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181話 救出劇から3日後




   救出劇から3日経ち、ジャルダンの1室に

   シトロンとオキザリス以外の者達が

   集まっていた。


   『この魂が一時的に保管できる魔道具は

   こちらが回収する』

   『きちんと解析して、悪用されないよう

   管理しマス!』


   と、シトロン達は回収した魔道具の

   解析をしているからだ。


   郁人達はそれぞれ椅子に座ったり、

   壁に背を預けたりしながらある人物を

   見ている。


   皆の注目を浴びているのは容疑者、

   いや利用されたジニアだ。


   「この度は本当に……本当に!

   申し訳ございませんでした……!」


   顔を蒼白させ、机に頭がめり込む勢いで

   下げている。


   「特に、イクトさんに対して私は……!!」

   「覚えているのですか?」


   声を震わせるジニアに郁人は尋ねた。

   ジニアは問いに頷く。


   「……はい。

   見ているだけしか出来ませんでしたが……。

   皆様に多大な迷惑をおかけしてしまい、

   申し訳ございません!!」


   頭を下げるジニアに、郁人に抱きついた

   チイトが口を開く。

   チイトは忠実な飼い犬が飼い主を

   守るように警戒を怠っていないのだ。


   「おい。なぜあんなことになっていたのか

   自分の口から話せ」

   「……わかりました」


   チイトの言葉にジニアは経緯を話し出す。


   「……私は魔道具の研究をしておりまして

   魔道具を集めて管理もしております。

   そんな私に魂が入った魔道具を 

   見てほしいと依頼が入り、私は喜んで

   引き受けました。

   魂を保管できる魔道具があることは

   文献にはあるものの、実際にあったのか

   不明となっている、とても貴重なもの

   でしたので……」


   好奇心に駆られてしまいました……

   とジニアは呟く。


   「魔道具に危険な物は勿論ありますので

   調べる際には対策の魔道具を身につけて

   おりましたが……

   結果は皆様のご存知の通りです……」


   慢心しておりましたわ……

   と、ジニアは肩を落とした。


   「体の主導権を握られてからは

   意識があいまいでして……。

   イクトさんを誘拐してしまったときは

   偶然、意識が少しありましたので必死に

   抵抗したのですが、片足を動かなくする

   ぐらいしか出来ませんでしたわ……」

   「だから、引きずってたんだ」


   郁人は当時を思い出し、納得する。


   「副隊長様!

   私を捕まえてください……!!」


   ジニアは席を立つと、カランの前に進んだ。


   「いや……そう言われても……」

   「あんたが悪いんじゃないんだろ?

   とり憑いた野郎が悪いんだしよ。

   それに、被害者のもやしが訴える

   つもりなさそうだからな」


   カランの代弁をフェランドラがした。


   「フェランドラの言う通りです。

   ジニアさんはただ巻き込まれてしまった

   だけですし……」

   <パパ、セクハラされたのに

   優しすぎない?>


   郁人の言葉にチイトが声のトーンを

   低くする。


   (だって、あれはジニアさんに

   とり憑いていた人の仕業だろ?

   ジニアさんは抵抗出来なかったんだからさ)

   <…………………………>


   郁人の言葉にチイトは無言になると

   一瞬でジニアの背後にまわる。


   「きゃあっ?!」 


   なんとジニアの頭を鷲掴みにした。


   「チイト!! 何して……?!」

   「チイト殿?!」

   「……成る程な」


   チイトの険悪な雰囲気に周囲が焦り、

   放させようと動こうとしたが

   その前にジニアは放された。


   「対処は貴様に任せる。

   パパが良いなら、今回俺は何もしない」


   カランの肩を叩き、チイトは郁人もとへ

   戻った。


   「……了解した。

   では、ジニアさんはしばらく  

   監視下に置かせてもらう。

   魔道具を渡した者が接触してくる

   可能性も高いですので」

   「えぇ、お願いします」


   カランの言葉にジニアは頷く。


   「でもまあ、とり憑いてた奴が

   あのロベリアだったとはなあ」


   ローダンが思わずといった様子で口を開く。


   「"人形狂いのロベリア"って言えば、

   俺でも知ってるくらいの大罪人だぜ?

   まさか魔道具の中に居たなんてよ」

   「獄中から逃げ延びてからの

   消息は不明と聞いていたが

   まさか今になって現れるとは……」


   獄中からどうやって逃げたのかも

   不明だがとジークスは呟いた。


   「魂を保管……出来る……魔道具を……

   小さくして……飲み込んでいた……

   そうです……よ。

   飲み込む前に……魂を保管……できるように

   段取りを……していたようで……

   牢屋の……中……でも保管……出来た……

   よう……です」

   

   看守の中に……協力者がいたので…… 

   魔道具は……行方不明と……

   なっていた……みたいです……

   とメランが説明した。

   説明を聞いたローダンが尋ねる。


   「なんでそんな詳しいんだよ、お前?」

   「聞いたから……ですよ。

   女将さんに……渡しておいた……

   ランタンには……僕の……錫杖に

   捕まえた……魂を移動させる……

   仕組みに……しておきました……から。

   で……直接……聞きました」

   「その魂はどうしたんだい?」

   「もう2度と……出てこれ……

   ないように……しました」


   カランの問いにメランは神々しい

   笑みを浮かべた。


   「そ……そうか」

   「もう現れないなら……いいのか?」


   郁人達は追及しようにも、

   あまりの神々しさに聞けなかった。


   「情報は……残しておきましたので……

   ……解析していく……つもりです」

   「情報は俺に報告するように」

   「はっはひ!! わかり……まひた!」


   チイトに言われ、メランは肩を

   跳ね上げる。


   「お前、災厄やチェリーには

   態度ちげえよな? なんでだ?」

   「そう言われましても……あまり……

   変わってないと……思いますよ?」

   「いやいや、全然ちげーから」

   「俺らとは目を合わせてるが

   あの2人には合ってねーからな」


   ローダンとフェランドラに追求され、

   苦笑するメラン。


   それを眺めているとジニアが

   郁人に話しかける。


   「皆さん、特にイクトさんには

   多大な迷惑をおかけしてしまい、

   本当に申し訳ございませんでした……。

   大樹の木陰亭の雰囲気や料理、

   とても好ましく思っておりました。

   これからも頑張ってください」

   「……ジニアさん、また来店を

   お待ちしてますから。

   いつでも来てください」


   暗にもう来店しないと告げている

   ジニアに郁人は告げた。


   「ですが、私は貴方に……!!」

   「あれはジニアにさんに憑いてた奴の

   仕業ですから。

   ジニアさんは気にしないでください。

   来店した際には紅茶と、それに合う

   お菓子を用意してますので」

   「いつもの席も用意してますよ」


   ライラックもジニアに微笑んだ。


   「イクトさん……! 女将さん……!」


   2人にジニアは目を潤ませ、涙を溢れ

   させながら言葉を紡ぐ。


   「……ありがとうございます!

   わたし……わたし……!!」

   「泣かないでくださいな」


   涙をこぼすジニアをライラックが宥める。


   <……ママ、いいの?>


   じつは、胸ポケットに入っていた

   デルフィが尋ねた。


   <悪い人なんでしょ? 許すの?>

   (ジニアさんが悪いんじゃなくて、

   憑いてた奴が悪いから。

   デルフィ……心配かけたな。

   チイトから聞いた。店を守ろうとして

   くれたんだろ?

   ありがとう、デルフィ)


   郁人はデルフィを撫でる。


   <……マ……マ……ママ!……ママ!!>


   デルフィは泣きじゃくり、しがみつく。

   肩に乗っていたユーも郁人にすり寄る。


   「ユーも本当に心配かけたな」


   郁人もユーにすり寄り、撫でる。



   ー 「おい。俺にも言うことが

   あるんじゃないか?」



   後ろから声をかけられ振り向くと、

   腕組みをしフードを外した常連客、

   オムライスがいた。


   若葉色の髪に金に見える渋茶の瞳は

   蛇のように鋭く、目尻から首にかけて

   鱗があり、端正な顔立ちが見える。


   「あのときの!」


   郁人は席を立ち、オムライスのもとへ   

   行くと頭を下げる。


   「デルフィとユーをありがとうございます。

   皆にも伝えていただいたおかげで、

   早く救出されました」


   「……違う!!」


   頭を下げる郁人の肩を掴み、

   オムライスは叫ぶ。


   「俺を見ろ!! 見覚えある筈だ!!」

   「見覚え……?」

   「なんで俺だけが覚えていて、

   お前は覚えてないんだ?!

   首から上に付いてるものは飾りか!!

   今すぐに思い出せ!!!」


   オムライスは郁人を揺さぶり、

   必死に訴える。


   「あの、貴殿はマスターを前から

   知っておられるのですか?」

   「知っているに決まっている!!

   完全に思い出したのはこいつが

   拉致された時だがな!」


   はっきり思い出したのは遅かったが!

   とオムライスは告げる。


   「お前は昔から自身を蔑ろにしていたが

   ここでも変わってないようだ」


   額をおさえ、息を吐くオムライス。


   「お前は人を優先し過ぎだ。

   自分がどう思われているかきちんと

   把握しろ」


   説教する姿は板についており、

   どこか既視感を覚えた。


   (なんだろ……懐かしい気がする。

   いつも側に居て……こうして……)


   ー 『お前はいつもそうだ!

   人の世話する前に自分のことを考えろ!』

   

   ー 『困ってたから掃除係を引き受けた?

   それ嘘だろ。

   さっき押しつけたから遊べる

   と言ってたのを聞いたぞ。

   もうしないように締めたが……

   まあ、いい。俺も手伝うからさっさと

   掃除を終わらすぞ。

   礼だ? 俺とお前の仲だ。気にするな』

   

   ー 『いつも絵を描いているな。

   ずっと継続出来るものがあるのは  

   良いことだ。

   ん? 俺も鍛練を続けてすごい?

   俺は鍛えないといけないからな。

   でないと、自分はおろか、お前を

   守ることすら出来ない。

   俺は大丈夫? 気にしなくていい?

   なら、心配かけねえように自分を

   大切にしてからにしろ。

   話はそれからだ』


   頭に記憶が流れ込んでくる。


   ー それはとても懐かしい記憶だ。


   記憶の中の青年と前にいる青年、

   髪色などが違うがはっきりとわかる。


   「……かが……り……篝なのか?」


   郁人は息を呑んだ。


   「俺を忘れるとは……

   いい度胸だな、郁人」


   篝は左の口の端を上げた。





ここまで読んでいただき、

ありがとうございました!

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よろしくお願いします!


3日間、郁人は療養してました。

郁人は大丈夫と言ったのですが、

周囲が体力面も考慮して休ませてました。

アマリリスの太鼓判も出たのが

3日後でした。


その間、憲兵達は捜査したりしてます。


ーーーーーーーーーー


郁人達と会ったあと、カランは隊長へと

報告をしていた。


「以上が内容になります」

「そうかい。わざわざ悪いねえ。

時間外だってのに」

「いえ、これは早めに報告したほうが

良いものですから」


隊長は無精髭を撫でながら、

資料を見てため息を吐く。


「たしかに。

これは早めに報告を貰えてありがたいよ。

まさか……街でこんなことがあったとはね。

魔道具が仕掛けられていて、仕掛けた

仲間内で裏切り。そして、彼が誘拐されて

いたとは」

「報告が遅くなり申し訳ございません。

協力者は知り合いで固めたい

と言われまして……」

「そりゃ、向こうからしたらそうだろ。

これは内密に行いたいし、なにより部下が

彼のいじめに加担していたんだ。

俺達、憲兵に信頼は無いよ」


お前が身内にいたのが救いだ

と隊長は呟いた。


「それと……

組織に利用されていた者ですが」

「彼を誘拐したがっていたのは

事実なんだろ?」


隊長の言葉にカランは目を見開く。


「なぜそれを……?!」

「2日前、突然机の上にこれがあった」


隊長は机の引き出しから紙の束を

取り出す。


「それは?」

「これはあの家に仕掛けられていた

魔道具とその使用方法。付けた日付も

記載されている。

そして、魂の魔道具を依頼した奴が彼女に

目をつけた理由などが細かく記載された

資料だよ」

「本当ですか?!」


隊長はカランに資料を手渡し、カランは

それを見る。


「これらの魔道具は監禁のためのもの

としか考えられません……!

しかも、2日前に聴取で聞いた魔道具を

購入した日付より前になります……!

しかも……理由が……!」

「あぁ。依頼した組織の1人はどうやら

感情を視認できるスキルを持っていたようだ。

それで、彼を欲しがっていた彼女に

目をつけたと。

組織の金を潤すにもいいだろうねえ」


資料をもとに調べたが本当だったよ

と隊長は告げた。


「おまけに、さっきあの"シトロン"さん

が来た。

自分の店が1回は未遂とはいえ、2回も

被害を受けているからね」


それはもう苦情を言われたよ

と隊長はもう1枚の紙を取り出し、

見せる。


「しかも、街の防衛に使っている魔道具に

不備があるといって、魔道具を調べだした。

結果は憲兵の中に魔道具に細工を仕掛けた

のがいると判明した」

「まさか……?!


カランはその紙を見て呆然とした。


「なんと組織の息がかかっていた。

まさか……こんな身内にいるとは……」


隊の規律を見直す機会になった

と隊長は煙草に火をつけた。


「で、お前はどうして彼女が自分の

意思で誘拐しようとした事に気付いた?」

「……災厄、チイトくんから教えて

もらいました」 


カランは説明する。


「私は全然気づいてなかったのですが、

チイトくんがあたしの肩を叩いた際に

テレパシー?のようなもので教えて

くれたのです」


情報が一気に頭に流れ込んできて

驚きましたと告げた。


「………あの彼は本当になんでもありか」


この資料も彼の可能性が高い、

いや、彼だなと隊長は頭をかく。


「俺は俺なりに隊を締めていくのと

平行して調べるから。

君は見張りという名の警護よろしく」

「はい。指示がなくとも継続していき

ますが……

隊長は会わなくてよろしいのですか?」


1度くらいは対象の顔を見といたほうが

とカランは提案した。


「俺は遠慮するよ。

信頼されてない憲兵のトップだ。

災厄の地雷を踏みそうで怖いんで」

「……かしこまりました。

では、私はこれで失礼します」

「お疲れさん〜」


カランは一礼したあと、去っていった。


「……マジで彼が善人で良かった。

じゃなけりゃ、今頃災厄の手で街は、

ソータウンは終わりだったね」


彼が1言でも気に食わないとか

言ってたら一帯を壊滅させるんだろうな

と隊長は一服する。


「彼の善性頼りはいけないからねえ。

こっちも頑張らないと」


隊長は資料を見て呟いた。



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