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186話 1つ目の試験開始




   郁人は仁王立ちする篝に声をかける。


   「篝! 頑張って!」

   「当たり前だ。パーティーに加入し、

   お前を守るのは俺だ。

   前みたいな目には遭わせはしない」

   「そんな気にしなくていいんだぞ」

   「自分の身を自分で守れるように

   なってから言うんだな」


   篝は郁人にデコピンする。


   「しかも、痛みを感じにくく

   なっているらしいじゃないか。

   それが大変なことだと理解しているのか?

   それに……」


   篝は郁人の肩に腕を回し、耳打ちする。


   「お前が怪我したらチイトが厄介だからな。

   話を聞いた限り、お前が怪我したら

   クレーターや更地が量産されるだろ。

   俺が守れば様々な被害も最小限に抑えれる」

   「そうかもしれないけど……」

   「パパから離れろ」


   チイトがべりっと2人を引き剥がした。


   「いつもベタベタしつこいぞ

   このストーカー野郎」

   「誰がストーカーだ!!」

   「ストーカーにそう言って何が悪い?

   勝手に送り迎え、パパの部屋に

   自分の家財を持参し置きっぱなし。

   どこに行くにも勝手に着いてくる。

   挙げ句、最終的にほぼパパの部屋で

   寝泊まりしていただろ。

   迷惑とか考えなかったのか?」

   「……そんなに一緒だったのか」


   話を聞いていたジークスは呆然とした。


   「守るのだから当然だろ」


   驚かれる訳がわからないと

   篝は不思議がる。


   「マスターがジークス殿の態度に

   違和感を持たない訳がわかりましたな」


   ポンドは思わず苦笑した。


   「あぁもう! とっとと行ってこい!」


   しびれを切らしたフェランドラが

   篝の腕を掴み、迷宮へ放り投げた。


   ーーーーーーーーーー


   「いきなり何しやがる!」


   篝は受け身をとり、抗議するが

   周囲に人はいない。むしろ気配すらない。


   見覚えのあるところどころ蔦に覆われた

   白い壁に篝は理解する。


   「……迷宮に放り込まれたか」


   ため息を吐き、周囲を警戒する。


   「見た目は試しの迷宮と変わらないが……」


   どこが違うのか頭を捻っていると、

   首筋がゾワゾワする。


   「成る程」


   篝は後方に跳躍し下がる。


   見れば居た場所には矢が刺さっている。


   そしてゾワゾワの正体を理解する。


   弓を構えた影が複数居たのだ。


   影の後ろには同じく影の魔物の姿が

   どれもバラバラであるが、

   同じく殺意を篝に向けていた。


   「ほう……」


   篝は口角をあげる。


   「もう始まっているという事か」


   篝はクナイを構え、戦闘に入った。


   ーーーーーーーーーー



   フェランドラが取り出した携帯をいじり

   スクリーンを空間に表示させる。


   「これで中の様子が見れるぜ。

   本当に便利だな、これ!

   連絡も出来るし、シャシンってやつを

   撮って、保存できるしよ!」


   あいつに感謝しねえとな!

   とフェランドラは声を弾ませながら

   スクリーンを見る。


   「中の様子も把握出来るから、

   前に比べるとマジで楽だわ。

   いろいろ面倒だったからよお」

   「なあ、フェランドラ。あの影は?」


   郁人が尋ねると、フェランドラは答える。


   「あれは俺達が今まで戦ったこと

   あるものを影にして、あいつと

   戦わせているんだ」

   「フェランドラが戦ったことあるのが

   いるのか?」

   「おうよ! 俺以外に親父やジークス、

   そしてまさかのあいつの戦ったことが

   あるものがな」

   「あいつ?」

   「お久しぶりですわね、イクトくん」


   振り返るとベアスターがいた。

   郁人は目を見開く。


   「ベアスターさん!

   ベニバラさんとここを出たんじゃ……」

   〔なんでここに?!〕


   尋ねた郁人にベアスターは答える。

  

   「おばあ様とこの国を出たのですけど

   貴方が悪い輩に捕まったと聞いて、

   急いでこちらへ戻ってきたのです。

   こちらへ着く前に解決していましたので、

   私はお力になれなかったですから。

   せめて、貴方のパーティーの選抜に

   協力させていただきました」


   心洗われる清らかな笑みをベアスターは

   浮かべる。


   「……で! もやし!」


   フェランドラは郁人の背中を叩く。


   「いつ"清廉騎士"のベアスターと

   仲良くなったんだよ?!

   突然、お前を尋ねて来たから

   ビビったじゃねーか!」

   「清廉?」


   郁人は思わず口に出してしまった。


   「知らなかったのかよ!?

   かなり有名だぞ!!」


   知らない郁人の様子に目を丸くしながら、

   フェランドラは話す。


   「どんな依頼も真摯にこなし、

   成功率は驚異の100%!

   ギルド"ローズガーデン"の

   A級パーティのA級冒険者。

   人柄も清廉潔白、どんな依頼にも誠実な

   対応することから"清廉"の2つ名がついた

   凄腕なんだぞ!」

   「……そうだったんだ」

   〔……アレは清廉とかけ離れてたわよ〕


   デルフィに対しての態度は真摯とは

   かけ離れていたので清廉イメージが

   郁人とライコは持てない。


   「いつの間にかそんな2つ名を

   付けられていたのです。

   私は普通にしているつもりだったの

   ですけれど。

   そうですわ! 携帯を買いましたので

   連絡先を交換しませんこと?」


   頬をかいていたベアスターだったが、

   あっと声を出して携帯を出す。


   「持ってたんだ?!」

   「つい最近ですけどね。

   貴方を尋ねた際、最初に貴方のお店に

   向かったのです。

   そしたらカタログがありまして、

   携帯がありましたから驚きましたわ」


   ベアスターは目を輝かせる。


   「で、その……よろしいでしょうか?」


   首を傾げ不安そうに瞳を揺らす

   ベアスターに郁人は了承する。


   「全然いいよ」

   「感謝しますわ! イクトくん!」


   ベアスターは嬉しそうに微笑むと、

   コンタットで連絡先を交換した。


   「マジでいつ仲良くなったんだよ!

   もやし!

   よそのギルドのA級なんて滅多に

   会えないんだぞ!」

   「? 何でだ?」


   はてなマークを浮かべる郁人に

   スクリーンを見ていたジークスが答える。


   「A級は国のお抱えが多い。

   ゆえに護衛に勤めている事が

   ほとんどゆえ、あまり見かけることは

   ないんだ」

   「そうなんだ?!」


   郁人は思わずベアスターを2度見した。


   「そこまで驚くことはありませんわ。

   私はお抱えになってる訳では

   ございませんので」

   「勧誘が絶えないって噂を他所である

   うちでもよく聞くぜ。

   しかも、莫大な報酬が確実だとよ」

   「皆が私を過大評価してるだけですわ。

   それに、他所ではございませんことよ」

   「フェランドラ、彼女はローズガーデンから

   ジャルダンへと所属を移籍したのだ。

   こちらが証拠だ」


   ミアザは万能クリスタルを取り出し、

   ベアスターへと渡す。

   そしてベアスターは受け取り、

   万能クリスタルに手をかざした。


   【名前:ベアスター

   所属:ジャルダン】


   空間に浮かび上がったスクリーンに

   ハッキリと記されている。


   「この通りですわ」

   「おいおいおい!!」


   ウインクするベアスターに

   フェランドラが声を上げる。

 

   「待て待て!!

   お前、ローズガーデンの有名パーティーに

   入ってたろ!!」

   「入っておりましたが、加入は期間限定と

   約束しておりましたので。

   私はもう入っておりませんわ。

   それに、きちんとギルド長、祖母の

   許可は得ておりますので問題ありません」

   「本当なのか?

   君ほどの腕前の持ち主の移籍許可など

   簡単にとれるものでは……」


   ジークスが尋ねるとベアスターは微笑む。


   「ローズガーデンには私以上の実力者は

   居りますのでご安心を。

   それにギルドマスターである祖母から

   "1人くらい他所に行っても大丈夫。

   社会勉強して来るといいさ"

   と言われましたので」


   ベアスターは爽やかに微笑んだ。


   「あら? 進展があるみたいでしてよ。

   カガリくんでしたかしら?

   彼の活躍を共に見届けましょう」


   ベアスターが指差す先、スクリーンに

   映る篝の動きに変化が見られた。




ここまで読んでいただき、

ありがとうございました!

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