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129話 胸騒ぎとともに足を進める




宴は盛り上がり、従業員が舞いを披露し、

更に華やぐ。


「ちょっと夜風にあたろうかな」


熱気で暑くなった郁人は窓を開け、

街を一望する。


「本当に綺麗だ……!」


桜並木はライトアップされて、

街を美しく飾っている。


見とれながら郁人は酒をあおり、

思い出す。


「ここで呑むのも格別だけど、

キュラス師匠が言っていた

桜を見に行こうかな?」

〔紅く光る桜ね。

あたしも気になってたのよ。

行きましょ行きましょ!〕


桜を見て思い付いた郁人は涼みがてら、

中庭に行くことにした。


「ジークスも一緒に……

すごいな」


誘おうとしたのだが、

従業員にまたもや囲まれていた。

ジークスは戸惑っているが、

きちんと対応している。


〔置いといていいんじゃない?

あいつ、あんた以外と居るとこ

あまり見ないし。

ああやってコミュニケーション

とるのも大切だと思うわ〕

(たしかにな……)


記憶を振り返ると、ジークスが

依頼の時以外はずっと郁人の側にいる

イメージがある。


「……たまには1人でいいか」


郁人は1人で見に行くことにした。


〔いいんじゃない?

あの黒鎧は綺麗どころに

囲まれて輝いてるし、謎の生物は

食べまくってるし〕

(楽しんでる時に水を挿すのも

気が引けるしな)


全員の楽しんでる様子を

微笑ましげに見つめ、

郁人は廊下に出る。


「浴衣を着てるし、桜の下で

1人晩酌って風情がある気がする」


持ってきた酒を片手に廊下を進みながら、

襖絵や景色を楽しみながら目的地へと

足取りを軽やかに歩く。


「……ん?」


階段を降りながら、窓の外を見ていると

ある光景が目に入った。


「なんだろ?」


窓に近づき、目をこらすとはっきり

見えた。


「……1人?」


夜道を歩いている女が見えた。


それだけなら違和感を覚えないが

服装は明らかに寝間着な上、

足取りがかなり覚束ない。


「酔ってるのか?

でも……なんか……」


壁や物に当たっても気にも留めず、

ただふらふらと。


〔なんか様子が変ね〕

(……行ってくる!)


郁人は嫌な胸騒ぎがして、

考えるより先に体が動いていた。


階段を急いで駆け降り、郁人は

その女の元へと急ぐ。


急いだ甲斐があってか、

それとも女の進みが遅いのか、

思いの外早くたどり着けた。


「………………………」


女はふらふらと路地裏を進んでいる。

後ろから見ても足は傷だらけで

血がずっと流れているのにも関わらずだ。


「やっぱり変だよ、あれ」

〔なんだか引っ張られてるみたいだわ〕


近くで見れば見るほど、おかしいと

わかる。


「酔ってて気づいてないだけか?」


郁人は確認するため、女の前へと進む。


「嘘っ?! 寝てる……?!」


女は目を閉じて眠っていた。

しかし体は前へ前へと引っ張られている。


「すいません! 起きて!!

止まって!」


郁人は女の腕を掴むが、

女は歩みを止めることはない。

そのまま郁人を引きずりながら

進んでいく。


「マジでっ?!」

〔これ、完全に操られてるわね。

なにか見えたりしないかしら?〕

「なにか……ん?」


一旦手を離し、並んで歩いてみてみると、

首になにかが見えた。


月明かりに照らされ、何かが反射したのだ。

だが、髪に隠れて見えない。


「すいません。 髪、触りますね。

……なんだ……これ?」


声をかけてから髪に触れると

首元にいたのは小さい“蜘蛛“だ。


ライコは蜘蛛に心当たりがあるのか、

口を開く。


〔この蜘蛛……魔道具の1種だわ。

見たところ子型。

持ち主が本体で操ってるようね。

ほら、子型から糸が出てるでしょ〕

「本当だ……?!」


反射していたのは糸だったらしく、

触ってみると見た目の細さと違い

とても固い。


「これをちぎれば……

無理だ! ちぎれない!

取ろうとして剥がせない!」


引きちぎろうとしてもびくともせず、

蜘蛛を取ろうとしたが剥がせない。


〔調べたけど、それ、粗悪品みたいね。

水を掛ければ壊れるわ〕

(魔道具にも粗悪品ってあるのか?)


今まで見てきたのに粗悪品は

無かったけどと、郁人が尋ねると

ライコは答える。


〔そりゃあるわよ。

1級品から粗悪品までね〕


ソータウンは冒険者が多くて

冒険者は見極める目を

持ってるから粗悪品が少ないのよ

とライコは語る。


〔迷宮産は全て1級品だけど、

人が作るとなると作り手によって

変わるわ。

ほら、その酒をかけて壊しなさい〕

(……あとで同じの貰おう)


郁人は飲む予定だった酒を開ける。


「ごめん!」


そして郁人は女性と酒に謝ると、

思いきりかけた。


バチンッ!


酒がかかった瞬間、魔道具は

火花をあげて不気味な音を立てながら

地面に落ちた。


「おっと、セーフ!」


剥がれたと同時に女も倒れるも、

郁人が支えたお陰で大丈夫だ。


「とりあえず、フェイルートの

ところに連れて行こう。

魔道具の影響が無いとも限らないし……」

〔そうね。

足とか傷まみれだし、魔道具が付いてた

箇所から血が出てるもの。

それ以外も無いとも言い難いわ〕


郁人は女の腕を自身の肩にまわし

慎重に歩く。


「……!?」


突然、背筋に冷たいものが走り、

胸騒ぎがした。


「誰だっ!?」


振り返ると、顔を仮面で隠した人物がいた。

肩に先程の魔道具と同じだが、

少し大きめの蜘蛛がいる。


「キミィ、困るんだよ。

商品を取られ……て……は……」


声色からして男だと判断する。


「キミ……もしかして……」


その男は郁人をしばし凝視した後、

懐から紙を取り出して見比べる。


「み……見つけた……

遂に見つけたぞーー!!」


体を震わせ雄叫びをあげる。


「見つけた見つけた見つけた見つけた

見つけた見つけた見つけた見つけた!!

遂に依り代を見つけたぞ!

これでこれで~~~!!」


男は感情のコントロールがきかず、

雄叫びをあげすぎて途中から

声が掠れて聞き取れない。


「なんだ……こいつ?」


依り代の言葉に郁人は嫌な予感しかしない。

自身の鼓動がバクバクと耳元で聞き取れる。


郁人は逃げようと女が落ちないように

しっかり掴むと、逃げ出す。


「逃がす訳ないだろお?」


背後から笑い声が聞こえるが、

郁人が足を止めることはない。


路地裏なのを利用し、物などを

わざと落として相手を妨害しながら

進む。


〔あいつからは嫌な予感しかしないわ!

とにかく急ぎなさい!!〕

(わかってる!!)


郁人は肩で息をしながらも、

止めることなく足を前に動かす。


ー しかし


「ぐっ?!」


突然、女が郁人に抱きつき、

動きを止めてきた。


「なんで?!」


思いも寄らない行動に、足が絡まり

そのまま女ごとこけてしまう。


〔あっ?!

また蜘蛛が付いてる!!〕


ライコの言葉通り、女のうなじに

子型魔道具がくっついていた。


「このっ……!!」


郁人は抑えられ、立ち上がる事が

出来ない。


「力強いなこの人!?

離してほしいんだけど!!」


なんとか逃げようと、ほふく前進で

進もうとするも、思うように進まない。


「さあ、行こうか。

あの方の依り代になれる栄誉を

授かるといい」


笑い声と共に足音が近づいてくる。


「こうなればっ……!!」


郁人は忍ばせていたある物を取り出した。


〔なにそれ? 丸くて平たいし……

紐がついてるけど?〕

(防犯ブザーだ。

近所の魔道具屋さんから貰ったんだ。

魔力は補填してもらってるし、

この紐を引っ張ればいいって言ってた!)


郁人は勢いよく引っ張った。


ブオオオオオオオ!!

ブオオオオオオオオオオオ!!


音は非常に響き渡り、家々を

吹き飛ばすのではと錯覚させる。


この音は郁人にとっては聞き覚えのある。

士気が高揚し、出陣したくなるものだ。


「……法螺貝(ほらがい)だ、これ」

〔なんで防犯ブザーに

法螺貝の音を採用したのよ?!〕

「なんだこの音は!?

そいつをよこせ!」


防犯ブザーを奪い取ろうと、男が動く。


男は手を伸ばし、郁人に触れる。


しかし、それは叶わなかった。


「クナイ?!」

〔大きな蛇だわ!〕


何処からともなくクナイが飛んできた。


男はクナイをなんとか避けるも

2m近い蛇が突然現れ、噛みつく。


「この武器はなんだ!?

しかも、この蛇は……あいつの使い魔か!?

やっぱり裏切ってやがったな……!?」


噛みつかれた部分を抑え、

怒りに顔を赤くしながら叫ぶ。


蛇はお構い無しに男に絡み付こうと動く。


「クソっ!!」


男は避けていたが、次第にふらつき始める。


「あいつめ毒蛇とは……

オレを仕留める気か!

蛇だけならまだしも、

もう1人が油断ならない……!」


忌々しそうに顔を歪め、

男は吐き捨てる。


「2対1は部が悪い……。

ここで死ぬ訳にはいかないんでな。

大事な依り代を見つけた事を

伝えねばならないからな!!」


男は懐から何かを取り出すと、

地面に叩きつけた。


「うわっ!?」


瞬間、煙が上がり周囲を真っ白に

染めていく。


「煙幕か?!」

〔……あの男逃げたみたいね。

足音が遠のいていくわ〕

「よし……」


郁人はなんとか起き上がると、

自身にのし掛かっていた女の肩を組んだ。


そうしている合間に、煙が晴れた。


「あの」


郁人は助けてくれた蛇に声をかける。


「誰かの使い魔みたいだけど、

助けてくれてありがとう」


郁人は蛇に感謝して、

フェイルートに女を診て貰おう

と去る。


いや、去ろうとしたが出来なかった。

なぜなら……


「へ?」


蛇に足を尻尾で掴まれているから

である。


〔こいつ! あんたを狙ってる!!

獲物を見る目をしてるわよ!!〕

「離せ!」


尻尾を放そうと足を動かしても

どんどん上に上がってきて

締め付けられていく。


(これやばい……!

せめてこの人だけでも

逃がさないと……!!)


ー 「塵なんかより自分の心配を

してよね、パパ」


ため息とともに声の主は現れた。




ここまで読んでいただき

ありがとうございました!

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