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小話 癇癪令嬢の憤り




郁人がハードスケジュールを

必死にこなして2週間ほど経った頃。


パンドラにある、立派な屋敷にて

静かな夜にふさわしくない、

ガラスが割れた音と金切り声が

響いていた。


「なんで!!

その女を見つけられないのよ!!」


声の発生源は、ロココ調家具に

統一された部屋の中心にある

ソファに座っていた。


艶やかな長い金髪を巻き、

薔薇のように赤いドレスに

身を包む、猫のような目を

更に吊り上げた少女は顔を

怒りに染めている。


名前は

“ジョネヴィラ・サフラワー“。


高名な貴族の御令嬢、惨殺事件の

“首謀者“だ。


ジョネヴィラの前には、

顔を蒼白させ、歯を鳴らして

身を震わせている執事や

メイド達がいる。


執事達の後ろの壁は

濡れており、床には破片が

散らばっている事から

グラスを投げつけられたことが

予測出来た。


「早く見つけなさいよ!

この愚図共!!」


更に1人のメイドの顔に

グラスを投げつけた。


「ひぃっ……!!

もっ……申し訳ございません!!」


投げつけられたメイドは顔から

血を流して身を縮込ませ、

痛みに耐えながらも

謝り続ける。


ジョネヴィラは彼らより

1回り2回り年下の少女。


大勢でかかれば容易く抑えれる。


しかし、身分は1回り2回り上の

少女に抵抗するなど彼らには

不可能なのだ。


ましてや、抵抗した結果、

無惨に殺されていった同僚達を

見てきた彼らにはその選択肢は

無い。


そんな彼らの事なんて露程も考えず、

令嬢は怒り散らす。


「このあたしがわざわざ!

何度も!直々に!足を運んであげて!

しかも、働いてあげても良いわよ

って言ってあげてるのよ!!」

「あづっ……!!」


ジョネヴィラは近くにあった

燭台を執事の顔に投げつける。


「なのにこのあたしを(ないがし)ろにして!!

無視した挙げ句、その女には

頼み込んだってどういうつもり?!

信じられないっ……!!」


整えられた髪をかきむしり、

もう上がらないと思われた目を

更に吊り上げ、立ち上がる。


「どんな神経してるのよ!!

あり得ないわっ!!」

「ひぐっ!」


そして、燭台を投げつけられ痛みに

もがいている執事を

何度も蹴り始めた。


「身の程をわきまえさせようと!

あたし以外に良い女はいないと

わからせる為に駆除してあげたのに!

最近は上手くいってないのにも

イライラするっ!!」


何度も何度も何度も感情のままに

怒りを蹴りに乗せる。


「なんで抵抗するのよ!!

あたしにふさわしいんだから!!

あたしが側に居てあげるのに!!

他の女なんか側に近づけようと

するから!!

だから、あんたが悪いのに!!

なんで!なんで?!なんで………!!

なんでよっ……!!」


何度も何度も蹴り、肩で息を

吐かせようやく落ち着いた。

椅子に座り、メイドに指示をする。


「ふぅ……。

髪を整えなさい。

後、飲み物も。ほらっ!早く!!」

「はっはい!!」


指示されたメイドは急いで

髪を整えはじめ、もう1人は

飲み物を取りに行く。


「全く!

指示される前にやりなさいよね!

気が利かない!!」

「申し訳ございませんっ!!」


癇癪(かんしゃく)中動いたら、相手を

殴る蹴るの上、罵詈雑言の嵐を

見舞わせるのに。


と指摘する者はいない。


指摘した者は消されていく為、

全員がただ彼女にひたすら謝る。


「まあ、こうやって悩まされるのも

明日まで。

明日のスケジュールははっきり

わかっているのよね?」

「はっはい! 確認済みです!!」


視線を向けられた執事は慌てて、

手帳を開く。


「明日の正午に大通りで御披露目をし

その後、夕刻までの間に挨拶回りを

するとの事です!」

「なら、挨拶回りの時を狙うべきね!

……頼み込まれたっていう女に直接会って

どれだけ不相応なのか思い知らして

あげるわ!!」


ジョネヴィラは顔を歪め

気が狂ったように笑いだす。


執事達は笑い声に身を震わせる。


ー その様子を窓辺の木から

1羽の鳥が見ていた


ーーーーーーーーーー


「おーおー。

随分おっかないもんだあ。

あれでまだマシだっていうのにも

驚きもんだねえ。

だが、あの嬢ちゃんが動くのは確実だな」


自室で鳥から情報を得た

レイヴンはニヤリと口角をあげた。




ここまで読んでいただき

ありがとうございました!

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