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216話 眷属化




   プリグムジカにある、星5つを獲得する

   ホテルの1フロア。


   「油断はするなよ。あいつが仕掛けてくる

   可能性は充分あるからな」


   エンウィディアが用意したフロアの1室に

   チイト達はいた。

   篝とジークスは電話の様子を見守り、

   チイトは1人用のソファに腰掛け、電話

   している。


   「練習中は近づかせないようにするだろうが

   ユーは絶対にそばにいさせろ。

   その為に貴様は出来るだけあいつを挑発して

   自身に注意を引かせるんだ。あいつは煽られ

   ることに慣れてないから絶対にのってくるか

   らな」


   ポンドの話し相手はチイトだったのだ。


   「いいな? 出来るだけ側にいろ。

   貴様がいれなくても、ユーはいれるように

   しておけ」


   チイトは通話をきり、眉をしかめる。


   「あの野郎、パパに仕掛けやがって……」

   「おい。お前の言っていた事は本当

   なのか?」

   「彼ならやりかねないと言うのか……」


   ソファに腰かける篝とジークスは

   問いかけた。


   「あいつはあぁ見えてパパに執着している

   からな。手元に置くためならなんだって

   する」

   「………それが"眷属化"か」


   ジークスは眉間のシワを深める。


   「眷属になれば、一心同体。彼が神を

   取り込んだとなれば、その繋がりは

   深くなるだろう。……彼の手中に居るも

   同然だ」

   「眷属にするには、それ相応の儀式が

   いるんじゃないのか? あいつも気付く

   ぐらいのな」


   大掛かりなものじゃないのか?

   と尋ねる篝にチイトは首を横に振る。


   「儀式なぞ必要ない。神殿内に居れば

   居るほど、神殿の内部に触れれば触れるほど

   あいつの神気を息を吸うように取り込み、

   眷属化が進んでいく。時間感覚が狂い、

   神殿にずっと居たい、離れたくないと

   思うようになる。中で飲み食いすれば

   尚更だ」

   「じゃあ、あいつはかなり危ないじゃ

   ねえか……!!!」


   篝は顔を青ざめた。


   「そうだ。貴様の考え通りだ。

   パパはとても危うい状況にある。

   ……誰でも少しは神気を取り込む事に

   無意識で抵抗するんだが」


   ウイルスが体内に入ったら免疫が働くのと

   同じだなとチイトは説明する。


   「パパは素直なうえ、あいつを家族と思って

   いるからな。やはり、無意識で家族の気でも

   ある神気に抵抗していないようだ」

   「今すぐあいつを連れだすぞ……!!」


   蹴りあげるように席を立つ篝の腕を

   ジークスが掴む。


   「待て! たしかにイクトは危ない状況に

   いる。が、そんな状況のイクトを彼が

   そのままにする訳がない。

   ……なにか手は打ってあるんだろう?」


   ジークスが尋ねると、面倒そうに

   チイトは答える。


   「あぁ、すでに手は打ってある。

   ユーにはパパが神気に染まらないよう

   跳ねのけることに専念してもらっている。

   その事によりユーは戦闘が出来なくなるが

   パパが染まるよりはかなりマシだ」

   「あの生き物、そんなこと出来る

   のか……?!」

   「本当に君はなにを混ぜたんだ?!

   神気を跳ねのけるのは、それほど強い魔力を

   持った実力者や妖精、神殺しの特性を持った

   魔物くらいしか出来ないはず……」


   篝は開いた口が塞がらず、ジークスは

   頭を抱える。 


   「それにポンドは“加護“持ちだ。

   神殿内に居ても影響を受けない。

   ゆえに、パパの側で守ることが出来、

   パパが神殿に慣れそうになれば、あいつが

   防ぐ。そして、パパの飲食は全てあいつが

   受け持つ。他の奴等に手を出させはしない」

   「あいつ加護持ちなのか!?」

   「加護とは昔話でしか聞けないものだ!

   彼はスケルトン騎士、昔の者だから持って

   いるのか……? しかし、加護を持つのはそれ

   相応の……」


   目を見開く篝と、考えこむジークス。

   2人を無視して、チイトは口を開く。


   「食料は全て俺が送っている。

   神殿内の水を普通の水に戻す魔道具を

   送り済みだ」


   体内に取り込むことも防ぎたいからな

   とチイトは告げる。


   「それに、こちらから送るジジイの肉や

   ヴィーメランスの鱗に少し細工した結果、

   定期的に摂取すれば神気を取り込むことに

   神気に抵抗する免疫を作れるようにした」

   「成る程。着くなり肉を寄越せと言ったのは

   その為か」


   納得がいったとジークスは頷く。


   「だから、定期的に尻尾をもらうぞ」

   「彼の力になるなら喜んで私の血肉を

   差し出そう」

   「…………本当だったんだな、竜人の血肉を

   食うのは」


   カニバリズムか……と篝は更に顔を

   青ざめた。


   「なぜ顔を青ざめる? 彼の助けになるのは

   これが1番なんだ」

   「………かなり不服だがな。パパを助ける

   ためには仕方ない」


   チイトは鋭い舌打ちをする。


   「調べたが、ジジイとヴィーメランスは

   エンウィディアの神気との相性は最悪な

   ようだからな。それを活かす細工、魔法を

   施すことでジジイの肉やあいつの鱗はパパを

   染めようとする神気の免疫となる。

   パパの隣にいれれば、こんな事しなくても

   良いんだが、それが出来ないからな」


   神の力なんぞ取り込みやがって

   とチイトは眉をしかめた。


   「じゃあ、俺達がここにいるのは神殿に

   行けば眷属化が進むからか?

   だから、お前はここにいるのか」


   篝の言葉にチイトは答える。


   「あぁ。眷属になる可能性はある。

   ジジイは相性が最悪だから時間はかかるが、

   貴様は危ないだろう。眷属になればパパを

   神気に染める手助けをするからな。

   俺は払いのけれるが、払いのけた分、

   パパに行くように細工してあった。

   だから、行くわけにはいかない」

   「君がここに留まっているのはその為か」


   ジークスは合点がいったと頷く。


   「それに、他にしないといけないことが

   あるからな」

   「しないといけないこと?」

   「なんだそれは?」

   「ほら、向こうから来たぞ」


   2人が尋ね、チイトは呟いて扉を見据えた。


   ー 瞬間、バンッと勢いよく扉が開いた。


   「…………………」

   「…………………」


   揃いの鎧を身に纏った兵達が唐突にやって

   来たのだ。兵達は何も言わず、ジークス達の

   前に立つ。


   「プリグムジカの兵か!」

   「……様子がおかしくないか?」


   ジークスは兵達を見て呟く。

  

   「体は小刻みに震え、顔色が悪い。

   それに……彼ら寝ていないか?」

   「?! 本当に寝てやがる!

   寝たままここに来たっていうのか!」


   篝が声をあげるのも無理はない。

   兵達は本当に寝ているのだ。


   「…………………………」

    

   目は完璧に閉じられ、寝息が聞こえるほど。

 

   「どうして寝たまま来ている?

   どうやって来たんだ?」

   「俺達に考えている暇は無いようだぞ」


   ジークスの言葉通り、眠っている兵達は

   腰に提げた剣をだして構える。攻撃態勢に

   入ったのだ。


   「まずは大人しくしてもらおう」

   「捕縛なら得意だ。お前は兵達を1箇所に

   固めろ」

   「了解した」

   

   ジークスは大剣に手をかけ、篝は印を結ぶ

   構えをする。


   「ここまで汚染されていたか。面倒なこと

   この上ないな」


   警戒するジークスと篝を他所に、ソファに

   座るチイトはため息を吐くと指をパチンと

   鳴らす。


   ビュオオオオオオオオ!!


   すると、一陣の風が吹いて兵達を木の葉の

   ように軽く吹き飛ばした。


   「っ!?」


   壁に叩きつけれた兵達はうめきながらも

   なんとか立ち上がるが、先程と様子が

   変わっている。


   「………あれ? なぜ私達はここに?」

   「まずここはどこだ?」

   「俺達は兵舎にいたはず……」


   兵達は不思議そうに辺りを見渡す。


   「………お前何をしたんだ?」

   「まるで憑き物が落ちたかのようなんだが」


   不思議そうに尋ねる2人にチイトは

   面倒くさいと長いため息を吐いた。



ここまで読んでいただき

ありがとうございました!

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ーーーーーーーーーー


チイトがポンドに食材を送る前のこと……


「おい、ヴィーメランス。鱗をよこせ」

《いきなり電話してきたと思えば、

鱗を寄越せだと?何があった?》

「魚野郎が神の力を取りみ、その力を

利用してパパを眷属にしようとしている。

貴様とあいつの属性が火と水の関係だからか

相性が悪かっただろ?

貴様の鱗に細工をし、パパに食べさせて

眷属化を阻止する」

《…………あいつはそんな事を仕出かそうと

しているのか》


ヴィーメランスの声がさらに低くなる。


《いいだろう。貴様が父上関連で

そんな嘘をつくわけがないからな。

足りなくなったら言うといい》

「遠慮なく言わせてもらう」

《だが、どうやって食べさせるんだ?

いきなり渡されては、流石の父上も

警戒されるだろう。

どのように説明をするんだ?》

「鱗を砕いて七味みたいに見えるように

加工する」

《………は?》

「じゃあな、送れよ」

《おい! まさか調味料と騙して……》


チイトはそのまま電話をきった。


「騙すとは人聞きの悪い。

パパが神気を意識したら取り込む

スピードが早くなるからな。

言わないほうがパパの為になるんだ」


そこまで考えが回らないのか戦馬鹿は

とチイトはため息を吐く。


「……会話を聞かれないように妨害する

魔法を更にかけとくか。

ポンドにはその魔道具を、ユーには魔法を

教えたが念のためだ」


あの魚野郎はしつこいからな

とチイトは魔法をかけた。



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