表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
139/358

131話 誘拐犯の潜伏場所




チイト、レイヴン、フェイルートの

3人は夜の国の外れにある、潜伏場所に

辿り着いていた。


「ここだな」

「足跡もバッチリあんな」


潜伏場所は霧が薄く、自然豊かな場

だったのだが、踏み荒らされた形跡がある。

それは洞窟まで続いていた。


「……不法侵入の挙げ句、踏み荒らすとは」


荒らされた形跡にフェイルートは

柳眉をしかめた。


チイトは周囲を観察し、呟く。


「気配は洞窟の先にあるな。

気付いた様子もない。

貴様の能力も便利なものだ」

「花があれば、その場に行けるもんなあ」

「彼女達の協力があって出来るものだ。

俺1人のものではない。

教えてくれてありがとう。

おかげで助かった」


フェイルートは近くに咲いた花に

近づき、しゃがむと礼を告げた。


花はゆらゆらと風もないのに揺れる。


「あぁ。

俺達が踏み荒らした者達を懲らしめる。

……君達も懲らしめたいのか?

わかった。

君達にも協力して貰おう」


花はまた風もないのに揺れた。

フェイルートと花は会話しているのだ。


「ん? 俺に話したいこと?

なんだい?

……成る程。情報もありがとう」


しばらくして、フェイルートは

立ち上がると2人に告げる。


「彼女達もここを荒らされて怒り心頭だ。

聞くところによれば、勝手に踏み込んだ

挙げ句、火をつけ、木の実を奪い、

動物を狩るなど他にも散々な行為を

したそうだ。

だから、彼女達も協力してくれる」


心強い味方だ

とフェイルートは微笑む。


ー 「おまけに面白い話も聞けた。

実は…………」


そして、フェイルートは聞いた話を

続けた。


「………そりゃまた」


聞いたレイヴンは口角を上に歪めた。


「面白い話だなあ、それは。

反則くんに協力してもらう範囲が

減ったな」

「なら俺は帰ってもいいな」

「待て待て!

手前には他にもやってもらう事が

あるんだよ! だから待て!」


さっさと帰ろうとしたチイトは

制止され、鋭い舌打ちをする。


「それに今からぬし様が俺らの

活躍を見ればべた褒め間違いなし!

手前は褒められたくねーの?

このまま、のこのこ帰るか?」

「とっとと済ますぞ」


レイヴンの言い分に、チイトは体の向きを

洞窟へと戻した。


その姿にフェイルートは

煙管を吹かす。


「お前は我が君に関してだけは

わかりやすい。

で、レイヴン。準備は出来たのか?」

「おうとも!バッチリだ!

後はぬし様が……おっ!

噂をすればだな!!」


レイヴンは手元にパネルを

浮かび上がらせた。


ーーーーーーーーーー


無事に帰った郁人は桜の下で

合流したジークスとナランキュラスに

注意されていた。


「イクト……行く際は声かけ、

もしくは紙に書いてほしい。

君がまた誘拐されたのかと

ヒヤヒヤして仕方ないんだ」

「こいつがイクトイクトとうるさ過ぎる!!

出掛ける際はきちんと声かけなりするん

だな!」


騒々しいにも程がある

とナランキュラスは髪をかきあげた。


「後、またとはなんだ!?

誘拐された事があるのか?!」

「前に未遂(みすい)だけどな……。

誰かに助けてもらったから」


怪我はしてないよ

と郁人は告げた。


「イクト」


ジークスは郁人の両肩を掴み、

真っ直ぐ見つめる。


「私は君が私の見ていない

ところで危険な目に遭っていたらと

思うと心臓が止まりそうになる。

だから、お願いだ。

絶対に声かけはしてほしい」

「……ごめん、ジークス。

次からは声かけする」


郁人はジークスに謝った。


「声かけは勿論だが、

次からは俺も同行しよう。

君がどこにいるかわからないと

落ち着かない、そのまま潰れて

しまいそうになるんだ……」


ジークスの道に迷った犬のような

瞳に郁人は頷く。


「わかった。一緒に行けるなら行く」

「ありがとうイクト。

君とならどこにでも」


ジークスの表情は曇り空から

快晴にへと変わった。


〔そうね。さっき調べたけど

次からは英雄も連れていったほうが

いいわね〕


ライコが調べた結果を告げる。


〔竜人は大切、宝と判断した

相手が目の届く所にいないと

かなり慌てるみたいよ。

そして、心配で極限状態に

なると手当たり次第探して、

家を壊したり人を吹き飛ばしたりと

被害が半端なかった例も……〕

(うん。絶対に連れて行こう)


壮絶な被害報告に郁人は胸に刻んだ。


「マスター、レイヴン殿から

渡されてませんでしたか?

帰ったら開けるようにと」

「そうだった!」


ポンドの言葉に郁人は懐から

急いで取り出し、小箱を開ける。


「わっ!? なに!?」


すると、箱から放射線状に光が

飛び出し、長方形を空中に

浮かび上がらせた。


「……これってスクリーン?」

《ぬし様やっほー!

見えておりますか?》

《パパ!

見えてる? 声聞こえる?》

《我が君どうでしょうか?》


スクリーンには3人が洞窟前に

いる姿が映し出されていた。


「うん!

見えてるし、聞こえてる!」


郁人は驚きながらも3人に

手を振った。


「フェイルート様とレイヴンさんが

見える! どういう事だ?!」

「……彼らには驚かされっぱなしだ」

「これはどういった魔術

なんでしょうか?」


ナランキュラスをはじめ、

3人は目を丸くする。


《これは俺様の眷属といえばいいか?

その鳥達の視点から得た情報を

1つにまとめてスクリーンに

映してるものなんでさあ》


レイヴンは快活に笑い、イエーイと

ピースする。


「? 鳥は夜目が利かないのでは?」

《そこは俺様と契約してるからだな》


ジークスの問いにレイヴンは答える。


《魔力を流すことで光を

吸収しやすくしてるんですよ?

目は光を集めて見えるようにする

器官だからなあ。

俺様も鳥系の獣人なんで、苦労は

わかりますからねえ?》


カメラに例えると分かりやすいんだが、

ここに無いもんなとレイヴンは頬をかく。


《まっ! 全部俺様のおかげってことで!!

今から潜入するんで、ぬし様は

安心して見てくださいな!

そんじゃ、レッツゴー!!》


レイヴンは2人の腕を掴み、

遊びに行くように洞窟内に入った。


でこぼことしていたり、節くれだった

石の壁が目立つ洞窟だ。

が、なにより目立つのは足跡と

人が捨てたゴミだ。


《……ここまで散らかし、汚すとは

余程教育が行き届いているようだ》


フェイルートは皮肉を吐きながら

しかめ面になる。


「フェイルート様。

その洞窟は花咲き蝙蝠(こうもり)

生息地だった筈です。

彼らはどちらに居るのでしょうか?」

《彼らは……花咲門の近くにある

小さな穴に避難しているようだ。

至急、保護するように手配しろ》


ナランキュラスの問いに

フェイルートは外から飛んできた

フェイルートの使いである蝶を

指に止まらせ、報告を聞いたあと

指示した。


「かしこまりました!

あんた達は城門近くの者に

花咲き蝙蝠の保護を頼む!

食べれていない可能性もある為

食べれる花も用意するんだ!」


ナランキュラスは(うやうや)しく礼をすると

いつの間にか控えていた部下達に

指示を飛ばす。


「直ちに動きます」


部下達は音も無く姿を消した。


(いつの間に居たんだ……?)

〔あたしにもさっぱりだわ……〕


郁人は口をポカンと開けてしまう。


《花咲き蝙蝠、侵入者のせいで

居れなくなったんだろうな。

あいつら攻撃性0だしよ》

《あれらを片付けたら2度と

侵入されないようしなくてはな》


フェイルートは冷たい目を洞窟の先に

向けた。


「その、質問してもいいだろうか?」


ジークスはスクリーン越しに

洞窟内を見て尋ねる。


「君達、明かりもなく歩いているが

大丈夫なのか?

その洞窟はもともと明るいのか?」

「今は真夜中ですからな……」


ポンドも気になっていたようだ。


《先程説明したように、俺様の魔術で

俺様自身も夜目利くようにしたからだな。

旦那達にも見えるようにしてるだけで

実際は真っ暗ですよ?》

「チイトやフェイルートも

見えるのか?」


2人は大丈夫か?

と心配する郁人にチイトと

フェイルートは答える。


《俺はもともと夜目利くから》

《私も夜目は利きますから問題ありません。

洞窟はまだ先が長いですので

夜食などをいただきながらご覧下さい》

「ありがとう。食べながら見るよ」


フェイルートの気遣いに甘えて、

女将さんが持ってきた夜食をいただく。


「このごま豆乳うどん美味しい!」

「夜は冷えるから温まる」

「ホッとするお味ですな」

「夜食か……。

たまにはいいだろう。好意を

無下にする訳にはいかないからな」


郁人とジークス、ポンドは

嬉しそうにいただく。

ナランキュラスは悩んでいたが

最後は食べている。


「ユー、美味しいか?

……美味しいみたいだ」


ユーもお腹が空いていたのか

尻尾を振りながら食べていた。


「そういえば、ジークスと

師匠が犯人を捕まえたんだよな?」

「あぁ。そうなんだが……

医師の彼に教えてもらったと言うべきか……

なんと言えば良いのか……?

突然体が動き、捕まえたというべきか?」


ジークスは説明に悩み、あごに手をやる。


「あの感覚は天啓と呼ぶにふさわしい!

頭に直接指示が下り、体が勝手に

動いてその場まで案内してくれるの

だからな!

フェイルート様の手足になった

あの感覚! 素晴らし過ぎる!!」


ナランキュラスは瞳を輝かせて絶賛した。


説明にライコは疑問符を浮かべる。


〔体が勝手にってどういう意味なの

かしら?〕

「もしかして、スキルか?」


心当たりがあった郁人が尋ねると

フェイルートは唇を綻ばせる。


《はい、我が君の想像通りです。

私のスキル“女王蜂“で伝えたんですよ。

私のスキルはフェロモンで直接情報を

伝達し、行動を引き起こせますので》

「君はその場に俺と彼がいる事を

知ってたのか?

連絡が来た際、誰がいるか把握していた

ように思えるのだが」

《夜の国には教えてくれる者は

たくさんいるからな》


フェイルートはふわりと蠱惑な

笑みを浮かべた。


「成る程な」


郁人は納得する。


(それなら早かった理由や

勝手に動いた理由もわかる)


郁人は自身が設定した内容を

思い出した。


(フェイルートのスキルは

名前通り、女王蜂をモデルにした

スキルだからな。

フェロモンによって相手に特有の

行動を起こす事が出来るし)

〔それって自分が近くにいなくても

出来るのかしら?〕

(うん。

フェロモンが少しでも残ってたら出来るな。

それに、自身がいなくても仲間がいれば

いる程、遠隔からでも可能だな)

〔……ということは、

たくさんいる訳ね。ここに〕

(いるだろうな、かなり)

《私のスキルの内容を1つ、

我が君にお見せいたしましょう》


フェイルートは誰もが目を奪われる

妖艶な笑みを深めた。


《あああああああああああああああ!!》


瞬間、洞窟内に悲鳴が響き渡った。





ここまで読んでいただき

ありがとうございます!

ブックマーク、評価(ポイント)

よろしければお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ