183話 加入希望
篝は郁人を見つめながら伝える。
「俺がお前のパーティに入れば前までの
ように遠くからではなくこれからは
近くでお前ことを俺が守れるからな」
「入れてほしいって……
篝ってパーティに入ってなかったのか?
まずギルドに加入してたの?」
いつの間にか郁人の手を取り、両手で
がっしり包み込んでいる篝に首を郁人は
首を傾げながら伝えた。
「俺はパーティを組んでいない。
依頼内容によっては一時的に組んだり
していたがな。
ギルドにはお前よりももっと前に
入っている。
だから……」
「そうみたいだよパパ。
こいつかなり前から入ってる」
「チイト!」
そこに割り込むようにチイトがやって来た。
郁人の手を掴む篝の手をしっかりと
剥がしている。
そして、チイトは郁人に抱きつき、
篝から庇うようにしている。
「チイト、お前邪魔を……!」
「なんか色んな奴から加入するように
言われてるけど断ってたみたい。
パパのこと見てたから」
「俺のこと?」
両眉をあげる篝の言葉をチイトは
遮りながら告げた。
郁人は目をぱちくりさせる。
「うん。こいつね、前はパパのこと
思い出してなかったんだ。
でも、なぜかこいつはパパのことを
見つけたときからずっと見てたみたい。
すっ……ごく気持ち悪いね!!」
「なにが気持ち悪いだ!
俺はたんに郁人を見てたら思い出し
そうなのもあって、見てただけだ!」
反論する篝にチイトは冷たい視線を
浴びせる。
「気づかれないようにスキルで気配遮断し、
依頼がなかったときはストーカーのごとく
見ている事を気持ち悪い以外に言いようが
ないだろ」
部屋に不法侵入して物とか渡してたくせに
とチイトは眉をひそめる。
「もしや君か!
スノー……いや! バレンタインのときに
郁人に薔薇を渡していたのは!」
ジークスも聞いていたのか、言葉を1部
にごしながらも突然会話に入ってきた。
「? そうだが?
あれはこいつに渡したくて渡しただけだ。
まあ、いきなり渡されても困るだろうから
部屋に置いたがな」
「部屋に不法侵入されたほうが困ると
私は思うのだが?」
なにが悪いという篝の態度にジークスは
思わず額に手をあててしまう。
「あれ篝からだったんだ!
あの綺麗な薔薇とチョコ!」
郁人は目を丸くしながら話を続ける。
「ずっとくれたのは誰なんだろって
思ってたから!
お返しもどう渡せばいいかわからなくて
部屋にメッセージカードと一緒にお礼を
置いてたんだけど、受け取ってもらえた?」
「美味かったぞ、あのマドレーヌ。
甘すぎなくて食べやすかった。また作れ」
「タイミングが合えば作るよ」
「………イクト」
謎がわかったとスッキリしている郁人に
ジークスは話しかける。
「その、勝手に入られていたり
ずっと見られていたのはいいのか?」
「? 問題ないよ。
篝はよく勝手に部屋に入ってたし、
俺のことを見てるのはいつもだから」
「……いつも?」
いつもという言葉にジークスはピタリと
固まった。
郁人はそれにキョトンとしながら説明する。
「篝は大体一緒にいたからさ。
俺が心配だからってよく見てたりしてたし。
視線を感じるなって思ったら
篝だったことは山程あるからな」
「お前は俺が見てないと変な輩に
絡まれたりしていたからな」
こいつから目が離せる訳がない
と篝はため息を吐いた。
「本当に前からのことだからさ。
そんなに気にすることじゃないぞ」
「……………前から警戒することを
知らないなと感じていたが、
まさかここまでだったとは」
郁人の言葉にジークスは頭を
抱えてしまった。
そんなジークスの姿に郁人は首を傾げる。
「どうしたんだジークス?
そんなに頭を抱えてさ」
〔頭抱えるのも無理ないわよ。
あたしも絶句してたし〕
あんたの危機感の無さに唖然よ
とライコは告げた。
(なんでだ?
別にただ見てるだけだし、知らない人でも
ないんだからさ。
篝だから問題ないだろ?)
<……パパはもう少し信頼する相手を
選んだほうがいいよ>
チイトも思わず苦言を呈した。
「………イクト」
そんななか、ジークスは声をかけた。
「どうした……うわ!」
「君のことは俺が、私が守る!!」
郁人はジークスに抱きしめられた。
「君の信頼する行為は悪いことでは
ないんだ! 決して悪ではない!!
だが、その信頼を悪用する者も
いるかもしれないんだ!!
だから! 私が君を守る!!」
「俺が見ているから問題ない!
離れろ!!」
郁人を抱きしめるジークスを引き剥がそうと
篝が動いた。
「大体、お前がベタベタベタベタ
こいつの側からまったく離れず、
近づこうもんなら邪魔しやがるから
俺は話しかけるタイミングを逃し
ただ見ていることになったんだ!」
「? 俺はそんなことをしてないが?」
心当たりは無いと態度で示す
ジークスに篝は目を丸くする。
「あれは無意識だったのか?!
だったら尚更、たちが悪いぞ!
そして、郁人も少しは嫌がれ!
もがくなり抵抗しろ!」
「なんでだ?
仲良しならぎゅっとしたりとか
スキンシップをするんだろ?
篝もよくしてたじゃん」
「俺は良いがこいつは駄目だ!」
不思議そうな郁人に篝はムッとしている。
「まず、こいつはなんなんだ!
お前のこと何でもわかってます
みたいな態度は!」
「俺は彼の親友だから当然では?」
「そんなベタベタして、
誰かが話しかけようもんなら
威圧じみたオーラを出して牽制する
親友があってたまるか!
俺とこいつの間に割り込むな!」
〔親友に関してはお前が言うな
ってやつよね。特大ブーメランよ〕
「……パパはもうちょっと友達を
選んだほうがいいよ」
呆れたライコはため息を吐く。
そして、いつの間にか郁人を助けていた
チイトはキョトンとしている郁人に告げた。
そんな光景を遠くから見つめながら
ポンドは呟く。
「パーティの話はよかったのですかな?」
「今はいいんじゃねえの?
てか、あのもやしはまたすごいのに
懐かれてるな」
そんなタイプを引き寄せやすいのか?
と唐揚げを頬張りながらフェランドラは
顎に手をやる。
「あのカガリ殿はすごい方なのですか?」
「あいつ、前にこの街に仕掛けられていた
魔道具と同じものが引き起こした事件を
解決してんだよ」
俺もギルド関係者だから詳しく
聞いたんだよとフェランドラは続ける。
「で、あいつは迷宮に仕掛けられていた
魔道具とそれに引き寄せられた魔物を
1人で処理したんだ。
本来ならパーティでやる数の魔物を
たった1人でだ」
「そうだったのですか!」
「だから、あいつはB級くらいの実力が
あんだよ。
依頼内容によっては組んだりしてるが
解決した件を聞いたら別に組まなくても
問題ねえな。
解決した事件からもうB級になってるし」
ジークスや黒狼のバゲット以外にも
ソロでB級にいける実力者が近くにいたとは
とフェランドラは呟いた。
「たしかに、あの方はそれほどの
実力がありそうですな。
今までマスターを尾行していても
誰にも気づかれなかったのですからな」
「…………その実力を他に活かせよ」
「それはそうですな」
ボヤいたフェランドラにポンドは頷く。
「あいつの実力的にお前らの腰巾着に
なる気はないのはわかっているん
だけどよ……。
そう簡単にパーティに加入はギルドが
認められないんだよあ」
「どうしてですかな?」
「じつはよ……」
ポンドはフェランドラから説明を
受けていた。
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ジークスが言葉をにごした理由は
スノーフェアリー祭でもらった物の
1部が自分達からなのだと気づかれない
ようにです。
冬将軍に貰った物だと郁人は思ってますから。