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洞窟の先には

※残酷表現がありますので、ご注意ください。




レイヴンは頭をかきながら、足を進める。


「こっから先はぬし様にかなり

悪影響なんだよなあ……」

「彼らに聞いたが、あれは我が君に

お見せ出来ないな」


フェイルートはデッドリービーから

話を聞き、頷いた。


「あの反則くん、派手にやり過ぎだろうが」


洞窟の奥へと進む程、鉄臭さがどんどん  

充満していく。


「まだ距離あるっつうのにもう血生ぐせえ」


鼻をつまみながらレイヴンは

うへえと舌を出す。


「……我が君の前ではずっと猫をかぶって

いるからな」


かぶり過ぎて見ていて気味が悪い

とフェイルートは紫煙をくゆらせる。


「それであいつはストレスが貯まって

いるんだろう。

我が君の思う“良い子“ではないからな」


分析しながらフェイルートは

血の匂いに口を歪めた。


「しかし、どれだけ暴れたらこんなに

鉄臭くなる?」

「息の根はちゃんと残してんのかあいつ?

俺様の分も残してくれないと困るん

だけどよお」


レイヴンは、はぁとため息を吐いた瞬間、

べちゃりと靴が濡れる。


「げえ……」

「ここまで流れてるのか」


濡れた感触に2人は眉をしかめた。


「……随分と派手にし過ぎたな」

「あちゃ~……被害者が気を失ってたのは

幸いだったな、こりゃ」


足下を濡らしたものの流出先には、

人だったものが横たわっていた。


頭がザクロのように飛び散り、

真っ赤な華を咲かせている。


人間の体だとなんとかわかるものが

地面にボトリと落ちていた。

肉片も血も辺りに飛び散り、凄惨さを

物語っている。


誘拐されたと思われる人達は鎖に繋がれ、

顔は青白く、意識は無いが胸が上下して

いるので生きていることがわかる。


「生きててよかったぜ。

これで死なれてたらとんだ骨折り損だ」

「本当だ。そして……あいつはかなり

頭にきているようだ」


フェイルートの視線の先、

部屋の中心には人の頭らしきものを

踏み潰すチイトの姿があった。


「…………」


余程苛立っているのか眉をひそめて

何度も何度も踏み潰していた。


ぐちゃりぐちゃりぐちゃり

ぐちゃりぐちゃりぐちゃり

ぐちゃりぐちゃりぐちゃり

ぐちゃりぐちゃりぐちゃり


踏み潰す度に肉片や血が飛び散り、

チイトの靴は最初から赤かったかと

思えるほど。


「チイト!!」


レイヴンは目を吊り上げ、

チイトに話しかける。


「息の根は残しとけっていっただろうが!」

「勝手にこれらが自爆したんだ。

俺がした訳ではない」


レイヴンの言葉にチイトは反論した。

自爆の言葉に2人は目を丸くする。


「は? 自爆? マジで?」

「あぁ。俺はきちんと息の根は残していた。

逃げられないよう足の腱を切って、

騒がれないように魔法で口を

ひっつけただけだ」

「……たしかに、きちんとしていた

ようだな。

犯人側と思われる者達は全てチイトが言った

処置がされている」


フェイルートが人と思われる残骸に近づき、

取り出したメスで触れ、観察する。


「脳に術が埋め込まれていたようだ。

極わずかにだが、埋め込まれていた

痕跡がある。

……この術は頭を開いて埋め込んだ

訳ではなさそうだ。

これは持って帰ろう。

面白いものが見つかりそうだ」


知的好奇心が(うず)いたようで、

口元を軽くゆるませ、フェイルートは

袋に1つの残骸を放り込む。


「色香大兄、調べるんなら地下で何卒。

通報とかされりゃ、処理が面倒なんで」

「わかっている。

君達、これを地下の工房に運んでほしい」


フェイルートがデッドリービーに頼むと

(うやうや)しく受け取り去っていった。


「で、チイト。

なんかわかったことがあるのか?」

「……こいつらからまだ壊れかたが

マシなものの脳から記憶を

読めるか試したが、自爆と同時に

記憶が消されるように施されていた」

「うわっ! 用意周到というか……

面倒な相手だこった」


かったるいとレイヴンは頭をかいていると

あっ! と声をあげる。


「俺様の情報網に引っ掛からねーか

検索してみっか」


レイヴンはモニターを出すと、検索しだす。


「脳内でしなくて済むようになったのか」

「いや、してるぜ。

脳内の情報をモニターに映るように

してるだけだ」


見えたほうがやりやすい

とレイヴンは検索する。


「その術と作用とか調べりゃ

最近誰が使ったかわかるからよ」

「貴様のスキル、時間はかかるが

便利なものだな」

「何千という本棚から探し当てるのは

面倒だがよ。

ま、ここに検索しやすいのがあるから

出来るがな」


残骸を指差し、えっと、どこじゃらほい

と探していると、

レイヴン達は気配を感じる。


「!?」

「これはっ……?!」

「下かっ!!」


レイヴン達は咄嗟に後方へと飛び退く。


ー 瞬間、地面が盛り上がり、

何かが見えた。


「でけえ手だな! こりゃあ!!」


レイヴンが目を見開くのも無理はない。


それは人を軽く握りつぶせる程の

大きな大きな手だったからだ。


「おいおいおいおい!

どこに潜んでたんだあんな馬鹿デケエの!」

「下に相手はいないんだが……」


フェイルートは地面を警戒しながら、

地中へ蔦を走らせる。


が、感触はない。


しかも、その手はフェイルートにも

掴みかかった。


「花弁よ」


握りつぶされる前にフェイルートの

体はひらりと無数の花弁に変わり、

舞い踊る。


「成る程」


そして、別の場所へ花弁は踊ると

フェイルートが現れた。


「あれには実体がない。

あるのは磁力だけだ」


蔦で調べた結果をフェイルートは告げた。


「けど、色香大兄!

あれ! 俺様を掴もうとしてたぜ!」

「遠隔で磁力を操作し、砂鉄を固めて

実体を作っているんだ」

「そういう訳ですかい!

なら、奴さんは俺様と同じ光属性!

雷を使う系統か!」

「鬱陶しいっ!」


舌打ちしたチイトは杭を作り出すと、

ビュンッと勢いよく地面に突き刺した。


「おわああああ?!」

「!?」


地軸もろとも引き裂くような

爆裂音とともに地面は抉れた。


杭が突き刺さった場所にはクレーターが

出来ている。


「…………………」


チイトは磁力を辿ろうとしたが

すでに逃げられていた。


探したチイトは舌打ちする。


「逃げたか……」

「逃げたか……じゃねーよ!!

ド派手にやり過ぎだろうが!!」

「生存者を先に隔離していて

正解だったな……」


レイヴンは声をあげ、フェイルートは

額に手を当てる。


チイトが動く寸前、フェイルートは

蔦で生存者を保護し、治療室へと

移動させていたのだ。


「流石色香大兄! 卒がねーな!!」

「チイト、もう少し周りを見てからやれ」

「貴様らなら大丈夫だろ」

「俺様達は大丈夫だが、生存者が無理だ!

それに情報源が手前のせいで

木っ端微塵じゃねーか!」

「それも問題ない」


チイトが指をならすと、

空間からボロボロな残骸が現れる。


「自爆した奴らの1部を回収していた。

生存者から見たこいつらの様子の

記憶を写したものも用意している」

「うわぁ……

それは用意周到過ぎて退く」


どこまで想定していたんだ

と、レイヴンはドン引きだ。


「本当か!?」

「どうした色香大兄?」


突然声をあげたフェイルートに

レイヴンは尋ねた。


「……あの子達が襲撃を受けたそうだ。

袋が狙いだったらしい」


蝶から連絡を受けたフェイルートは

デッドリービーのもとへと足早に進む。


「俺は彼らの治療をする。

チイト。それらを盗られないようにしろ」


言い捨てるとフェイルートは花弁と

共に消えた。


「……相変わらず、人間以外には

慈悲があるな」

「それが色香大兄だからな。

手前のそれ、しばらく預かっといてくれ。

俺様もやることあるから引き続き

手伝い頼むわ。

ぬし様にもちゃんと言っとくからよ」

「………いいだろう」


レイヴンとチイトは闇に消えた。


ーーーーーーーーーー


(あの感覚……覚えがある)


チイトは1人考える。


(手が出た瞬間、ドラケネスの

ドラゴンと対峙したときの感覚がした)


手が出てきた際、自身に制御が

かけられたあの感覚だ。


(あの手はあのドラゴンと同類

かもしれないな。

……となると、パパが危ない可能性がある)


ドラゴンは真っ先に郁人を狙った。


魔力補給を狙ったのかもしれないが、

それは違うと自身の直感が告げている。


(あれは確実にパパを狙っていた。

目的は不明だが……)


顎に手をやり、チイトは様々な可能性を

あげていく。


(………………考えるにしても情報が

少なすぎる。

それに、寸前まで俺達が気配に

気付かなかったのも気になる)


チイトは例え相手が虫けら程度でも

慢心などしていなかった。

逃げた者がいないか警戒もしていた。


(魔術や魔法で砂鉄を固める段階で

本来なら気付けた。

あいつらも油断などしていなかった。

俺達が気付かない可能性があるのは……)


チイトは再び思考にふけると、

息を吐く。


(……探る範囲を広げるか。

やることが多いな、これは)


こっそりやるのは面倒だと

チイトは頭をかく。


「俺、結構頑張ってるよね?

日頃からパパに近付く塵だって

本当は片っ端から掃除したいけど

ちゃんと我慢してるし……」


パパに怒られるからしてないし

とチイトは口をへの字にする。


「特にパパにベタベタする

あのジジイは今すぐ消したいけど

パパが悲しむから放置してるしさ。

俺ってば良い子だよね?

これはもう間違いなく良い子だ。

うん。俺は超良い子」


これは賞が貰えるくらい

と、チイトは頷く。


「あいつらの仕事が終わったら

パパに頭を撫でてもらお」


だから、いっぱい甘えてもいいよね?

と、チイトは呟いた。




ここまで読んでいただき、

ありがとうございました!

楽しんでもらえましたら、

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よろしくお願いいたします!

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