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159話 2人と1匹でクッキング




   オキザリス先導のもと、階段を上がり

   長い廊下を歩いていく。


   〔本当になにも無いわね……。

   目印になりそうなものくらい……

   あっ! あそこに花が飾られてるわ!〕


   ライコは飾られている花に気付いた。


   真っ白で何もなかった廊下に花が

   飾られている。

   殺風景だったものに彩りを与えて

   やっと人が住んでいるという実感を

   わかせた。   


   「花とかは無事だったんだな」

   「ハイ! 我が友がいろいろと

   施しましたからネ!」


   貰ったものは大事にしてますヨ!

   とオキザリスは胸を張る。


   〔貰ったって誰に貰ったのよ?〕

   (母さんだな。

   母さんがここが殺風景過ぎるし、

   シトロンさんが外に出ないから

   気分転換になるようにって

   花とか飾れるものを渡してるんだ)


   疑問符を浮かべたライコに郁人は答えた。

     

   「施したってなにをしたんだ?」

   「まず花が枯れないようにしてまシタ!

   あと、ここはよく爆発したりで

   壊れますので衝撃に耐えれるように

   してましたヨ!」


   滅多なことがない限り大丈夫デス!

   とオキザリスは親指をたてる。


   「けど、耐えれるようにし過ぎて、

   衝撃をはね返すようになってしまい

   まシタ!」

   「とんでもない事になってないか?!

   どれだけ施したんだよ?!」

   〔それ本来なら城壁とかにする

   ものじゃないかしら?!〕


   オキザリスの言葉に郁人は開いた

   口が塞がらない。

   ライコも思わず声をあげた。


   「我が友はやりだしたら

   とことんするお茶目さんなのデ!

   あっ! ここにキッチンがありましたが

   今はこちらデス!」

   「また変わったんだな。いつも

   来るたびに場所が変わってないか?」

   「いやあ、今回は集中していて

   つい爆発させちゃいまシタ……」


   また建物の中が変わっちゃいまシタ

   とオキザリスは頭をかく。


   「でも、安心してくだサイ!

   以前のように食材も吹き飛ばしてまセン!

   前もって避難させてまシタ!」

   「うん……前よりは成長したな……」


   胸を張るオキザリスに郁人は頬をかいた。


   〔ねえ、なんで爆発するのよ?

   なにしたのこいつ?〕


   なんでなの? と尋ねるライコに

   郁人は答える。


   (オキザリスは料理をしようとすると

   なぜか爆発するんだ。

   たまに爆発しないで出来るみたいだけど

   味は最悪だってシトロンさんが言ってた)

   〔……なんで料理が爆発するのよ?〕

   (それはいまだに不明らしい)


   調べたけど理由がシトロンさんにも

   わからないらしいと郁人は説明した。

  

   「見てくだサイ! これが証拠デス!」


   オキザリスが扉を開くと、ところどころ

   焦げたキッチンがあった。


   「ほら! 中を見てくだサイ!」


   自慢気なオキザリスはそのまま進み、

   棚を開ける。

   ひんやりとした空気が流れ、中には

   たくさんの食材がある。


   「この棚を開発したのは私デス!

   これは外からのいかなる衝撃にも

   耐える構造なんデスよ!!」


   どんな衝撃にも耐えてみせマスヨ!

   とオキザリスは自慢気に見せた。


   「斬ったり、爆破したり、その他

   様々な実験を行いましたから

   間違いありまセン!!

   私が爆発物だけを作るとは限らない

   との証拠デス!!」


   立派な証拠になりますよネ! と

   両手を腰に当てるオキザリス。


   「外側すごい頑丈なんだな」

   〔……この焦げた箇所は実験後ね〕


   だから焦げてるのね……

   とライコは呟いた。


   「前は食材ごと爆発させてたのにな。

   すごいなオキザリス!」 

   「でしょウ! イクトは良い子デス!」


   オキザリスは郁人の両脇を持つと

   くるくる回転する。


   「おや? その子はなんデスか?」


   ふと、オキザリスの目に胸ポケットにいる

   ユーに留まった。

   ユーは胸ポケットから出て、オキザリスに

   お辞儀する。


   「この子はユーっていうんだ。

   チイトがくれたんだ」

   「ふむ……この子、私や災厄さんと同じ

   創られた気配がしマス」


   オキザリスはユーを見つめて呟いた。


   「うん。ユーはチイトが創ったんだ。

   気配でわかるのか?」

   「ハイ! ビビっとわかりマス!

   ん?」


   オキザリスはユーと見つめあい、固まる。


   「フムフム……それはそれは……」


   途中オキザリスは頷いたり、

   片眉をあげたりしている。


   〔どうしたのかしら?

   じっと固まって……〕

   「……とりあえず、降ろしてもらっても

   いいか?」

   「これは失礼しまシタ」


   郁人の言葉に気付いたオキザリスは

   優しく降ろす。


   「イクトはドラケネスや夜の国でも

   活躍したそうデスね!

   ですが、自傷行為や意味も分からず

   勝負にのってはいけまセン!

   貴方を大切にしてる方達が

   悲しみマス……!!」


   貴方を大切に思ってる方は

   たくさんいるんですカラ!

   とオキザリスは注意する。


   「勝負も勝ったからよかったものの、

   負けたら地獄が広がりマス!

   それにしても、お酒が呑めるとは

   意外デス……!

   しかもあの神々の生き血をとは……

   恐れ入りマス……!!」


   人は見かけによらないと言いますが

   まさにこの事デス!

   とオキザリスは郁人を見て目を見開いた。


   「なんで知って……?

   もしかして……!?」

   「ハイ! ユーが教えてくれまシタ!」


   郁人がハッとしていると、

   オキザリスは頷いた。


   〔こいつら見つめあってただけよね?

   いつ話してたのよ?〕

   「どうやって話したのか気になりマスか?

   それは秘密デス!! ネ?」


   オキザリスが首を傾けると、ユーも

   体を傾ける。

   短時間で仲良くなったのがわかる。


   「いいなあ……俺もユーと話せたら

   何がしたいとかわかるのに」


   食べたいもののリクエストとか

   聞けるのになと郁人はこぼした。

 

   「それは大丈夫かト。

   貴方とユーは言葉が無くとも、

   心でわかりあってマス。

   だから、言葉はいりまセン。

   もう通じてますカラ。

   そうですよネ? ユー」


   オキザリスの言葉にユーは頷き、

   郁人の肩に止まると頬にすり寄る。


   「……そっか」


   郁人は目尻を下げ、ユーにすり寄った。


   〔たしかに、あんた達は言葉が

   なくても意志疎通出来てるものね。

   言葉がなくても問題ないわ〕

   (そうだな。ありがとうライコ)


   大丈夫だなと郁人は胸が温かくなる。


   「では、イクト。

   ユーが絶品だったと言う

   ”カレー”をお願いしマス!」

   「良いけど、お腹は大丈夫なのか?

   なにも食べてないのに刺激物は

   体に良くないぞ」

   「そこは大丈夫デス!

   我が友の胃は頑丈ですカラ!」


   とても頑丈なので問題無しデス!

   とオキザリスは自慢げに笑う。   


   「……本当に大丈夫ならいいけど。

   でも、スパイスがな……」


   あのときに使ったスパイスは

   屋敷にあったものを利用した為、

   持っていないのだ。

  

   「それは大丈夫デス! ホラ!」


   オキザリスが示した先に、

   スパイスを背中のチャックから

   取り出すユーの姿があった。


   「屋敷の方からいっぱい貰ったそうデス!

   あの方にまた作ってあげて欲しいカラ!

   だそうデス!」

   「そうだったのか」


   郁人は目を丸くした。

   ユーはスパイスを持ちながら、

   郁人にすり寄る。


   「ありがとうユー。

   じゃあ、カレー作ろっか!」

   「私も手伝いマス!!」

   「勝手にアレンジするなよ。

   前もそれで爆発したんだからな」


   あのときみたいな状況はこりごり

   だからなと郁人は告げた。


   〔本当に爆発する理由が気になるわ。

   なんで料理が爆発するのよ?〕

   (シトロンさんが調べても

   わからなかったらなあ……。

   もうわからないままだと思う……)


   シトロンさんが珍しく頭を抱えていたから

   と郁人は頬をかいた。


   「大丈夫デス!

   我が友には勿論、ユーにも

   怒られちゃいますカラ!」


   オキザリスはウィンクしながら

   親指をたてる。


   「さあさあ! 作りまショウ!

   カレーに必要な材料はこちらに

   ありますし、おコメとやらを

   いただいてもよろしいでしょうカ?」

   「うん。ちょっと待って」


   郁人はホルダーから土鍋と米を

   取り出した。


   「俺が米を炊くから野菜を

   切っててもらってもいいか?」

   「勿論デス!!」


   敬礼を決めると、オキザリスは

   エプロンを身に付け、包丁を取り出し、

   用意していた野菜を洗い出す。


   〔……ねえ、あいつなんでフリフリの

   ピンクエプロン着けてるの?

   なにあのハートマーク??〕

   (前に聞いたら、シトロンさんに

   笑って欲しくて用意したらしい)


   郁人は経緯を説明した。


   (結果は怒りを買ってしまったみたいだ。

   着るなと言われたけど、勿体ないから

   使ってるって)

   〔うん。そりゃ怒るわよ。

   自身と瓜二つな奴があんなエプロンを

   着けてたら〕


   呆れた口調でライコは述べた。


   「ハイ! イクトの分もありますヨ!」

   「……いつもありがとうな」

   

   オキザリスは笑顔でフリフリエプロンを

   差し出した。

   郁人はキラキラしながら渡された

   エプロンを拒否できなかった。


   〔なんでもう1つあるのよ?!

   しかも色違い!!〕

   (2つセットでお買い得だったそうだ)


   郁人はもう慣れたので、エプロンを

   身につける。


   〔あんたも馴れすぎでしょ?!

   嫌なら断るなりしなさいよ!〕

   (だって、断ったら捨てられた子犬みたいに

   なるんだからしょうがないだろ)    


   あれは断れなかった

   と郁人は思い出した。


   (罪悪感が半端ないからな。

   しかも、オキザリスは善意で渡してるから。

   本当に断れなかった……)


   それから断ることを諦めたな

   と郁人はこぼした。


   「イクト! おコメがどんなものか

   気になりますので、量は多めで

   お願いしマス!」

   「わかった。

   オキザリスもだけど、シトロンさんも

   いっぱい食べるからな」

   「ありがとうございマス!」


   カレー楽しみデス!

   とオキザリスは鼻歌を歌いながら

   野菜を切りにかかる。


   「野菜を抑える手は熊の手デース!

   グオー!」

   「それを言うなら猫の手だな。

   ニャー」




ここまで読んでいただき、

ありがとうございました!

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ーーーーーーーーーー


突然鳴った携帯に舌打ちをしながら

出たオムライス。


「いきなりどうした?こっちは……」

《街がやばいことになってるんだ!!

すぐにこっちに来れる?!》


切迫した声に目を見開きながらも

オムライスは尋ねる。


「何があった?」

《いきなり魔物が街中に

現れたんだよ!!

それで今住民を避難させながら

戦ってる!!君もすぐに来て!!》

「悪いがこっちも無理だ。

今から画像を送るからそれを見ろ」


オムライスは撮影したあと、

魔道具と生贄の写真を送る。


「この魔道具で街中に送ってるようだ」

《……僕、この魔道具前に見たことがある》

「どこで見た!?」

《数年前にマルトマルシェで

魔物大侵攻があったの覚えてる?

そのときに使われてた魔道具だよ!!》


同僚は声をつまらせながら話していく。


《なんでそこにあるの?!

魔道具はあのパーティが壊してたじゃん!!

粉々にしてたじゃん!!》

「魔道具だから誰かが増産してても

おかしくないだろ。

で、これはどうすればいい?」

《……その魔道具は対になってる。

迷宮にあるなら、もう1つは街中に

隠されてるはずだよ。

だから、君の前にある魔道具と

街中に隠された魔道具を壊せばいい。

前は黄金の錬金術師がゴーレムで

探し当てて街中のを壊して、迷宮のは

黒狼と風魔王が壊してたから》

「わかった。今から壊す」

《待って!街中のは壊したら終わりだけど

迷宮のは壊したら魔物がそのまま壊した

相手に襲いかかったそうなんだ!

だから……》

「お前が街中のを壊してすぐにこっちへ

来ればいいだけだ。じゃあな」

《待って?!》


オムライスはそのまま電話をきる。

煙草を取り出すと、一服した。


目を閉じて、煙を吐き出す。

そして、ゆっくり目を開ける。


「よし、いくか」


足で煙草を消し、覚悟を決めた。


パリンと壊れる音が5回迷宮内に

響いた。



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