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スノーフェアリー祭 とある竜人の視点


メリークリスマス!

今回は彼の視点の小話になります!



 

   スノーフェアリー祭のため、

   街が雪の結晶や雪だるまなどで飾られ、

   子供達が浮き足立ち、大人達は家族や友人、

   恋人と過ごす時間を楽しみにしているなか、

   ジークスは1人、店中で悩んでいた。



   ー (彼へのプレゼントはどうすれば

   いいんだ……?!)


   ーーーーーーーーーー


   冬将軍の存在を信じてしまった郁人を

   悲しませないためにジークスは急いで

   プレゼントを選びにきていた。


   (もっと時間があれば、迷宮にいって

   彼にあった魔道具をプレゼント

   出来るのだが……)


   どうすればと頭を抱えていると、

   声をかけられる。


   「あれ? ジークスじゃねえか。

   もやしと一緒にいないなんて珍しいな」


   荷物を抱えたフェランドラだ。


   「フェランドラか。

   彼は今、店の手伝いをしていてな」

   「そうか。で、お前はここで何してんだ?

   図体でかいからすげえ目立ってるぞ」


   フェランドラが周囲を見渡せば、

   孤高の異名を持つジークスが悩んでいる姿に

   なにかあったのかと注目を浴びていた。 


   「たしかに、俺はこういった店に

   あまり来ないから珍しいんだろう。

   君は買い出しか?」

   「あぁ。おふくろに頼まれてよ。

   お前は違うのか?」


   もやしに頼まれてきたのかと

   とフェランドラが告げた。


   「俺は冬将軍の代わりに彼に

   プレゼントを渡そうと思ってな」

   「冬将軍? いねぇやつのを?」

   「じつは……」


   頭にはてなマークを浮かべる

   フェランドラにジークスは説明した。


   ーーーーーーーーーー


   「あの頭がふわふわ花畑のもやしは

   信じちまったと……」

   「彼は今、冬将軍に渡すスイーツを

   作っている。

   あのキラキラと無邪気に目を輝かせる

   郁人に真実を告げるのは……

   とても酷だからプレゼントをこっそりな」

   「信じるとかあいつガキかよ」

   「彼に真実を告げないでほしい。

   あの輝く瞳を曇らせたくないんだ」

   「わかったわかった。別に言わねえよ」


   真摯に頼むジークスに

   頭をかきながらフェランドラは告げた。


   「で、お前はプレゼントを

   どれにするんだ?」

   「時間があれば迷宮に入って魔道具を

   厳選するんだが、とりあえず種類が

   多いここで探そうかと……」

   「お前、どんなえげつないの渡す気だよ」


   お前なら高難度の迷宮いけるしなあ

   とフェランドラは額に汗を流す。


   「冬将軍だって置いとくんだろ?

   魔道具ならお前だって勘付かれやすいかも

   しんねーからよかったんじゃね?

   時間なくてよ」

   「たしかにな……

   彼は勘が良いところもある。

   魔道具では俺だとバレてしまうかも

   しれないな」

   「だろ?」

   「それに……冬将軍ではなく私から

   渡して喜ばせたい。

   直接渡して、彼の喜ぶ顔をちゃんと

   見たいからな」

   「………お前、本当にやばいな」


   独占欲が垣間見えてフェランドラは

   引いた。


   「もやしも厄介なのに捕まったな……」

   「どうかしたか?」


   フェランドラの呟きが聞こえなかった

   ジークスは首を傾げる。


   「なんでもねえよ。俺はそろそろ行くわ」

   「そうか。俺も買いに行こう」

   「おい、待て」


   ジークスの両手に今にも溢れそうな

   プレゼントの山にフェランドラが

   待ったをかける。


   「お前、全部買うつもりか?」

   「彼はあまり自分の物を買わないからな。

   これくらいあったほうが……」

   「そんなにいらねーよ!

   まず”冬将軍”からのプレゼント

   なんだろ!!」

   「冬将軍も彼にあれだけ目を輝かせられ、

   手作りのスイーツを貰うのだから

   これくらい渡すのでは?」

   「お前はあいつに関することじゃ

   頭のネジがぶっ飛ぶな!!

   マジでそんなにいらねーから!!」

   「むしろ足りないくらい……」

   「いらねーよ!!

   あいつは大量に貰ったら逆に

   気後れするタイプだろ!

   あいつが困るからマジやめろ!!」


   フェランドラの説得がはじまった。


   ーーーーーーーーーー


   フェランドラの説得の甲斐があり、

   厳選に厳選を重ねてプレゼントを

   1つにしたジークス。


   選んだプレゼントを自身のポーチに

   仕舞う。


   (喜んでもらえるといいんだが……)


   選んだのはマフラーだ。


   (彼は体温が低いからな。

   マフラーで首もとを温めたほうがいい)


   ジークスは郁人の体調を気にしたのと、

   あまりオシャレしない郁人に

   少しでも装飾品を持ってほしいことから

   マフラーにしたのだ。


   (………竜のマークをいれてもらったのは

   いいが、流石に気付くか?)


   マフラーに刺繍を入れれると店員に

   言われて、竜とつい言ってしまっていた。


   (もし、指摘されたらなんとか誤魔化そう。

   冬将軍を信じている彼を曇らせたくない)


   ジークスは誤魔化しを考えながら、

   大樹の木陰亭へと戻る。


   (今思えば、スノーフェアリー祭に

   参加するのもいつぶりだろうか……?)


   母がまだ生きていた頃は祝っていたな

   と思い出した。


   (こうやって、また祝えるとは

   思ってもいなかった。

   前まではずっと戦っていたからな)


   以前なら考えられなかった

   とジークスは呟く。


   「ジークス!」


   そこへ郁人が声をかけてきた。

   思わぬ登場にジークスは目を丸くする。


   「イクトどうしたんだ? 買い物か?

   たしか……しゅとーれんだったか?

   なにか足りなかったのか?」

   「いや、シュトーレンは完成したから、

   あとは渡すだけ。

   ただスノーフェアリー祭するの

   初めてだから母さんと一緒に

   料理して、一緒に食べようと思って」

   「それで材料の買い出しを。

   俺も付き合おう」

   「ありがとうジークス。

   ところで、ジークスは今晩予定あるか?」

   「予定はないが」


   突然尋ねられ、ジークスはきょとんと

   しながら答えた。


   「じゃあ、一緒にスノーフェアリー祭を

   楽しまないか?

   俺と母さん、勝手にジークスも

   一緒にいると思ってて……

   聞いてなかったの気づいてさ。

   よかったらどうかな?」

   「喜んで参加させてもらおう」

   「よかった! じゃあ、一緒に選ぼう!

   ジークスはなにが食べたい?」


   返事に郁人は胸を撫で下ろすと

   尋ねてきた。

   ジークスは顎に手をやり、口を開く。


   「そうだな……今晩は冷えると

   聞いているから温かいものがいいな」

   「じゃあ、クリームシチューはどうだ?

   それかビーフシチュー?」

   「そうだな。

   では、クリームシチューが食べたい」

   「じゃあ、クリームシチュー作るな!

   そういえば、あっちにパン屋さん

   あったな……。

   よし! 固いパンを器にして

   ブレッドボウルシチューにしよう!」

   「ぶれっどぼうる?」

   「母さんはグラタン食べたいって

   言ってたから、シチューの半分は

   グラタンにしてもありだな!」


   声を弾ませながら郁人は足取り

   軽やかにパン屋に向かう。


   「君の料理は絶品だからな。

   今から楽しみだ」


   ジークスはその姿を微笑ましく見ながら、

   声をかける。


   「イクト」

   「どうしたんだ?」

   「スノーフェアリー祭、

   誘ってくれてありがとう。

   その……久しぶりの参加だからとても

   嬉しいんだ」


   心から感謝を

   とジークスは気持ちを伝えた。


   気持ちを聞いた郁人も応える。


   「俺も一緒に祝えて嬉しいよ!

   ごちそうを母さんと頑張って作るから、

   たくさん食べて、いっぱい楽しもうな!」

   「……あぁ! いっぱい楽しもう!」


   キラキラと瞳を輝かせて、

   頬を紅潮させる郁人にジークスは

   幸せそうに笑った。


   ジークスの笑顔はとても懐かしい記憶、

   母とスノーフェアリー祭を楽しんでいた

   あの頃のようであったという。




ここまで読んでいただき

ありがとうございました!

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