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彼が酔っぱらったら……


リクエスト企画にて募集させていただきました

リクエストの「薬を飲んだ郁人が酔っ払い

みたいになって皆に絡む」になります!


ご期待に沿えるものであれば、

とても嬉しいです!





   目の前の光景にポンドはただ口を開ける

   しかなかった。


   「描くの楽しい!」


   フフフと普段動かない表情筋を動かし、

   大きなユーにもたれ、ジークスの尻尾の上で

   笑いながら絵を描いている郁人。


   赤い顔を両手で隠し、尻尾を椅子に

   されているジークス。

   座る郁人の腰にしがみつく篝。

   背もたれになっていても気にせず、

   ご飯を食べているユー。


   「なにがあったんですかな?!」


   思わず声をあげてしまったポンドだが、

   深呼吸して落ち着く。


   「理由を聞きたいですが……」


   花を飛ばしながら無邪気に笑う郁人に、

   ポンドは困惑しながらも原因を探す。


   理由を尋ねたかったが、あまりに

   無邪気に笑う姿に水を差すようなことは

   したくなかったのだ。


   「パパ! おまたせ!」


   そこに満面の笑みでチイトがやって来た。


   手には丼ぶりが乗った盆を持ち、

   もう片手にはゴーグルを持っている。


   「待ってたよチイト!」


   郁人はスキルで机を描き、具現化させる。


   「食べて食べて!」

   「本当にありがとう!

   もう1度食べたかったんだ!」


   材料に驚いて、きちんと味わえて

   なかったからと郁人はお盆ごと受け取り、

   机に乗せると手を合わせる。


   「いただきます!

   うん! やっぱり美味しい!

   本当にうなぎを食べてるみたい!

   肉質が似てるのかな?

   タレとも合って本当に美味しいよ!」

   「喜んでもらえて良かった!

   あと、このVRゴーグルにパパの好きそうな

   景色を入れといたからいつでも観れるよ!」

   「どんな景色だろ?

   食べたら観させてもらうな!

   本当にありがとう!」


   無邪気に笑う郁人にチイトはへにゃりと

   笑う。嬉しいと全身で告げているようだ。


   嬉しそうなチイトにポンドは申し訳なさ

   そうに尋ねる。


   「……あの、マスターになにがあったの

   ですかな?」

   「……ポンドか。パパはオキザリスの薬で

   酔う感覚を体験してるんだ」

   「体験?」

   「パパがコンタットでオキザリスに

   酔ってみたいと話していたらしい。

   で、オキザリスは料理の礼として

   その願いを叶えようと、酔う体験を

   出来る薬を錬成したそうだ」

   「錬成とは……! あの方は薬も作れるの

   ですな!」


   ポンドは目を丸くした。


   「魔道具開発も大まかなくくりは錬金術

   だからな。外付け強化出来るのは魔道具。

   身体の中から強化は錬成といえばいいか?

   で、パパは飲んでみて見事、酔う感覚を

   味わっている」


   俺に言えばいいのにと唇を尖らせながら

   チイトが説明した。


   「なるほど。マスターは今、酔っている

   のですな。では、なぜジークス殿達は……」

   「パパは酔ったら、普段より甘えるよう

   でな」

   

   これを見ろとチイトがスクリーンを

   浮かばせ、ポンドに見せた。


   ーーーーーーーーーー


   スクリーンに映るのは、トロンとした

   目をする郁人に驚くジークス、篝だ。


   『イクト? どうしたんだ?』

   『様子がおかしくねえか?』

   『……ジークス』


   郁人はフラフラと歩き、ジークスのもとへ

   やって来た。


   『随分、千鳥足だが……』

   『尻尾見たい』

   『イクト?』

   『竜の尻尾、食べてるけどちゃんと見たこと

   ない。見たいし、描きたいから見せて』

   『おい、郁人。竜人の尻尾は家族にしか

   見せないものだ。下手すればセクハラに

   なるぞ』

   『そうなのか……見たかったのに……』

   『いいとも。見たいのだな』

   『おいっ?!』


   郁人の涙目でしゅんとする姿にジークスは

   即決して、尻尾を具現化した。


   『わあっ! こんな感じなんだ!

   思ってたより大きい!! 座ってもらって

   いいか? ちゃんと描きたいから』

   『あぁ』


   ジークスは座ると、郁人は背中に周り

   尻尾を観察する。


   『鱗やっぱり硬い! しっかりしてる!

   乗れそう!』

   『イクトっ?!』

   『乗り心地も意外と良い! このまま

   描こ!』

   

   そのまま、またがって描きだした郁人に

   ジークスは両手で赤くなった顔を隠す。


   『郁人! またがって描くな!

   尻尾に乗るのは家族か恋……』

   『あっ! そういえば篝も鱗あるよな!』

   『ぐっ!?』


   郁人は思い出したように、しゃがんだ

   篝の顔を両手で挟む。


   『両頬に鱗あるし、あっ! 小さいけど角も

   生えてる!』

   『……俺はツノクサリ蛇の系統らしい

   からな。珍しく生えてるんだよ』

   『そうなんだ! 牙もちゃんとある!』

   『へぐっ!?』


   いきなり口に指を入れられた篝は

   両眉を上げた。


   『おみゃえ、あぶねえきゃら』   

   『鋭い牙だな! カッコいい!』

   『!?!?』


   満面の笑みの郁人を久しぶりに

   直視&間近で見た篝は頭がショートし、

   へにゃりと倒れたあと、腰にしがみついた。


   『前の……かわ……』

   『どうした篝? ……まあ、いいか。

   ユー、大きくなって貰ってもいいかな?

   大きくなったユーにもたれてみたかったから』


   ジークスと篝を胡乱(うろん)な目で見ていた

   ユーは頷くと、大きくなった。


   『フフ! 柔らかい! マシュマロだ!』


   郁人は花を飛ばしながら絵を描きはじめた。


   ーーーーーーーーーー 


   「で、こうなった訳だ。俺はナデシコに

   呼ばれ、記憶を見て理解したがな」

   「成る程。とりあえず、セクハラになる

   可能性がありますので尻尾から…………

   嬉しそうですな、ジークス殿」

   「顔を隠しているが、だらけきって

   締まりない顔してるだろ?

   俺はパパを保護したかったけど、

   パパが座るって聞かなくて……」

   「ところで、チイト殿はどちらへ   

   行かれていたんです?」


   肩を落とすチイトにポンドが尋ねた。

   酔った郁人を置いて、どこかに

   行っていたからだ。


   「俺はパパにヒュドラを使った鰻丼を

   もう1度食べたいと言われたから、

   すぐに狩って調理していた」

   「………チイト殿だから出来ることですな」


   ヒュドラを狩る、ましてや調理するを

   短時間でやってのけたチイトにポンドは

   声を上げそうになったが飲み込んだ。


   「ヒュドラは食べれるのですな……」

   「毒を抜けばな」

   「みんな、イクトちゃんの部屋にいたのね」


   そこへ、ライラックがやって来た。


   「そろそろおやつの時間だから

   呼びにきたのだけど……」

   「じつは、マスターが……」

   「母さん!」


   ヒュドラ、鰻丼を食べ終えた郁人は

   ライラックに駆け寄る。


   「イクトちゃんの顔が動いて……!?」


   驚くライラックをよそに、郁人はライラックの

   手に触れると、自分の頭に乗せた。


   「イクトちゃん?」

   「やっぱり、母さんに頭を撫でてもらうの

   好きだなあ」


   安心するとふにゃりと笑う郁人。


   「もう! いくらでも撫でちゃうわ!」


   ライラックは頭を撫でながら、

   郁人を抱きしめた。


   「最近は旅に出てたからあまり撫でれて

   なかったものね。イクトちゃんは良い子

   だから、撫でても撫で足りないわ!」

   「ライラック殿! マスターが窒息して

   ます!!」

   「あらっ! 私ったら……!!

   イクトちゃん!!」


   郁人はライラックの腕の中で意識を

   飛ばした。


   ーーーーーーーーーー


   「なあ、ポンド。聞いてもいいか?」


   次の日、郁人はポンドに尋ねた。


   「昨日、オキザリスから貰った、お酒に

   酔える薬を飲んでから皆の様子がおかしい

   んだ……。でも、俺は覚えてなくて……」


   二日酔いなどの症状も再現されているのか、

   郁人は飲んだあとの記憶がないのだ。


   「ジークスがさ、2人になると尻尾を

   見せてくれるようになったんだ。

   尻尾に座ってもいいって言われるのは

   不思議だけど……」

   「……そうですな」

   「篝は鱗や角、牙とか見せてくれるんだ。

   あと、もう1度笑えってすごい顔を

   触られる」

   「そうですか……」   


   あの御2方は……とポンドは苦笑した。


   「チイトはヒュドラの鰻丼を

   よく作ってくれるようになったんだ。

   他のヒュドラ料理も作ってくれてさ。

   美味しいから嬉しいけど、頻度が高くて……。

   ヒュドラ絶滅したりしないよな?」

   「ヒュドラは大きい魔物ですからな。

   1度狩れば多く肉が手に入ると思いますので

   そこは大丈夫かと」


   どれだけ作ったのですかな?

   とポンドはあとで聞く事にした。


   「母さんはいつもより頭を撫でて

   くれるようになったんだ。

   母さんの手は優しくて安心するから

   嬉しいな」

   「それは良かったですな」


   微笑ましいとポンドの表情が語っている。


   「他にも、ユーは大きくなってくれたり   

   するんだけど……。

   その……酔ってるときにポンドに何かしな

   かったか?」

   「私は何もされておりませんよ」

   「良かった……!」

   「……マスターは本当に良い方ですな」

   「急にどうしたんだ?」

   「いえ、前からわかっておりましたが

   改めて感じましたので」


   (あの御3方、特にチイト殿はマスターが

   願えば、悪い事でも叶えたでしょうから)


   マスターが善性で救われましたな

   とポンドは心の中で呟いた。


   「で、マスター。酔ったご感想は?」

   「記憶ないのが怖いからもう薬は

   飲まない。酔っちゃダメだな」

   「それは賢明な判断ですな」


   薬を飲まないと決めた郁人にポンドは   

   英断だと頷いた。



   

ここまで読んでいただき

ありがとうございました!

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よろしくお願いします!


ーーーーーーーー


「チイト殿、マスターがヒュドラが

絶滅しないか心配しておりましたが……」

「それは問題ない。対策はしている」

「対策ですかな?」

「あぁ。パパのお気に入り食材を

この世からなくす訳にはいかないからな」

「ヒュドラを食材と呼ぶのはチイト殿くらいで

しょうな」

「? パパも最近は食材と認識している

傾向が見られるが」

「……マスターには改めてヒュドラについて

話さないといけないかもしれませんな」


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― 新着の感想 ―
[一言] もう本当にありがとうございます!!なんてお礼を言えばいいのか悩みすぎて感想が遅くなってしまってすいません!(泣)私がもうそ...ゲフンゲフン想像していたよりもめっちゃいちゃいち..ゲフンゲフ…
[良い点] 郁人くん可愛さ爆裂だ…わかってたけど… ポンドさんがバチバチにツッコむ話とか見てみたいです笑 [気になる点] 友愛…なんですよね…… 誰かと結婚または重婚してほしいなぁとついつい思ってし…
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