親子写真
リクエスト企画にて募集させていただきました
リクエストの「イクトの幼児化」
になります!
ご期待に添えるものであれば
とても嬉しいです!
郁人の周囲に置かれたとても大きな
テディベアやペガサスの木馬。
パステルカラーの家具といったファンシーな
世界に郁人は包まれている。
郁人もフワモコな服を着て立派なファンシー
世界の住人だ。
「ぬし様ー! 視線こっちにください!」
レイヴンははしゃぎながら、カメラを
構えて撮っている。
〔なんでこんなことになってんのよ?〕
(それは俺も知りたいよ……)
〔そりゃそうよね。あんたが1番知りたい
わよね。そんな姿になってるんだもの〕
ライコが言うのも当然だ。
ー なぜなら、郁人は現在4才の姿に
なっているのだから。
事の始まりはレイヴンからのコンタットだ。
《ぬし様お久しぶりです! じつは、お願い
したいことがございまして、少々お時間を
いただいてもよろしいでしょうか?》
《今は暇だから大丈夫だけど》
郁人はそれに二つ返事で了承すると、
レイヴンが携帯から現れる。
『ありがとうございます! ぬし様!
ではでは、撮影ご協力お願いします!
もちろん報酬もございますので!
ぜひ、キッズモデルよろしくお願い
いたします!』
『え? キッズモデル?』
戸惑う郁人をよそにレイヴンが薬をかけて
郁人を子供に、4歳の姿にしたのだ。
〔本当に一瞬の出来事だったわね……。
あたしもだけど、あんたも理解する前に
髪色も白に変えられ、服は着替えさせられ
撮影はじまってたもの……〕
(あまりに一瞬のことだった……)
呆然とする郁人にレイヴンは笑いかける。
「突然のことですいません、ぬし様!
カタログにて、服の販売も始めるのですが
いかんせん、キッズモデルが足りず……。
しかも、服のデザイナーのお眼鏡に叶う者が
おりませんで……。そこで、ぬし様の幼き頃
ならば!と実行した次第にございますれば」
「イクト様が幼かったら似合うのにと
軽く呟いたものが実現するのはとても
驚きましたが……想像以上にお似合いで
作った甲斐がありますぅ〜!」
隣でガーベラが次の服の準備をしていた。
〔あの人、たしか狐福っていう服飾品店の
オーナーよね? なんでここにいるの
かしら?〕
「えっと……ガーベラさんはどうして
ここに?」
ライコと同じ疑問を持った郁人は尋ねた。
「じつは、レイヴン様が作られたカタログに
私の店の商品、服飾品が加わることに
なりましてぇ。そのカタログに使われる写真
とやらの撮影のためですぅ〜」
「じゃあ、俺が今着ている服のデザイナー
って……」
「はい! 私ですぅ〜!」
そのお洋服は自信作なんですよぉ!
とガーベラは誇らしげだ。
「こういったパステル系統が似合う子が
少なくてですねえ〜。似合う子はいたのは
いたのですが、今イクト様が着ている服には
イメージが合わず、困っていたのですが……
イクト様本当にお似合いですぅ〜!」
ガーベラは目を輝かせながら、心から
賞賛した。
「……ありがとうございます」
パステルカラーの可愛らしい衣装が似合う
ことを心から褒められ、郁人は複雑だ。
「そう不貞腐れないでくだされ、ぬし様。
ぬし様だとバレないように髪色とか変えまし
たし、なによりぬし様と撮影されるのを楽し
みにされている方がおられるんですから」
「楽しみ?」
「まあ! 本当にイクトちゃんが小さく
なってるわ!」
郁人が首を傾げていると、花を飛ばしながら
ライラックがやってきた。
小さくなった郁人を見て、目を輝かせると
さらに足取りは軽くなる。
「イクトちゃんが小さかった頃はこんな
姿だったのね! 本当に可愛いわ!!」
かわいい! かわいい! とライラックは
郁人を抱っこして、頭を撫でる。
「えっと、もしかして一緒に撮影する
のって……」
「はい。ぬし様が一緒に撮影するのは
母様でございますれば」
「イクトちゃんと一緒に撮影が出来るなんて
とても嬉しいわ!」
「親子お揃いコーデも販売しようと思って
おりまして、イクト様と親子コーデしてほ
しいとお願いしましたら、すぐにOKをいた
だきましたぁ〜」
「いやあ~小さなぬし様と親子コーデする
なら母様しかおられないと思いましたので」
母様以外に適任はいないでしょう?
とレイヴンは笑う。
「親子お揃いコーデって初めて聞いたけど
とっても良いわ! 話を聞いて私もしたいと
思ったの! 私もこのパステルカラーのお洋
服を着たらいいのかしら?」
「いえ、別のになりますぅ〜。
青空の下でピクニックを楽しむ親子を
イメージしたものがありますのでぇ〜。
髪色も白でお揃いにしたいのですが」
「大丈夫よ! 1回くらい変えてみたいと
思っていたの!」
ライラックはとてもはしゃいで楽しそうだ。
〔女将さん、とても楽しそうだわ。
あんたと一緒に撮影できるのがとても嬉しい
みたいね〕
(だな。俺もこんなに楽しそうな母さん、
久しぶりに見た気がするよ)
郁人が楽しそうなライラックを見ていると
目が合った。
「あっ! イクトちゃんは良かったかしら?
レイヴンくんとガーベラさんのお話を聞いて
私は了承したけどイクトちゃんからは
得てなかったものね……」
私が勝手に決めてしまったわと落ち込む
ライラック。
郁人はそんなライラックに大丈夫と告げる。
「たしかに驚いたけど嫌じゃないよ。
母さんと写真撮ったことないから、一緒に
撮りたいな。だから、親子コーデして
撮ってもらおう」
郁人は素直に自分の気持ちを伝えた。
「ありがとうイクトちゃん!」
「ぐえっ」
ライラックは満開の花咲く笑みを浮かべ
ながら郁人をさらに抱きしめた。
郁人は抱きしめられて息苦しさにペチペチ
叩く。
「母様! ぬし様が胸に埋もれて窒息して
おりますので!!」
「ほら! 叩いて苦しさアピールして
おりますよぉ〜!」
「あら、つい嬉しくて……」
「……苦しかった」
解放された郁人は新鮮な空気を吸って
吐いて息を整えた。
「ではでは、ピクニック撮影に向かい
ましょうや」
「撮影ってどこでするんだ?
朝露草があるエリアか?」
尋ねる郁人にレイヴンは答える。
「いえ、ナデシコ協力のもと店の地下空間の
1部を疑似的青空と本物の草原があるものへ
と改装しましたのでそこで撮影しますよ?」
「チラッと見させてもらいましたが、
温泉もあって驚きましたぁ〜」
「なにそれ?! 俺初耳なんだけど!」
「ナデシコさんがイクトちゃん達が
あきないようにって工夫したそうよ。
畑もあるからあとで見に行きましょ!」
「………………うん、わかった」
いろいろと聞きたいことがあったが、
ライラックのはしゃぐ姿に後でいいか
と言葉を飲み込んだ。
「あっ」
ふと思いついた郁人は声をかける。
「レイヴン」
「なんですぬし様?」
「撮った写真がほしいんだけどいいかな?
初めて母さんと撮った写真だから部屋に
飾りたいんだ」
郁人の言葉にレイヴンは満面の笑みを
浮かべながら、胸板を叩く。
「勿論! ぬし様と母様の分も用意いたし
ますれば!」
「ありがとう」
「ありがとうね、レイヴンくん」
2人が感謝し、花を飛ばす姿はまさに
親子そのものでしたぁとガーベラは
後に語る。
2人が協力した撮影はうまくいき、
2人が着た服は飛ぶように売れたのは
言うまでもなかった。
ーーーーーーーーーー
じつは、撮影を後方から見学していた
チイト、ポンド、ジークス、篝。
ユーはデルフィの勉強を監視しているため
不在だ。
チイトは羨ましいと言いたげに見つめる。
「パパと撮影いいなあ……!
俺もちっちゃいパパ抱っこしたい!」
「今回は親子モデルが求められて
おりますからな。撮影に加わるのは
難しいかと……。
ですが、マスターならお願いすれば
抱っこさせてもらえると思いますよ」
羨ましいと訴えるチイトをポンドが宥める。
「……父親役として参加すればっ!」
「とんでもないことになりそうなので
お止めください、ジークス殿」
撮影に加わりたいとひらめいたジークスを
ポンドはそれはいけないと制止した。
「あいつのあの年頃の姿は写真でしか
見たことなかったが……
あのときとあまり雰囲気が変わった
気がしねえな」
お前は昔から変わらねえな
と言いたげに篝はフッと微笑む。
「……苛つくから殴っていいか、その顔面」
「チイト殿、落ち着いて!」
冷たい目で拳を構えるチイトを
ポンドがあわてて抑える。
「この撮影が終わったら、マスターと
撮ってもらうのはどうですかな?
チイト殿、マスターとの写真がほしく
ありませんか?
でしたら、ここで騒ぎを起こしては
マスターとの撮影する時間がなくなって
しまうかもしれません」
「……………………」
仕方ないと言いたげにチイトは
構えた拳を下ろした。
「あいつは昔からふんわりした服も
似合うからな。似合って当然だ。
妹と双子コーデしたいと言われて
着ていた服とはまた違った雰囲気だが。
まあ、あいつをモデルに選んだ目は
褒めてやってもいいが」
「やっぱり殴る。いや蹴るか」
「拳じゃなければOKではありません
からな!」
蹴ろうとするチイトをポンドが再び止めた。
ここまで読んでいただき
ありがとうございました!
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コーデの撮影が終わり、郁人との撮影を
してもらって、ご機嫌なチイトは
ふと思い出す。
「……あの鳥野郎、パパを幼い姿にするのに
錬成で薬を作ったようだが。
あいつがそれを知ったらうるさいんじゃ
ないか?
……まあ、俺には関係ないな」
チイトがポツリと呟いたことは
誰も知らない。




