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208話 メパーン達に乗って




   メパーン達によって海に引きずり込まれた

   郁人は必死にもがく。


   (俺、泳げないんだけど!! 一体どう

   すれば……!! せめて、ユーだけでも

   上に……! くっ……?!息が……!!)


   苦しさから口を開けてしまう。


   (しまった……?! 水が…………

   ………あれ??)


   口内に海水が入り込むかと思いきや、

   全く無い。海水の塩っ辛さも感じら

   れない。地上に居るときと変化が

   無いのだ。


   「マスター、落ち着いてください。

   大丈夫ですから」


   聞き慣れた声に振り向けばポンドが居た。

   ユーも心配そうに見ている。


   「ポンドっ?! どうして?!

   あれ? なんで話せるんだ?」


   声を上げた郁人は話せることに首を傾げる。


   「メパーン達がマスター達が水中でも

   平気なように魔法をかけたのです。

   それに、下を見てください」

   「下?」


   言われた通り下を見れば、真っ白な

   フワフワの絨毯。


   いや、違う。大勢のメパーンの背中だ。

   郁人達は今、海中を泳ぐメパーンの

   上に乗っているのだ。


   「私達はメパーン達の上に乗って方角的に

   プリグムジカに進んでいると推測出来ます」

   「そうなのか?!」

   「はい。しかも、メパーン達はマスター達が

   溺れたり、濡れないようにしてくださって

   います。ですので、マスターとユー殿は

   地上に居るも同然なんですな」


   妖精は魔法を使えると聞きましたが、

   間近で見れるとは思いませんでした

   とポンドは笑う。


   〔こいつら本当にスゴいわよ。

   そして、こいつらを従えてる主もね〕

   (何でだ?)


   疑問符を浮かべる郁人にライコは説明する。


   〔メパーンは、従ってる主が強ければ

   強いほど魔力量や使える魔法が増えるの〕


   妖精であるメパーンの特徴ねとライコは

   話す。


   〔本来なら、自分達にしか施せない

   メパーン達なんだけど、それがあんたと

   その生き物に水中でも呼吸が出来るように

   と濡れないようにの魔法を2つ同時にかけ

   ているの。だから、それを可能にしている

   こいつらの主の強さはえげつないわよ〕


   どれだけよ、こいつらの主は!

   とライコは声を震わせた。


   (そんなに強いのかっ!!

   …………ん? あれ?)


   郁人はふと気になった。


   「ポンドはかかってないのか?」


   ポンドの言い方は郁人とユーにだけ

   魔法が使われているようだったからだ。


   「はい。私は魔法がかかっておりません。

   私はマスターが拐われたのを見て、急いで

   こちらに移動しましたので。メパーン殿達の

   魔法は施されておりません」

   「じゃあ、何で平気なんだ?」

   「それが私にもさっぱりでして……」


   本当に不思議ですなと告げるポンドの

   背後から迫り来る怪しい影が見える。


   「何だろあれ?」

   〔……ホーンザメじゃないっ!?

   額に角を生やした獰猛な魔物よ!

   真っ直ぐこっちに来てるわ!〕


   ライコは悲鳴をあげた。

   振り向いたポンドは頬をかく。

 

   「あれは……ホーンザメですな。

   この1帯はかの者の領域ですから、

   勝手に倒すのは……」

   「うぜえ!」


   1匹のメパーンがとっとと行けと

   ポンドの背中をバシっと叩く。


   「よろしいのですかな?」


   問いにメパーンは頷き、やれと指差す。


   「わかりました。マスターしばしお待ちを」


   ポンドは頷き、ホーンザメのもとへ

   風のように迫る。


   水中に居るというのに、まるで地上を

   駆け回っているような、空を飛ぶ鷹の

   ように機敏な身のこなしだ。


   「すごい?! 水中とは思えないっ!?」

   (あいつ本当に何者なの?!)


   開いた口が塞がらない郁人とライコ。


   「斬り捨て御免!!」


   ポンドは剣を抜き取ると、鋭い1閃。

   ホーンザメを見事、真っ2つにした。


   「お待たせしました」

   「おかえりポンド」


   剣を収めたポンドは水中ではないと

   錯覚させるほどの身のこなしで

   郁人達のもとへ戻ってきた。


   「うぜえ!」


   そこにメパーンはポンドに声をかけ、

   後ろを指差す。


   「うわあ?! 次は群れが来た!!」


   ホーンザメの群れがポンド目掛けて

   やって来ていた。


   「たくさん来られましたな。

   では、良い機会ですし、これを試すと

   しましょうか」


   ポンドは腰に提げたポシェットから

   あるものを取り出した。

   見た郁人は目を見開いた。


   「それ拳銃っ?!」

   〔なんでこいつが持ってるのよ?!〕

   「ヴィーメランス殿から気前よく貰い

   受けました。マスターの戦力は多いに

   越したことはないですからと」


   快活に笑いながら銃口をホーンザメに

   向ける。


   「では、試し撃ちの相手になって

   もらいましょう!!」


   耳をつんざく音と同時に火花が散る。


   音がしたと同時に、1体のホーンザメは

   額から血を流して動かなくなった。


   〔角をそらして額に命中してるわ?!

   どれだけ精確なの!!〕

   「あんなに離れてるのに命中させた

   のかっ!!」


   ライコと郁人は驚きの声をあげた。


   郁人達が驚いているなか、

   ホーンザメには何が起こっているのか

   わからない。


   聞いたことのない爆裂音とともに、

   次々と仲間が消えていく。

   獲物を見つけたと意気揚々(いきようよう)と向かった

   というのに。


   ホーンザメ達は自身が狩られる側だと気付き

   急いで逃げていった。


   「これでもう大丈夫ですな」


   去っていくホーンザメ達の背中を見ながら、

   ポンドは銃を下ろす。


   「そういえば、ホーンザメは身が淡白で

   美味しいと聞いたことがあります。

   是非、マスターに調理していただきたいので

   回収に行ってきてもよろしいですかな?

   ユー殿も気になっているようですから」

   「俺も調理してみたいから、回収お願い

   するよ」

   「お任せを!」


   目を輝かせながらポンドは回収へと向か

   った。ユーはヨダレを垂らしているので

   食べるのが今から楽しみのようだ。


   (試し撃ちって言ってたから初めて

   使うのか? だとしても上手すぎないか?!

   全て命中してたぞ!!)


   郁人はポンドの射撃する姿を思い出し、

   口をポカンと開けてしまう。


   〔なにあいつ?! メパーンに施されて

   いないのに、海の中で自由に動き回れたり、

   しかも、流暢(りゅうちょう)に話せているし……

   もしかして……でも……〕


   ライコはぶつぶつ呟きながら考え込む。


   「お待たせしました。プリグムジカに

   ついたら、調理をお願いしたく!」


   マスターの作る料理は絶品ですからな!

   と告げるポンドに郁人は尋ねる。


   「回収ありがとうな、ポンド。

   ポンドって銃が使えたんだな」

   「今回、初めて使いました。

   剣を使っても良かったのですが、

   水にいる魔物は斬っていくと

   剣が錆びやすくなりますのでな。

   これはいい機会と思いましたので」

   

   遠距離から攻撃できるのはありがたい

   ですな! とポンドは笑う。


   「本当に初めてだったんだ……!

   初めてで全弾命中って、ポンドスゴいな!」

   「ヴィーメランス殿の教え方が上手いおかげ

   ですな。まあ、私が何でも出来るってのも

   ありますが。

   あっ! この白身はまよねーずにも

   合うと思います!」


   これは絶対に合いますよ!! とポンドは

   断言した。


   「わかった。腕によりをかけて作るよ」

   「ありがとうございます! マスター!」


   声を弾ませながら、ポンドは袋を仕舞う。

   ユーはどんな料理が出来るのか

   待ち遠しいようで尻尾を振っている。


   「そういえば、チイト達は大丈夫か?

   傍から見たら連れ去られたみたいだろ?」

   「そこは安心してください。ユー殿が

   マスターの安全をお伝えしたようですので」

   

   心配した郁人にポンドは告げ、

   ユーは大丈夫と尻尾の先を手に変え、

   親指を立てた。


   「どうやって連絡を……」

   「うぜえ!」


   突然、メパーンが郁人達に声をかけた。


   「どうしたんだ?」

   「何かあったのでしょうか?」


   郁人とポンド、ユーはメパーンの指差す先を

   見た。


   「わあ…!!」

   「これは……!!」


   指差す先に郁人とポンドは目を輝かせた。

   ユーは目を丸くしたあと、尻尾を振った。




ここまで読んでいただき

ありがとうございました!

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ーーーーーーーーーー


「イクト!!」

「おい!何があった!!

ポンドが突然消えたぞ!」


顔を青ざめるジークスになにがあったと

篝が駆け寄ってきた。


「イクトがメパーンに引っ張られて

海の中へ……!!」

「なんだと?!あいつは泳げないんだぞ!!

すぐに……」

「パパは大丈夫だ。

ユーから無事だと連絡がきた。

それに、あいつの遣いがパパを

連れ去ったからな」


あの半魚野郎が

と眉間にシワを寄せたチイトが告げた。


「遣いとは……まさか君と同類の!?」

「パパの描いたキャラクターの1人だ。

ポンドが異変に気付いて向かったから

問題ないだろう。ユーもいるからな」

「だから、ポンドはいなくなったのか」

「彼らがいるなら、大丈夫だろう」


篝は納得し、ジークスは胸を撫で下ろす。


「……どうした?

さっきから、顔色が悪いが」

「あの半魚野郎のせいだ。

ついて来い。パパを追うぞ」


……置いてったら怒られるし

と、チイトは足早にどこかへ向かう。

2人はあわててその背中を追った。


(あの野郎……

頭にガンガン響かせやがって)


足早に向かうチイトの頭には

大音量の音が響いている。

脳を直接叩くような、不愉快な音だ。


チイトがすぐに郁人のもとへと

向かおうとした矢先に鳴り響いた音。

集中を削ぎ、苛立たせる不快音。


(音を響かせるのはあいつの得意技だ。

だが、ここまでだったか……?)


チイトは進みながら、鳴り響く不快音に

邪魔されながらも思考する。

思考を途中で遮断されながらも

繰り返し、繰り返し思考し、音に交じる

チイトの知る魔力を探る。


「……強化しやがってあの野郎」


そして、魔力にあるものを感じ、

チイトは舌打ちした。



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