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200話 干渉した影響




   郁人は辺りを見渡し、突然現れた

   アフタヌーンティーセットやテーブルに

   驚くことなく、慣れた様子で席につく。


   「夢の中でも食いしん坊だな、ユー」


   ちゃっかり居るユーも慣れた様子で

   茶請けのスコーンにクロテッドクリームと

   ブルーベリージャムをつけて、食べていた。 

   食べたあと紅茶を飲み、一息つく姿は

   完全にこの夢に馴染んでいるといっても

   過言ではない。


   「俺もいただこうかな」


   郁人も紅茶を飲み、爽やかな渋みと

   上品で繊細な香りにホッと息をつく。


   「スコーンも作ってみようかな?

   女性客もどんどん増えてるみたいだし」


   クロテッドクリームを塗ったスコーンを

   郁人は口に入れる。


   バターよりも柔らかく、生クリームよりも

   コクのある味は甘さ控えめなスコーンと

   合ってちょうど良い。


   「美味しいな、スコーン。

   母さんに提案しようかな?

   でも、クロテッドクリームの作り方

   知らないんだよな……。

   レシピ探そうかな?

   まず、クリームはあるのか?」 

   「クロテッドクリームは

   マルトマルシェで売ってるわ。

   それにしても、あんたもすっかり

   慣れたものね。

   そいつは慣れすぎだけど……」


   いつの間にか居たライコは紅茶に

   ミルクを入れかき混ぜる。


   「ライコ、直球で尋ねていいか?」


   郁人は夢の中でライコに考えていたことを

   尋ねることを決めていたのだ。


   「なによ?」


   唐突に言われ目を丸くするライコ。

   そんなライコに郁人は告げる。


   「ライコは今悩み事があって、

   それにプリグムジカが関わってるんじゃ  

   ないか?」


   ライコの態度を振り返り、

   郁人はそう確信していたのだ。


   (自分でもなぜそう思ったのかは

   わからないけど……。

   なんだろう……隠している態度が

   誰かと似ている気がするんだよな……)


   既視感に顎に手をやる郁人。

   その郁人に見つめられたライコは

   観念したように呟く。


   「……あんたエスパー?

   なんで見破られるのかしら?」


   あんた変なとこ鋭いのかしらね?

   とため息をついた後、悩み事に関して

   口を開く。


   「神があまり世界に干渉すると

   影響が出る話は覚えてる?」

   「うん。覚えてる」


   頷く郁人にライコは続ける。


   「あたしもあんたを助ける際に少し

   協力したのだけど、上に書類を

   通さなかったから影響が少し

   出てしまったの」

   「少しの影響ってどんな感じなんだ?」


   質問されたライコは言い淀みながら

   告げる。


   「……プリグムジカがなくなっちゃうかも

   しれないくらい?」

   「少しどころじゃないだろっ?!」


   あまりの規模に郁人は思わず

   言葉を荒げてしまった。


   「いや、これは最悪の場合よ。

   考えうる限りの最悪の結末」


   こうなるとは限らないけど

   気をつけないといけない事だわ

   とライコは呟く。


   「ただ、プリグムジカに影響を

   及ぼしちゃったのは確かなのよね。

   せめて影響してしまったのが、

   過去、現在、未来のどれなのか

   わかればありがたいのだけど……」


   未来日誌を見ても謎の波紋があるだけで

   どの時からなのかさっぱりなのよ

   とライコは頭を抱えた。


   「あのとき、すぐに書類を書いて

   渡せば良かったんだけど……

   肝心の書類が通るのに時間が

   かかるのよね……」

   「通るのってどれくらいかかるんだ?」

   「……1年ちょいかしら?」

   「いくらなんでもかかりすぎじゃ

   ないかっ!?」


   なんでそんなにかかるんだよ?!

   と、郁人はあまりの長さに目を丸くする。


   「あたしの友達がその神の部下だから

   時間がかかる理由を聞いたのだけど……。

   どうやら上司である神が異世界の

   メイド喫茶にはまっちゃったそうなの……」

   「……………メイド喫茶?」


   郁人は口をポカンと開ける。

   ユーも思わず食べていたスコーンを

   落としてしまった。


   「そりゃ驚くわよね?

   あたしもそうだったもの」


   聞いたとき冗談かと思ったもの

   とライコは遠い目をしながら話す。


   「上司である神は全国のメイド喫茶を

   訪ねて、その店での推しメイドの

   ちぇき?とやらを集めるのにハマってる

   そうよ。

   友達と他の部下達が頑張ってくれてるの

   だけど大変みたいだわ」

   「なにしてるんだ、その上司は……。

   仕事をちゃんとしろよ」


   郁人はうわぁ……と声をもらし、

   ユーは軽蔑した目をする。

   

   「担当を変えたらいいのだけど、

   その神は仕事に集中したら誰よりも早いし、

   しかも優秀だから変えれないのよ」


   代わりになる神がいないくらいなの

   とライコはため息を吐く。


   「あたしも仕事ぶりを1度見たことが

   あるけど、あの神より早くて正確な神

   なんて今まで見たことがないわ」

   「……だから、サボるんだなその神。

   仕事をどれだけ貯めてもすぐに出来るから」


   見事な悪循環だなあ……

   と郁人は額に手を当てる。


   「今さら書類を書いても、

   通るのを待っていたら手遅れになる

   可能性だってあったから……」


   頭を抱えるライコに郁人は尋ねる。


   「だから、どうしたらいいかずっと

   考えていたの。

   まさか、あんたに見破られるとは

   思ってなかったわ。

   でも、話を聞いてもらったら

   スッキリしたわ。ありがとうね」 


   おかげで、こんがらがってた

   頭がスッキリしたわ

   とライコは花が咲きほころぶ笑みを

   浮かべた。

     

   「…………なあ、ライコ」


   ライコの話を聞き終わった郁人は尋ねる。


   「神様が関わったらまずいのだよな?

   じゃあ、俺がその影響に関わったら

   ダメなのか?」

   「え?」


   郁人の質問に、ライコは口をポカンと

   開ける。

   ユーも思わず郁人を見上げた。


   「ライコがこの世界に干渉する原因を

   作ったのは俺だろ。

   だから、俺が解決するのはアリなのかな?

   って思ってさ。

   エンウィディアに会うために

   プリグムジカには行くんだし」

   「…………あんた、自分から危険に飛び込む

   なんて正気なの?」

   「正気だ。

   俺のせいで干渉することに

   なってしまったんだから。

   俺にも協力させてほしいんだ」


   郁人は前のめりになりながら、

   真っ直ぐライコの瞳を見つめる。


   「……猫被りがなにか言い出しそう

   だけど……。

   でも、最悪の場合の国が滅ぶことは

   何とかして防ぎたいわ……」


   しばらく頭を(ひね)り、(うな)っていた

   ライコだったが決断し、郁人を見る。


   「……お願いしてもいいかしら?」


   ライコの問いに郁人は頷く。


   「いいよ。

   もとはといえば、俺が原因なんだし」

   「本当にありがとう。助かるわ」


   感謝を告げたライコは真剣な顔つきになる。


   「何が崩壊を招くのかは不明だけど、

   調べてみたら、ドラケネスに出てきた

   炎のドラゴンと似た気配があったのよね」

   「あのドラゴンと似た気配………」


   ドラケネスに現れたドラゴンを思い出し、

   郁人は息を呑む。


   「しかも、また違う気配があったの。

   それらがあたしが干渉した結果なのかは

   わからないけど、その2つの気配が

   なんなのか正体を突き止めないと

   いけないことに変わりはないわ」


   ライコは拳を握りしめる。   


   「どっちかが最悪な事態を招く原因

   かもしれないし、両方の可能だってあるわ。

   だから、十分に気をつけてちょうだい。

   あんたが倒れでもしたら、猫被りが

   原因で世界滅亡なんだから」

   「十分気をつけるよ」

   「あたしもまた調べ続けるから、

   なにかわかったら伝えるわ」

   「了解」


   郁人とライコが話しているのを、

   ユーはスコーンを頬張りながら

   じっと郁人達を見ていた。




ここまで読んでいただき

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