幕間 類は友を呼ぶ
シュヴィア城にあるシュバルツの部屋
「ハノイ領の開拓団のメンバーはこれで揃ったな。」
「えぇ、後はレバニアからも応援が来るそうですから。」
シュバルツと部下はハノイ領に派遣する開拓団のメンバーに関する書類を見ていた。
「しかし、まぁ揃いも揃って似たような境遇のメンバーが集まったな。」
「確かに、しかも原因が嫉妬とかの個人的な感情ですよね。」
今回、開拓に参加するメンバーは錬金術師だったり魔法学院の首席だったりトップクラスの冒険者パーティーのメンバーだったりする。
しかし、全員が何らかの原因で追放されたり、退学させられたりと不遇な境遇を受けている。
その原因が嫉妬だったり、実力が評価されなかったり、と理不尽だった。
「例えエリートであろうが結局は感情で冷静な判断が出来なくなる物だよな。」
「確かにそうですね。だからこそ感情をコントロール出来ないとダメですよね。」
一時の感情が実はその後に凄く影響する。
シュバルツは、それを身内で経験している。
「そういえば、『レナンド』様、お元気でやっているみたいですよ。」
「そうか、まぁ元々性格が良かったから元に戻ったみたいだな。」
「あの時は大変でしたね。まさか、国王の誕生パーティーの席で『アンジェ』嬢に婚約破棄を宣言するとは思わなくて我々も後始末に大変でしたからね。」
「・・・・・・あの時は本当に縁を切ってしまいたい、と思ったよ。」
シュバルツには兄が二人いるのだが、長男で王太子だった『レナンド・シュヴィア』が婚約者である『アンジェ・ミランドール』に対して婚約破棄を突きつける騒動を起こしたのが数年前の話。
しかも、この日は国王の誕生日パーティーで、他の貴族や交友のある他国からの来賓も来ていた。
因みに婚約破棄の理由は『真実の愛を見つけた』という、簡単に言えば浮気である。
しかし、アンジェという少女は女性ながら騎士団に所属するぐらいの腕の持ち主で、しかもプライドが高く怒らせると怖い、という性格。
レナンドは知っているはずなのだが、恋は盲目と言うのかやってしまったのだ。
シュバルツは当然、その場にいて兄を戒めようとしたのだが、アンジェの行動の方が早かった。
きらびやかなドレスを着ているのに俊敏な動きでレナンドとの間合いを詰めて腹に一撃を決め、国王の許可を得てその場でレナンドを瀕死すれすれの状態にした。
しかも終始笑顔だったので余計にその場を凍りつかせた。
因みにレナンドの浮気相手である男爵令嬢はコソコソと逃げようとしたのだがシュバルツが捕まえた。
結局、男爵令嬢とその家族は身分剥奪の上、国外追放となり、レナンドは王太子の身分剥奪と勘当を言い渡され辺境に追いやられた。
となると、自動的に王太子は次男である『ローニー・シュヴィア』になるのだが、ローニーはかなりの自由人で現在諸国漫遊の旅に出ている。
結局の話、王太子の地位は空席のままである。
「でも、シュバルツ様はアンジェ様と婚約出来たじゃないですか。」
「まぁ、そうなんだが・・・・・・。」
何故かシュバルツはアンジェと婚約関係となっている。
アンジェ曰く『元々はシュバルツ様の方が好きだった』との事。
ハッキリ言おう、シュバルツは苦労人である。