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彼らが小さかった頃のハロウィン


少し早いですが……

ハッピーハロウィン!

 

追記:ハロウィンイラストを描いたので

こちらに載せさせていただきました。

小さい頃の篝と郁人です!


挿絵(By みてみん)


無断転載(複製)、自作発言等は禁止です。






   ー これは彼らが日本に居た頃のお話……



   商店街はオレンジと黒、紫で彩られている。

   店前にはかぼちゃが置かれ、

   まねきねこには魔女の帽子をかぶせら

   れていた。


   「ハッピーハロウィン!

   ハロウィン限定お菓子セットは

   いかがでしょうかー!」

   「あっ! ハロウィン限定の

   スイーツセットだって!」

   「黒猫のケーキかかぼちゃプリンか……

   どっちにしようかな?」


   お菓子屋はハロウィンセットとして

   販売したり、喫茶店ではハロウィン

   メニューがあったりとイベントを

   楽しんでいる。


   そんな商店街を、様々な仮装をした

   小学生ほどの子供達が歩いていた。


   「海賊の格好いいなあ!」 

   「だろ! 海賊やりたかったんだよ!」

   「お菓子どれだけもらった?」

   「おばけクッキー美味しそう!」


   手にはかぼちゃのカゴがあり、

   様々なお菓子が入っていて、

   子供達の顔は笑顔で彩られていた。


   「いっぱいお菓子もらったな!」

   「ここはイベントが好きな地域だな、

   本当に」


   そのなかに、郁人と篝がいた。


   郁人はヒラヒラとしたシャツにマントを

   羽織った吸血鬼の衣装。

   

   篝は背中に小刀を装備し、頭巾の無い、

   マフラーをつけた忍び装束といった

   忍者の衣装だ。


   「篝が初めて参加したとき驚いてたもんな」

   「前にいた地域ではここまで

   大層なイベントじゃなかったからな」


   篝は改めてハロウィン一色の商店街を見た。


   アーケードはハロウィンの飾りで彩られ、

   垂れ幕にはハッピーハロウィンと

   書かれている。


   それぞれの店にはハロウィン限定のものを

   置いたり、店員が仮装したりしている。


   「トリック・オア・トリート!」

   「お菓子くれねえとイタズラするぞ!」

   「おお! それは困ったなあ!

   このお菓子をあげるから見逃しておくれ」

   「わあ! ありがとう!」

   「次のお店に行こう!」

   「うん!」


   そこへ店員に子供達が決まり文句を言って、

   お菓子をもらって頬をゆるませ、

   また違う店に向かっていった。


   そんな風景を見て、篝は呟く。


   「はじめて見たときは驚いたもんだ。

   クリスマスもすげえ盛り上がってるし」

   「イベント大好きな人達が多いから。

   篝は忍者の衣装なんだな。かっこいい!」


   前はかぼちゃを被ってたから、

   今回は本格的だな!

   と郁人は顔をほころばせた。


   「……お前が忍者好きって言ってたから」

   「? 何か言ったか?」

   「なんでもねえ。

   それより、一旦食わねえか?

   たい焼きとか温かいうちに食った方が

   いいだろ」

   「あたたかいものはあたたかいうちに

   だもんな!

   じゃあ、あそこのベンチで食べよう!」


   篝の提案に郁人は頷き、2人は

   商店街にある時計台の下のベンチに座る。


   「あんこが甘くておいしい!

   やっぱりあたたかいうちに食べるのが

   1番だな!」

   「そうだな。こっちはチョコだったから、

   ひと口いるか?」

   「ほしい! いいの?」

   「あぁ。その代わり、お前のもよこせよ」

   「うん!」


   郁人は目をキラキラと輝かせたあと、

   篝が差し出したたい焼きをひと口貰った。


   「チョコもおいしい!

   いつもカスタードかあんこを選んでたから

   次はチョコを買おうかな!」

   「おい、俺にも」

   「あっ、ごめん! どうぞ」


   郁人が差し出したたい焼きに

   篝はかじりつく。


   「あー!! ガッツリ食べた!

   ひと口じゃないよこれ!」


   たい焼きを半分以上かじられ、

   郁人は涙目だ。


   「お前のひと口が小さいんだ。

   俺のひと口が標準だ」

   「絶対違うって!」


   涙目の郁人に篝はニヤリと笑いながら

   自身のたい焼きを頬張る。


   「篝のひと口が絶対に大きいだけだ!」


   郁人は唇を尖らせ、小さくなってしまった

   たい焼きを口へ放り込んだ。


   「あっ」

   

   郁人はいいこと思いついたと

   ピコンとアホ毛を揺らす。


   「篝、トリック・オア・トリート!」

   「はあ?」


   郁人の言葉に言っていた側だった篝は

   両眉を上げる。


   「貰ったものしか持ってないよね?

   だから……イタズラ(トリック)だ!」


   郁人はニヤリと笑ったあと、

   篝のたい焼きに思い切りかじりついた。

   勢いあまって指も口に含んでしまって

   いるが、郁人は気づかない。


   「ぐっ……?!」

   「ふぉれでおあいきょだふぇ

   (これでおあいこだね)」


   篝のひと口は俺にとってはこれくらいなんだ

   と郁人は口いっぱい頬張る。


   「おま……指まで食うか……普通……」


   篝はくわえられていた指、

   歯型のついた指を見て固まっている。

   よく見ると顔が赤い。


   歯型のついた指を見て、顔を青くした

   郁人は謝る。


   「えっ!? 指まで食べちゃってた?!

   本当にごめん!」

   「……別に怒ってない。

   ただ驚いただけだ。俺以外にするなよ」

   「もうしないよ、人を噛むなんてさ」


   偶然噛んじゃっただけだから

   と郁人は告げる。


   「ならいい。

   ……そうだ、郁人」


   思いついた篝はニヤリと悪戯めいた顔で

   話しかける。


   「トリック・オア・トリート」

   「へ?」

   「まさか言われると思ってなかったのか?

   先に言っておくが、貰い物を渡すのは

   無しだ。無効とする」


   お前も言ってただろ?

   と篝はあくどい笑みを浮かべた。


   「えっと、妹に作ったお菓子を

   渡しちゃってるし、これも貰い物で……」

   「…………」


   慌ててかぼちゃ型の籠をあさる郁人に

   篝が近づく。

   篝は郁人の顔スレスレまで迫った。


   「これはダメだな。

   これも貰い物だから……へ?」 



   ーーーーーーーーーー


   「郁人おかえ……

   おや? どうしたんだい? その顔は」


   帰ってきた郁人の顔を見て

   祖母は目を丸くした。


   「篝にイタズラだってほっぺ噛まれた……」


   なぜなら、郁人の頬に見事な歯型が

   あったからだ。

   血は出ていないものの、くっきり歯型が

   残っている。


   「篝にひと口だって言って、たい焼き

   渡したら、半分以上食べられたんだ。

   だから、その仕返しに篝のたい焼きを

   イタズラで食べたら指まで食べちゃって……

   仕返しの仕返しにほっぺ噛まれた」


   指まで食べたのはわざとじゃないのに

   と郁人は噛まれた頬に手を当て、

   唇を尖らせる。


   「俺、美味しくないのに。

   篝がまた噛みたいって言ってた」

   「おやまあ。仕返しの仕返しかい。

   郁人は今日、吸血鬼の仮装したのに

   噛まれたんだねえ」

   「次があったら、俺もほっぺ噛んでやる!

   ガブッて!」

   「勇ましいのはいいことだけど、

   帰ってきたらどうするんだい?」 

   「あっ! 手洗いうがい!」


   郁人は祖母に言われ、ハッとした様子で

   洗面台へとバタバタと走っていった。


   「あの子は大胆なことするんだねえ」


   祖母は篝のことを思い出しながら、

   お茶を飲んだ。


   ーーーーーーーーーー


   「………やり過ぎたか?」


   家に帰ってきていた篝は自分の部屋で   

   考えていた。


   「流石に頬はまずかったか?

   いじめとかと勘違いされねえか?

   でもな……」


   郁人の家族に誤解されないか

   心配しながらも、郁人の姿を思い出す。


   コロコロと秋の空のように表情を変える

   郁人の頬に自分の歯型がある姿。

   まるで自分のものだとアピールして

   いるような歯型。


   「……悪くねえ」


   篝はフフンと口角を緩めながら

   自分の手を見る。


   たい焼きと一緒に噛まれてしまった

   自分の手、指には郁人の歯型が残っている。

  

   「……今度は指でも噛むかな?」


   上機嫌で口笛を吹きながら、

   篝は着替えはじめた。




ここまで読んでいただき

ありがとうございました!

面白いと思っていただけましたら

ブックマーク、評価(ポイント)

よろしくお願いします!


これは彼らが6年生のときのお話です。

このあと、郁人は歯型が次の日にも残ったので

妹がくれた大きめの絆創膏を

頬に貼って登校しました。

が、それが気に食わなかった篝に

絆創膏をベリッと剥がされてます。


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