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195話 試験結果は……




   スクリーンを見ていた郁人は顔を青ざめる。


   「……篝の様子が明らかにおかしいけど

   大丈夫なのか?!」

   〔見事に壊れてるわね……。

   幽霊も近づくの嫌がるくらいに〕


   ライコは引きながら感想を述べた。


   「別に大丈夫じゃない?

   欠片は回収してるし」


   本能で動いてるとかおかしいね

   とチイトは指差す。


   指した先には、欠片を回収している姿が

   映っていた。

   だが、聞き取れない単語を叫ぶ姿に

   背筋に冷たいものが流れる。


   「彼らも……妨害に行こうにも……

   気味悪くて……無理な……ようです。

   ……よく聞いたら……お経だ……

   こちらでも……有効なのか」


   メランは最後小声で呟いた。


   「彼は本当に大丈夫なのか?」

   「明らかに正常ではありませんな。

   叫びながらたまに頭を壁に打ち付けて

   おりますし」


   頬に汗をかきながらジークスは呟き、

   ポンドは頷く。


   「……最後の1つ……取りました……ね」


   メランの言葉に、郁人達は再び

   スクリーンに集中する。


   ーーーーーーーーーー


   篝は叫びながらもやるべき事を本能で

   やり遂げ、欠片を集め終えると1つにした。


   欠片はカチリと綺麗にあてはまり

   勾玉になると光りだす。


   「まぶしっ?!」


   光は屋敷内を照らし、視界が真っ白になる。


   視界を真っ白に染め上げた光は

   徐々に1つに収束していくと、

   矢印となり方向を指し示した。


   指し示した瞬間、壁に亀裂(きれつ)が入り、

   ミシミシと音が響く。

   天井からも嫌な音を立て、小さな木片が

   落ちてくる。

   後方の廊下も亀裂が入り、崩れていく。


   「篝! 早く脱出しないと……!!

   このままじゃ屋敷が……!!」


   慌てながら篝に告げる郁人(仮)。


   屋敷も揺れだし、次第に揺れが大きくなる。

   屋敷が崩れる恐怖を感じた郁人(仮)は

   安心を求め、揺れにも動じない篝の

   背中に抱きつく。


   「~~~~~~~~~っ!?!?!?」


   篝は声にならない雄叫びを上げる。


   そして、再びお経を叫びながら

   矢印の方向へ走ると思われたが……。


   「篝?!」


   矢印は右を指しているにも関わらず

   真っ直ぐ走り抜ける。


   「篝?! 矢印は……!!」


   郁人(仮)が言っても聞かず、

   突き当りの窓へと猛進し続ける。


   「ぶつかるよ!! 止まって!!」


   制止しても聞く耳を持っておらず、

   篝は両手を顔の前でクロスにし、

   勢いよく窓へとダイブする。


   バリイイイイイン!!


   スクリーン越しではなく、

   はっきりとガラスが割れる音が響く。


   〔アクション映画でよく見る、

   脱出するシーンみたいね……〕


   篝の姿を見てライコは思わず呟いた。


   ライコの言うように、アクション映画

   さながらの行動をした篝は難なく

   地面に着地した。


   「……………」


   その表情は無に近く、どこか不気味だ。


   「こいつ正気を失ってるな」


   姿を見たフェランドラは顎に手をあて呟く。


   「篝! 大丈夫か!! ……篝?」


   郁人が声をかけた瞬間、篝は首が

   取れそうな勢いで郁人を見る。


   ズンズンと郁人のほうへ足を進め、

   じっと見つめる。


   「どうした……? 大丈夫なのか……?」


   郁人は篝の様子に心配していると

   篝は土下座する。


   「篝?! どうしたんだよ?!」


   突然の土下座に目を丸くした郁人は

   篝を立ち上がらせようとするが

   びくともしない。


   「………」


   蚊のようにか細くだが

   篝が呟いているのに気づく。

   郁人は聞き取ろうとしゃがんで、

   耳を澄ませた。


   「俺の小さい頃の想像が、

   お前を歪めてしまった。

   俺はありのままのお前を……。

   なのに、情けないことこの上ない。

   本当にすまなかった。俺の煩悩が……」


   聞き取れたのは序盤だけ。

   あとは何を言っているかわからない

   郁人はただ首を傾げる。


   「歪めるってなんだ?

   俺は謝られる覚えはないぞ。

   ほら、顔を上げて」  

   「………」


   篝は顔を上げて心配そうな郁人を見つめる。


   ー 瞬間


   「うわあああ!!!」

   「何をしているんだ君は?!」


   郁人の服を両手で掴むと力づくで

   引き裂いた。

   駆け寄ってきたジークスは思わず

   声を上げる。

   それをよそに、篝は郁人の胸に

   勢いよく手をやる。

  

   「………男だ」


   呟くと篝は安心したのか、

   くずれるように地面に倒れた。


   「えっ?! 俺の性別疑ってたのか?!

   小さい頃あんなに確かめたのに?!」

   〔……言われても仕方ないんじゃない?〕

   「パパ大丈夫?!」


   チイトが急いで、服を魔法で直した。


   「パパの服を破るなんて……!」

   「チイト落ち着いて!

   篝が少し変になってるだけだから!

   それに、チイトが直してくれから

   俺は気にしてないぞ!」

   「イクト……君はもう少し気にしたほうが

   いいと思うんだが」  

   「すごい音がしましたけど、

   なにかございましたか!?」


   マントを(うごめ)かせるチイトを

   郁人がなだめ、ジークスが呟いていると

   電話を終えたベアスターが駆けつけた。


   「あら?

   カガリさんはどうされたのです?」

   「その……迷宮で……」

   「あのような怪物を相手にして

   疲れたのでしょう。

   とりあえず、運びましょうか」

   「では、私が運びます」


   ポンドが駆けつけ、篝を抱える。

 

   「ベアスター殿は寝かせるための

   場所の確保を。

   メラン殿は怪我などがないか

   診ていただけませんか?」

   「メラン、お願い」

   「……わかり……ました。

   あるじ様が……おっしゃる……なら」

   

   郁人のお願いにメランはしぶしぶ

   頷いた。 


   ーーーーーーーーーー


   1時間経ち、篝は地面に敷かれた

   マットの上で起きる。


   「目が覚めたか!」

   「正気になったようだな」


   郁人は起きたことに胸を撫で下ろし、

   ジークスはホッと息を吐く。


   「俺は屋敷に居た筈だ……。

   なにか俺の過ぎた夢? 願望? を

   見た気が……」


   上半身をお越し、頭を押さえ思いだそうと

   しているが覚えていないようだ。


   〔忘れてるみたいで良かったわ。

   覚えてたらこいつ恥ずかしさで

   憤死しそうだもの〕

   「そうだ!! 結果は!!

   俺は合格なのか?!」


   篝はハッとすると、ミアザと話していた

   チイトに声をかけた。


   「合格だ。

   貴様は罠にかからなかったからな。

   ……ゲームしまくってたから、矢印の

   罠にかかると思ったんだがな」

   「矢印の方向へ……進むと……

   出られなく……なってました……から。

   脱出方法は……あの窓を……突き破る

   しか……なかったので……」


   発狂してたらかかると思ったんだが

   と眉をしかめながらチイトは告げ、

   メランが見事と手を叩く。


   「容赦ねーよな、こいつら。

   俺はてっきりあの矢印の先に

   出口があるかと思ったぜ」

   〔加入させる気0よね〕


   フェランドラが2人を指差し、

   ライコは同意し、ミアザが口を開く。


   「カガリくん。

   君は合格した。おめでとう」

   「そうか。だが、なぜ俺の記憶は……」

   「気にしないほうがいいだろう。

   君が合格したのは事実なのだから」

   「……そうか?」


   ミアザの言葉に篝は首を傾げた。

   そんな篝に経緯を聞いたベアスターは

   拍手をする。


   「話を聞いた限り、とても過酷な試験

   だったみたいですわね。

   本当におめでとうございますわ!」

   「おい」


   ふとチイトはミアザ達に提案する。

 

   「これから態度悪い加入希望者は

   全部屋敷に放り込め。

   スキャフープは必要はない」

   「は? 使わねーのか?

   もやしを守るのが条件なんだろ?」


   フェランドラは腕を組む。


   「こいつはパパを守る気があったから

   条件に加えただけだ。

   それに、もう加入させる気は無い」

   「この屋敷……今は安全ですが……

   人が……定期的に……来なければ……。

   ですので……チイト達の……実力に

   すがる者や……あるじ様に近づくむ……

   輩を……有効活用……しましょう……」


   メランは後光差す笑みでほの暗いことを

   告げた。


   〔定期的に来なければなんなのよ……!!〕

   「……安全だったのですかな?

   あの化け物とか斧を持っていましたが」


   ライコは声を震わせ、ポンドが頬に

   汗をつたらせる。


   「屋敷の惨劇を……見せてません……から。

   なにより……彼らは……楽しんだだけで……

   本気で……殺そうと……してません」

   「加入者の命を奪うのは止してくれたまえ!

   イクトくん達のパーティに加わりたい

   という者は多いんだ」

   「貴方が……あるじ様達に……お伝え……

   していない……のは……下心……

   ありの……輩だらけ……だったから

   ですよね……?

   真摯に入りたい……者でしたら……

   お伝え……してそう……ですから」

   「………そうなのだが」


   メランに言い当てられミアザは

   何も言えなくなった。


   「諦めろ親父。

   なあ、屋敷に定期的に人が来たら

   害は少ねーんだな?」

   「えぇ……人が来たら……大丈夫……です。

   命が……奪われることは……ありません」

   「ならいーんじゃねーの?

   帰ったらごちゃごちゃ抜かしやがる

   奴ら放り込んどくわ。

   最初の試験は真面目な奴用だ。

   あっ、ギルドなめてる奴もいーか?

   たっぷり締め上げたいんだが、

   体裁上難しくてよ。」

   「構いません……よ……」


   メランは快諾(かいだく)した。


   「……裏取引じみたものを感じますわね」

   「だな」


   ベアスターの言葉に郁人は頷く。


   「郁人」


   篝が郁人の肩を叩く。


   「無事に加入した俺に言うことが

   あるんじゃねえか?」

   「!

   加入おめでとう! 篝!」

   「当然だ」


   郁人の言葉に篝は左の口角を上げた。




ここまで読んでいただき

ありがとうございました!

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よろしくお願いします!


ーーーーーーーーーー


ちなみに、篝が気を失っている間、

ジークスは郁人に服を破かれたことを

気にしたほうがいいと注意を受けてます。


「たしかに驚いたけど、

正気じゃなかったからさ」

「もし、あれが正気のときに

されたらどうするんだ?

もし、他人にされたらどうする?」

「そうだな……。

知り合いならびっくりして、

多分なんでそんなことを

したか聞くかな?

他人なら……逃げるな。

力づくで抵抗するぞ」 


怒るのはもちろんだけど

と郁人は告げる。


「知り合いでも突然されたら、

尋ねる前に怒ってくれ。

あと、君の腕力での力づくは

信用できない。不安だな……。

まず、服を破かれるなんて

とんでもない状況だと

理解してほしい」


災厄が過剰になるのも頷ける気がしてきた

とジークスはため息を吐く。


「もし、また同じことがあれば

私は君の服を破った者の腕を斬るか、

折るかもしれないな」

「それは駄目だ!ジークスがカランに

捕まっちゃうかもしれない!」

「なら、そんな状況になりかけたら

私かポンドを呼ぶんだ。

災厄は……最終手段だな」

「わかった。ちゃんと呼ぶ」

「絶対に頼むぞ」


郁人の両肩を掴み、ジークスは

まっすぐ郁人の瞳を見つめた。


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