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163話 嬉しそうに飛びつき、尻尾を振った




   夕方、郁人は自室で携帯を見ていた。


   〔あの大食い男、全然起きなかったわね〕

   (かなりショックだったんだな……)


   シトロンは寝た状態でオキザリスに

   背負われ、去っていった。


   〔あんたの方が付き合い長いのに

   なんで気づかないのよ?〕

   (いや、その……うん……。

   自分でもわからないな)


   頭をひねてもわからず、自分の鈍さに

   郁人はため息を吐く。


   〔で、なにをしてるのかしら?〕

   (コンタットに通知がいっぱい来てたから

   返してたんだ)


   郁人はコンタットの登録欄を見る。


   ライラックをはじめ、ジークス、チイト、

   ヴィーメランス、レイヴン、フェイルート、

   ポンドにナランキュラス、アマリリス、

   グロリオサ、フェランドラ、カラン等

   たくさんある。


   〔前より増えたわね。

   それだけ、あいつの発明品も

   広まっている訳だけど。

   って、あの軍人も持ってたのね〕

   (レイヴンから貰ったそうだ。

   そのときに俺の連絡先も教えてもらった

   らしい。

   俺に無断で聞いて申し訳ございません

   ってメッセージが来たから)


   家族だから気にしなくていいのに    

   律儀だよなと郁人は告げた。


   〔あいつなら絶対に気にするわよ。

   あら? なんかすごい数来てるわね。

   誰から?〕

   「これな」


   1つだけ通知がえげつないアイコンを

   郁人は押す。


   《やほやっほー!! ひさしぶりー!》

   《申請許可してくれてありがとー!》

   《ヴィーくんにこの魔道具教えて

   もらったんだ!》

   《これホントスゴいね!

   離れた場所にいるイクトくんとも

   連絡とれるなんて!》

   《こんな便利な魔道具があるなんて

   もう驚いちゃったよ!》

   《これがあれば、イクトくんに

   ヴィーくんの様子や、ドラケネスのこと

   伝えられるね!》

   《陛下もこの魔道具気に入ってるんだ!》

   《ちなみに、陛下はこのタイプを

   買いました! ネザーって言うらしいけど

   すっっごく可愛いね!》

   《陛下はすっかりメロメロだよ!》


   相手は"サイネリア"だ。


   サイネリアがヴィーメランスにお願いして、

   郁人の了承を得てから連絡先を教えて

   もらったのだ。


   サイネリアはスタンプをかなり使い、

   写真もあげたりしている。

   写真には、郁人と同じ型の携帯を

   所持したヴィーメランスが写っている。


   他にも、リナリアがうさぎを抱え、

   花開く笑みを魅せているものや、

   サイネリアの自撮り画像など、

   ドラケネスの平和さが理解できるもの

   ばかりだ。


   〔完璧に使いこなしてるわね、こいつ……〕

   「サイネリアは携帯を使って

   楽しんでるみたいだぞ。

   ヴィーメランスから、サイネリアからの

   通知がうるさいって来てるし」


   郁人は画像を見て、楽しみながら

   返信していく。


   (こうやってやり取り出来るのは嬉しいな。

   ライコにも良いんじゃないか?)

   〔あたし?〕


   きょとんとするライコに郁人は訳を話す。

 

   (だって、こうしてこまめに連絡を

   とれるから、滅亡のきっかけを防ぐことが

   出来る可能性が跳ね上がるしさ)

   〔……あんた、ちゃんと覚えてたのね〕

   (忘れる訳ないだろ?)


   バタバタしていたので、話題には

   してなかったが、郁人はきちんと

   覚えていたのだ。


   (ところで、フェイルート達に

   会ってからなにか変化はあるのか?)

   〔……それがさっぱりなのよ。

   多分、ドラケネスの時にいたドラゴンが

   関係してそうだわ〕


   あのドラゴン倒したときが1番

   ノートに変化が見られたもの

   とライコは呟く。


   〔それに、夜の国のあいつらって

   捨てられてた森や人を助けてたし、

   今は滅ぼそうとしてないのかも?

   でも、それだと軍人にも当てはまる

   わよね……〕


   うんうん頭をひねりながら、

   ライコは考えを口に出した。


   〔もしかしたら、あのドラゴンみたい

   なのが他にもいるかもしれないわ……〕

   (あのドラゴンみたいなのが?!)

   〔もしもの可能性があるだけよ。

   見つけたら教えるから、倒して

   もらってもいいかしら?〕

   (チイト達にお願いするしかないな……。

   いざとなったら、土下座する方向で行く)

   〔……そこまでしなくてもいいと思うけど〕


   あんたの頼みなら2つ返事でOKでしょ

   とライコは呟く。


   「ん?」


   すると、携帯が鳴り出した。

   見ると、コンタットの通知であり、

   相手はメランだった。


   「どうしたんだろ?」


   《突然すいません、あるじ様。

   常連の方々についてお聞きしたいので

   連絡させていただきました。

   常連の方々はどのような方なのか

   お教えいただけると嬉しいです》


   との事である。

 

   〔常連客ね。

   英雄以外に誰がいるのかしら?〕

   (名前は知らないんだけど、

   すごい着飾った王様みたいな人と、

   そのお付きの人達だろ。

   あとオムライスさんに、ジニアさんだな)

   〔待って。最初の奴等のインパクトが

   すごいんだけど。どんな感じなの?〕


   ライコが尋ねると郁人は答える。


   (どんなって、そのままだぞ?

   王様みたいな人は本当にどこかの

   王様なんじゃないかと思うくらい)   


   お忍びで来た感がすごかった

   と郁人は説明する。 

 

   (母さんを見て、第1声が

   “なんと美しい女子だ!

   しかし、我の妃のほうが1番だな!

   ……あっ、妃ではなく妻だな、妻!”

   だったし)

   〔……本当に王様だとしても、

   忍ぶの下手すぎない?〕

   (お付きの人がかなり焦ってたな。

   また来ると思うから、見たらわかるぞ)


   郁人は常連客の姿を思い浮かべながら、

   コンタットに打っていく。


   「王様風の人は、パンケーキが好きで、

   絶対5枚は軽く食べる。

   クリームの実があるから種類も増えるし、

   来た際にはお伝えする。

   お付きの人達はポトフとかスープ系が好み」


   王様風の人は紅茶、お付きの人達は

   コーヒーが好みと郁人は追記する。

 

   「オムライスさんはフードを深く被った

   男性で、文字通りオムライスが好き。

   卵料理も好きだからその系統を

   オススメすること」


   ハロウィンのときにお世話になったなあ

   と郁人は思い出しながら返信する。


   「ジニアさんは物静かな女性で、

   ゆったりするのが好きだから、

   静かな席に案内。

   紅茶を飲んでるから、それに合う

   お菓子が喜ばれる……っと」

   〔よく覚えてるわね〕


   打ち終え、メランに送るとすぐに

   既読がついた。


   〔既読早いわね。待ち構えてたのかしら?〕

   (たまたまじゃないか?)


   携帯を見るとメランから


   《お教えいただきありがとうございます》


   と感謝の言葉とともに猫が頭を下げる

   スタンプが送られてくる。


   〔かわいいスタンプね!〕

   「レイヴンから聞いたけど、

   スタンプとかは部下に任せてるそうだ。

   部下達が張り切りまくってるらしい。

   ん?」


   見ると、チイトからメッセージが来ていた。


   《パパ!

   オキザリスがパパとコンタットで

   繋がりたいから連絡先を教えてほしいって。

   教えてもいい?》 


   内容に郁人は目を丸くする。


   「オキザリスって、いつの間に

   買ってたんだろ?」


   首をかしげながら、郁人はチイトに 

   大丈夫とコンタットに打ち込む。


   《教えても大丈夫だよ》

   《わかった! じゃあ、伝えるね!》


   数分後、オキザリスから申請がきて

   それを許可した。


   すると、オキザリスからスタンプとともに

   メッセージが届いた。


   《イクト!

   申請許可ありがとうございます!》

   《ついに私達の就職先が決まりましたヨ!

   なんと夜の国にある蝶の夢の開発部門に

   入りまシタ!》

   《レイヴンさんとお話してみましたが、

   我が友と話の合う、快活なイイ人デス!!

   私、感激しちゃいまシタ!》

   《人との交流が苦手な、我が友が

   楽しんでましたし、不定期な収入が

   安定するのでもう安心デス!》


   メッセージと共に、嫌そうなシトロンと

   2人で写る自撮り画像が送られてきた。


   〔あいつら働いてなかったの?〕


   ライコは首をかしげる。


   (働いてるぞ。

   ただ、シトロンさんの魔道具は性能が

   良い分、結構高いからな。

   買う人が少ないって聞いた)


   初めて値段を見たとき固まっちゃったな

   と郁人は頬をかく。


   (食料とかは調達先があるから

   困らないって言ってたし、

   魔道具が売れればしばらくは

   楽出来るから問題なかったそうだ〕

   〔だから収入が不安定なのね〕

   (レイヴンは楽したいって言ってたし、

   良い人材が増えて嬉しいと思うな)


   コンタットで人手がほしいって

   書いてあったからと郁人は告げた。


   「あれ?」


   自撮り画像で終わりと思っていたが、

   まだ続きがあった。


   《妖精の籠ですが、もう出たそうでシタ。

   愛情をいっぱいもらい、栄養もたっぷりで

   準備万端デス。

   これがあれば出ると我が友からの

   お墨付きデス! 是非あげてくだサイ!》


   メッセージと共に、プレゼントの

   表示が出てきた。


   「なんだろ?」


   押してみると、画面からプレゼントの

   箱がシャボン玉に入った状態で

   飛び出してきた。


   「出てきた?!」

   〔物理的に出てきたわよ?!〕


   携帯から出てきたとは思えないサイズの

   箱は、シャボン玉の中でぷかぷか

   浮いている。


   「……触ればいいのか?」


   恐る恐る指でつつくと、シャボン玉が

   割れてゆっくり床に着地した。


   〔すごいわね……これ…… 

   あいつが作ったのかしら?〕

   (だと思うけど……

   とりあえず開けてみよう)


   郁人が箱を手に取り、開けてみると

   中には花が浸けられた試験管があった。

   蓋がされており、こぼれないように

   なっている。


   「ハーバリウムに似てる。キレイだな」

   〔そうね。中の花はデルフィニムだわ〕


   ハーバリウムを見ていると、

   じつはユーと並んでパフェを食べていた

   卵が跳ねながら郁人の元へぴょんぴょん   

   やって来た。見るからに興奮している。


   「欲しいのか?」


   郁人が尋ねると、更に飛びはね、

   試験管に突撃した。 


   「うわあっ?!」

  

   試験管は割れて、卵に中身がかかると

   卵は光り出した。


   〔いきなりなによ?!〕

   「まぶしっ!!」


   あまりの眩さに目を閉じると、

   割れる音が聞こえた。


   しばらくして、光が収まり、

   卵を見てみると……


 

   「……ユー?」



   ユーにそっくりなものがそこにいた。


   真っ白な体に、角は3本、尻尾の先が

   星になっている以外はユーにそっくりだ。


   卵の殻がそっくりなものの周囲に

   散らばっており、なによりユー本人は

   いつの間にか肩に乗っていたので

   違う生き物とわかる。


   ユーにそっくりなものは

   犬が濡れた体をブルブルとさせ、

   乾かす仕草をみせると真っ直ぐ郁人を見た。



   ー 「ママ!」



   そっくりなものは嬉しそうに郁人に

   飛び付いた。




ここまで読んでいただき、

ありがとうございました!

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よろしくお願いします!


ーーーーーーーーーー


オムライスは全力でソータウンへ

戻っていった。

その背中を見送らざるをえなかった

同僚はため息を吐く。


「あいつ……絶対執心相手のことしか

考えてねえな。

死神復活組織が絡んでるかもって

言ったら協力したしさあ」

「執心とは?」


キョトンとするベアスターに

同僚は説明する。


「あいつ、1年くらい前から

気になってる相手がいるみたいで。

その子がソータウンにいて、

その組織に狙われている可能性が

あるみたいなんすよ」

「なるほど。それであの方は

急いでソータウンへと向かったのですね。

気になる方のために奔走するなんて

素晴らしいですわ」

「………なんかドロドロとした気配を

感じるのは俺だけですかね?」


微笑ましいと微笑むベアスターに

頬をかく同僚。


「では、私達も街に魔物が来た

理由を話し次第、ソータウンへ

向かいましょう」

「そうっすね」

「ところで、あの方はあのまま

走ってソータウンへ向かうつもりなの

でしょうか?

馬車を使わないといけない距離ですわよ」

「大丈夫っす。

あいつの体力バケモノ級なんで。 

前に迷宮一緒に行った際、ほぼ1日中

走り続けなきゃいけなかったんすけど

あいつだけピンピンしてたんで」


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