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119話 死刑宣告




郁人の発言に目を丸くする

フェイルートとレイヴン。


「不満……ですか?」

「我が君に……?」


そんな2人を見つめながら

郁人は口を開く。


「ほら、最初はチイト以外は

悪役じゃなかっただろ?

悪役なら悪になるまでの過程が

必要だと思って設定を付け足した」


郁人は設定を付け足した理由を

話す。


「付け足された事に対して不満とか

怒りや恨み、そういったのは

無いかと思ってさ。

もしあるなら言って欲しい。

ー 全て受け止めるから」


郁人は手を膝の上に置き、

体を寄せ、目蓋を閉じた。


「……………」

「……………」


しかし、なにも反応はない。

それどころか、音が一切なくなり

静寂が辺りを包む。


(………あれ?

もしかしてどこかに行ったのか?)


あまりの静けさに気になった

郁人は目を開ける。



ー 「…………え?」



すると目の前には涙を

ホロホロと流す2人がいた。


涙を流す2人に同調するように、

天気が悪くなり雨が降りだす。


雨も合間って、まるで捨てられた

子犬のような2人に郁人は慌てて

声をかける。


「どうしたんだ?!

なんで……!!」

「………俺様達は自分なりに

ぬし様に対し誠実に、真摯に

接してきたつもりです」


レイヴンはポツリポツリと

普段の快活さとは違う、

悲哀がこもった声色で吐露していく。


「なにかぬし様の気に障るような

ことを仕出かしたでしょうか?

そのような……俺様達がぬし様に

対し不満、ましてや恨むなど

そのように思われる素振りを……」


震える声でレイヴンは問いかけた。


「そう思われるような事を

したのなら謝罪いたしましょう。

ですから……どうか私達にそのような

疑惑をお持ちにならないで下さい」


力のない表情でフェイルートは

話す。


「私達が我が君に対し、

慕うことはあっても恨みなど

持つことはありません。

悪に堕ちる理由を加えたのに対し、

思うことなどありませんでした」

「反則くんみたいに善悪の基準が

壊れてるならともかく、俺様達には

基準がしっかりあったんですから」


英雄であった炎竜大兄なんて

特にそうだ

とレイヴンは告げる。


「そんな俺様達が悪に堕ちるなんて

設定が無いと無理でした。

ですので、設定を付け加えた判断に

全員納得してたんですよ?」

「そうですよ、我が君」


フェイルートは自身の思いを

語る。


「むしろ嬉しく思いました。

大学で学んだ技術の集大成である

卒業作品に、共にいた私達を

選んでくださった事。

我が君の最大限の実力を持って

リメイクしてくださった事に。

あの時は思わず嬉し涙を流した程です」


あの時の嬉しさはまさに

天にも昇る程とフェイルートは

告げた。


「………そんな私達に恨まれていると

我が君に疑われている今……

別の意味で泣いてしまいます」


そうフェイルートがこぼした途端、

夢の世界は更に雨に包まれる。


見ているだけで胸が張り裂けそうな、

とてもとても淋しい光景。


(ここはフェイルートの感情と

直結している世界だ。

その世界がこのような風景に

なるということは………)


フェイルート達の気持ちが

胸に痛いほど理解した。


「ごめん……。

疑ったりして」


郁人は2人に頭を下げた。

誠心誠意を持って謝罪した。


「………もうそのような事は

言わないでください、我が君」

「そうですよ、ぬし様。

ぬし様に創られた者達に

とって……俺様達にとって

疑われる事は……

ぬし様にそう思われる事は………

本当に………辛いですので」

「わかった。

もう言わないし、疑わないから」


2人の遠くも虚ろな眼差しに、

どれだけ悲しかったのか伝わる。


そして、心で理解した。


ー 自分が負の感情を持たれているか

疑う事がこの2人、いや郁人が

創りあげた者達(キャラクター)に対して

“死刑宣告“を突きつけるものだと。


「本当に………ごめん」

「分かってくださったのなら

良いのです。

さあ、頭をお上げください」


フェイルートが郁人の顔に触れ、

頭を上げさせる。


雨もいつのまにか止み、先程の

幻想的な光景に戻っていた。


幻想的な光景とフェイルートの

美貌が相まって更に美しさを

高めている。


「それにしても、気になるなあ」


レイヴンもいつもの飄々とした

調子に戻り、郁人を覗きこむ。


「ぬし様がなぜそう思われたのか

理由を知りたいんですが」


なぜと頭にはてなマークを

浮かべながらレイヴンは尋ねた。


「まだ俺様達で良かったものの、

他の奴等だったら、そう思わせた事に

自身の腹を切るか発狂したり、

もしくはぬし様を監禁したり

するかもしれませんから」

「まさか……?!」

「十分に有り得ますよ、我が君」


とんでもない可能性に顔を青ざめる

郁人にフェイルートは告げる。


「あのチイトならその疑念を

湧かせた相手を八つ裂きにし、

魔物の餌にするでしょう。

私ならそいつを実験体にして

永遠の苦痛を差し上げたく

思いますが」

「………いや、その………ふとな」


ライコからの発言がきっかけと

言ってはいけないと郁人は言葉を

濁した。


(ライコが俺に直接関わるのは

夢の中だ。

フェイルートは夢に干渉出来るから

ライコを傷つけれる可能性は

極めて高い。

……絶対に隠すべきだな)


2人に嘘をついたり、言葉を濁すのは

今の状況では危ういものだ。


バレればまたあのような淋しい世界に

戻る、もしくはそれ以上の事態になる

可能性だってある。


ー しかし


(ライコを守りたい)


神様なのにどこか人間らしい彼女が

傷つく姿は見たくないのだ。


だから郁人は2人の視線を受け止め、

真っ直ぐ見つめる。


「………そうですか。

それなら仕方ありませんね」

「ぬし様はたまに思いついたり

しますから」


2人は納得した様子で頷いた。


「では、次からはそのような疑念が

湧かないよう、より接していきましょう」

「色香大兄の意見に賛成!

もっとコミュニケーションとってけば

そんな疑念が出るはずがないからなあ!」


フェイルートは郁人の手をとり、

レイヴンは腕を抱き締める。


「という事ですので、

覚悟を決めてください、我が君。

私達がどれほど貴方様を

思っているのかを……」

「ぬし様の体調を思い、控えてた分

アピールさせていただく所存です」

「あはは……」


2人の瞳に真剣な光が輝き、

その輝きに額から汗が流れる。


「では、まず俺様から行きますよ?

先程伝えた通りの電気療法を」


レイヴンは郁人の後ろに回ると

肩をつかむ。


「少しビリビリしますよ」

「?!」


言われた瞬間、肩に刺激を感じる。


レイヴンの手から電流を流している

とわかった。

程好い刺激で筋肉がほぐれていく

のがわかる。


(そういえば、レイヴンは雷を

使っていたな。

雷と言えば、攻撃的なイメージがあるが

こういった使い方もあるのか……)


思い付かなかった使い方に感心し、

レイヴンに身を任せる。


「すごい気持ちいいよ、レイヴン。

ありがとな。

あっ、言ってた髪をとくのして

なかったし、シャワーとかのも

含めて、お礼も兼ねてするから」

「覚えてくださっていたんですね!!

しかもその件について知られて

いたとは……俺様超感激!!」


郁人の言葉にレイヴンは

ハイテンションになった。


「ではでは!

事件が解決した後に部屋に

お伺いしてもよろしいですか?」

「いいよ。待ってる」

「よっしゃああああ!!」


後ろにいる為、顔は見えないが

声色だけでどれほど喜んでいる

のかがわかる。


その2人を見て、フェイルートは

顎に手をあてたあと、郁人の隣に

座り、長くなった髪に触れる。


「レイヴンだけズルいですね……。

では、私もお伺いします。

我が君の髪を更に綺麗に

させていただきましょうか」

「あーっ!! 色香大兄ずりぃ!!

俺様がといていただいた後で

しようと考えていたのに!」

「言わない方が悪い。

こういったものは言った者勝ち

だからな」


フェイルートが鼻で笑い、

レイヴンの悔しそうな声が

後ろから聞こえる。


(この2人、意外と仲良くなれる

もんなんだな。

考えてたときはどのキャラと

仲良くなれるかまで頭が

回らなかったから、こういう

やり取りが見れるのは良いもんだなあ)


自身が描いたキャラクターが

自分の意思で動き、仲良くなっている

ことに胸が軽くなる。


「我が君。

お話があるのですが、このまま

話してもよろしいでしょうか?」

「フェイルートがいいなら」


レイヴンに電気療法を受けながら、

郁人は頷く。


「では、失礼して。

我が君は私の種族を覚えて

いらっしゃいますか?」

「覚えてるよ。

その瞳の十字が先祖帰り、

魔族の証だ」

「はい。

我が君は私の瞳にそのような

意味を与えてくださいました」


フェイルートは自身の瞳に手を

かざしながら告げる。


「しかし、こちらではどうやら

別の意味もあるようでして……。

レイヴン」

「はいよ!」


レイヴンが指を鳴らすとフェイルートの

頭上にスクリーンが浮かび上がる。


【名前:フェイルート

年齢:28才

性別:男

種族:魔人】


「前もやってたけど、

これチイトがやってたやつだよな?

レイヴンも出来るなんてすごいな!」

「もとは俺様が最初なんですけどね。

あんにゃろ勝手に人のスキルを

真似しやがって……!!

ぬし様にもっとすごいもの、

指輪以上のものをお渡ししますから!」

「ありがとう」


対抗心を剥き出しにしながら言う

レイヴンに郁人は頬をかきながら

答えた。


「我が君。実はこのステータスには

1部、虚実が混ざっています」


咳払いをし、フェイルートは告げた。


「虚実?」

「正確には隠蔽しているのです」


レイヴンがフェイルートの発言に合わせ、

再び指を鳴らす。


瞬間、スクリーンに砂嵐が入る。

1分経ち砂嵐が消え、スクリーンには

新たに文章が加わっていた。



「………え?」



その文章に郁人は目を疑った。

目を何度も擦っても変わらない。


「マジで……」



【名前:フェイルート

年齢:28才

性別:男

種族:魔王(魔を統べる者)】



郁人は思わず意識が飛びそうになった。




ここまで読んでいただき

ありがとうございました!

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