表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/377

14話 親友の秘密


※グロテスクな表現、

気味の悪い表現があります。

苦手な方はご注意ください。




チイトの言葉に郁人の頭は真っ白になる。

言葉がうまく出てこない。


「……それって

どういう……こと……?」

「…………………」


ジークスを見るも、顔を背け

気まずそうにしている。


ーその姿を見て、本当だと悟った。


「まず、こいつ……人間じゃないから」


チイトは告げると、

空中に軌跡をなぞる。


その軌跡は文字となりジークスを

囲んだ後、頭上に集まり、

描きはじめた。


【名前:ジークス

年齢:25才(250才)

性別:男

種族:竜人 ドラケネス王国元王子】


それはジークスのステータスだった。

色々と気になる内容である。


「俺のスキルに"鑑定(真)"があって、

相手のステータスを見抜けるんだ。

パパにも見えるようにしたけど……

こいつ、人間ではなく"竜人"なんだ。

ジジイ呼びしたのも、250年

生きてるからだよ」

「成程……

君には全て筒抜けということか……」


ジークスは苦笑し、郁人を見つめる。


「彼の言う通りだ。

俺には竜の血が流れている。

彼と渡り合えたのも血の影響が大きい。

一応王族でもあるため、

血が濃いから尚更だ。

250年生きていけるのも、

竜人は10年で1歳、

歳を取るからでもある。

それに……」


ジークスは視線を傷に向ける。


すると、傷はみるみるうちに

回復していた。

回復したジークスは立ち上がる。


「時間が経てば塞がっていくんだ。

君達と違うのがわかるだろう」


腕を広げ、自分の傷があった場所を見て

ジークスは皮肉気に笑う。


「自分のことを話すのは不得手なのだが、

少しずつ話すとしよう。

君は俺を信頼してくれているというのに

隠し事をしているのは後ろめたく

あるからな……」


眉を寄せ、言葉を紡いでいくジークスに

郁人は申し訳なさそうに切り出す。


「ジークス……

やっぱり覚えてなかったのか」

「なにをだ?」


頭を掻く郁人に、ジークスは首を傾げる。

その様子を見て、郁人は口を開いた。



「俺、前にジークスから竜人である事とか

全部聞いてるんだよ」



「………?!」

〔あんた知ってたの?!〕


目を丸くしながらジークスは郁人を見つめ、

チイトも口をポカンと開け、

ライコは声をあげた。


「その時に聞いたことを言っていくから、

合っているか教えてほしい」

「あっ……あぁ。

了解した」


ジークスがうなずいたのを確認すると、

郁人は答え合わせをしていく。


「ジークスは空にあるドラケネス王国の

第1王子。

しかし、母親が死んでジークスのせいだと

思い込んだ父親、王様はジークスを

煙たがり戦場に行かせるようになった」


郁人の言葉にジークスはうなずく。


「母は体がかなり弱く、

俺を産んで、更に衰弱したらしいからな。

王は母を深く愛していたため、

衰弱した原因である俺を(うと)んでいた。

ゆえに、戦場に送り続けたのだろう。

俺の死を望んでな」


顔を曇らせる姿には、諦めの色が見える。


自身が父親にどう思われていたのか

理解し、もう変えられないと

悟っているのだ。


「…………ジークス」


郁人は胸を痛ませながら、口を開く。


「けれど、ジークスは竜の血、

特に防御に特化した特性を濃く

引き継いでいたため無傷で生き残れた」

「俺の血、竜の(うろこ)は威力を半減させる特性

があり、魔術にも対抗できるからな。

余程の傷ではない限り、自己回復していく。

……彼の本気に鎧は通用しなかったが」


ジークスは視線をチイトに向け、

向けられたチイトは興味なさそうだ。


「生き残り続けるジークスに焦りだした

王様は、遂に最終手段に出た。

封印されていた邪竜を解放し、

退治にジークスをたった1人で向かわせた」

「本来なら軍で行くのが常なのだが……。

余程、俺に死んでほしかったのだろう」

〔調べたけど、ドラケネス王国は、

邪竜の影響で魔物が増え、その魔物が

国を攻めていたそうよ。

英雄候補が派遣されたのも、その戦場。

封印されても尚、影響を及ぼす相手に

単騎で行かせるなんて……。

自分の子だってのに酷いわ……〕


しんみりとした口調でライコは

呟いた。


「そして、ジークスは1人で邪竜と戦った。

結果、左半身に火傷を負いながらも

相討ちとなり、10年前に空から墜ちた」

「生き延びるとは俺でも思わなかった。

死を覚悟で邪竜に挑んだため、

俺は途方にくれた」


生きているなんて思ってもいなかったと

ジークスは苦笑する。


「それで、ジークスは死ぬためにギルドに

加入し、討伐依頼をこなしていった。

しかし、A級になるとクリスタルくんを

しないといけない。

そこから、ジークスが生きている事がバレて

王様に伝わる可能性があるため、

B級に留まり続けた」

「王は俺を殺すために封印されていた

邪竜を解いてしまったからな。

俺が生きていると知れば、

何を仕出かすかわからない。

今度こそ、王国が滅んでしまう

可能性がある」


離れても尚、国を憂う気持ちは変わらない。

拳を握りしめる姿は、王族の片鱗が

垣間見えた。


「で、1年程前に俺と会った。

親友である俺に、元王族であり

竜人であること、王様に知れたら、

俺を巻き込んでしまう可能性が

ある事実を隠していることが

後ろめたかったんだよな」

「その通りだ。

人間は人と違うことを怖がる習性が

見られるからな。

君に怖がられるのではないか

と不安だった。

君のそばは楽しくて……

はじめて"生きたい"と願えた。

だから……

君が離れるかもしれないと思うと……

言えなかったんだ」


ジークスは(うつむ)いたまま心情を語った。


その横に立ち、郁人は背中を軽く叩く。


「ここから、俺の意見を言わせてもらうな。

別に俺はジークスがどういう立場だろうと

気にしない。

隠し事があることが後ろめたいとは

思わない。

まず、ない奴なんていないと思うぞ」

「だが、君に危険が及ぶ可能性が……!?」

「そのときは考えるさ。

簡単にやられるつもりはないから。

俺にできるのは利用されないよう

逃げるくらいだけど」

「しかし……!」

「ジークス……

お前が後ろめたいと感じていた想いを

知っても、こうしてそばにいること。


ーそれが俺の答えだ」


「………!?」


郁人の言葉にジークスは息をのみ、

顔を上げ、郁人を見つめる。


「そうか……

イクト……君はもう……

答えてくれていたんだな」



ジークスは震えた笑い声を上げ、

ゆっくりと微笑んだ。



ーーーーーーーーーー



穏やかな空気が流れるなか、

チイトが言葉をもって切り裂く。


「じゃあ、パパは血肉の事を知ってたの?」

「それは初耳だった。

ジークス、どういうことか

洗いざらい吐け」


先程とは違い、強い口調の郁人に

ジークスは視線をさまよわせる。


「その……

竜人の血肉についての伝承は知らないか?」

「伝承?」

「あの胡散臭いやつのことか?」


首を傾げる郁人に、チイトは口を歪めた。


「パパは知らない?

竜人の血肉を喰らえば不老不死になるとか、

最強になるとか眉唾(まゆつば)ものばかりだよ」


眉をしかめるチイトに、

ジークスは訂正する。


「その伝承を正確に言えば、

"竜人の尻尾を食べれば不老長寿"。

"血を飲めば丈夫になる"というものだ。

数万年前からその噂が流れたため、

俺達竜人族は、空に国を作った

と言われている」

「じゃあ、本当なのかそれっ……?!」


"人魚の肉を喰らえば不老不死になる"


人魚伝説が郁人の頭をよぎる。


〔それに近いわね。

竜人や人魚も不老不死の秘薬になると

伝えられているわ〕


ライコは頷いた。


「本当だが、2つ条件がある」


ジークスは淡々と述べていく。


「1つめは、竜人自らの意思で与えること。

2つめは、与える者と相性が合うこと。

この2つめが、特に重要だ」

「相性?」

「竜人の尻尾や血は、相性が合わない者が

食べたり飲んだりすると、

体内で竜の力が暴走し、死に至らしめる。

だから、血をほんの少し浴びせ、

対象と相性が良いかを判断するんだ」

「ジークスの血を浴びた記憶は

ないけど……?

俺、いつ浴びたんだ……?」


思い出そうと脳をフル回転させる

郁人にジークスが答える。


「俺が返り血に濡れて帰ってきたとき、

君が心配して拭ってくれただろう。

実は、あのとき俺も血を少し流していてな。

それが偶然、君の頬についてしまったんだ」

「あのときか……!」


郁人は記憶を手繰(たぐ)り思い出した。


ジークスが珍しく血濡れで帰ってきて、

あまりの様子に慌てて対処したのだ。


(あのときは本当に驚いた。

真っ白のタオルが赤く染まるくらい

だったし、ジークスは大したことない

と言ってたけど、かなり心臓に悪かった)


大怪我していると当時、返り血だと

説明されるまで頭がパニックに

なったものだ。


「合わなかった場合、血に反応して

蕁麻疹(じんましん)などの症状が出るが

君にはそれが無かった。


ーだから俺は、君に我が血肉を

捧げようと決めたのだ」


肩を後ろに引き、郁人の瞳をまっすぐ

射ぬいた。

姿勢に固い意思を感じるが、郁人には

他にも疑問があった。


「でも、俺……

飲んだり食べたりした記憶が

無いんだけど……」


いくら頭を(ひね)っても

竜人……ジークスの尻尾の肉を食べたり、

血を飲んだ記憶は見つからない。

特に、血なんて口に含んだのかも

さっぱりだ。


その姿を見て、ジークスはわかるように

説明する。


「いつも俺が君に渡す肉があるだろう?

ーそれが俺の尻尾だ。

美味しく食べてもらえると嬉しいものだな」


思い出し、顔を輝かせるジークスとは

対称的に郁人は顔を蒼白させる。


それもそうだろう。


だって、ジークスが郁人の為にと

差し出した肉は、今朝食べた肉は……

尻尾とはいえ"親友の1部"なのだから。


味も食感も鮮明に思い出せるくらいに

食べているのだ。


ー目の前で微笑む彼の"1部"を


実感した今、足下が覚束(おぼつか)なく感じ、

口を思わず抑える。


〔落ち着きなさい。

かなりショッキングな事だけど、

カニバリズムとか深く考える

必要はないわ。

確かに、英雄候補はあんたと同じ姿形よ。

でも、体の造りとか細かい所は全て違う。

だから、あんたがそこまで気にする

必要はないのよ〕


ライコは安心させようと、

優しい声で話しかけた。


「パパがそこまで気負う

必要なんてないよ。

こいつとパパの体は全く違うから

共食いにならないし、肝心のこいつが

深く考えてないんだから。

パパが深く考える必要なんて少しもない」


ライコに同意するように、

チイトも優しく話しかけた。


「パパはとても優しいから傷つくと思って

内々に処理しようと思ったんだけど……」


ため息を吐き、ジークスを睨み付ける。


「チイトは気付いていたのか?」

「うん。

朝、パパの部屋に入ったときに

匂いでわかった。

肉の匂いがこいつと同じだったし、

こいつの血の匂いがパパからしたから……」


チイトは口を歪める。


「パパがいないときに聞いて、

やめさせようと思ったんだ。

けどこいつ、自分の行動がどれだけ

影響を及ぼすか全くわかってないから

頭に血が昇って……」


パパが来たときのような状況に……と話す。


「なぜイクトはそのように顔色を

悪くするんだ?

どこか具合でも……?!」


ジークスはななめ上に勘違いし、

薬はないかと自身のポシェットを

漁る。


「貴様はどう思う?

親友の肉を食っていたんだぞ!

その気持ちを考えろ!」

「イクトのであれば、自身の体を

大切にしてほしいが……

俺の尻尾は再生するし、

イクトを健康にする。

イクトの為になると思うと、

とても誇らしい気持ちだ」


チイトの問いにジークスは断言する。

表情は誇らしげに輝いている。


〔これは……種族の価値観の違いね。

今調べたら、竜人は1部を相手に

食べさせるのは最大の信頼の証みたい。

特に、尻尾をあげるのは、

たった1人にしか食べさせないもので

あるみたいよ。

永遠に仕える誓いの証になったり、

異性間だと、婚約の証にされる程の

代物らしいわ。

文化レベルの違いだから、

納得させるのは諦めなさい〕


ライコは深くため息を吐いた。


(価値観の違いか……)


価値観は互いにあるものである。

ましてや、文化的価値観の違いは

理解させようにも生まれたときから

馴れ親しんだ文化でもあるので、

知ることはできても、理解し

行動できるかは別だ。


どちらかが折れるか、妥協しない限り

終わらないだろう。


(ジークスのあの態度からして妥協、

ましてや折れるなんて絶対しないだろうな。

俺が妥協するしかないか……)


郁人はため息を吐くと、ジークスに話す。


「別に俺は大丈夫だから。

ただ、かなり……びっくりしただけだ」

「そうか?

ならいいんだが。

具合が悪くなったら言ってほしい」

「わかってるよ。

ところで、血はいつ飲ませたんだ?

まさか飲み物に混ぜたりとか……」


早めにこの問題を解決したほうが

心労的にも良いと判断した郁人は

質問した。


郁人は自分の発想に顔を青ざめる。


「血を飲み物に混ぜるなど……

そんな不衛生な事はしない!!」

「不衛生とか、それ以上のことを

しているだろうが」


ジークスは青ざめて首を振り、

撤回する姿にチイトが舌打ちする。


「じゃあ、いつ飲ませたんだ?」

「……約束してほしい。

俺から何も取り上げないと」

「……わかった」


ジークスの真摯(しんし)な願いに郁人が頷くと、

重い口を開いた。



ー「君が寝ているときを狙い、

合鍵で忍び込み、指先を切って

口に突っ込み飲ませた」



「前言撤回!合鍵を没収する!!」



郁人がジークスから合鍵を取り上げようと

ポシェットを奪うため手を伸ばすが、

ジークスが(さえぎ)る。


「駄目だ!

これは君からの信頼の証、

親友の証でもあるんだ!!

私からそれを奪わないでくれ!!」

「朝起きたら口内に鉄の味がして、

病気かと悩んだ時間を返せ!

本気で悩んだからな!!」

「悩みだと?!

なぜ相談してくれなかったんだ!」

「その悩みを作った張本人の言葉かっ!!」

「絶対に渡しはしない!!」

「いいから返せ!!」



2人の攻防はしばらく続いた。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ