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187話 条件変更




   郁人達がベアスターの登場に驚いていた頃、

   篝は戦闘中であった。


   最初の敵を倒した瞬間、矢が雨のように

   降り注いできたのだ。


   篝はそれを軽々とした身のこなしでかわす。

   かわす。かわす。

   足に当たりそうになれば、寸でのところで

   避ける。

   頭に当たりそうになれば首を傾げて

   避ける。

   最小限の動きで降り注ぐ矢をかわしていき

   敵に迫る。


   「数射てば当たると思ったか」


   不敵に微笑むと敵の眼前まで気配を消し

   気付かれるこなく進み、首を獲った。


   影が消えたあとには、黒い砂だけが

   残っている。


   それを見届けることなく、篝は次々と

   敵を(ほふ)っていく。

   実力差がありありと見せつけられる光景だ。


   「これで終わりだ!」


   最後の1人の頭めがけてクナイを飛ばし、

   命中させる。

   影は後ろには倒れながら砂となり

   消えていった。


   「矢の雨などかわせばどうと言う

   ことはない」


   篝は息切れすることなく、命中させた

   クナイを拾う。

   実力面でも体力面でも余裕が感じられる。



   ー「素晴らしい。見事な腕前ですな」



   パチパチと乾いた音が周囲に響く。


   「誰だ?!」


   篝は目を見開き、すぐさま音の方へ

   振り向く。


   「しかし、倒した後に気を抜くのは

   いただけませんな。

   その間に殺られては終いでしょう」


   そこに居たのは、笑みを浮かべる

   黒鎧を身に纏った金髪の美丈夫。

   "ポンド"である。


   「郁人の従魔!! なぜここに……?!」

   「私は元試しの迷宮の魔物ですからな。

   少し変化があるとはいえ、古巣に戻るのに

   苦労はいりません」


   笑うポンドに篝は警戒を解かない。

   注意を怠らない。


   なぜなら、ポンドに隙が全く

   見当たらないからだ。


   (まず、こいつはいつから居た……!?

   気配を全く感じなかったが……!!)


   自身の慢心に舌打ちをしながら、

   篝はポンドに問いかける。


   「ここに来た経緯は理解した。

   しかし、理由はなんだ?」

   「理由ですかな?

   貴方様と1つ手合わせを申し込もうと

   思いましてな」


   ポンドはあっさり理由を告げた。

   理由に篝は頭をかく。


   「それなら、少し待て。

   今は試験中だ。全ての敵、この砂になった

   奴等を倒してからだ」

   「その敵ならもう居ません」

   「どういう事……だ?!」


   篝はポンドの背後に気づき、目を見開く。


   この迷宮は試しの迷宮と内観は

   変わらないため、白が基調とされている。


   しかし、ポンドの後ろの光景は真っ黒。


   目を凝らせば敵を倒した後に出る砂で

   埋め尽くされていたのだ。


   「お前……まさか!?」

   「手を出すつもりは無かったのですが

   私にも攻撃をしかけてきましてな……。

   仕方なく反撃していたところ

   うっかり全滅させてしまいました」


   ポンドはにこりと微笑む。


   「貴方は全ての敵を倒さなくては

   なりません。

   しかし、全ての敵は私が倒して

   しまいました。

   ゆえに、貴方は唯一迷宮に存在している

   この私と戦うしかありません」

   {待ちたまえ!}


   迷宮に繋いだミアザが慌てて声をかけた。


   {彼のクリア条件は我々が用意した

   全ての敵を倒すこと。

   君の相手をすることはクリア条件には……}

   「クリア条件は変わっておりますよ。

   前もってメラン殿にお願いして、

   今回だけ私にもいじれるようにさせて

   もらいましてな。

   クリア条件は私が入ったときに

   勝手に変えさせていただきました」

   {どういう……?!}


   ミアザは確認して息を呑む。

   その声に篝は尋ねる。


   「どうした?」

   {……たしかに変わっている。

   カガリくん、ブレスレットに

   触れてみたまえ}

   「あぁ」


   篝はブレスレットに触れてみると、

   頭上にスクリーンが浮かび上がる。


   内容はこう表記されていた。


   ・クリア条件:3分間、耐え抜け


   「シンプルな内容でしょう。

   ただ私の攻撃に耐えてください。

   そうすれば貴方は試験を突破し、

   チイト殿が用意した次の試験に

   進むことが出来ます」


   ポンドは自身の胸に手を置き、説明した。


   {ポンド!! どうして?!

   いつの間に!!}


   郁人の慌てた声が迷宮内に響き、

   ポンドは謝罪する。


   「申し訳ございません、マスター。

   彼の実力を直接確かめたい

   と思いましてな……。

   それに、彼はマスターを守ると

   言っておりましたからな。

   この方にマスターを守れる実力は

   あるのでしょうか? と疑問に思いまして

   このように行動させていただきました」

   「ほう……」


   篝はポンドの言葉に眉をひそめる。


   「なら、お前を叩きのめせば

   いいんだな?」

   「その意気ですな。

   一方的は(こころよ)くないですから」


   普段と変わらない様子なポンドに

   篝は短刀を構えた。


   ーーーーーーーーーー 



   「人間のようにしか思えない

   あの黒鎧の方がイクトくんの

   従魔なのですか?」

   「そうです。

   ……ポンド、見当たらないと思ったら」

   〔まさか、あそこに居るなんてね〕


   郁人とライコはスクリーンを見つめる。

   ベアスターは彼がおばあ様の言っていた

   従魔に見えない従魔……と見ている。


   「パパ、メランに聞いたけど

   頼まれたのは本当だって。

   試しの迷宮の調整してるときに、

   ポンドからお願いされたそうだよ」


   コンタットでメランに確認をとった

   チイトが話しかけてきた。


   「パパの従魔として、あいつが

   パパを守ると主張するなら実力を

   見定めたかったみたい。

   メランもその意見に納得して

   ポンドに協力したんだって」

   「そうだったんだ……」

   〔あの黒鎧、本当に従魔の鑑ね。

   で、その情緒不安定はどこにいるのよ?

   どこにも姿を見かけないけど……〕

   (メランは屋敷にいるぞ。

   屋敷の人達となんか準備してるって

   言ってたな)


   屋敷の人達が張り切ってるそうだけど

   と郁人は説明した。


   (準備ってなんだろうな?)

   〔………まさか、あんなとこで

   しないわよね。あんな最恐スポットで

   やるなんておかしいにもほどがあるわよ。

   あたしなら絶対に逃げるわよ〕

   (どうかしたのか?)


   ブツブツと呟くライコに郁人は尋ねた。       


   〔なんでもないわ。

   あっ! 今あの傭兵について調べてたけど、

   あの受付嬢が前に言ってたように、

   実力者で結構有名なのね〕

   (そうなのか?)

   〔えぇ。冒険者としての実力は優秀。

   護衛任務もまた指名が来るくらい

   らしいわ。

   パーティーは組んでないから、

   引く手あまたみたいよ〕

   (誘われてたとは言ってたけど

   それぐらいだったんだ……)


   郁人がポカンとする中、ジークスが

   口を開く。


   「……カガリが耐えきれるかわからないな」

   「そうか? 耐えれるんじゃねーの?

   1回、依頼であいつと鉢合わせたこと

   あるが実力はあるぜ」


   あいつがあんな強いとは思わなかった

   とフェランドラは鉢合わせたときの

   感想を述べた。


   「あの鎧の戦いっていうのか?

   実力を見たのは1度きりだが   

   カガリなら他の奴等に比べたら

   全然耐えれるほうだろ」


   フェランドラの言葉にジークスは

   問いかける。


   「君達はポンドの実力はどれくらい

   だと思う?」

   「ポンドが強いのは分かってるけど

   どれくらいかと言われたらな……」

   〔どう表現したらいいのかしら?〕


   どう言えば良いのか考える郁人に対し、

   フェランドラは告げる。


   「お前のとこのパーティーじゃ

   3番目くらいじゃねーのか?

   上からチイト、お前、ポンドで」


   1、2、3と指を立てていくフェランドラに

   ジークスは首を横に振る。


   「そう思われているのは光栄だが、

   実際は違う。

   パーティ内でポンドは"2番目"に強い。

   機会があれば幾度が手合わせしているが

   最近では1度も俺は勝てた事が無い」

   「嘘だろっ?!」

   〔英雄が歯が立たないって……?!〕


   郁人は口をポカンと開けながら、

   篝とポンドが映るスクリーンを見つめた。





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