元勇者、新たな魔王と会う
翌日、シュヴィア城は異様な雰囲気を醸し出していた。
張りつめた空気が漂っている。
何せ敵対関係の魔王がやってくるんだから当然の事だ。
俺とサリウス王、シュバルツは既に応接室にいた。
念の為にサラにも同行してもらった。
こういうのは最初のが肝心だからな。
扉がガチャと開いた。
「国王様、魔王が来られました。」
「うむ、入ってもらえ。」
サリウス王の返事で兵士が「どうぞ」と声をかけた。
入って来たのは赤い長髪で目付きは鋭く冷たいイメージがする少女だった。
「国王殿、今回は面談の機会を与えて頂き感謝する。我が名は『アリス・デモン・コーズワルト三世』、父の後を継ぎ魔王となった。」
そう言って一歩を踏み出そうとした瞬間、
「ぎゃふっ!?」
マントを自分の足で踏みすっ転んでしまった。
「ちょっと! 私、マントは短い方が良い、て言ったよねっ! 絶対踏んじゃうんだからっ!」
「申し訳ありません、姫様! しかし、長い方が威厳があるのではないか、と思いまして‥‥‥。」
「威厳とかどうでもいいからっ! 女だからってなめられたくないんだからっ!」
涙目でお付きのメイドに抗議をするアリス。
緊迫していた空気がいきなり緩んだ。
サラを見ると、目が見開いていた。
どうやら知ってるみたいだ。
それから数分後に改めて面談が始まった。
「こほん‥‥‥、今回この城にやって来た目的は、我が父上が人間にやって来た行為の謝罪、そしてこれからの魔族についての事を説明する為だ。」
「ほぅ、これから、と言うと?」
「我々は人間との争いを好んではいない。逆に人間とは平和的な関係を結びたいのだ。」
どうやら、アリスは平和主義者みたいだ。
「父上のやり方は酷すぎて、身内からも反発があった‥‥‥。私も何度か説得をしたが聞き入れてもらう事は出来なかった。‥‥‥だから、父上が倒されたのは当然の事だ、と理解している。」
娘にここまで言われるとは、相当反発されていたんだろうな、魔王は。
「私が魔王となった今こそ、人間との新たな関係を作る良いチャンスだと思っている。水に流してくれとは言わないし、信用してもらえるとは思ってはいない。だが我々にチャンスを与えてほしい。」
そう言って頭を下げるアリス。
勢い余って机にゴンッ!と頭をぶつけてしまった。
「いたぁぁいっっっ!!」
もう周りは笑いを堪えるのが必死だ。
「わかりました。我々もこれからは魔族とか関係無く平和な関係を望んでおります。」
「そ、そうかっ!」
額を抑えながら表情はパァッと明るくなった。
「実際、此処にいるノエル殿が治めている村には魔族も住んでおります。」
えっ、此所で俺に話を振る?
「そうなのかっ! ノエル殿、我が同族を受け入れて感謝している!」
「いや、まぁ、俺も争いは懲り懲りだからな。」
アリスは俺に握手を求めてきたので握手した。
近く出来ずに見るとなかなか可愛い美少女じゃないか。
「アリス姫様、お久しぶりです。」
「んっ? サラっ!? サラじゃないかっ!? どうしてここにっ!?」
「サラ様っ! お元気そうで何よりです!」
サラの顔を見た瞬間、アリスは驚き、メイドは喜びの表情を浮かべた。
どういう関係なんだ?
「私はアリス姫様の守護騎士をやっていたんだ。」
なるほど。




