当て、綺麗な礼を見せる。


   「かしこまりました。レシピ本から選りすぐ

   りのものを作ってお待ちしておりましょう」

   「ありがとう、ポンド。美味しいご飯を食べ

   るためにも頑張るよ」

   〔倒れたらそのまま寝ちゃって食べずに

   1日が終わりそうだものね〕


   頑張って倒れないように気をつけなさい

   とライコは応援した。


   「メメっ!」


   突然聞こえた謎の鳴き声に驚きながら

   見てみれば、フメンダコが鳴いていた。


   「………この子って鳴くんだ」

   「そのようですな」


   ポカンとする2人の前でフメンダコは

   メメっ!とまた鳴くと、郁人の持つ

   スケジュールの書かれた紙を指差し、

   ペシペシと叩く。


   「なにか伝えたいんだろうな……」

   「スケジュールに関することとは推測できる

   のですが……」


   2人がフメンダコが伝えたいことを理解

   しようとしていると、フメンダコの言葉を

   理解したユーが郁人達にボディランゲージ

   と視線で代わりに伝える。


   「えっと、どうやら………

   この贅沢者! 文句いわずにやれっ!

   と言っているようですな」

   「そうみたいだな……。ちゃんとやるのは

   当たり前だから。そこは安心してほしい。

   教えてもらっている以上はさ」


   郁人はフメンダコに伝える。

   その言葉に当たり前だとフメンダコは

   ふんぞり返った。


   (それに、歌っていたら途中で苦しくなるの

   を克服するのにいい機会だしな。

   いつまでも引きずっているのは嫌だからな)


   メンタルが原因なのはわかってるから

   いい加減克服したいしと郁人は考える。


   〔……本当に無理はしちゃダメよ。

   倒れたりしたら意味が無いのだから〕

   (気を遣ってくれてありがとう、ライコ)


   ライコの優しさに心が暖かくなっていると、

   フメンダコはもう1度紙をバシバシ叩いて

   ふわりふわりと去っていった。


   「……サンドイッチ気に入られたよう

   ですな」

   「スープも飲んでいったな、あの

   フメンダコ」

   

   いろいろとつまみ食いしながらだ。


   「今更なんだけど、なんでも食べるのか?

   フメンダコって……」

   「私にもわかりませんな」


   疑問符を浮かべる2人。


   「……自分から食べたんだし、大丈夫

   だよな。うん」


   郁人はジュースに手を伸ばし、飲もうと

   したとき


   「マスター」


   ガシッとその手を掴まれた。


   「………………」


   ポンドは眉をしかめて、先程まで浮かべて

   いた微笑みはない。 

   真剣な瞳と肌が斬れそうな雰囲気に郁人の

   心臓が跳ね上がる。


   「ど……うかしたのか?」

   〔えっ?! なに?! なんだか怖いんです

   けど……!〕


   まるで強敵と相対したような、あまりの

   雰囲気に郁人は声を震わせてしまった。


   ポンドはその雰囲気をまとわせたまま

   口を開く。



   「マスター……


   ……ジュースに異物が入っておりました」



   「へ?」


   真剣な表情で告げられた意外な言葉に

   口をポカンと開けてしまう。


   「違和感を覚えて見てみれば、異物が。

   ……作る際に気づかなかったうえ、

   マスターが飲まれる寸前で気付くなど

   不覚でしたっ!!」


   歯を食い縛り、自身を責めるポンドに

   郁人は慌てる。


   「大丈夫だぞ! ポンド! 飲む前に気付い

   てくれたんだしさ!」

   「……すぐに代わりのものをお持ちしま

   すので、こちらはお預かりします」

   「うん……わかった」

   「では、少々お待ちください」


   ポンドは郁人の飲み物を貰うと、代わりの

   ものを取りに行った。


   〔………もっと怖い内容かと思ったじゃ

   ない!! 意味深な顔と雰囲気をするんじゃ

   ないわよ!! もう!! 眉を寄せて、真剣

   な目をしちゃって!!〕

   (たしかに、ちょっと怖かったな)


   もう! 全く! と叫ぶライコに郁人も頷く。


   (ポンドはいつも優しくて、笑顔の

   イメージが強いからさらに怖かったな)


   普段のポンドの優しい瞳とは違ったしな 

   と考えながら郁人はまたサンドイッチを

   また頬張った。


   ーーーーーーーー


   ポンドはミキサーに野菜などの材料を

   入れながら、電話している。


   「……はい。おっしゃっていた通りでした。

   従魔を使役し、マスターを眷属にするため

   神気入りを食べさせようと画策しており

   ます。他にも、マスターの部屋にエンウィ

   ディア殿本人が侵入しておりました」

   《そうか。やはりな》


   通話相手はチイトだ。

  

   チイトはあの野郎と呟いたあとポンドに

   告げる。


   《神殿はあいつの縄張りだ。パパの側を

   離れるな。あいつが何か言ってきた際は

   ユーをそばにつけとけ》

   「かしこまりました。

   しかし、症状がこんな早くに出るとは……」

   《パパがあいつを警戒してないのもあるが、

   確かに早すぎる。神殿内とはいえ、こうも

   早く出るとは……………くそっ》


   チイトは鋭い舌打ちをする。


   《症状はどの部位に出ていた?》

   「部位ですか? 部位は……」


   ポンドが思い出していると、頬をつつか

   れる。


   「おや? ユー殿、どうされました?」


   ユーは手をポンドの額に当てて、出来た

   ジュースを2人分注ぎ、またフワリと去って

   いった。


   「……ユー殿も流石というべきか。

   部位は首と喉、そして手のひらにあったそう

   です。見つけ次第、ユー殿が剥がしたそう

   ですな」

   《…………手のひらはまだわかるが、

   首と喉か。あの生魚……!!》


   チイトは怒りを声ににじませる。


   《生魚とパパを絶対に2人にするな。

   必ず貴様かユーがそばに居ろ!!

   いいな!!》

   「かっ、かしこまりました……!」


   怒りに圧され、ポンドはついどもって

   しまった。咳払いして気を取り直し、

   ポンドは尋ねる。


   「そちらはどうです? 何か変化はありまし

   たか?」

   《こっちか? 女王に呼び出されたくらい

   だな》

   「………なにがあったのですかな?」


   チイトの言葉にポンドは目をぱちくり 

   させた。




ここまで読んでいただき

ありがとうございました!

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ーーーーーーーー


ポンドがチイトに電話をかける前のこと……


(ここまで影響が出るのが早いとは……

さすが神殿内と言いますか……)


郁人を起こしに来た際に、じつは

鱗のような青いものに気づいていたのだ。


(チイト殿が対処していなければ

入った瞬間、マスターは眷属になって

いたのでしょうな)


マスターが眷属になってしまっていたら

どうなっていたかとポンドは顔を青ざめる。


(どれだけエンウィディア殿は

マスターを眷属にしたいのでしょうな……)


言動と態度からはわからないが、

神殿とあの目をみればマスターへの

執着具合がすさまじいのはわかりますが

とポンドは考える。


(神殿をよく見ればマスターを

眷属にする細工がたくさんあると

ユー殿も教えてくれましたし。

まずはチイト殿に症状と

従魔について話さなければ)


ポンドは呟きながら、報告するために

チイトに電話をかけた。




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