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111話 生前の姿を獲る



フェイルートの頼みに、

ポンドはポカンとする。


「私がマスターのエスコートをですかな?」

「あぁ。君に頼みたい」


郁人の女バージョン、

“郁乃ちゃん“(レイヴン命名)騒ぎのあと、

フェイルートはポンドに告げた。


「チイトや彼でもいいのだが、

チイトは我が君以外に興味が

微塵もないからな。

チイトが優しくしていれば

相手が我が君なのだとわかる者が

出る可能性がある」

「たしかに、そうですな。

チイト殿が心開かれるのはマスターのみ

ですからな」

〔あたしも納得だわ。

猫被りのことを知ってたら

気付かれちゃうわね〕


フェイルートの言葉にポンドとライコは

頷く。


「彼も考えたのだが……

我が君の女バージョンに対してかなり

熱を上げていたからな。

作戦時はあの姿を再現する為、

エスコートする際にいちいち熱を

上げられては困る」


ため息を吐くフェイルートが見やる先に

ユーによって強制的に眠らされた

ジークスがいた。


郁人の困った姿を見て、ユーが尻尾を

花に変えて相手を眠らせる花粉を

ジークスに浴びせたからだ。


「だから君なんだ、ポンド。

君なら問題無いと判断した。

作戦中に関係ない輩に絡まれても

対処が出来るのはあの3日間で

わかっているからな」

「ポンドの旦那はエスコートも十分に

慣れてるのはわかっておりますので。

1番最適かと」


3日間の話は色々と聞いてますので

と、レイヴンはニカッと笑う。


「そうでしたか。それなら…………

と言いたいところですが、

私は"スケルトン騎士"。

鎧姿でエスコートしては相手に

警戒される可能性がありますので……」


エスコート役にふさわしくないと

ポンドはしゅんとする。


うつむくポンドにレイヴンは

快活に笑う。


「そこは問題ございませんとも!

ぬし様の血をいただいた際に、

旦那の情報、データも少し獲得して

おりますゆえ」

「私の情報をですかな?!」


ポカンとするポンドをよそに、

レイヴンは悪戯に成功した子供のように

ニコニコしながらスクリーンを宙に

現した。


スクリーンには今のポンドの姿が

表示されている。


「これをこうしてっと……」


レイヴンはスクリーンに触れて

操作していく。


「さあさあ御覧ください!

これがポンドの旦那の生前の姿ってな!」


レイヴンがスクリーンに表示された

ボタンに触れる。


「すごい……っ!」

〔どんどん人になっていくわ?!〕


スケルトン騎士姿のポンドがみるみる

肉付けされていく。


骨から人体模型のような姿、更に

肌が付けられ髪も生えていく。


ポンドはスクリーンを見ながら

嗚咽(おえつ)を漏らす。


「……あぁっ!!私だ!!

私の……生きていた頃の姿だ……!!」


スクリーンに表示されたのは

ポンドの生前の姿。


女性の瞳を、心を奪うにふさわしい、

彫刻のように整った姿がそこには

あった。


「カッコいいっ!!」


男の郁人から見ても、

素直にカッコいいと思える姿だ。


〔……とびきりの男前ね。

美の女神の加護とかあるんじゃないの?〕


神であるライコでさえも、

思わず見とれてしまうくらいである。


(チイト達もカッコいいけど……

なんだろうな?

ベクトルが違うカッコよさ?)


スクリーンのポンドを

郁人は観察する。


(フェイルートは色気だが、

ポンドはキリッとしてるというか……

チイト達がダーク系ならポンドは

ジークス同様正統派なヒーロー系。

雄々しいと例えるべきか……)


「さあ、ぬし様!

出番でございますれば!!」

「へ?」


レイヴンにいきなり言われて、

郁人は口をポカンと開けてしまう。


「ぬし様のスキルの出番で

ございますよ!

ポンドの旦那の姿を知った今なら、

旦那を生前の姿にすることが出来ます!

なんせ、ポンドの旦那はぬし様の

“従魔“!

他の者ならともかく、ぬし様なら

可能なのです!!」

「そうなのか!?」


レイヴンの言葉に郁人は

声をあげた。


「……たしかに、可能だな」


チイトは顎に手をやり

考えると頷く。


「パパのスキルは情報があって

成り立つもの。

パパの血、魔力からポンドの情報を

得たのなら、パパが姿を見た今、

推測上可能だ。

なんせ、下地は血の中にあるからな」

「我が君のスキルなら問題ありません」


出来ますとも

とフェイルートは艶やかに微笑む。


〔理論上は可能ね。

やってみたら良いんじゃない?〕

「…………ポンドいいか?」


本人の了承は必要だと、

郁人は問いかけた。


「はい、問題ありません。

鎧姿では同行する際、

不可能な場合もございましょう。

それを可能に出来るなら、

私に異論はございません。

それに……その……」


ポンドは指で頬をかく。


「私情になり申し訳ありませんが……。

生前の姿になれるなら

私はなりたいのです。

皆様ともっといろんな場所へ

行きたいですからな」


照れくさそうな声で笑った。


「俺は私情のほうが

聞きたかったんだからさ。

謝ることはないよ」


郁人はポンドの鎧を軽く叩くと、

紙を取りだし、ペンを出した。


「しばらく画面を出して

もらっててもいいか?」

「勿論ですとも!」


レイヴンは親指をビシッと立てた。


「さて、描きますか」


郁人は近くにあった椅子に座ると、

机に紙を置き、スクリーンと向き合うと、

ペンを走らせた。


ーーーーーーーーーー


そして、描いた紙をポンドに貼り、

姿を現したのは、美味しそうに

食事をとる、人の目や心までも

惹き付ける男前だ。


貼った当初は死後から長い期間

経っていた影響なのか髪はかなり伸び、

髭もボーボーに生え、まるで熊のよう

だった。


しかし、髪を切り、髭を剃ったりして

身綺麗にした結果、雄々しい牡鹿の

ようになって全員を驚かせた。


「しかし、驚いたな……。

あのスケルトンだった彼が、

人間と変わらない姿になるとは」

「これもマスターとレイヴン殿のおかげ!

見事作戦を成功させてみせましょう!!」


ポンドは胸を張り、瞳を輝かせた。

その姿は自信に満ち溢れている。


「……もっと頑張らないといけないな」


上手くいくだろかと、歩き方で

苦労しているので幸先が思いやられ

郁人は肩を落とす。


「大丈夫ですよ、マスター」


ポンドは郁人に話しかける。


「私は勿論、皆様もマスターの

力添えをさせていただきます。

なにより、エスコートは私の腕の見せ所。

マスターがそこまで気負われる必要は

ございません。

私にお任せください。

貴方様の魅力を見事引き出し、

活かしてみせましょう」


目尻を下げて笑う姿に、

この人なら大丈夫だと思わず

全てを委ねてしまいそうになる。

信頼や安心感が半端ない。


(やばい……!!

笑顔がキラキラしてまぶしい……!!)


その輝きに目が潰れてしまいそうだ。


「……ありがとうポンド。

気が楽になったよ」

「礼など不要ですよ、マスター。

マスターは色々と1人で背負う癖が

ある気がしますからな。

私は貴方様の従魔なのです。

ですから、私にも少しは

背負わせてください」

「……………キラキラし過ぎだろ」


こちらを見つめるポンドは

更に輝きが増している。

郁人は思わず机に突っ伏して

しまった。


(なんだろ……ポンドの顔があんなに

眩しいものとは思いもしなかった。

チイトやジークス達と一緒にいて

慣れたつもりだったんだがなあ。

……………あれ?)


郁人はふと気付く。


(そういえば、今まで会ってきた人達、

綺麗な人が多かったな……。

理由でもあるのか?

食べ物に綺麗になる成分が入ってるとか?)


チイトやジークス、ライラック等のように

飛び抜けて綺麗な者は少ないが、

平均的に見ても顔が整ってる者が

かなり多いと郁人は感じる。


(なんでなんだろ?)

〔ああ、そのこと。

それはあたしが理由ね〕


郁人の疑問にライコが答える。


〔世界はその世界を治める神に

影響されるのよ。

あたしの場合、あたしが美の女神の

有力候補だったから、この世界の住人も

自然と美しさの平均が上がるの〕

(………道理で。納得したよ)


ライコの咲き誇るばかりの美貌を

知ってる郁人からしたら腑に落ちた。


(ちなみに、この世界に来たから

俺もライコの影響を受けて

綺麗になったりしないのか?)


キラキラと輝くイケメン達がいる

パーティーに、その平均を下げる

自分が居るのは居たたまれなくなり

郁人は思わず聞いた。


〔それは無理ね。

だって、最初からこの世界に

居た訳じゃないんだから〕


無理だわとライコはキッパリ告げる。


〔逆に、そこの猫被りやあの軍人とかが

あり得ないんだから!

ここの平均を余裕で越える美貌とか!〕


最初見たとき驚いたんだから!

とライコは声をあげた。


〔しかも、あの色気はあたしでも負けた

と思ってしまうくらいだもの……!!〕


ライコが歯を食いしばっているのが

声からわかる。

余程悔しかったのだろう。


(俺の努力の結晶が評価されるのは

正直嬉しい。

だけど、妹よ……!!

俺にその美貌を分けてほしかった……!!)


イケメンパーティーの中に居づらさを

覚えてしまう。


郁人の落ち込みを察したチイトが

励ます。


<パパはとっっても綺麗だよ!!

イケメンというより綺麗系なんだから!!

だから自信を持ってパパ!!

というか、パパがモテたら大変だから

他の奴等にはパパの魅力に気付いて

ほしくないけど!!>

(……ありがとうチイト。

その心配は不要だけどな……)


チイトやジークス、ポンドに

全員の視線や心まで奪われるので

杞憂だと、郁人は頬をかいた。




ここまで読んでいただき、

ありがとうございました!

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