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201話 2人を除いた協力関係




   朝の光が部屋を照らしていき、

   その眩しさに郁人が目を開けると

   満面の笑みを浮かべるチイトが居た。


   「……チイト?」


   本来なら郁人も笑って応えるのだが、

   今は違った。

   満面の笑みなのだが、人を底冷えさせる

   瞳で郁人を見つめているからだ。


   「パパ、自分から変なことに

   巻き込まれたでしょ?」

   「え?」

   「嫌な予感がして、ユーに聞いたら

   当たってたんだ。

   なにパパを巻き込んでんだ駄女神っっ!!」


   もともと切れ長の瞳を更に吊り上げ、

   ヘッドホンを握りしめる。


   〔予感ってなによ?!

   むしろ予知じゃない?!〕


   ライコが悲鳴をあげ、ヘッドホンから

   メキメキと嫌な音がする。


   「チイトストップ!!」


   郁人は慌てて静止するがチイトは止めない。


   「どうして?

   俺の許可なくパパを巻き込んだ。

   責任はとらないといけないのに」

   〔あんたの許可はいらないでしょ〕

   「五月蠅(うるさ)い」

   「チイト! 壊れちゃうから!!

   それに俺の責任でもあるんだ!

   だから……!」

   「……どういうこと?」


   チイトがムッとするなか、郁人は話す。


   「ライコは俺を助ける際に、無理をして

   しまったんだ。それで、世界に影響が

   出てしまった。最悪、国が1つなくなって

   しまう程の影響を……。

   無理をする理由を作った俺にも責任がある。

   だから、俺からお願いしたんだ。

   協力させてほしいって……」


   郁人はチイトを真っ直ぐ見る。


   「パパには関係ないのに?」

   「関係はかなりあるから」

   「パパ1人で対処できるかどうか

   わからないよ?」

   「たしかにそうだけど……

   できる限りのことはしたいんだ」

   「それで、1人で無理だったら

   どうするつもりなの?」

   「解決策があるか調べて、本当に俺だけじゃ

   無理だったらチイト達に協力をお願いする

   かな……?

   最終的に人任せで申し訳ないけど……」

   「……………」


   情けないよな……とうつむく郁人に

   チイトは長いため息をついたあと、

   ヘッドホンを床に放り投げ、郁人の両頬を

   自身の手で包み込み、自分へと向けさせる。


   「パパは俺にお願いしたり、

   頼っていいんだよ。

   まず、パパは頼らな過ぎるから。

   もっともっと頼ってくれて、

   お願いしたってしていいんだ」


   俺は勿論、他の奴等もそのために

   いろいろと頑張ってるんだしと呟く。


   「それに、俺がむっとしたのは自分から

   危険に飛び込もうとしてる事と1人でやろう

   として、俺に頼ろうとしなかった事だから」

   「でも、これは俺の責任で……」

   「そんなことはどうでもいいから。

   俺はパパに頼ってほしいんだけ。

   危険かもしれないのに1人で解決しようと

   しないで」

   

   訴えるような眼差しで郁人を見つめる。      


   「今度から安請け合いする前に

   俺に教えてね。

   俺の知らないところでパパがピンチに

   なったら駆けつけるのが遅れるから」

   「わかった……ちゃんと伝える。

   本当にありがとうな、チイト」

   「……今更だけど、俺ってパパに甘いなあ」


   チイトは自身の甘さに呆れつつ、

   郁人の両頬から手を離す。


   「で、経緯は?」


   尋ねるチイトにユーが近づき、尻尾で

   触れる。

 

   「……なるほどね。プリグムジカで

   影響がいつ出始めたのかも不明。

   2つの気配があって、その1つが前の

   ドラケネスにいたのと共通してるんだ。

   ……本当にパパは俺に頼らないで

   これを解決するつもりだったの?

   頼らな過ぎるにも程があるでしょ」


   1人ですることじゃないから

   とチイトは額に手をあてた。

   ヘッドホンを回収した郁人は

   目をぱちくりさせる。


   「チイトもユーと意思疎通が

   出来るのか?!」

   「意志疎通と言うか……

   こいつが見て聞いた記憶を俺に

   流してきただけだよ」

   「そんなことも出来るのか?!

   ユーもスゴいな!!」


   褒められたユーは尻尾を振りながら

   郁人に抱きつくと、じっと見つめる。


   「わかった。すごいぞユー!」


   郁人はユーを優しく撫でる。

   合っていたようで、ユーはご満悦だ。


   「プリグムジカに着いたら、念のために

   フェイルートから貰ったもの身に付け

   といたほうがいいかも。俺のは勿論だけど」

   「フェイルートのをか?」


   キョトンとする郁人にチイトが説明する。


   「あいつ、パパに危険がないよう

   贈り物にパパを自然が守ってくれる

   フェロモンを少し施してるんだ」

   「そうだったんだ……!」

   〔言っとくけど、あんたが貰ってるもの

   大体そういったものなのよ〕


   気づいてなかったの?

   とライコは説明する。


   〔英雄は魔術苦手だから自ら施してないけど

   他の軍人やグラデ野郎もあんたを護る術や

   役立つ術とか自分で施してるわよ。

   勿論、目の前の猫被りもね〕

   「そうだったのか……!?

   俺、そんな良いものを貰いっぱなしで

   何も返せてないぞ!!

   チイト! なにか俺にできることは

   ないか!!」

   「……そんな反応するだろうと

   分かってたから言わなかったのに。

   駄女神が」


   鋭い舌打ちをライコにすると、

   チイトは気にしないでと告げる。


   「パパはいつも貰うとき遠慮するけど、

   気にしなくていいからね。

   俺のプレゼントでパパが喜ぶ顔を

   見たいだけだし。

   なにより、俺が贈ったものを身につける

   パパが見たいだけだから。

   気にされたほうが嫌かな」

   「……そうか?」

   「そうだよ。素直に受け取って」

   「わかった。でも、これだけは

   言わせてほしい。本当にありがとう」


   郁人が頭を撫でると、チイトは

   ふにゃりと笑った。


   〔……天然なのか、計算なのか。

   どっちにしても怖いわ……〕

   「? どうして……」


   意味を尋ねる前にチイトが(さえぎ)る。


   「ねえ! パパ!

   ポンドにも伝えといて協力させた

   ほうがいいんじゃない?」

   〔…………えっ?!

   こいつ、協力者を得ようとしてるわよ?!

   あんたを独占する機会でもあるのに!!

   伝えといたほうがいいってそういう

   ことよね?!〕


   ライコが驚く中、チイトは気にせず

   話を続ける。


   「プリグムジカにはあいつがいるから

   俺と引き離そうとしそうなんだよね。

   これも俺の勘が告げてる」


   あいつはそういう奴だからと頷く。


   「だから、ポンドに伝えとくんだ。

   あいつはパパに対してジジイやストーカー

   みたいになってないし、本当は俺だけで

   守りたいけど」


   あいつはとんでもない事しそうだから

   と唇を尖らせた。


   「駄女神の件は伏せて説明するけどね。

   ということで、ユーと共に頼むぞポンド」


   チイトが影に手を突っ込むと

   ポンドの襟首を掴んで引っこ抜いた。


   「いきなりなんですかな?!

   私は剣の手入れをしていたのですが?!」


   突然の事態にポンドは剣を片手に周囲を

   見渡す。郁人も突然の事態に頭が追い

   付いていない。


   「ここは……マスターの自室ですな!

   なぜ私は襟をチイト殿に掴まれているの

   でしょうか?!」

   「五月蝿い」

   「……っ!?」


   チイトは頭を掴むと、すぐに離した。


   「……なるほど」


   ポンドは少しよろめいたあと、頭を手で

   抑えて、口を開く。


   「チイト殿はプリグムジカを調べ、

   嫌な気配があることがわかったのですな。

   そして、チイト殿はご家族の1人から

   妨害を受け、引き離されそうだと。

   ですから、私に周囲の警戒を怠るな

   ということですか……」

   「どうして知ってるんだ!?」

   「頭を掴んだときに情報を流したんだ」

   〔便利よね、それ。

   口で説明しようにもどうすればいいか

   分からないときとか特に良いわ〕


   ライコは羨ましそうな声色だ。


   「マスターもご安心ください。

   私がチイト殿不在の間、なにがあっても

   守り通してみせますとも。

   ユー殿も一緒に頑張りましょう」


   ポンドに言われ、ユーは当然だと胸を張る。


   「……2人もありがとう。協力してくれて」


   郁人が礼を告げるとチイトとポンドは

   微笑む。


   「パパはもっと俺に頼ってよね!」

   「私は従魔ですから、頼られなくては

   困りますな」


   頬をつつかれ見ると、ユーがじっと

   見ていた。


   「ユーのことも頼りにしてるよ」


   すり寄るとユーは嬉しそうに尻尾を揺らす。


   「あっ! ジークスや篝にはどう伝え

   ようかな。2人が協力してくれたら更に

   心強いし……」

   「別にあいつらはいいでしょ。

   ポンドだってしぶしぶなのにこれ以上

   増えたら、無意識でどこかに放置しそう」

   「マスター、伝えるのはやめたほうが

   よいかと……。

   チイト殿、放置の言葉を告げる際、

   悪どい笑みを浮かべましたので……」

   〔絶対にわざと置き去りにするわね〕

   「……うん。言わないでおくよ」

   「それがよいかと」

   〔賢明な判断ね〕


   郁人は心に決めた。




ここまで読んでいただき

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