元勇者、温泉を掘る
開拓が始まって数ヵ月が経過して、村もだいぶ広くなった。
「今日も疲れたなぁ。」
「おつかれさん、て言うか本業の冒険者は大丈夫なのか?」
「何とかやってるよ。婚約者が協力してくれてるからな。」
そういえばコイツ、婚約者がいたな。
「でも、婚約者は箱入り娘なんだろ?」
「俺もそう思っていたけど、意外と逞しかったんだよ。服とかのデザインをやっていて、若干向こうの方が収入良いんだよ‥‥‥。」
意外な才能だな。
「将来的にはこの村で暮らそう、と思ってるから。」
「そうか、それはありがたいよ。しかし、そろそろ疲れが見えてくる頃だな。」
「そうだな、疲れをとるのに一番良いのは‥‥‥。」
この時、俺達二人の意見は一致した。
『温泉だな。』
冒険者の時も、勇者の時も訪れた村には大衆浴場があり、使わせてもらっていた。
やはり、人を呼び込むには温泉はかかせないだろう。
「という訳で、協力をしてもらいたいんだ、アクア。」
「そりゃ勿論構いませんよ。」
子供達と水遊びをしていたアクアに頼んだ。
「この土地は山ですから普通の土地よりも温泉が出やすい環境なんです。水脈をちょっと弄れば指定された場所に出せますよ。」
「流石に温泉を作るのは出来ないのか。」
「作る事は出来ますけど、色々規制があるんですよ。」
なるほどな。
早速、場所を確保する。
新たに開けた土地に温泉を掘る機械を設置した。
因みに機械はシュバルツに頼みレンタルした。
という訳で、早速採掘が始まった。
採掘が始まって数時間後にはあの独特な匂いがしてきた。
そして、勢いよくお湯が吹き上がった。
周りからは歓声が上がった。