元勇者、錬金術師の才能に驚く
開拓団の皆にはそれぞれ家を用意してある。
一緒に住むより各自の分野で行動してもらった方が良いんじゃないか?という俺の考えからアムールに手伝ってもらい家を建てた。
と言っても空き家をリフォームしただけなんだが。
その一角にある錬金術師のジャレットの家にやって来た。
「この土地の物で試しにポーションを作ってみました。」
小瓶には緑色の透き通った液体が入っている。
「見た感じは悪くなさそうだな。」
「ただ、私の作ったポーションって余り評判良くないんですよね‥‥‥。兄弟子によく貶されてましたから‥‥‥。」
「まぁ、せっかく作ったんだ。とりあえずは『鑑定』してみよう。アイナ、鑑定出来るよな?」
「えぇ、出来るわよ。」
『鑑定』は拾った武器やアイテムの効能を調べる便利スキルだ。
俺も一応持ってるが、アイナも持ってるので、此処はアイナに任せる事にした。
アイナはポーションをじっと見つめるが、その表情がみるみるうちに変わっていった。
「えっ!? 嘘でしょ!?」
「あの、まずかったでしょうか‥‥‥。」
ジャレットが恐る恐る聞いた。
「これ、『レアポーション』よっ!」
「えっ!? レ、レアだってっ!?」
「う、嘘でしょ‥‥‥。」
ポーションにも色々あって、普段使っているのがノーマルだとしたら、その一番高いのがレアだ。
作ったジャレット本人が信じられない、といった表情をしていた。
「ジャレット、貴女がここに来る前のポーションってある? あったら持って来て。」
「あっ、はいっ! わかりましたっ!」
ジャレットは棚から何本かの瓶を持って来た。
アイナはそれをじっと見つめる。
「レアとはいかないけど、このポーションも上級品よ。」
「えぇっ!? 私、兄弟子にいつも捨てられてましたよっ!」
「ちゃんと鑑定してもらった?」
「『鑑定する価値も無い』、『お前が作るポーションなんて豚の餌にもなりゃしない』って言われてました‥‥‥。」
「だとしたら、その兄弟子、相当なクズよ。貴女は少なくともポーション作りに関しては一流の腕があるわ。」
「ほ、本当ですかぁ‥‥‥、私、初めて認めてもらいましたぁ‥‥‥。」
そう言って泣き出すジャレット。
聞けばジャレットは元々スカウトされて錬金術師になったが、先輩弟子達に相当いじめを受けていたらしい。
最初は自信があったのだが、頭ごなしに否定されてだんだんとネガティブになっていったそうだ。
因みに師匠から直接教わった事は数回しかなく殆ど兄弟子が見ていたらしい。
「ひょっとして、その兄弟子達、ジャレットの才能に気づいて芽が出る前に潰そう、と思ったんじゃないか?」
「あり得る話ね。」
酷い話だが、裏を返せばジャレットには錬金術師としての才能がある訳だ。
この村でその才能が開花すれば良い、と思っている。
因みに例のレアポーションは材料さえあれば大量に作る事も可能らしい。




